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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
三章 共同戦線
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雷の支配者

 ゲートを潜ると草原に出た。

 ハヤブサ50羽が先行し、戦闘状況を教えてくれる。


 既に戦闘は始まっており、かなり押し込まれている様子。

 ダンジョンマスターは草原に建っている平べったい宮殿の様な建物に籠城しているが、それもいつまでもつか。


 麒麟(きりん)を駆け、戦場へ急ぐ。

 建物が見えてきたところでハヤブサでは無い、別の鳥が視界に入った。


 ピョロロローーーーー!


 その鳥が甲高く鳴くと周囲から魔物が集まってきた。

 恐らくは索敵に特化させた魔物。確か俺が最初に守護者を創る際に似たような鳥がいた気がするな。ソイツか?鑑定が効けばいいのだが、自身のダンジョンではないので技能が発動しない。


 先陣切って俺達を狙うのは、でかいトンボだ。

 続いてやってくるのは狼の群れ。


 (全員に通達。俺の後を付いてこい。攻撃は控えろよ)


 指示を出し、俺を先頭に一列になる。

 MPの為に狩っておきたいが、構ってる時間が無いんでな。


 瞳に熱が篭るような感覚と共に、白い鎖が魔物の群れを絡めとる。『束縛の魔眼』を使ったのだ。

 幾らか(のが)してしまったが、麒麟(きりん)から電が迸り、激しい破裂音を乗せて逃した魔物を処理していく。


 ハヤブサ達も敵の鳥との戦闘が始まった。

 魔法部隊と連携し合い、地上近くに釣って来ては空へと帰って行く。逃げていれば処理してくれるし、ハヤブサ自身も魔法が使える。捕まるはずが無い。


 何度か狼とトンボの群れが襲い掛かって来たが、俺の目の前では障害にすらならない。

 アッサリと宮殿前に到着した俺達は、ダンジョンマスターのであろう守護者と争っていた魔物を倒し、話し合いが可能であるか尋ねた。


 「救援に来た!ダンジョンマスターは居るか!返答がなければ無理矢理連れて帰る!!」


 守護者——細身のゴーレム――は俺の言を聞くと前線に向かった。

 ・・・反応が分からない。なんだそれは!

 前線を上げれば付近の安全は確保出来るが了承してくれたのか?


 「ハヤブサを向かわせる!少しの間戦線を維持するぞ!!」


 MPの為だと思い込んで怒りを抑える。ゴーレムに話せというのも酷な話しではあるが、ジェスチャーなり(なん)なりしてほしい。


 俺の周りにクローフィ、リェース、アクルが陣取り、その周囲を更にシールドアーマーが囲む。マインはライトアーマや騎士と共に的を絞らせないように草原を駆け巡り敵の撹乱を行っている。


 「『火炎旋風(フレイム・サイクロン)』」

 「『竜巻(トルネード)』、『火炎竜巻(フレイム・トルネード)』」

 「『金属片(ピース・オブ・メタル)』」


 俺、クローフィ、リェース。三人の魔法がほぼ同時に発動した。


 金属片を撒き散らしながら炎の渦が発生し、敵を薙ぎ払う。

 馬には『風魔法』を付けてあるので上手く身を守ってくれるだろう。


 ハヤブサが肩に止まった。

 話しが不可能でも念話である程度の意思疎通は可能だ。どうやら対象がやって来たらしい。


 ゴーレムを数体引き連れやって来たのは紅い漢服を着た女性だった。薔薇色の髪を結っており如何にも皇族と言った雰囲気。

 女性は息を切らしており、肩で息をしているのでその面影も僅かしか残ってはいない。


 「・・・ハァ、ハァ、何方(どなた)か存じませんが感謝します」

 「そんなのは後だ。名前はレイ・ルーラーだな?」

 「はい、ですがなぜ名前を、キャ・・・」


 確認が取れたので麒麟(きりん)の元へ引き寄せ、俺の前に座らせる。左側に両足があるので落ちないか心配だが捕まっていれば問題ないだろう。

 ゴーレム達が襲いかかってくるが、何もしないと分かると大人しくなった。


 「俺のダンジョンへと向かう。しっかり捕まってろよ・・・撤退するぞ!!」


 アーマー系が乗っている馬にゴーレムを乗せ、来た道を駆ける。

 逃がすまいと魔物が追いかけて来るが少し遅かったな。


 「『大収穫(エクスプレイテーション)』」


 アクルの『方陣魔法』が発動し、大規模な地面の陥没が起こる。

 魔物は穴に落ちていき、一瞬にして姿を消した。


 レイが必死に服を掴んでくるが、シワになるのでやめてほしい。


 帰りは『束縛の魔眼』で固まったままの魔物を背後から攻撃していき、無事にゲートへと到着した。


 □


 ゲートを抜けると麒麟(きりん)から飛び降り、勢いそのまま『人宮一体』を発動させてゲートの隣へ出る。レイが何事か叫んでいたが麒麟(きりん)に任せておけば大丈夫だろう。

 騎士達がゲートから出てくると同時に魔法が打てるように準備してあったのだが、追手が来ることなくゲートは閉じられた。

 捻れた空間が勢いよく戻り、思わずコンニャクの様だと思ったのは仕方ないと思うんだ。


 「(みな)、ご苦労だった!祝勝会でもしようじゃないか!!」


 オオォォォーーーーー!


