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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
四章 魑魅魍魎
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翠の君 リーグナ

シュタールに頼んだ後、アブラムとリーグナがどうなっているのか気になったので、『人宮一体』で彼等を手元へと運んだ。

『束縛の魔眼』で時間が止まっているからこその荒業である。生き物に対しては効果を発揮しないので死体としてカウントされているようだ。魔眼は人物だけでなく、対象者が着ている服にまでその影響は及ぶ。肌は硬いし、髪は物理法則を無視して宙に浮いている。


二人を見比べてどうするか考える。

アブラムは別に殺しても構わない。神からもそう言われているし、生かしておくメリットも無い。DMOに死体を送り付けてやりたいが、手段が無いので諦めるしかないしな。

普通に殺すか。男だからなんもできないし。


アブラムの後頭部を右手で掴み、『束縛の魔眼』を解除する。

状況が分からないのかバタつく彼を無視して掌からアイリードが飛び出した。

生憎、刺した感触は感じなかった。彼女がそうしたのか、『人剣一体』のせいなのかは分からないが、死んだことには変わりない。

アブラムを放り投げ、リーグナへと向き直る。死体は壁にでも当たったのか、鈍い音を立てた。

主天使になってからというもの、少しだが身体能力が上がっているの様だ。


「さて、後はコイツだが・・・」


リーグナの使い道は結構ある。

DMOを脱退させ、俺の為にMPタンクとなってもらう。つまりは守護者達の訓練用の魔物を出させるわけだ。これには彼女の協力が必要不可欠であり、暴力や催眠術により完全に支配下に置いておく必要がある。

だが、それが出来れば彼女のダンジョンは俺のダンジョンへと統合し、侵入者が現れた際の壁にもできる。

支配が出来なかった場合は便器にでもなってもらうかな?


(クローフィ、来てくれ)


『吸血』があれば配下にする事は可能なのでは無いだろうか。そう考えクローフィを呼んだ。

吸血鬼は『吸血』で増やす事は可能だと言われたのを思い出したのだ。

死なないので本当に肉壁が出来てしまうな。


「エバノ様、何か用でしょうか」

「お前が思ってるそのまんまだよ」


ノックと共にクローフィが部屋にやって来た。

俺への挨拶と共に彼女の目が細くなる。何をしようとしてるのか分かったのだろう。その様子だけで嫌だと分かる。


「確認のためにお聞きいたしますが、『吸血鬼にしよう』ということでしょうか」

「間違いないな」

「『幻術』での洗脳も可能だと思うのですが」


(かたく)なに頷かないな。


「ハァ、そんなに嫌か?」

「嫌です」

「・・・頼むからソコをなんとか」


ノータイムで否定の返答が帰ってきた。『幻術』でチマチマやるしかないか。時間が掛かりそうだから嫌なんだが。やり方も分からないし。


「エバノ様が血をくださるのであればやっても構いませんが・・・」

「そのくらいなら構わないぞ。やっぱり吸血鬼だから吸血衝動とかがあったりするのか?」


その後しばらくは恍惚とした表情で俺の首筋を咥える吸血鬼の餌食となった。

俺は痛気持ちいい程度なんだが、クローフィは違うのだろうか。


肩を持って距離を少し離す。口惜しそうに首筋を眺める彼女の首筋に今度は俺が噛み付いた。噛み付くと言っても軽いもので、擬音語だとカプカプといった感じだ。血が出るまでは噛んでない。

