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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
序章 地下へと続く道
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ダンジョンはようやく現れた。

 「・・・見えない」


 伊達に2mmでは無いと言うことか。立ったままでは確認出来ない。

 小型の守護者はナンチャッテ休憩ポイントにソッと配置するのが良さそうだ。


 「無事に守護者の創造を行えた様で御座いますね。次は守護者を配置する階層の創造を行って参ります」

 「階層の創造ですか。今度は『支配域創造』の技能でしょうか」

 「その通りで御座います。初めて支配域を創造なさる場合は私どもの方でMPを負担させて頂いておりますので、畔木様は詳細の設定をお願い致します」


 アブラムさんがMPを肩代わりしてくれる様なのでお言葉に甘えて細部の詳細を決めていく。


 現在、俺の階層は二つ。

 『謁見の間』と『設定中』だ。

 『謁見の間』はマスタールーム。ラスボスの間と言うわけだ。新しい領域の設定を済ませば、ココが二階層になる。


 『設定中』

規模 : 2km四方の正方形 , 高さ10m

内見 : 石造り


 「高さは10mが限界なのでしょうか」

 「更に高くする事も可能で御座います。その場合は追加でMPを消費してしまうのでご注意下さい」


 現在の規模がベーシック。拡大する場合にはMPを消費してしまうというわけか。

 高さは10mもあれば大丈夫だろう。

 2kmなら一時間で往復出来てしまうな。単純な距離で言うとだが。

 それでも、特に変更する点は無いだろう。

 2km四方の正方形の大きさの城なんて普通に進んでいれば迷ってしまうだろう。階層が増えれば尚更だ。


 「畔木様、構造はどう致しましょうか。後々変更も可能で御座いますので、あまり考え過ぎるのもよろしくないかと存じます」

 「それもそうですね。簡単に整えてしまいますので少しお待ちを」


 手元にウィンドウを引き寄せて区切りを付けていく。2kmもあるので難しいにも程があるが、あくまでも西洋風の城を目指しているのでそれなりに見えるようにしておく。


 「お待たせしました。終わりました」

 「その構造でよろしければ«はい»をお選びください」


 『一階層』

規模 : 2km四方の正方形,高さ10m

内見 : 石造り


  創造しますか?

 消費MP100(アブラム出費)

 «はい» «いいえ»


 設計した図が浮かび上がり、階層が3D表示される。この画面になるとデモ表示されるのはありがたい。

 ここは後からでも修正出来るそうなので«はい»を選択。


 防音が完璧なのか一階層を創造しても音はしなかった。

 その事を不思議に思っているのがアブラムさんは分かったのだろう。階層間の説明をしてくれた。


 階層が変わる度に別空間として認識されるため、音が届く事は無いそうだ。

 階層を繋ぐ階段が設置されていなければ下の階へと続く魔法陣が自動で配置される。

 壁は決して壊れる事は無く、清掃をする必要も無い。


聞いていると本当に異世界に来たのだなと感じる。

ココで冒険者を迎え撃つ事になるのだ。地球に居た頃は考えもしなかった。


 「領域創造お疲れ様でした。では本題に移らさせて頂きます」

 「本題、と言いますと?」

 「(わたくし)はダンジョンマスター管理機構(DMO)の人間でございますが、我々はダンジョンの全てを管理しているという訳ではありません。ダンジョンマスター様のご協力があってこそ成り立っていると言うわけです。DMOにご協力頂いておりますマスター様も百を越え、全体の3/4(よんぶんのさん)のマスター様との協力体制を築き上げる事に成功致しました。そこで畔木様にもDMOに御所属頂きたく思っております」


 なるほど。俺は少し勘違いをしていたようだ。


 DMOはダンジョンマスターを傘下に取り入れ運営している。

 だが、DMOの傘下に入っていないダンジョンマスター、例えば俺が当てはまるだろうか。

 DMOからの使者であるアブラムに説明を受けたが、俺自身はDMOの傘下に入った訳では無い。あくまでも説明を受けただけだ。

 その様な野良のダンジョンマスターに接触し、DMOの傘下に入るように促しているという事か。

 所属しているダンジョンマスターの数を言ったのは脅しも兼ねているのだろう。詳しくは知らないが、恐らくはそういう事だ。

 傘下に入ればこんな事が出来るよ。という飴と、圧倒的な戦力差の鞭。上手く出来ている。


 「ここまでご協力頂いたアブラム殿には大変感謝しております。ですが、幾つか気になる点があるのですが宜しいでしょうか」

 「(わたくし)が答えられる範囲でしたら何でもお聞きください」

  「では一つ目。DMOに所属していない残り1/4(よんぶんのいち)のダンジョンマスター達。彼らはどういう人物なのでしょうか」

 「彼らはダンジョンマスターの家系なのです。親から子へ引き継ぐ事もあれば、新しく創る事も可能です。血の繋がりがある分、ダンジョンの情報は受け継がれ参りますし、有事の際には協力する場合も御座います。力がお強いので我々DMOが介入致しませんでも成り立つと言うわけで御座います」


