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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
二章 枕戈待旦
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新『二階層』創造

 朝食の場で『新階層』の創造について話す。

 ヴェーデは何やらワクワクしていて楽しそうだ。


 「楽しそうだな」

 「『三階層』でしたか。あの空間は素晴らしいものでした」


 どうやら新しい階層が増える様子を見てみたいようだ。

 そんなに『三階層』が物珍しかったのだろうか。


 「別に構わないぞ。意に添えるかは分からないが」

 「本当ですか!?有難うございます!」


 凄い喜びようだな。


 「説明もしたいから結局は付いてきてもらうからな。それと、守護者達の居住区は今の『二階層』に移すからそのつもりでいてくれ。あー、片付けなんかは必要無いぞ」


 こんなものかな。

 では、『一階層』に移動しよう。


 『一階層』の入口にやってきた。

 このまま侵入者がやってきたら一網打尽なので、ダンジョンの全戦力が集結している。


 ギフト、マイン、クローフィ、

 リェース、アイリード、アクル、ディア。

 マナフライ×15、ライトアーマー×21

 ワーカーバット×20

 毒小蜘蛛×1


 計64体の大所帯だ。


 「それじゃあ始めるぞ。離れすぎると落ちるから気を付けろよ」

 「落ちる?」


 ヴェーデは意味が分からないと言うような様子だが、俺の言葉通りに近くに寄ってきている。

 クローフィとマナフライ達からMPを譲渡して貰ってMPを500に到達させ、技能名を呼ぶ。


 「『支配域創造』!」


 掛け声は必要無いが、こういうのは気分である。

 MPが吸われていく感覚と共に、変化が現れた。


 壁が音もなく床に吸い込まれ、『一階層』が更地と化した。

 続いて両端の床が凄まじい勢いで抜けていき、エレベーターへと続く中央の道以外が闇へと消える。

 コレで『二階層』の箱が出来たわけだ。


 ヴェーデは今の状態ですら開いた口がふさがらない様子。

 城を見ればどうなる事やら。


 そうこうしているうちに、城の一部が見えてきた。その正体は四つの塔だ。

 四つの塔は俺達のすぐ近くまでせり上がり、ピタリと動きを止めた。


 一息ついたかと思えば、続々と塔が浮き上がってくる。その数は十や二十では足りない。

 それらは最初の四つの塔には及ばないが数も相まって壮観だ。


 塔が一通り出終わると今度は城壁が姿を見せた。

 城壁の内側にエレベーターがあるのでソレ自体に意味は無いが形式美という奴である。

 城壁の形は六角形だが、正方形の上下に三角形を付けた形状と言う方が説明しやすいのでココではその様に扱わせてもらう。

 正方形の隅には最初に上げた四つの塔へと続く通路がある。上下の三角形の頂角にもそれぞれ二つの塔に繋がる様に通路がある。

 ドーム状と言っても、塔や通路が幾つも生えているので少々不格好だが水没させるのを想像すると楽しみでしょうがない。


 さて、城の外観に変化が見られなくなったので部屋の区切りを行っているのだろう。


 「下には下りないのですか?」

 「しばらく待ってろ。もうじき面白い物が見える」


 ヴェーデは興奮が抑え切れられ無い様で早く下に降りようと急かしてくるが、まだメインイベントが終わっていない。

 水を引くのを楽しみにしているのは俺だけではなく、他の守護者達も同じようだ。ソワソワとしているのが伝わってくる。


 「・・・来た」


 声を出したのは誰だったのだろうか。

 そんな事も気にならない程に、ソレは圧巻だった。


 『二階層』の全ての壁から轟音と共に大量の水が流れ出したのである。

 90mの高さからの放水は、洪水の様だ。ダンジョン内の建造物が決して壊れないのは知っているが、思わず心配してしまうほど。


 守護者達を見渡せば、各々が様々な反応をしていた。

 ギフト、マイン、クローフィ、リェースは比較的冷静だ。

 アイリードとディアは念話で騒いでいるが、煩いので無視を決め込むと二人で話し始めた。

 アクルは橋の縁に腰かけて手伝っているつもりなのか、笑いながら『水魔法』を垂れ流している。

 因みにヴェーデは拍手をしていた。


 うん、アクルの反応が一番だな。

 前者四人の無表情っぷりはどうにかならないものか。


 マインとクローフィが俺の顔を確認して、何かを相談した後、二人して困ったように手を振ってくるのは本当に止めて欲しい。

 リェースは普通に怖かったようで、テトテトと歩いてくると俺の右手を掴んだ。コレはコレで・・・ゲフンゲフン。

 ギフトは・・・まぁ、無いわな。


 そんなつまらない事をやっていると水が全て入ったようだ。

 光源が無いので普通なら全貌を見渡すことは不可能だが、ダンジョンなので光源が無いにも関わらず城壁の根元まで確認できる。


 水が無いかのような透明度を確認した後、意識が遠のくような感覚。

 MP切れによる気絶だ。体に衝撃が走らなかったので誰かが受け止めてくれたのだろう。

 近くに居たのはアクルだが、彼女では支えられないと思う。

 アクルの次に近くに居たのは・・・ギフト?

