知恵と否定
この話では戦闘シーンがあります。
戦闘描写や性的描写により読者様によっては気分を害する可能性がございます。お気を付けください。
ビーーーーー!!
時計が示している時刻は午前10時。
『三階層』で日向ぼっこをしていた俺は、侵入者が現れたことを告げる警告音で飛び起きた。
(各守護者に告ぐ。侵入者が現れた。ヴェーデを『謁見の間』にでも連れていけ。)
指示を出すとともに『人宮一体』でダンジョンと同化する。
まず感じたのは凄まじい程の不快感。侵入者を歓迎していないようだ。俺もお前も。
侵入者はアルトゥーロとか言う冒険者と他3名。
簡単に説明させてもらう。
身軽そうな装備の男、杖とローブを身にまとった女性、神官服に身を包み、腰にハンマーを下げている女性の3人だ。
技能を見る限り役割が分かれているようで、盗賊、魔法使い、僧侶というような感じだろう。アルトゥーロが戦士系だと思うので、バランスは悪くは無い。前衛がもう1枚欲しいところだがな。
まぁ、敵なので関係ないが。
(クローフィ、どこにいる)
(『一回層』の中広間です)
(冒険者が近くに寄るまで向かい風を起こしてくれ)
匂いにより奇襲の察知を恐れたので向かい風を起こすように伝える。
一応は顔見知りなので目的を聞くが、王国から使者が来ていたのにワザワザ冒険者を寄こす意味が分からない。
『人宮一体』で冒険者の目の前に移動する。
彼らが驚いたのも束の間。直ぐに戦闘準備を整えた。
「なんの用だ」
「お前の首を取りに来た」
「王国と不可侵の条約を結んだのだが?」
俺の首を取りに来たのならさっさと襲いかかれば良いものを、何を悠長に話しているのやら。
「冒険者は国から独立した組織だ。国外に逃げれば何も問題は無い」
「・・・そうか」
冒険者ギルドは国から資金提供を受けているはずだがどうなっているのか。
何にせよ敵対したのが運のつきだ。
まずは1人。
『人宮一体』を使っていたギフトが僧侶の首を背後から切断。
ストッ—――
軽い音を立てて頭が落ちる。
遅れて血の噴水。
ギフトは血で濡れるのを嫌ったのか、僧侶の背を蹴って魔法使いへとぶつける。
何が起きたか理解出来ず、惚けていた魔法使いもその後を追った。
盗賊がギフトに襲いかかるも、ヒラリと回避した後、床へと潜っていった。
アルトゥーロは俺へと狙いを付けたようで、コチラへと走り寄ってくる。
話している間に創っていた通路とこの場を繋ぎ、飛び出してきたライトアーマーが防ぐ。反対側から出てきたもう一体が切りつける。
それを後退する事で避けたアルトゥーロだが、一旦下がったのは愚策だったな。
マインが創造したライトアーマー。合計18体。
それが俺の眼前へと整列し終えた。
盗賊は遅れてやってきたクローフィの魔法で黒焦げになっており、アルトゥーロになすすべは無い。
不利と悟ったのか出口へと逃げ出すが、俺が段差を創って転ばした所をライトアーマー達に串刺しにされて命を散らした。
「ハリネズミかっての」
初戦闘の感想がこんなものでイイのかと思ったが、他に何とも思わないので仕方ない。
強いて言えば、俺のアソコがヤバイ。
戦闘の感想は無いが、かなり興奮しているのは確かだ。
「戦闘ご苦労だった。ヴェーデを部屋に戻してやれ。死体は『謁見の間』に持ってこい」
「分かりました」
「かしこまりましたわ」
「かしこまりました」
ギフト、マイン、クローフィの声を耳に残しながらダンジョン同化した。
ダンジョンと同化して気が付いたが、不快感が消えている。
その代わり、侵入者を殺した事により生じたのだろう、熱い奔流が身体を巡る。
熱々の風呂に心から浸かっているような感覚は性欲へと変換された。
□
『謁見の間』には酷い臭いが立ち込めていた。
換気が出来ないのも一翼を担っているが、俺自身がこの臭いをそこまで苦にしていないというのが大きいところだ。
俺の足元には死体が4つ。
首なし神官に首なし魔法使い、盗賊の丸焼きにハリネズミだったボロ雑巾。
そのうち前者2つは酷い有様だった。
衣服を破られ、ヤリやすいように骨を折られている。
陰部からは臭いの発生源が垂れてきており、死者を愚弄するのも大概にしろと言われそうだ。
初めは普通にしていたのだが、体制がよろしくない。
脚を曲げようにも動かない。なので思いっきり力を掛けて無理やり折った。
その感触と音が堪らず行為は更に勢いを増した。
「・・・ふぅ」
賢者になって現状を振り返ってみたが実に素晴らしかった。
生身も乙なものだが、偶にはこういうのも良いかもしれない。
初めて侵入者を殺した事により、何か変わってないかと、ステータスを確認してみる。
MP88(+435)→523
MPの増加が素晴らしい。
守護者4人は創れる。今回は守護者を1人、装備を1体創ろうと思う。
死体の処理は・・・そうだな、『三階層』に埋めておこう。
・自身で創造
・ジャンル選択[陸]
・造形『人型(女)』
・細部設定 技能『土魔法』『水魔法』『光魔法』『闇魔法』『方陣魔法』『魔法射程距離増加』『MP消費削減』『MP増加』
消費MP130
・創造しますか?
