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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
四章 魑魅魍魎
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方舟

その日の内にマナフライ100体は達成できた。

『三階層』の守護者の数が増えた事により、ギフトのHP、MPもかなり上がっている。


翌朝。

パペル殿を見送り、『大聖堂』の守護者達に命令を伝えた。

その命令とは周辺の魔物の討伐、道の整備、地図の作製である。

地図の作製にはヴェーデも協力してもらっている。何か出来ることは無いかと聞いてきたので部隊に編入した。護衛はその分厚くなっているし、残った騎士達も参加するので心配事はない。


午前中の俺の仕事は『生命の樹』を育てることだろうか。マナフライも居るしMPには困らないだろう。

昨日創ったガブリエナ(雌)だが、彼女は俺の護衛という事になった。ギフトの推薦があったのが大きな要因だ。ダンジョン最強は手元に置いておくべき、との事。


ガブリエナは人間と声帯の作りが違うため人の声は出せないが、『異世界言語』のお陰で会話は可能だ。念話ももちろん出来る。


「ダンジョンの序列はどうなっているのでしょうか」

「・・・序列?そうだな」


爵位を決める前に法を決めてあるので明らかな上下関係はないが個人ではどう思っているのだろうか。

創った順だとか?

そうなるとマナフライが一番上になるんだが。


「表向きは公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順じゃないのか?今のところ伯爵までしか居ないが」

「貴方様はどう思っておられるのでしょうか。個人としてです」


俺個人か・・・、そうだな。


「上から、ギフト、マイン、クローフィ。後は同列だな。これは秘密だぞ?公平でなければならないからな」

「そうですか。ありがとうございます」


結局なんだったんだろうか。

ガブリエナには悪いが少し監視させてもらおう。守護者だから裏切らないだろうがダンジョン内の不安はできるだけ排除したい。

俺の感情に引っ張られているのだとしたら、彼女はダンジョンで最強になろうとするだろう。俺が最強にしようとしたのだからソレを望むはずだ。


「言っておくが戦おうなどとは思うなよ?」

「もちろんです」


もし戦ったらマイン、クローフィは厳しいかもしれないがギフトには瞬殺される。

それにこの序列は戦闘力で決めているわけではないし、創った順でもない。


ガブリエナのヒンヤリとした甲殻を撫でながら『生命の樹』へMPを流していたのだが、()き止められる様な感覚と共にMPの流れが止まった。

実が出来たのか?ガブリエナは、うつらうつらと眠そうなので『人宮一体』で確認する。


・・・虹色のリンゴか?

金色の皮が波打つように輝いているので虹色に見えただけのようだ。


ダンジョンの床を操作してリンゴを採った。

驚くほどに重い。リンゴの様な形をしているがやはり別物か。


・生命の果実

食べると不老にになり、寿命で死ぬ事は無くなる。また、病気に掛かることも無くなる。


後でレイにでもあげよう。

果実を採ったらMPが流れるようになったので、継続して流していく。



昼食後にレイに声を掛けた。果実を食べてもらうためだ。


「レイ、デザートだ」

「・・・?鑑定ではエラーと出るのですが」


レイの『支配域鑑定』では熟練度が足りないのだろう。


「一口でもいいんだ。どうしても君に食べて欲しい」

「そこまで言うのでしたら何か理由があるのでしょう。分かりました」

「俺と一緒に生きる覚悟があるならそれを食べてくれ。食べると寿命で死ぬ事もなければ病気で死ぬ事も無くなる」

「言いましたでしょう?分かりました、って」


そう言ってレイは躊躇うこともなく一口齧った。咀嚼し、喉が震えると、彼女は続けて言った。


「種だけ貰って去るわけには行きません。私には貴方が必要です。精神的な意味でも、物理的な意味でも。・・・貴方にとって私は邪魔になるかもしれません。その時は私を殺しても構いません」

