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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
三章 共同戦線
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一緒に行こう

 レイの対処が分からないので神を心の中で呼び続けたが神からの慈悲は無く何も起こらなかった。

 仕方ないので寄り添って居てやるぐらいしか出来ない。あー、沈黙が嫌だ。


 □


 神が2118人、神が2119人、神が2120人・・・。


 こてんっ――


 「ん?」


 無心になって神を数えていると肩に重さが掛かった。

 目線だけで確認するとレイが肩に頭を乗せて寝ていた。泣き疲れたのだろう。

 さて、どうしたものか。現状は変わってないぞ。そんな時、ディアが声を掛けてきた。


 (御主人チャンスですよ!ヤっちゃってください!)

 (いや、何を)

 (何って、ナニですよ!男女二人が一緒の部屋に居れば決まってるじゃないですか!)


 身近にバカが居た。

 ゴーレム達をチラリと確認してみれば口元に手を当てて俺とレイを見た後、そそくさと部屋から出ていこうとしているではないか。


 「おい!待て待て待て待て!」


 小声で叫ぶという、奇妙な芸をするがゴーレム達は止まらない。


 「ええー、お前ら止める立場だろー。助けてくれよ」


 叫び虚しく俺達二人が取り残された。


 (おっ!あのゴーレム達、空気読めるじゃないですか!仲良く出来そうです)


 電撃を浴びてから俺と離れているディアを掴み、扉へと投げ捨てる。『人宮一体』で扉を開けてディアが通り抜ければ扉を閉める。


 (アイリード、お前なら分かってくれるはずだ・・・)

 (父よ、据え膳食わぬは男の恥と言i・・・)


 ガチャ・・・ヒュン・・・バタッ!


 全く、どいつもこいつも使えない。

 神から頼まれたと言うのにそう簡単に手が出せるわけないだろうが。

 こういうのはもう少し仲良くなってからだな・・・(違う)。


 座ってるだけだといい加減、俺も眠くなってくるんだが・・・。

 役得としてもう少しこのままでいるとしよう。

 そうだな・・・MPは有り余ってるし新しい守護者の設計でもしようか。


 戦闘詳報を確認するのもいいかもしれない。

 俺としては魔法が使える守護者だろうか。弓は魔法があれば活躍の場は無いと思う。森等ではまた違ってくるのだろうが。

 槍は持たせて技能取得を目指して貰うのもいいだろう。


 DMOを脱退したし、鉱物や(かいこ)の養殖にも手を出すか。

 鉱物はフランメの様に『脱皮』を使いたいが時間が掛かるのがなぁ。

 蚕は戦力の面で考えれば大きめの蜘蛛の方がありがたいんだが技能でどうにかなるか?そう言えば最初に作った毒子蜘蛛はどうなったんだろうか。まぁいい。ギフトに潰さしておこう。


 『四階層』のサトウキビで砂糖と紙も作れたらいいな。砂糖は遠心分離機だっけか?潰してた様な気もするが。紙は技能で言えば『製紙術』だな。技能欄でも確認した。


 (マスター、毒子蜘蛛の反応がありません。ご確認を)

 (なに?分かった)


 ギフトから念話が入った。

 確かに『人宮一体』を発動しても生体反応が無い。死んだのか?いや、アイツが直接戦闘に関わる機会なんて無かったはずだ。

 ・・・・・・まさか!


 (全員召集だ!『四階層』、桜の樹の前へ急げ!!ヴェーデと騎士達の護衛を強化しろ!)


 思い過ごしであってくれ!そう強く願いながらレイを抱き抱え、起きてしまうのも(いと)わずに走り出した。


 通路を走っていると麒麟(きりん)が俺を迎えにやって来た。彼?彼女?にレイを任せ、俺はヴェーデの元へと向かった。彼女の近くから『人宮一体』使用時のダンジョン特有の怒りを感じ取ったのだ。

 騎士達はクレイドルが居るので多少酔っていても対処出来るはずだ。


 「ヴェーデ!無事か!?」

 「マスター、下がってください」


 遅かったようだ。

 壁際にはヴェーデを庇うようにギフトが短剣を構えており、その正面には何時ぞやの彼が居た。


 「ご無沙汰しております。畔木様」

 「アブラムシ!」

 「アブラムです。よくこの状況でそんな事が言えますね」


 その正体はダンジョン内で初めて会った人物、アブラムだ。

 お前には煮え湯を散々飲まされた。

 最初にリストから守護者を作らせたのは監視する為だったのだろう。DMOから脱退した後、毒子蜘蛛の反応が消えたのはコレが原因か。


 「蜘蛛の反応が消えたかと思えばDMOから脱退されたので何事かと報告を受けてみれば、レイ・ルーラーを助け出してしまい、挙句にはDMO所属のダンジョンマスターの戦力を大幅に減らすとは思いませんでしたよ」

 「フッ、そのダンジョンマスターに『雑魚乙www』とでも伝えておくんだな」


 蜘蛛の反応が消えた?消える前に誰かが潰したのか?

 となると潰したのは神か?


