DMO脱退・・・?
本日は三話同時投稿となっております。。
この話は三話目です。
模擬戦も三戦目。
ブレネン対ライトアーマーはブレネンが辛勝し、ルモール対マインはマインの勝利に終わった。
バルバ対ブリッツは苛烈を極めていた。
バルバが切り掛るがブリッツは下からすくい上げるように刀を振り上げ軌道を逸らし鎧の継ぎ目を狙う。
ブリッツを蹴り飛ばす事で距離をとり、仕切り直しにする。
「そこまでにしておこう」
俺の一言で両者ともに肩の力が抜けた様だ。
バルバは一礼、ブリッツは刀を鞘にしまい残心している。
「素晴らしい戦いだった」
今回の戦闘で大まかな戦闘力は把握出来た。
成長途中とは言え個々の能力が低いな。一番数の多いライトアーマーが成長しないというのが難点だな。
休憩を挟みつつも戦闘は続き、勝率は五分五分と言ったところ。
夕食を取り、俺は日の暮れた『四階層』へと向かった。
騎士達は身体を休めているので自由行動しても問題ない。
「『生命の樹』」
技能を発動、俺の背中から枝が生えてくる。
最近は少し成長している様で重くなった気がする。
MPを流してやると、 パキパキパキ と小気味よい音が聞こえてくる。その内、樹の重さで潰れてしまうのでは無いだろうか。その時はアイリードに不要な枝を切ってもらうか。
「私が切ってあげましょうか?」
「ぜひお願いしたいですね」
まったく・・・この神は背後からしか登場しないのだろうか。
声の元へと振り返ると絶世の美女が居た。顔だけがそうさせるのでは無く、雰囲気が自分に『敵対してはいけない』、そう囁き掛けているようだ。
「そうね、・・・貴方は初めて見るのかしら?」
「ぁ、・・・ッ!」
その姿に惚けていると手に痛みが走った。
視線を向けるとアイリードが軽く刺さっていた。
(お気を確かに)
(あぁ、すまない)
傷口をディアが覆い、血の流出を抑える。
正気に戻った俺は再び神の姿を視界に収める。今度は彼女だけを見るのではなく、視野を広げ全体を眺めるように心掛ける。
「・・・賢い判断ね。今日は伝えたい事があったの」
「伝えたい事、ですか?もしかして権天使の件ですか」
心当たりと言えば、今日ダンジョンに来ていた権天使の彼の事だろうか。
見慣れない技能もあった。確か『神懸かり』だったか。
「初めてのお仕事よ」
彼女の口から出たのは俺の想像とは違っていた。
いつか来ると思っていたが、遂に来た。
「ダンジョンから出ると機能が停止してしまうのですが」
「その点は大丈夫。・・・それで、他のダンジョンマスターを救出を頼みたいの」
そのダンジョンマスターはDMOの加入を断ったそうだ。おかげで現状に至るわけだ。
俺も一歩間違えれば同じ末路を辿ったかもしれないのだ、是非とも救いたい。
「彼女の名前はレイ・ルーラー。ダンジョンは見晴らしのイイ草原型が一階層だけね」
「分かりました。早速準備します」
踵を返し、その場を立ち去ろうとすると「ちょっと、待って」と、声が掛かった。
俺が振り返ると神の顔が近くにあり、その距離がゼロになった。
「んっ・・・っ」
「フフッ・・・」
柔らかくて、暖かくて、何かが流れ込んでくるような。
「・・・それじゃあね。明日の朝、また来るわ」
心ココにあらず、といった俺を残して神は消え去った。
アイリードとディアとが呼ぶ声で次第に意識を戻した俺はゆっくりと準備を始めた。
・自身で創造
・ジャンル選択[陸]
・造形『麒麟』
・細部設定 技能『風魔法』『雷魔法』『身体能力強化』『人馬一体』
消費MP585
・創造しますか?
«はい» «いいえ»
・名称『麒麟』
狼から得たMPの確認を忘れていたが、現在のMPは 2719 だ。
麒麟は俺専用で、ほかの守護者には馬に乗ってもらおうと思っている。見栄を張るのが目的だが、俺を守るのにも一役買ってもらう。
MP2719(-585)→2134
麒麟の高さは5m程で、一本角が生えた龍に似た頭部に馬の脚。鹿の胴に牛の尾。
体表には光を反射する黄色がかった透明な鱗がビッシリと並んでいる。
『〇〇一体』系の技能を発見したので追加しておいた。
麒麟は俺に頬ずりすると静かに座り込んだ。
・自身で創造
・ジャンル選択[陸]
・造形『馬』
・細部設定 『風魔法』『身体能力強化』『人馬一体』
消費MP113
・創造しますか?
