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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
三章 共同戦線
32/145

奪還戦当日


 出てきた場所は前回と同じ場所の様だ。見覚えがある。ダンジョンが機能しているのか、寒さを感じる事は無い。

 クローフィがワーカーバットを放ち、敵の情報を探る。


 その間に馬に誰が乗っているかを教えよう。

 ギフト、マーゲン、レイ、ゴーレムβ×3、マイン、ライトアーマー×5、クローフィ、ブリッツ、スキアー

この15人だ。


 作戦としてはこうだ。

 俺率いる囮部隊と、レイ、アクルをダンジョン中心部に連れていく本隊とに分ける。


 囮部隊は、

アイリード

ディア

フランメ

麒麟

スナイプアーマー×45

インプ×15

シールドアーマー×15

 の80名で構成されている。


 本隊は残り全てだ。

 クローフィ、ブリッツの『幻術』。アクルの『闇魔法』。スキアーの『忍術』で姿を隠して行動する。


 ダンジョンの中心部は宮殿の地下で、俺のところで言うで言う『謁見の間』に当たる。

 俺が攻勢を仕掛けると同時に宮殿の背後から侵入し、圧倒的な戦力を持ってして中心部へと向かう。


 俺が粘れば粘るほどレイのダンジョン奪還は上手くいく。死なない程度にはやるさ。


 「エバノ様、確認が取れました。飛行型の魔物は確認出来ず、狼が徘徊している様です」

 「分かった。馬たちに『風魔法』で臭いを消させろ。それから『土魔法』で足跡を消しておけよ」

 「かしこまりました。ご武運を祈っております」

 「俺に負けはないさ」


 クローフィにそう言い放ち、囮部隊は走る。

 後ろを確認すれば景色に溶けていくクローフィ達の姿があった。


 よし、時間稼ぎに勤しむとしよう。


 □


 敵の本陣、宮殿の前までやってきた。

 道中に遭遇した狼は『束縛の魔眼』で拘束後、アイリードで殺した。

 随分あっさりと到着したが、相手方は準備を整えて待っていたようだ。

 狼だけではなくケンタウロスの様な魔物も見受けられるので、俺達が襲撃した後に創ったのだろう。


 「スナイプアーマー、構えッ!」


 一斉に弓を構えるスナイプアーマー達。

 矢もあれから改良してある。鏃をを大きくする事で落下時の威力をあげてあるのだ。


 「撃てぇーーー!」


 風切り音が響き、放たれた矢が俺を追い越していく。

 それらを確認すれば、俺の魔法の詠唱が始まる。


 「・・・『着火(イグナイテッド)』」


 鏃には炎が宿り、敵陣を焼き焦がす。

 あわててコチラに魔物を差し向けるが、次弾装填を完了させたスナイプアーマー達は矛先を魔物へと向け弦を弾く。


 「撃てぇーーー!」


 麒麟(きりん)降り、バタバタと矢に貫かれ倒れていく魔物達へと歩を進める。

 フランメとディアに守られた俺に矢は効かない。囮が目的なのだから派手にいこうじゃないか。


 さて、日緋色金(ヒヒイロカネ)の特性を覚えているだろうか。

 特性、それは脅威の熱伝導率だ。だからこそ俺はフランメと共にココにいる。囮として充分な仕事を果たすために。


 「『熱き魂(バーニング・ソウル)』」


 身体を炎が包み込み、その熱によりフランメは炎の揺らめきの様に光を放つ。

 ディアの『全魔法反射』により反射を繰り返した炎は熱を上げ、勢いを増し、熱量を増した。


 矢に当たらなかったのだろうケンタウロスが、刃が扇状のハルバードを腰貯めに突っ込んで来た。

 そのケンタウロスは勝利を確信したのだろう大きな雄叫びをあげようとしたが、ソレは最後まで続くことなく終わりを迎えた。

 その場に残った、振り抜かれた筈のハルバードの先には金属が融解した跡が残っていた。


 (御主人!さすがに熱いです!)

