最期は唐突に現れた。
人と関わるのはあまり得意では無かった。
嫌いな訳では無いが、好きでも無い。
祭りは人が多いから誘われなければ行く事は無いし、自分から動こうとも思わない。
何が言いたいかというと、『人が苦手』の一点に尽きる。
友達は居たし、コミュニケーション力もソコソコある。しかし、友達の格としては、 親しい人 > 俺 だろう。一つ劣っている。
それでも生きていく上で困る事は無かった。
普通に学校を出て、普通に就職をした。
□
平凡な一般人だった俺だが、最期は平凡だとは思わなかった。少なくとも俺は。
その日は小説を読んでいた。
読んでいたジャンルの始まりは似たような物が多い。
誰かを庇って、死んだら知らない世界。
大抵はコレだった。
俺は、ニュースで誰かを庇って死ぬなんて聞いた覚えが無い。俺が知らないだけかも知れないが、ありふれていると言う事も無いと思う。お陰で転生出来てるんだろうが。
都合の良い嘘だと苦笑しながら、会社へ向かった。
会社の事は割愛する。
仕事風景なんか説明したって楽しくないからな。
まぁ、仕事が終わって、その帰り道。
俺は電車を待っている間に携帯を触っていた。
電車が来るまでまだ時間がある。という所で近くから悲鳴が上がった。
周りの人間同様に俺も野次馬精神で悲鳴の元へと向かった。
人混みを掻き分け、首を伸ばして状況を把握した。どうやら、子供が線路に落ちてしまったようだ。落ちた拍子に足をくじいた様で立ち上がる事が出来ないでいた。
母親はオロオロしているだけで何も動こうとはしない。
その時、俺は何を思ったか線路上に躍り出た。
子供を拾い上げ、集まった観衆達に引っ張りあげてもらおうとした時だった。
電車が来たのだ。
急げ! 急げ!!
周りから声が掛かる。
子供をホームに上げた俺は電車との距離を確認した。余裕は無い。もう目と鼻の先だ。
俺自身も引っ張ってもらおうと手を伸ばす。
それに応えようと観衆からも沢山の手が伸びてきた。その光景は一種のホラーだったが命には変えられない。
手を掴んだ。助かる。
そう思った。が、神は俺に味方しなかった。
足が滑り前につんのめったのだ。
俺を上げようと力の限り引いてくれるが、手遅れだった。
最期に見たのは、腕を残して離れていく身体と近づいてくる柱だった。