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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
二章 枕戈待旦
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魔法とゴブリン

 守護者達の能力を確認した後、俺は『四階層』に来ていた。

 『四階層』はリェースを頂点とした食料や木材の生産を主とした階層だ。


 「ご主人・・・何の用」

 「試したい技能があってな」


 『四階層』に降りてすぐリェースがやって来た。

 技能の練習をしたかったのだが、どうやら見せたいものがあるようだった。


 彼女についていってしばらくすると、目的の場所が見えてきた。


 「おぉ・・・コレは」


 この辺には俺が桜を植えたのだが、綺麗な桜並木となっており俺を歓迎しているようだった。

 桜並木の一番奥には一際大きい桜の木が満開を迎えていた。


 「この樹を、一番に育てた。ご主人、笑ってたから・・・」

 「そうか。ありがとな」


 リェースの頭に手を置き、ナデナデしてやると、彼女は恥ずかしそうに身をよじった。

 どうやら、俺が桜の木の苗を渡した時に何かを感じ取ったようだ。


 折角なのであの大きな桜の木の根元で練習しよう。

 根元まで歩いていき、技能の名前を呼ぶ。


 「『生命の樹』」


 それと同時に俺の背中に違和感を感じた。

 リェースに確認させてみれば、背中から枝が生えているようだ。今は細く、数も少ないが少しずつ成長させていこう。

 出し入れも自由に出来るので問題は無い。


 もう一つ確認していない技能があるが、それは守護者達には使いたくないので侵入者が現れた時に使うとしよう。


 『四階層』の様子も確認出来たので、『二階層』の整備を進めていく。

 『二階層』の守護者は9体。心許ない数だ。

 やはり増やした方がいいだろう。


 (ブリッツ。今からそちらに向かうから守護者案を考えておけよ)

 (かしこまりました、主よ)


 『二階層』を守るのはブリッツなのだし、意見を取り入れてみよう。

 そう思い念話をいれれば了承の返事が帰ってきたので、『人宮一体』で移動する。


 「・・・という訳で何か意見があれは聞かせてほしいのだが」

 「そうですね、やはり鎧系ですか。マイン殿と被らないようにしたいですな」

 「ライトアーマーと被らないような鎧、か。『ヘヴィアーマー』ってとこか」

 「それは安直すぎでは・・・」


 ライトの逆なのでヘヴィかと思ったがどうやら違うようだ。

 ブリッツが刀を使うので武者でも使うか?

 数を揃えたいのでそんなに技能を付けられないのが難点だが。


 「西洋の城ですので、武者もどうかと」

 「魔法でもつけるか?燃えながら襲ってくる鎧とか」

 「それならば氷や冷気の方が良いのではないですか?火は色々と扱いにくいですし。氷はどうでしょうか」

 「氷か?それにしよう」


・自身で創造

・ジャンル選択[死]

・造形『鎧』

・細部設定 技能『剣術』『氷魔法』

 消費MP67


 こんな物だろうか。

 マインのライトアーマーとは差別化出来たと思うが微妙なラインだな。


・創造しますか?

«はい» «いいえ»