«はい» «いいえ»
・名称『馬』
MP2134(-1695)→439
馬は取り敢えず15体創造する。
マイン、クローフィ、リェース、アクルの4人に、ライトアーマーを8体、シールドアーマー3体。この15人に乗ってもらおうかと思っている。
魔法職が中心なのは殆どの守護者達が槍が扱えない為である。シールドアーマーは盾役が主なので前に出すわけも無い。
ブリッツはダンジョンに残しておかなければ突然の襲撃に対応出来なくなる。
ライトアーマーをもう少し連れて行くかとも思ったがMPが足りない。鞍や馬装具も購入しなければならないのだ。
出動メンバーには乗馬の訓練をしてもらう。もちろん俺もだ。『人馬一体』があるので直ぐに慣れるだろう。
麒麟が馬なのかと聞かれると答えに困ってしまうが。
□
「バルバ殿、少しいいだろうか」
「何かありましたか?殺気だっているようですが」
既に夜も深い。
鎧の手入れをしていたバルバを捕まえ、急用ができたことを伝える。
彼らも明日にはダンジョンを出る予定だったらしく準備を進めている様だ。
「私達は明朝には出なければならない。すまないがブリッツに見送りを頼んである。今日はご苦労だった」
「・・・少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか」
なんだ。彼はクレイドルの部屋へ向かった。
『映像情報』で確認してみるか。
『クレイドル様、お話しがあります』
『どうした』
『エバノ様に急用が出来たようです。その用事を聞いてはいませんが様子を見るに戦かと思います』
『それで?』
『私も参加させて頂きたい』
何を言ってるんだコイツは。
戦場に自ら行く奴なんて初めて見たぞ。
『一人でやるのか?それとも隊長であると自覚してのことか?』
『隊長としてです。微力ではありますが参戦出来ればと思っています。国としても恩は少しでも売っておきたいはず』
『前にも言ったが隊長はお前だ。行きたいならそう言えばいい。突飛な命令ばかりでは駄目だがな』
『詳しく聞きに行くぞ』
音声が聞こえなくなったので話し合いは終わった様だ。
少しするとクレイドルを連れたバルバがやって来た。
「話しは終わったのか?」
「ええ。どうやら戦闘準備を進めていらっしゃるご様子。そこで我々も戦に連れて行って欲しいのです」
「・・・そうだな、構わんだろう。では詳しく説明するぞ」
ダンジョンの救援に行くことを告げ、準備は殆ど終わっていることを教える。
魔法部隊が主力である事を伝えたが、バルバの意思は固いようで、変わらずに付いてくると言っていた。
「明日の明朝に出発だ」
「かしこまりました」
思わぬ戦力が手に入ったが、襲われているダンジョンマスターを攫ってくれば任務は完了だ。速攻ですましたいので、意思疎通が簡単な守護者達だけの方が簡単だがクレイドルが付いてくるのならばお安い御用だ。
俺はもう少し乗馬の訓練をしよう。
最悪、寝なくても構わない。
・・・ギフトに怒られたので寝る。おやすみなさい。
あ、DMOは脱退しておこう。なんかアッサリと抜けちゃったな。
□
午前4時。地下『一階層』。準備は整った。
俺の麒麟を筆頭に守護者達の馬が並ぶ。
騎士達は後ろに控えているが指揮は悪くない。ルモールとブレネンが文句を言っていた筈だが上手く纏めたのだろう。
スキアーに言われ、ハヤブサ達も連れて行くことになった。彼らには索敵を任せたい。
神がくれば何時でも発てる。
・・・後ろが騒がしくなったな。
集中して閉じていた瞳を開け、背後を確認すると神が居た。
「準備は完了しています」
「流石ね。・・・それじゃあ繋げるわよ」
彼女の声とともに空間が捻れるように曲がった。
空間を繋げたのか?何にせよこれで行ける様だ。
「武運を祈ってるわ」
「行くぞーーッ!!」
神が繋げた空間へ迷いなく突き進む。
今回は速攻が肝だ。可能な限り討伐したいが目標の安否を第一に考える。