 ・・・そういえば、さりげなく近くに寄って、きてた、ような・・・・・・。


 重たいまぶたは重力に逆らうことなく閉じられた。


 □


 ギフトside


 まったく。マスターは何を考えているのでしょうか。

 MPがギリギリならあらかじめ守護者の誰かに伝えておいてくださいよ・・・。

 リェースがマスターの手を握って引き留めていなければ『二階層』に真っ逆さまでした。

 彼女が小さい体で頑張ってマスターを支えようとした姿は素晴らしかったですね。


 確か彼女は私と同じように公爵でしたか。『第三階層統括公位』。新しく『二階層』が創られたので『四階層』になるのでしょうか。

 そういえば私の爵位はどうなるのでしょうか。ハッキリ言って、現在の『一階層』に戦力は必要ありません。

 エレベーターに向かう通路しかないので、何も仕掛けられない。仕掛けても返り討ちが良い所でしょう。エレベーター内部でチマチマ攻撃するぐらいでしょうか。


 マスターがそう言うなら従いますが、マスターが過ごしている階層と離れてしまうのは寂しいですね。


 取りあえずマスターを自室に運びましょうか。

 エレベーターよりも『人宮一体』の方が早いのでそちらで移動します。


 私の『人宮一体』は制限が掛かってる筈なのですが、階層を超えても技能は発動しています。どういうことなのでしょう。

 私が知らないだけで隠された性能があるのでしょうか。

 こう言ってはアレですが、ダンジョンと同化すると暖かい何かに包まれるような感覚があります。何か、こう、許されているような感じです。

 技能が問題無く使えているので一々考えなくてもいいのでしょうか。


 マスターの自室に到着しました。『一階層』からここまでほぼノータイムです。

 相変わらずチート臭い技能です。味方だと頼もしい限りですが。


 ゆっくりベットに横たえて掛け布団を被せます。

 階層、離れたくないなぁ。マスター、一緒に居たいです。


 □


 畔木 鴎side


 ・・・起きたら毎回ギフトの顔があるのはどうしてだろうか。

 うーん。アレか?欲求不満なのか?


 まぁ、運んでくれたのがギフトだというのは分かった。

 アクルと手を繋いでいたから、彼女も手伝ってくれたのかな?後で顔を見せに行こう。


 考えていたのだが、爵位の変更をしておこう。


ギフト(公爵『第一階層統括公位』)→(公爵『第三階層統括公位』)

マイン(侯爵『戦力指揮統括侯位』)

クローフィ(侯爵『宮廷魔導士指揮統括候位』)

リェース(公爵『第三階層統括公位』)→(公爵『第四階層統括公位』)

アクル(伯爵『宮廷魔導士第二席』)


 爵位を変更したのはギフトとリェースの二名だけだ。

 技能に変更は無いので、悪いが割愛させてもらう。


 ・・・昼食まで少し時間があるな。

 鏡を購入して、総数は254枚。


 本当にやる事が無くなったな。ギフトの顔でも眺めていようか。

 写真が取れたら永久保存確定なのに、勿体ない。

 それにしてもこの髪は反則だろ。俺の想像力も舐めたものではないな。


 「変態さん・・・?」


 ブリキ人形のようにぎこちなく首を動かして、声が聞こえた方を見るとリェースが居た。

 リェース?どうしてココにいるんだ。


 「驚かさないでくれよ」

 「ごめんなさい。・・・ご主人は髪フェチだった」

 「どちらかというと足フェチ・・・いや、そうじゃなくてな、どうして居るんだ?」

 「気絶したから、心配だった」


 胸に暖かい何かが拡がる。メッチャええ娘やん。

 自分の好みで創ったので自作自演と言えるが、それを考えると萎えてしまうので、勤めてこの思考を放棄する。


 「体調は見ての通りだ。心配は要らない。リェースは俺の気絶を初めて見るのか」


 確かアクルもまだ見てない筈だが、あの場面で何があったのか。


 「・・・アクルは、ご主人に水掛けて起こそうとしてた」

 「こわッ!アイツえげつないな」


 やはり俺があの精神状態で創造したのが問題なのだろうか。いや、でもディアは大丈夫だしな・・・。

 アクルは闇が深いという事でおいておこう。

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