「そんなことはしない」

「それでも、旦那様に救って頂いたこの命。差し出すことに迷いはありません」


俺がしたのは助けて、抱いただけだ。彼女にも打算があるのだろうが、それでも少し重すぎやしないだろうか。政略結婚とはこんなものなのか?ちょっと思ってたのと違う。


「なんにせよ、これからよろしく頼む」

「もちろんです!」


彼女の笑顔は、俺には勿体ないぐらいとても眩しかった。


「ところで、私の階層なんですけど見て頂いても構わないでしょうか」


レイの階層。『五階層』、『六階層』か。

初期から居るゴーレムと武装しているゴーレムが居たはずだが、それから増やしたのだろうか。


『五階層』へと降りると、何時ぞやのゴーレムが居た。初期のゴーレムは狼による引っ掻き傷が付いているので個々を判別しやすい。

出迎えてくれたのは、アイリードとディアがレイを襲えと仄めかしていた時に居たゴーレムだ。


「この先で訓練させています」


しばらく進むと地面の揺れを感じた。遠目に見えるのアレは・・・馬?


「少ないですが馬を創りました」

「何体創ったんだ?」

「7体ですね。MPが少ないので数はそんなに増やせないのですけど、少しずつでもお力になれればと思いまして」


レイのMPは125。種族は人間なので大体1分で1回復する。確かに一気には創れないな。

マナフライの様にMPを分け与えてくれる守護者が居なければこんなものなのだろう。


「MPを分けてくれる守護者が居れば楽になるぞ」


マナフライを手元へ呼び、彼女へと見せる。


「蛍ですか?」

「そうだ。コイツは1体当たり7のMPを分けてくれる。それが100もいれば700回収する事ができる。創りすぎはよくないがな」

「なるほど・・・」


これで彼女の階層の守護者創造力が高くなったはずだ。助言し過ぎもレイの為にならないのでこれっきりにしようと思う。


俺もリーグナの『七階層』の守護者を創らなければならない。

ダンジョンマスターが死ぬと、統合していてもダンジョン内の守護者は消えてしまう様だ。そう上手くはいかないか。

『七階層』の内見は森だ。

それは俺が見たことの無い木の森で、鑑定では『チョウジの樹』と出た。説明文によると、寿命が長く、折れにくい様だ。




ルーチェ・クルイロー


フェーデからの報告を受けた時には大変驚きました。

グラキエス教国、教皇にして座天使の席についてる私は、ダンジョンの発生を知る事が出来ます。


今回のダンジョンも、何時もの様に唯のダンジョンだと思っていました。ですが帰ってきたのは取引がしたいという返事。ダンジョンマスターという存在も初めて知りました。


信頼できる人物かどうか探りを入れてみると、フェーデが興奮した口調で「主天使様です!」と伝えてくれた。

主天使かどうか聞いたわけでは無いようですが、『支配』と『束縛』が権能と言っていたので間違いないとのこと。確かにこの権能は如何にもダンジョンマスターらしいですね。

主天使は教国にも居ますが、彼はあまり好きにはなれません。新しい主天使とは仲良く出来れば良いのですが・・・。


「・・・何か悩み事かしら?」


後ろから声が掛かりました。

この声は我らが神でしょう。そもそもプライベート空間に居るのですから想像は容易です。


「新しく出来たと言うダンジョンの事についてなのですが」

「それで?」

「主天使だと聞いていますが」


神が続きを促したので疑問を投げます。

彼女はそれに対して軽く微笑むと、「ええ、そうね」と答えました。


「何か大きな事を始めるのでしょうか?ダンジョンマスターという存在そのものを私は知りませんでした。地上に居る人物の方が連携も取りやすいと思うのですが」

「その通りね・・・そのうち鳥は飛び立つわ、何処にあるのかも分からない島を目指して」

「意味が分かりません・・・」


鳥?その鳥というのがダンジョンマスターを表しているのでしょうか。

神の言葉通りなら、まだ鳥は飛んでいないということです。力を溜めているのか、休んでいるだけなのか、私には分かりませんがそれまでに接触しなければいけませんね。


「彼に接触してもよろしいでしょうか」

「もうしてるじゃない」

「そうではなくてですね・・・私自身が、という意味です」


フェーデの事も知っているのですか。・・・流石ですね。


「・・・好きにすればいいわ」

「では、そのように」


私は神の姿が空へと掻き消えると共に旅支度を始めた。

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