 ダンジョンマスターの証は引き継がれるのか・・・。

 それとも何か条件があるのか。

 どちらにしても気になる。


 「二つ目。DMOに所属するに当たり、加入費等が必要になって来るのでしょうか」

 「加入費等は一切受付けておりません。我々はダンジョンマスター同士の交流の場を設ける商人だと考えていただければ幸いで御座います」


 「三つ目。ダンジョンマスター間での決まり事について教えていただきたい」

 「基本、DMOに所属して下さっておりますダンジョンマスター間での戦闘行為は禁止されております。例外もございますのでお気をつけくださいませ。他には有事の際には近隣のマスター様と協力体制を取ることが暗黙の了解で御座います」


 「四つ目。プライバシーの保護についてです。大変申し訳ありませんが今後、本日の様な出会いは遠慮させていただきたいです」

 「それは大変申し訳ありませんでした。事前にお知らせ致します。もちろん個人情報の保護も完璧にさせて頂きます」


 「以上です。ありがとうございました」

 「では・・・」

 「DMOに加入させて頂きます」

 「誠にありがとうございます。ではコチラの用紙にご記入をお願い致します」


 急にアナログになったな。

 用紙に目を通し、不備が無いかを確かめ、記入する。

 話を聞いても、用紙を見てもこちら側に不利益な制約は書かれていなかった。

 思っていたより白い会社なのかも知れない。


 「では、またお会いしましょう」

 「ええ、また」


 その一言を残してアブラムさんは来た時と同じように魔法陣を光らせ姿を消した。


 □


 「・・・チッ・・・!」


 アブラムが消えてのち、俺は玉座に腰掛けた。

 深い沈黙の後、思わず舌打ちをしてしまう。


 最悪だ。やられた。

 思い出すのは『謁見の間』で消費した貴重な時間達。

 勿体無い!鑑定に気付いていればまた変わったというのに。


 現れた時点で気が付くべきだった。拒否出来るとは思っていなかった。あー、ダメだ。

 かってに、俺が既に所属している組織だと勘違いしていた。


 「どお"じでごんなごどずるのお"ぉぉー!・・・ふぅ」


 タダでさえ人付き合いは苦手だというのにファーストコンタクトがアイツだなんて最悪だ。

 力が無い今は従うしかないが、俺は自由に生きたいんだ。死んでまで誰かの為に動くこともあるまい。

 1/4(よんぶんのいち)の勢力に接触。力を付けてDMO脱退。この流れが無難か。


 ピチャン


 今度は何事だと身構える。

 俺の目の前に灰の様なものが集まり、手紙の形になった。

 これは・・・ウィンドウと同じか。このタイミングでの封書。アブラムか。


 封書を軽く指で押せば、封蝋(ふうろう)がペラりと剥がれ、ウィンドウが中から現れる。



 ダンジョンマスター管理機構(以後DMO)に御所属頂き誠にありがとうございます。

御所属頂いた際、コチラに不手際が合ったようですので担当の者には長いお休み与えておきました。

この度は畔木様に大変ご迷惑をお掛けしました事をお詫び申し上げると共に、DMOについて簡単な説明をさせて頂きたく存じます。


 不手際のお詫びと致しまして技能を贈らさせて頂きました。後程、リストからお選び下さい。


 我々、DMOはダンジョンマスター様との連携を密に取り、ダンジョン経営をより快適なモノにして行こうという理念の元、行動をしております。

DMOに属する機能に付きましては、証の欄に追加されております『DMO所属ダンジョンマスター』をご確認下さい。


 それでは良きダンジョン経営を。



 コレで終わりでは無かったようで、更に新しいタブが開いた。



 以下のリストから技能を一つお選び下さい。

・支配域鼓舞

・武具創造

・罠創造

・食料創造



 技能は見たまんまの効果だろう。今までの技能の性能を考えるにMPを消費して発動する物だと予想。


 『武具創造』と『食料創造』の両方を獲得しておきたいが一つしか選択は出来ない。


 少し悩んだが、ここは『食料創造』を選ぶ。

 腹が減っては戦は出来ぬ。と、言うし、損は無いだろう。


 では、本格的にダンジョンマスターとして活動を始めようか。


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