 ゲートから守護者達へと向き直り、声を上げると威勢のいい返事が返ってきた。

 神が居ないが、また会う機会がやってくるだろう。


 マーゲンはキョロキョロと周囲を見渡すと青い顔をしてエレベーターへと走っていった。

 レイも訳が分からないようだったが、近付いてきた麒麟(きりん)から下ろしてあげると緊張の糸が切れたのか気絶してしまった。コレは仕方ないな。客間にでも寝かせておこう。


 守護者達へ『四階層』へと向かうように告げ、俺はレイのゴーレムを引き連れて客間へと向かう。

 背負うのもなんなのでお姫様抱っこである。ギフトとヴェーデからの視線が痛いが、これくらい許せ。ギフトはいいとしてヴェーデ、お前は止めてくれ。背筋が ゾクッ とする。


 客間へと到着し、気になったことを考える。

 漢服らしき物を着たレイ・ルーラー。

 漢服なのに名前が漢字じゃないのは違和感しかないのだが。


名前 : レイ・ルーラー

種族 : ヒト

HP75

MP125


・証

ダンジョンマスター


・技能

異世界言語[熟練度10.00]☆

支配域鑑定[熟練度0.01]

支配域創造[熟練度0.00]

守護者創造[熟練度0.11]

雷魔法[熟練度10.00]☆

雷魔法抵抗[熟練度7.72]

MP消費半減


 雷魔法がカンストって・・・どうなってるんだ。

 ゴーレム達の造形も のっぺらぼう で簡単な物だし、時間が無かったのだろう。硬さしか取り柄がないと言っても過言ではない。


 厨房へと行き、タオルと水桶を貰う。

 汗を拭こうかと思ったのだが犯罪臭がしてしょうがない。俺がやっているのをゴーレムに見せてやり方を伝え、俺も『四階層』の祝勝会へと参加した。


 簡単なものは出来ているようだが、誰も手をつけようとはしていない。

 ヴェーデからの耳打ちで分かったのだが、一番偉い人物を放ったらかしにして食べる訳にはいかないとのこと。

 俺待ちというわけだ。


 「・・・今日はよくやってくれた!バルバ殿らも突然の戦に付き合って頂き感謝する!!料理が出来るまで少しかかる様なので、先に酒を用意させてもらう」


 技能により酒を創り出し、それをギフトが各々に注いで行く。


 「酒は行き渡ったか?・・・では、我がダンジョンとノーマリー王国の更なる繁栄を願って、乾杯!!」

 「「「乾杯!!」」」


 桜の樹の元で、グッ・・・

 勢い良く酒を煽り、空いた皿にお代わりを注ぐ。

 騎士達は飲んだことの無い酒に驚きと興奮を隠しきれないようだ。クレイドルの土産は酒でいいか。

 酒だけでも会話は弾み、料理が出来上がることには、だいぶ出来上がっていた。


 唐揚げを摘みつつ、レイにも幾つか残しておいて置こうかと考える。

 俺が唐揚げを創るより、俺が創った鶏肉でマーゲンが唐揚げを創る方が美味しいからな。

 何も食べていないのであればスープの方が良いのか?

 結局は騎士達に平らげられてしまい残すにも残せなかった。


 昼間から酔った騎士達は出発を明日の朝に変更し客間で休んでいる。

 戦場に参加していないメンバーがダンジョンの警護に回り、俺はレイが寝ている客間へと戻った。

 ゴーレムは俺が来たのが分かったのか、(ぬる)くなった桶を持ち上げ、ウロチョロしだした。言いたいことは分かったので桶を受け取り、厨房へと水を汲みに向かった。

なかなか人間らしい一面もあるじゃないか。手抜きで創ったとか思ってて悪かったな。


 新しく水を汲み変え、再び客間へとやって来た。今回は氷も入れてやったぞ。これでしばらくは持つだろう。

 それにしても漢服って暑そうだな。

 取り敢えずは髪を解いておくか。


 「・・・?」

 「・・・、・・・!」


 話せばいいのだが、なぜか楽しくなってきてパントマイムでゴーレムと意思疎通を図る。

 俺が彼女の背を起こし、ゴーレムを呼び寄せる。そのままの姿勢で持っておくように伝え、丁寧に髪を解いていく。

 ・・・難しいな。どうなってんだ、これ。


 なんとか解き終わり、寝かせようと頭を降ろしていたのだが、間の悪いことに彼女が起きてしまった。

 寝惚けているのか、虚ろな目でコチラを見つめるレイ。二人の間に沈黙が訪れる。


 「・・・おはよう?」

 「?・・・キャー!」


 バリ!バリバリバリッ!!


 何事も無かったかのように挨拶したのだが、叫ばれた挙句に魔法まで放たれてしまった。

 詠唱が無かったので無意識で使ったのだろう。

 瞬時にディアが俺の全身を覆い電撃を防いだが、完璧にとはいかなかったようだ。俺の左手も少し痺れてしまっている。


 (シビレビレ・・・ご、御主人・・・ガクッ)


 ディアは自分で ガクッ とか言ってるので取り敢えずは無事だな。


 「大丈夫か?」

 (もちろんです!)

 「お前じゃない。・・・レイに聞いてるんだ」

 (え〜〜)

 「え?わ、私ですか?」


 レイは急に話しを振られてアタフタしていたが、落ち着いて話し出した。


 「コホンッ・・・取り乱してしまい申し訳ありませんでした」

 「いや、構わない。ディアも無事な様だしな」

 「そうでしたか。それでココはどこなのでしょうか」

 「俺のダンジョンだ。覚えてるか?強引に連れてきたのだが」


 彼女は少し考える素振りをした後、思い出した様で ハッ と表情を曇らせた。


 「私のダンジョンはどうなってしまったのでしょうか」

 「悪いが俺の関知する所ではないな。恐らくは占領されたか機能が停止しているかのどちらかだろう」

 「そんな・・・」


 項垂れてしまい、それ以降何も喋らなくなってしまった。

 神よ、早く来てくれ。俺じゃ限界だ。

 おーい、おーい。

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