噛まれているクローフィは身動きを止め、時々ピクピクしている。

美女の首筋は美味いって事しか分からないな。


「んっ、もういいか?」

「はい・・・、喜んで・・・」


口元を拭い聞いてみると、心ここに有らずといった様子でフラフラとリーグナへと歩を進めて行く。

紐を作って手脚を縛りたいが彼女の身体は1mmも動かないので、クローフィに『幻術』を掛けてもらいながら『束縛の魔眼』を切る。


「ッ・・・お母さん、お父さん。私ね、頑張って偉くなったんだよ。森のみんなは・・・」


『幻術』のせいで虚ろな目で話し始めるリーグナ。クローフィが目線を俺へと向けるが、容赦するつもりは無い。俺だってココに来てからそれなりに覚悟を決めたのだから。


俺がお父さんでクローフィがお母さん。

リーグナには今そう見えている。幼児がおママゴトでもしているかのような楽しげな雰囲気の中、ゆっくりとクローフィの口元がリーグナの喉元へと向かう。


「ぁあ、・・・ンクっ!・・・んぅ」


頬を赤く染め、クローフィに血を吸われている彼女。


「お前のダンジョンを貰うぞ」

「はぃ、喜んでぇ・・・・・・」


リーグナは消え入りそうな声でダンジョン統合を受け入れると、ゆっくり、ゆっくりと瞳を落とした。

それにより俺は階層が増える感覚を覚えた。


クローフィは口を離すと静かに告げた。


「申し訳ありません。吸血鬼にするのが初めてなもので加減が分からず失敗してしまいした」


一筋の血を垂らしながらそう答えるクローフィに近づき、キスを交えながら垂れた血を舐め取る。


その血は、しょっぱくて仕方がなかった。


リーグナの『七階層』。その丁度真ん中の地点。そこに墓を作ることにした。

戦闘後は楽しもうとしていたのに、今はもうその気は消え失せている。おかしなものだ。

『土魔法』で穴を掘り、遺体を丁重(ていちょう)に埋める。

墓石は巨大なクリスタルにした。これなら俺はリーグナの事を忘れる事はないだろう。


『憐れなダンジョンマスター此処に眠る』


クリスタルに日本語でそう刻んだ。

DMOが無ければ彼女はダンジョンマスターにならずに済んだかもしれない。この星に来ることもなく、安らかに眠れていたのかもしれない。


「それと私の目的だけどね、世界の均衡の維持になるわ。DMOだったかしら?そんな組織が出てきて負の感情に偏ってるの・・・。目障りなのよね」


アクルとディアを創った後の神の言葉。

神が1柱であるならば、世界のバランスが負の方向に向かう筈がない。一人だからこそ力は強大で、それこそ全能で無ければならない。DMOが異質なのは明らかだ。新しく出来たダンジョンの場所を特定できる点からもそれは分かる。


均衡の維持が目的なら、狙って負にする必要はない。誰かが悲しみ、誰かが笑う。そうすればいいだけ。

それならば俺は笑い、|DMO(彼等)には悲しんでもらえばいい。


神が直接的手を出さないのは、手痛い反撃を食らうからだろう。

俺の他にも協力者を集めているのは知っている。反撃を食らって動けないので均衡が維持出来ませんでは笑うしかなくなるからな。


何時かは『束縛の魔眼』でも縛れない相手が現れるだろう。神が手を焼くのだから俺より上位者であるのは間違いない。


神の意思だから。ではなく、自分の意思でDMOを潰してやろうと思った瞬間だった。



「守護者スキアーを公爵、『地上部大聖堂統括公位』に任命する。『大聖堂』に所属する他の守護者はスキアー卿の指示に従うように」


名前 : スキアー

ジャンル[陸]

HP113(+750)→863

MP113(+750)→863


・証

公爵『地上部大聖堂統括公位』


・技能

暗殺術[熟練度2.16]

剣術[熟練度2.20]

調教術[熟練度2.50]

忍術[熟練度3.44]

隠密[熟練度2.78]

指揮[熟練度--]制限

食料創造[熟練度--]制限

気配察知[熟練度3.98]

光魔法[熟練度1.72]

闇魔法[熟練度1.96]


・公爵『地上部大聖堂統括公位』

『大聖堂』周辺の統括者。

ダンジョンマスターには及ばないが、『大聖堂』に関する権限を持つ。

『大聖堂』に存在する守護者一体につき、HP、MPが5追加される。

技能『指揮』の付与。ダンジョンマスターの技能を一つ付与(付与不可能な物もある)。既に持っている場合、熟練度にボーナス +2.00 。

付与された能力は成長せず、制限が掛かる。


今回はブリッツの時のように訳の分からない技能がつくことはなかった。『食料創造』が付いたのは餌付けしろと言うことなのかもしれない。


名前 : 畔木 (エバノ・シュヴァルツヴァルト)

種族 : 主天使

HP200

MP200


・証

ダンジョンマスター

シュヴァルツヴァルトの主


・技能

剣術[熟練度1.16]

支配域鑑定[熟練度10.00]☆

 支配域創造[熟練度10.00]☆

 守護者創造[熟練度10.00]☆

 食料創造[熟練度6.32]

 人宮一体[熟練度9.09]

火魔法[熟練度2.11]

土魔法[熟練度1.23]

神憑り

 生命の樹

 束縛の魔眼


以前からの変更点は、まず名前が二重に表示されるようになったこと。前までは『エバノ』の表記は無かった。

次に証『シュヴァルツヴァルトの主』が増えた。


・シュヴァルツヴァルトの主

ダンジョンの存在を言語を介する種族に知られ、功績を残したダンジョンマスターに贈られる、一人前のダンジョンマスターの証。

領域内に存在する守護者の技能習得速度及び、技能熟練度習熟速度が増加する。


これでもまだ一人前だ。ダンジョンマスターの中では下っ端の部類なのだろう。頑張らなくては。

技能は、『剣術』『火魔法』『土魔法』『神憑り』が増えた。『神憑り』はやはり神関連の技能のようで、効果は『神の力をその身に宿す』としか書かれていなかった。次の戦闘で試してみようと思う。


さて、そろそろいい時間か。夕食にしよう。

パペル殿一行は明日の朝には発つようだ。

騎士は何名か残していくようだが、彼等は練習試合の相手である。それも明後日には帰るらしい。


ダンジョンへの道を整備するべきだろうか。『土魔法』が正直楽勝であるし、寄ってきた魔物も釣れて一石二鳥である。

ただ、森と砦とを繋げば人の往来も増える筈だ。そうなると人間の敵対者、魔物は狩られていくだろう。MPの収入源が無くなってしまうのは困る。今回のように対ダンジョン戦はそうそう起きないだろうからMP補充の案を考えなければいけない。


・・・・・・マナフライを創るとか?

最近は気絶する事が無いので頼る機会は少なくなってきているが、優秀な守護者である事には変わりない。

悪い選択では無いかもしれない。

現在、マナフライは15体。1体当たり7譲渡してくれるので、105増えることになる。

これが100体いれば、700だ。

俺が創ったマナフライは消費MPは11。コスパも良い。MPの回復速度を考えると二分に1体創ればMPは枯渇しない。


これはもう決まりだな。

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