騎士との接触
本日は三話同時投稿となっております。
この話は二話目です。
ギフトが使者達を連れて来るのを『映像情報』で確認した。スキアーも気配を隠して背後から付いているのでもしもの時は対処可能だろう。
それにしてもあのキョロキョロしている人物は何者だろうか。
残りの三人は服装や武装から騎士だと分かるのだが、武器すら持っていないし身軽に見える。
名前 : フェーデ・クレデンテ
種族 : 権天使
HP150
MP200
・技能
光魔法[熟練度7.89]
神懸かり
看破
MP増加
・種族 : 権天使
神界における第7位の地位にある天使。
地上の国々や都市の守護を使命とする。
おいおい。権天使って。
教会関係者か・・・。正面からぶつかればギリギリ勝てるだろうか。
いや、教会関係者ならば仲良くした方がいいだろう。
技能欄にある『神懸かり』が怪しすぎて迂闊な手に出る事も出来ない。
仕方ない、迎えに行くとしよう。
□
「ようこそ。私のダンジョンへ」
『人宮一体』を使い、騎士達の眼前に登場する。ギフトは俺の姿を確認すると俺の背後へと控えた。
騎士達は驚いた表情を浮かべたが、フェーデとか言う人物は笑みから表情が変わらない。
「初めまして、ダンジョンマスター様。教会より参りましたフェーデ・クレデンテと申します」
「丁寧にどうも、フェーデ殿。私はエバノと名乗らせて貰っている。第四位だ」
「その様子ではエバノ様にも私と似たような技能があるようですね。ご存知かも知れませんが七番目です」
似たような技能とは『支配域鑑定』の事だろう。
彼にも『看破』があるはずだが主天使とは分からなかったのか?階級が違うと弾かれるのか?
「申し訳ありませんが、エバノ様の権能を見せて頂いてよろしいでしょうか?技能が通らないもので」
疑っているようだが、言葉だけだとなんとでも言えるから仕方ない事だろう。
「もちろん構わない。知ってると思うが『統治』と『支配』が主な権能だ。少し動けなくなるが許してくれよ」
「承知しておりますとも」
俺も少し『束縛の魔眼』を試してみたかったので丁度いいかもしれない。
騎士達が手持ちぶたさでいるのは申し訳ない。ギフトに対応させよう。
さて、『束縛の魔眼』の使い方が分からないのだがどうしたものか。睨めば良いのか?
熱が篭るような感覚と共にフェーデの身体に勢い良く白い鎖が巻き付いた。
騎士達に驚いた様子は無いので俺にしか見えていないのだろう。
フェーデは身動きどころか瞬きすらしないので流石に不味いかと思い使用を停止した。
解除しようと念じるだけで鎖は崩れ落ちた。
「・・・何が起こったのでしょうか」
この様子だと何が起こったのか分かってないようだ。
俺が思うにダンジョンの機能が停止した時のようなもので、対象の時間を束縛しているのでは無いだろうか。
「憶測だが対象の時間を束縛しているのではないか?」
「そうでしたか。では分からないのも納得ですね。何かされたのは分かったのですが、違和感しか感じなかったので」
「『看破』は使ったのか?見なければ分からないだろう」
「いえ、もう大丈夫です。クレイドル殿!私はグラキエス教国へと戻ります。後のことは任せましたよ」
「フェーデ殿何を仰るか!?目的は、」
「これ以上信頼出来る場所はそうそう無いでしょう。私の目的は達成しましたのでお暇させて頂きます」
フェーデはそう言うとクレイドルとか言う騎士の静止も聞かずに走り去って行った。
グラキエス教国と言ったか、神と関連性がありそうだが、ダンジョンから出て行けないので確認が取れないな。
「・・・えー、挨拶が遅れてしまいましたが、私はバルバ・パードレと申します。ノーマリー王国からエバノ様に現時点での物資の報告に参りました」
バルバ・パードレと名乗った男はあごひげが生えた気難しそうな男性だ。
物資の報告と言っていたが、ダンジョンの視察も兼ねていると思われる。
「私の隣にいるがルモール・アッソ。コチラがクレイドル・アンシアーノ殿で、彼の従者をしておりますブレネン・ベールカです」
「遠い所からよく来たな歓迎しよう」
ルモール・アッソは茶髪の男性で、何処か飄々(ひょうひょう)としているような印象を受ける。
クレイドル・アンシアーノはこの中では最年長であり、技能の熟練度も一番高い。金髪に白髪が混ざっているが、肉体的な衰えを感じさせない。
