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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
三章 共同戦線
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ノーマリー王国『騎士団』

本日は私の誕生日につき三話同時投稿です。

一話目をどうぞ。

 次の日の朝。起きると妙に体温が高かった。

 周囲を見渡しても変化は無い。

 俺の部屋に入るには隠し扉を見つけなければいけないので、入れるとしたらギフトだけなのだが、彼女も居ない。


 食堂へ行ってマーゲンに話しを聞いてみようか。誰かに会うかもしれないし。


 「誰にも会わない、か。何かあったのか?・・・マーゲン!居ないのか?」


 普段は食堂に居るはずのマーゲンも居なかった。

 仕方なく『人宮一体』を発動させてみれば、『大聖堂』に多くの反応がある。

 『二階層』、『三階層』に守護者達の反応は無いので全員が居るだろう。ヴェーデは『三階層』に居るようだが戦闘でもあったのか?


 『大聖堂』に到着すると、ツンとつく鉄の臭いが襲った。


 「コレは犬?いや、狼か」


 首筋の肉を持ち上げてみると首の辺りに切り傷を見つけた。

 狼は一体では無く、周囲にも死体が転がっている。


 死体の列を辿っていくとライトアーマーの後ろ姿を見つけた。鎧は返り血で赤く染まり、血の雨を浴びたようだった。

 ライトアーマーは俺の姿を見ると、走って俺の側に立ち周囲を警戒し始めた。

 安全を確認したのか剣を自身の鎧に打ち付けて甲高い音を出すと、その音に釣られたのか数体のライトアーマーが走ってきた。中には昨日の夜に創ったシールドアーマーの姿もある。

 どの鎧にも血が付着している。


 敵襲の警報が聴こえないほど熟睡していたのだろうか。


 ライトアーマーの案内に従って聖堂内を歩いていくと守護者達の姿が見えた。


 「何があった?敵襲か?」


 マインに聞いてみる。


 「明朝にスキアー率いるハヤブサ達を周囲の偵察に出るように伝えたのですが、周囲に潜んでいた狼達の襲撃を受けたのですわ」

 「被害は」

 「奇襲を受けたハヤブサが一体ほど負傷致しましたがかすり傷です」

 「そうか、ありがとう」


 死体の数は52・・・いや、一つ減った?

 処理を既に行っているのか、数は少しずつ少なくなっていく。

 昼までに片付けておかねばならないし俺も手伝うとしよう。


 「マイン、返り血を浴びた者に水浴びをさせろ。守護者達には温泉に入る様に伝えてくれ」

 「かしこまりましたわ」


 死体の処理はこちらでやっておこう。

 俺一人になるがアイリードとディアがいればまず負けは無い。危なくなれば『人宮一体』で逃げればいいしな。


 そうだな、『火球(ファイア・ボール)』ではなく別の魔法も使ってみたいな。

 広範囲かつ、高威力の魔法・・・。


 「・・・『火炎旋風(フレイム・サイクロン)』」


 俺を中心に火の柱が渦を巻きながら立ち上る。

 渦は狼を飲み込むが、灰になるまでの火力は出てないようで黒いクズが残った。

 クズを一つづつ消して行き、遅めの朝食をとった。


 「侵入者の警報は鳴ったか?」


 食堂で守護者達に聞いてみると全員が頷いた。

 最初にハヤブサが襲われた時にいったん後退し、『大聖堂』で戦闘を行った。その際に警報が鳴った様だ。

 やはり俺の眠りが深いだけだったのか。


 「何にしても対処出来たようでなによりだ」


 昼までの時間は『大聖堂』の掃除に当てられ、お昼頃に騎士達がやって来た。


 □


クレイドル・アンシアーノside


 ノーマリー王国で財政を担っているパペル殿から新しく出来たというダンジョンの情報を聞いた時には驚いた。

 ダンジョンを統括していると思われる、ダンジョンマスターなる人物と接触に成功。更には国と認め、貿易をしようと言うのだから驚くのも当たり前である。


 王国貴族の耳にも既にこの話しは届いており、一応の対象として箝口令かんこうれいが敷かれている。

 今回は二回目の接触。コチラから食料を渡すだけなのだが十分な大役である事に間違いはない。


 何人か見繕っておくように言われたので、私の小姓をしているブレネンと騎士のバルバ、ルモールを呼んでおいた。彼らにとっても良い経験なになるだろう。


 年に四回行われる魔物討伐も私達の出発に合わせて少し早まった。近隣国に悟らせないようにとの配慮であるが、私には少し分からない。

 確かにダンジョンは富を産むかもしれないが、同時に破滅をもたらす事も可能なのである。過去にもダンジョンの囲い込みに失敗した迷宮都市が消えてなくなったのだ。ダンジョンマスターが友好的とはいえ下手に出る必要があるのだろうか。長年国に使えてきたがこの様な事は初めてだった。