 「私もタダでは帰れませんのでね。少しくらいは手柄を立てなければ」

 「いや、それは無理じゃないかな?」


 のんびり話してるから『束縛の魔眼』を発動させる。

 鎖はアブラムの時間を拘束する。折角だし鑑定もしておくか。


名前 : アブラム・ズロー

種族 : 大天使

HP130

MP135


・証

堕天使


・技能

剣術[熟練度8.78]

幻術[熟練度8.77]

土魔法[熟練度8.93]

転移魔法[熟練度9.04]

看破

誘導


 堕天使、ねぇ。

 DMOは神の敵対勢力だと分かっただけでもよしとするか。


 「ギフト、ヴェーデを連れて『四階層』へ行け」

 「分かりました。ですが、アイリードかディアのどちらかはお傍に置いておいて下さい」

 「そうしよう」


 忘れていたが丸腰だった。少し思慮が浅かったか。


 (アクル、来てくれ)


 アブラムが転移魔法で来たのならば、二度と来れないように対処しておく必要がある。ソレが出来そうなのは今の所アクルだけだ。

 アブラムの処遇の問題もある。見せしめとして遊んでから返すのか、殺して返すのか。アクルはそこそこ性格が破綻してるし、一緒に考えたい。神に聞くのが一番だが姿を現さないのでどうしようもない。


 「カモメー、来たよ〜」

 「早速で悪いが、対転移魔法の結界を張ってもらいたい」

 「外部からの魔法遮断でいい?」

 「それで構わない」

 「うーん。・・・ちょっと場所が悪いかも」


 ということで『謁見の間』にやって来た。

 場所は問題無い様でアクルは静かに瞑想しだすとブツブツと呟き始めた。

 彼女の足元からは正方形や長方形が大きさを変えながら踊り回り、床に嵌ったかの様にピタリと動きを止めた。


「・・・『鍵の掛かった玩具箱(アイソレーション)』」


 正方形や長方形が淡いオレンジ色に輝き、ドーム状の何かが広がった。


 「・・・コレで大丈夫かなー?」

 「そうか、ご苦労だった」

 「ちょっと、眠るね」

 「あぁ、おやすみ」

 「おやすみなさい・・・パパ」


 アクルはツンデレだったのか?いつもは『カモメ』と呼び捨てなのだが。一瞬、 キュン としてしまったのはアクルには内緒だ。父性本能がビンビンしてる。


 「・・・首尾はどうかしら」

 「見ての通りです」


 この神も唐突だな。

 アクルを抱っこし、神へと向き直る。このタイミングで現れたということは俺のダンジョンに何らかの力を行使していて来れなかったという事だろうか。


 「概ねその通りよ。他のダンジョンマスターからの介入を抑えてたの」

 「そうでしたか。ありがとうございます」


 アクルを抱え直し、続ける。


 「アブラムはどうしましょうか。堕天してるようですが大天使ですし」

 「・・・貴方の好きにすればいいわ」

 「分かりました。あと、レイですがどうされるお積りで?彼女のダンジョンは死にましたが」

 「彼女のダンジョンを貴方の階層に加えるのならば奪還する必要があるわ。・・・彼女は貴方にあげるわ」


 奪還戦。いい響きだ。

 MP消費無しに階層が増えるのは素直に嬉しい。彼女を籠絡出来れば実質的な支配も可能だ。

 もちろんレイ話して決めるが、俺は主天使。『統治』と『支配』が権能だ。やってみせるさ。


 神が居なくなってからレイと向き合って話す場を設けた。

 会談の場所は俺の自室だ。ギフトという例外が居るが基本的に誰も入ってこれない。

 彼女がどう思っているかで俺達の動きが変わる。話しを聞ける時に聞いておくべきだろう。


 「落ち着いたか?」

 「・・・はい」


 意気消沈しているが話すのは可能か。


 「俺の名はエバノ。このダンジョンのマスターをしている。ダンジョンの事はどこまで知っるんだ?」

 「えっと、DMO?の人から説明は受けていますがそれ以外は何も・・・」

 「そうか、あの組織は胡散臭いが、説明自体はちゃんとするから俺からは何も言うことは無い。で、今後どうするつもりだ?」

 「・・・」


 黙りこんでしまった。

 選択肢を与えてみようか。


 「取り敢えずは一つづつ解決していくんだ。いいか?

 一つ目。これは決定事項だが、しばらくの間俺と一緒に過ごしてもらう。

 二つ目。お前のダンジョンを取り戻しに行くか、行かないか。これはレイが決めろ。俺はどうでもいい。

 三つ目、四つ目とあるが今は言わない。それで、ダンジョンを取り戻しに行くか、行かないか」

 「・・・は、・・・・・・い」


 なに?ハッキリ言えよ。

 もう少しなんだ、頑張って声を絞り出せ。


 「聞こえないぞ?」

 「私は!負けたままでは終われない!!終わらないッ!」

 「・・・よく言えたな」


 彼女はゆっくりと、しかし確実に一歩を踏み出した。

 決意に溢れた涙目を見据え、俺、畔木くろき かもめとレイ・ルーラーは手を組んだ。

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