・名称『チルアーマー』


 ブリッツから見た目に少し変更してほしい点があったようなので少し修正させてもらった。

 修正点は全体的に刺々しくなった事だ。別に変えなくても見分けはついたのだが、拘りがあるようだ。

これを三体創造する。


 方陣からでてきたのは、肩当と膝の部分が尖った鎧達だ。

 鎧の継ぎ目からは冷気が漏れ出しており、少し肌寒い。


 「ありがとうございます、主よ」


 まあ、ブリッツも満足してくれてるので大丈夫だろう。

 出来上がったチルアーマー三体は、彼の近衛として鍛えていくそうだ。

 ブリッツは『剣術』が高いので、鬼教官になる予感がするが俺には関係ないので気にしない。


 その後は昼になるまで『生命の樹』にMPを注いで時間を潰した。


 □


 午後。『三階層』の大広間には、俺を除くとクローフィ、リェース、アクルの三人が居た。


 「エバノ様にはやはり火と土の適性があるようですね」

 「そうか」


  クローフィが俺の両手から手を離し、魔法適性について教えてくれた。

  魔法の練習をしているのは何処かで話した気がするが、ココで詳しく説明しよう。


 まず魔力とMPの違いだ。

 体外にあるのが魔力、体内にあるのがMP。

 魔力を体内に取り込み、その魔力を練り込む事でMPが精製される。

 『練り込む』とは何なのか。クローフィの説明を聞くところによると、心臓が弛緩と収縮を繰り返す事で魔力が練り込まれる様だ。

 生きている限りMPは精製され続けるというわけだ。


 魔法を使うにはどうすればいいのか。

 魔法を使うには、体内にある魔力線を拡張しなければならない。

 普段は魔力線から染み出した物が体内環境を整えているのだが、対外に出すとなると、(いささか)か細すぎるのだ。

 拡張方法は、今ある魔力線の流れを速くする事で少しずつ広げていくしかない。


 だが、それだけで魔法が使える訳では無い。魔力線を流れるMPには幾つかの種類があり、それに合った種類の魔法しか使えない。

 俺の場合は火と土。それ以外の魔法は扱えない。

 種類を知るのは簡単で、魔力線の拡張を行った人物に教えてもらえばいい。この一連の流れは親しい人物同士で行われるのが一般的だ。


 そこから更に練習が必要になって来るのだが、ソレはこれからだ。

 拡張と属性は既に終わっている。


 「で、どうやって魔法を使うんだ」

 「取り敢えずそのままで・・・」


 リェースとアクルが魔法の練習をしているの中でクローフィは再び俺の手を取った。先程は輪を描くように両手を繋いでいたのだが、今度は右手だけだ。


 彼女は少しの間黙り込んだ。

 俺の中に何かが入り込んで来たかと思えば、突然左手から霧状の炎が放射された。


 「うぉ!・・・どうなったんだ」

 「私のMPでエバノ様のMPを押し出しました。私には『吸血』があるので必要ありませんが、MPの譲渡等も可能です」

 「なるほどな。分かった」

 「後は今の感覚を反復して覚えるだけです」


 練習あるのみか。ある程度の感覚は理解出来た。

 押し出されて発動したのだから、俺も自身でMPを押し出せれば発動出来るはずだ。それもある程度形を固定しなければならない。


 クローフィに礼を言って『謁見の間』に戻る。

 主が無様に練習しているのを見せるわけにはいかない。

 さて、どう練習したものか。まずは押し出すところからか。


 ・・・・・・できない。

 感覚としては覚えているが、再現が出来ない。

 押し出そうにも、圧が生み出せない。

 どうしたものか。


 (クローフィ)

 (どうかしましたか)

 (押し出す力が足りない)

 (理論的に考えすぎです。感覚的にやられればいいのです)


 俺が考えすぎなのか?魔法はイメージだと聞くが簡単に使えるものなのか?


 うーむ。やってみるか。


 「力が足りないのであれば作ればいい。

 波だ。体内に波を作り出せ。途切れる事の無い波。

 壁にぶつかれば高く打ち上がり、更に広がれ」


 ブツブツと呟きイメージを固めていく。

 体温が上がってきている気がする。上手く行っているからだろう。


 確認してみれば(てのひら)や脚から炎が漏れ出ている。


 「成功。・・・ふぅ」


 未だ魔法と呼べるものでは無いが、確実に一歩踏み出したぞ。


 □


 技能『火魔法』を身に付けました。


 □


 ビ―――――!!


 『生命の樹』をイメージして魔法の固定化が出来ないかと練習していると侵入者が現れた。

 『映像情報』で確認してみると、醜悪な顔をした毛むくじゃらな小人が居た。


 「ゴブリン?・・・いや、コボルトか?」


 俺には区別出来ないが、鑑定があることを思い出した。


名前 : ゴブリン

種族 : 精霊・妖精

HP80

MP95


 暗い場所に好んで住む精霊、又は妖精のことを一般的にゴブリンと呼ぶ。

 地域によってはコボルトと呼ばれることもある。


 どうやら両方とも合っているようだ。

 ゴブリンの数は30体。いや、後続も来ているのでそれ以上か。『一階層』の通路も狭くはないが数が多いので勢い良くなだれ込んで来る。

 下の階層から『二階層』へと行けるように隠し通路を組むべきだな。戦力の投下が出来ないのは危険だ。 ブリッツ達が逃げられないのも危ない。


 ゴブリン達は言葉が通じる相手では無いように思える。『異世界言語』をマスターしているので言葉が通じるのかも知れないが、俺個人としては仲良くしたくはない。


 (殲滅戦を開始する。『二階層』へと向かうエレベーターを解放するので各員は戦闘準備を。『二階層』守護者達に告ぐ。エレベーターを使うので敵は一度に多くは来ないが気を付ける様に。その他の守護者達はゴブリンを挟撃する準備だ。)


 命令を出して『三階層』のエレベーター前へ向かう。

 俺が通路を歩いているとライトアーマー達が少しずつ俺に合流し、背後をついて歩く。

 コイツらは巡回しているのか?一体ずつ合流しているように見えるのだが。

 悪いことでは無いので俺から何かを言う気はないし、そもそも[熟練度]が上がらないので仕方ないのかもしれない。


 俺と合流したのは14体。

 残りの10体はマインと共に合流した。


 「お待たせ致しました」

 「よく来てくれた」


 マナフライ達は俺にMPを渡すとまたダンジョン内に戻って行った。俺は命令してないのでマナフライ達の意思だ。成長しているのだろう。親として嬉しい限りだ。


 エレベーター前に到着するとクローフィとアクル、ワーカーバットも合流した。

 マインは『人宮一体』を使って既に『二階層』へと移動した様だ。

 リェースと妖精達が階段から来ているのを確認して『人宮一体』を使い『二階層』へと向かった。



 俺が出てきたのは城の玄関口。

 エレベーターから降りると場内に入るための四つの扉があるホールにつくのだが、今回は戦力を一箇所に集めて応戦しているようだ。


 「ブリッツ、状況報告」

 「城の玄関口にて迎撃中です。ゴブリンはガーゴイルの防御を抜けないようですので被害は無いかと」


 ブリッツはガーゴイルやチルアーマーが戦うのを眺めていた。

 そんな彼に現状を聞く限りは問題は無いようだ。

 ガーゴイルの防御も抜けないようではチルアーマーは倒せないだろう。


 ギフトは技能を使ってゴブリンの間引きをしている。

 『一階層』から音もなく現れたり、エレベーター内で暴れたりしている様だ。

 お陰で『二階層』の少ない戦力でも余裕で対象出来ている。

 敵対象を倒した事でMPの送料が増えていく。本来のダンジョンはこうやって成長していくのだろう。


 「お前は戦わないのか?」

 「私が戦えば一瞬で終わってしまいます。熟練度で言えば 1 で同程度でしょうか。武器があるこちらの方が有利ですが」


 そもそも何故大量のモンスターがやって来たのだろうか。

 俺にしてはMPが増えるので嬉しい悲鳴であるし、守護者達にも実戦経験が積めるのでいいのだが、俺たちが対象出来ない敵が現れて弱い魔物が流れて来たのであれば情報が無いのは厳しい。

 そろそろ外に出てみるか。俺自身が出れるかも分からないので検証もしてみたい。

 まぁ、コレが終わってからだがな。

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