 若い騎士達を選んで後の者達に楽をさせようと配慮したが、経験に富んだ人物を選ぶべきだったか。討伐の時期と被っているので有能な人物を引き抜けないのでどうしようも無いのだがな。


 今年の行軍はダンジョンの近くで野営をする様に組まれている。

 王都から二日掛けてニェーバの街まで行き、森の中ほどに到着すると魔物討伐が始まる。


 ニェーバの街を中心にかんがえると、西に森とダンジョンがあり、北東に王都がある。

 森より西には国境と砦、小さな村があるのだが、ソコは砦の兵たちが魔物の討伐を行う。

 普段通りであれば、森へは向かわずニェーバの街の南側に位置する村や街を移動するので、日程を変更する程にダンジョンに価値があるという事だ。


 森の魔物達は群れを成している事が多く、連携を鍛えるためには有用であることも確認した。

 次回の行軍からはこのルートが正規ルートになるのでは無いだろうか。


 討伐を終えた次の日。

 私は招集を掛けていた騎士達と共にダンジョンへと馬を引いて向かっていた。草木を切り、道を拡げながらなので馬に乗れないのだ。


 「ダンジョンの主の女が美人揃いという噂知ってるか?」

 「ルモール。行軍中だぞ」

 「あ、私も聞いたことがあります」


 うわさ好きのルモールが話し始めるが、バルバに(たしな)められていた。

 それにつられたブレネンには拳骨を叩き込んでおく。


 「ハハハ、楽しそうでいいではありませんか」


 そんな様子を笑って眺めているのはフェーデ・クレデンテ。教会からの圧力により今回の件に参加となった。

 国からも気を付ける様に言われている。


 ルモールはうわさ好きの若い騎士だ。騎士なって二年も経っていない。

 その軽口に困ることもあるが、助けられる事もある何とも憎めない人物だ。

 バルバは三十歳半ばの騎士だ。今回は経験を積ませるためにリーダー役に当てている。柔軟な判断が出来ないのがたまに傷だ。

 ブレネンは私の小姓で歳は十八歳。七歳からの騎士になる訓練もあと四年で終了だ。だと言うのに未だどこか幼いというか成長仕切っていない感じを受ける。この機会に成長してほしい。


 「警戒!」


 バルバから警戒を促す声が発せられた。

 それと共に先程とは打って変わり、緊迫した空気が流れフェーデ殿を囲むように陣を組み抜剣をすませる。


 「木の切れ目に建築物を発見。確認できますか?」

 「コチラも確認した。なんの建物だ?クレイドル様に何か心当たりは」

 「いや、無いな」


 木の切れ目から見えたという建築物を確認した。三角屋根しか見えないが、大きい建築物だと言うのは分かった。

 場所を加味するとダンジョンという予想が正しそうだが地上に現れてくるものなのか?


 「どう致しますか?」

 「リーダーはお主だ。自分で考えろ」

 「では、周囲警戒を続け謎の建築物へと近付きます」


 バルバの指示に従い、抜き身の剣を持ったまま進んでいく。


 「なんという事だ。これ程の建造物が森の中に」

 「フェーデ殿、危ないのでお下がりください」


 森の中に建っていたのは大聖堂だった。

 フェーデ殿が興奮しているが、何があるのか分からないので諌めておく。

 このような大聖堂はグラキエス教国で見た以来だ。いや、それ以上かもしれない。


 「何に見える?」

 「私には教会関係の建物としか」

 「俺も同感だ」


 どうやら他の者も同じ判断をしたようだ。

 フェーデ殿に視線を向けるが首を横に振られた。


 「教会はこの様な施設を保有していません。ダンジョンと近いようですし、ダンジョンの一部では無いでしょうか」

 「それが妥当でしょうな」

 「では、ルモールを偵察を兼ねて中に入れます」

 「ちょ、バルバ!?」


 ルモール、残念ながらお前が適任だ。

 ルモールが馬を残して大聖堂内に入って行く。

 静かな通路に足音と鎧が擦れる音が聞こえる。しばらくすると音も消え、私達だけが残された。


 「クレイドル様、空を・・・」


 空がどうかしたのだろうか、そう思い空を見上げてみると鳥の大群が居た。


 「クレイドル様、あの鳥の名前を存じていますか?あいにく私には分からないのですが」

 「奇遇だな、私もだ」


 名前も分からなぬ鳥達は私達の頭上で羽ばたき様子を伺っているように見える。


 「ダンジョンの魔物でしょうか」

 「恐らくそうですね。ダンジョンでは未知の魔物が現れると聞きますし」


 警戒を解かずにルモールを待っていると彼が一人の人物を連れて戻って来た。


 一目で分かる高級仕立ての服装。

 一見冷徹な印象を受けるが、ソレはソレで美しさを引き立てる要因になっている。

 パペル殿の話し通りであれば彼女がギフトと名乗る女性だろう。


 彼女の案内でダンジョン内を進む。

 フェーデ殿は聖堂の内装に感嘆の声を上げていたが、もう少し緊張感を持って頂きたい。

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