ブレネン・ベールカは赤茶色の髪をした青年だ。従者と言っていたので正式な騎士ではなく、騎士見習いなのだろう。
彼らに外に止めている馬を連れくるように伝えると、初めは謙遜していたが魔物がよく出ることを伝えると渋々連れてきた。
魔物討伐を行ったのであれば近隣に魔物が居るのは分かると思うのだが、それに気付いた様子は無かった。
「では、下に降りるとしよう」
「かしこまりました」
「馬は抑えておけよ、暴れるだろうからな」
エレベーターに乗った事のある馬など居ないだろう。
騎士達は地下に降りる間、馬を大人しくさせていたがやはりクレイドルが一番上手かった。その手腕を見る限り唯の騎士ではないと思うのだが鑑定では分からない。ブリッツと剣を交わせてみようか。恐らくブリッツは負けるだろうがな。
『一階層』に降りると騎士達は感嘆の声を漏らした。
「湖が・・・」
「城が沈んでいますよ!」
もう少し静かに出来ないものかと思いながら再びエレベーターに乗る。
今度は馬達も慣れたように大人しくしていた。
「ココは水中にあった城の内部でしょうか」
「いや、城の更に下だ」
バルバが聞いてきたので答えておく。
そんなやり取りを続け、客間に到着した。
全面石造りでは味気ないかと思ったので、黒曜石と大理石のタイルを交互に敷き詰めている。勿論ベットも完備だ。
馬はどうすれば良いのかと聞かれたので荷物を置いて『四階層』へと降りる。
『四階層』には太陽があるので驚くだろうと思っていたが、思惑通りになった。ダンジョンマスターとして少し鼻が高い。
リェースに馬の世話を任せて『三階層』へと戻った。
「昼食はとったのか?よければ振る舞うが」
「お願い致します。我々も幾らか食材を持参して参りました。宜しければお納めください」
「そうか、それは助かる」
食材を持参すると言うことはしばらく滞在するのだろうか。
食材を持ってきてくれているのでいる分には別に構わない。秘密なども特に無いしな。
昼食を取りながら話しをしようと思ったのだが騎士達の食器を持つ手が止まらない。
原因はマーゲンの料理だ。だが、マーゲンが悪いわけではないので何とも言えない。
『料理[熟練度10.00]☆』のマーゲンが昨日の夜から仕込みをした料理が不味いわけが無いのだ。
結局話しあいは昼食を取り終えてからとなった。
「エバノ様が頼まれていた物資ですが、六割は既に集まっております。エバノ様方の準備は整っていらっしゃいますか」
「こちらは鏡を要求されたわけだが、数は750ぐらいだな。しばらくしたら特殊な金属が採れるから幾つか残しておこうか?」
フランメが脱皮すれば日緋色金が手に入る。
俺の方でも加工するが、鏡だけで足りないならばくれてやっても構わない。
「どのような金属かお聞きしても?」
「そうだな、その金属で作られた茶釜は数枚の木の葉で水が沸騰すると聞くな。私の国では主に神器の材料として用いられていた筈だ」
「そのお話しが真であれば是非とも頂きたいです」
日緋色金なんて言う金属は伝説上のお話しであり、性質があってるかは分からないので予防線を張っておく。
「騎士との模擬戦の件はどうなっているのだ?」
「週に一度、四名ほどで考えております。詳しい日程については初めての取引の際に聞いて頂ければ」
「分かった。私は王国騎士の強さについて知らないのだが、お試しとしてどなたかお相手願えるかな?」
「そうですね・・・」
バルバはクレイドルへと視線を向け、彼が頷くのを見ると返答をかえした。
「私どもは構いませんよ」
「では、腹ごなしに一戦と行こうか」
『二階層』の大広間にブリッツにチルアーマー、マインとライトアーマーに集まるように伝える。
騎士達の『剣術』の熟練度は、クレイドルが 8 、バルバが 6 、ルモールが 3 、ブレネンが 2 だ。
バルバ相手ならばブリッツも練習になるだろう。集団戦というのも面白いかもしれない。
守護者達が到着し、誰と誰が戦うのかを決める。
ルモールにはマイン。ブレネンにはアーマー系の何奴かと戦ってもらう。
バルバとブリッツが同程度なので二人で戦うとして、問題はクレイドルである。現在の守護者達では誰も相手にならないのだ。
ブリッツが『束縛の魔眼』を使えば勝てるだろうが秘密兵器なので使わせたくない。
「私は見学でも致しておりましょう。すいませんが、老体には厳しくて」
「ご無理をなされないように」
彼には気を利かせてもらった様だ。
後で彼用に何か見繕っておこう。