 「ん?・・・分かった。調整が必要だな」


 ディアの技能は『全魔法反射』。フランメが生み出した熱に耐えられないのだろう。

 身体能力強化を目的とした『熱き魂(バーニング・ソウル)』は日の目を見ずに役目を終えた。


 「俺の名はエバノ!やられてばかりの雑魚ダンジョンマスター!アブラムは死んだぞ!立て篭もってばかりで何も出来ないノロマめ!俺はここだぞ!倒してみせろ!!」


 安っぽい挑発だが、相手の勢いが増したのは確かだ。


 □


 クローフィside


 エバノ様が時間を稼いで下さっている間に私たちは宮殿内部に侵入することに成功しました。

 魔物の姿は何処にもなく、拍子抜けでしたがエバノ様がそれだけお強いという事なのでしょう。流石ですね。


 宮殿に入ってからはレイ様が道案内をされています。

 ワーカーバットに任せても宜しかったのですが、彼女が手持ち無沙汰だったのでお願いいたしました。

 お陰でワーカーバットは索敵に集中するだけで済むのですからレイ様には感謝しなくてはいけませんね。


 ダンジョンの中心部へと近づくにつれ戦闘が起こるようになりました。

 ブリッツやライトアーマーが急所を一撃で貫き、音もなく倒すので私とリェースは証拠隠滅を行います。

 アクルは今作戦の(かなめ)。MPは温存させています。


 誰にも気付かれることなく地下へと続く階段を見つける事ができました。

 レイ様に話しを聞けば、足首が浸かる高さまで澄んだ水があり、何本かの柱によって支えられている様です。

 ワーカーバットを偵察に出してみますが、直ぐに反応が無くなってしまいました。どうやら強敵がいる様子。

 仕方ありません。死んでしまったワーカーバットを補填し、私が持つ『従者創造』の本来の効果を発揮します。


 エバノ様は私を吸血鬼として創られました。

 本当はマスターであるエバノ様以外の味は味わいたくないのですが、そうも言っていられません。殺した魔物の首筋に歯を食い込ませ、『従者創造』を行使します。

 そうして出来上がったのは赤い瞳の狼やケンタウロス。以前からケンタウロスを新しく創った様ですがそんな事でエバノ様を止められるわけが無いのです。現に私共にすら勝てないのですから。


 狼とケンタウロスが地下へと潜り、その後をブリッツが追います。


 「何をしているのですか」

 「私は主に劣るとは言え、『束縛の魔眼』を持っています。直ぐに終わらせますよ」


 『束縛の魔眼』。エバノ様のお力をお分け頂いたブリッツの技能です。所詮(しょせん)劣化ですが贈り物は羨ましいものです。


 ダンジョン最強が出向いたのですから間も無く戦闘は終わるでしょう。

 ・・・従者から戦闘終了の報告を受けました。

 血で染まった唇をハンカチで拭いながらマインに連絡をいれます。彼女が『戦力指揮統括候位』をしていますので、隊の隊長も彼女なのです。

 マインは地下へ降りるように指示を出しました。


 レイ様の言うように、地下には確かに水が張っており、鮮やかな朱色の柱が立っていました。

 その中で異質なのが巨大な戦斧を振りかぶった牛頭の化け物。エバノ様の記憶ではミノタウロスと言うのだとか。動きが止まっているので滑稽としか言い表せませんが、やる事をやってしまいしょう。


 「・・・『鍵の掛かった玩具箱(アイソレーション)』」


 長い瞑想と陣の構築が終わり、魔法が発動されました。MP切れで倒れた彼女を抱えて、アクルに飛び降りるマナフライを横目にレイ様へと視線を移します。

 レイ様は何かを決意したような表情で力強く呟きました。


 「・・・戻ってきて。私のダンジョン!戻ってきて!」


 ダンジョンが呼吸したかのようにレイ様から突風が発生しました。風自体は直ぐに収まったのですが彼女は焦ったように、こう告げたのです。

 「エバノ様が危ない」、と。


 □


 畔木 鴎side


 「ハァ、ハァ」


 息を整えながら辺りを見回す。

 身体の何処かが融解した魔物や、矢が突き刺さり地面に縫い合わされている魔物。死屍累々と言ったところか。

 そして目の前にはその元凶。レイを襲っていたダンジョンマスターの姿があった。


 「いい加減諦めなさい」


 上から目線で話すのは、月光によって金色に見える黄緑色の髪の持ち主。

 名前はリーグナ。自分の事を『(みどり)の君』と言っている痛い人物で、身長は165cmほど。日本女性にしては高い方だろう。彼女は日本人ではないが。


 「リーグナ・・・思い出しだそ。リストでラウドリーバードを出品してただろ」

 「ご名答。生憎、今は使えないけどね」


 リストは細かくチェック済みだ。名前が分かれば後は早い。

 彼女の守護者でリストにあったのは、ラウドリーバードと蜻蛉切(とんぼぎり)の二つのみ。

 なので、狼は誰かが創ったものを引っ張ってきたのだろう。


 「挑発してきた癖に何も出来ないじゃない。鎧に守られて引きこもってるのは貴方の方ね」


 戦力的には余裕で勝てるが、現状俺は苦戦している様に見せかけている。

 リーグナが勝手に魔物を創造してくれるので、MP回収が捗っているのだ。


 そろそろ終わらせようかと考えていると彼女が突然焦り出した。

 レイ達が上手くやったのだろう。逃げられる前に『束縛の魔眼』を発動させて彼女の時間を奪う。


 さぁ、物言わぬ人形が出来上がったぞ。アブラムは男だから放置しているがリーグナは女性だ。

 戦場での俺の前に出てきた事を後悔してもらおう。今から帰りが楽しみだ。

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