«はい» «いいえ»
・名称『アクル』
アクルには攻撃用の守護者が取っていない魔法を選択した。クローフィと合わせて全魔法が使用可能と言うわけだ。
『方陣魔法』は、俺の能力以外で特殊フィールドを生成してもらおうと付けた。他にも使用用途はあるだろう。
「やっほー!カモメ!」
「おはよう」
アクルは元気っ娘だ。
茶色のショートヘアーに少し褐色気味の肌。身長はリェースより高いが、マインには足りない。
白のワンピースを着せたい衝動に駆られるが、我慢して何時もの服装を購入する。
「カモメー」
「どうした」
「この部屋臭い」
「・・・『水魔法』で処理してくれ」
「え〜、今度は自分でやってよねー!『水操作』」
魔法の名称と共に、彼女の足元から水が湧き出してきた。床を一直線に滑った水は事後の惨状を攫い、捻りながら宙へと絞り上げた後、水玉の様な形になった。
血が混ざり、薄い紫の様な色へと変わった水の中を死体が泳ぐ。
それを『三階層』に埋めるように伝える。
コレで多少はマシになっただろう。
アクルにはクローフィと合流するように伝えて、守護者創造を続ける。
剣は創ったので、今度は守りだ。鎧とかは着る気がしないので自由に形状を変えられるものがいいな。
・自身で創造
・ジャンル選択[他]
・造形『不定形』
・細部設定 技能『硬化』『全魔法反射』『物理無効』『粘着』『変色』
消費MP312
・創造しますか?
«はい» «いいえ»
・名称『ディア』
流石に『人剣一体』のように上手くはいかなかった。
最強の盾を創ろうとしたら、とんでもない量のMPが必要になってくるな。
523-(130+312)=81
一気にMPが減った。アクルの服の代金はマナフライからのMPで払ったので数に入れてない。
ディアは『不定形』だ。俗に言うメタルなスライムである。
プルプルと揺れ動こいているのが可愛い。
(御主人!御主人!精一杯護らせて貰いますね)
(よろしく頼んだ)
ディアは俺の俺の身体に纏わり付くと、糸のように細かく枝分かれして服の一部と同化した。
視点を変えると銀糸が編み込まれているように見える。
午前中から疲れた。風呂に入ろうか。
アクルがまた五月蝿いからな。
風呂に入り一息。ディアはその辺を転がっているのでは無いだろうか。
偶に ぴちゃぴちゃぴちゃ と水が跳ねる音がするので憶測は合ってると思う。
「ディーアー」
ディアの名前を呼ぶ。彼女の身体は冷たくて気持ちいいのだ。
頭部にタオルを置くのは、のぼせるのを防ぐ為だと聞いたことがある。
ディアを頭部においてもう少しユックリしよう。
(御主人!)
「・・・?」
なかなか来ないなと思っていると念話が入った。
慌てた様な感じだ。何かあったのか?
排水口に捕まったとか?排水口を創ってはいるがアレはどこに続いているか分からないからな。
「誰だと思う?」
謎の人物に目隠しされた。
風呂には俺以外の人物は入らないように言ってある。
そんな場所に悠々と入ってこられる人物は一人しか思いつかない。
「昨日ぶりですね。汚い所ですがどうぞ。まぁここは男湯ですが」
ユックリと目隠しが外され、変わりにヒンヤリとした感触が頭部に乗っかる。
コレは・・・ディアかな?
(御主人〜!凄い怖かったです。死ぬかと思いましたよ!・・・ところで誰なんですか?)
(何と言ったものか。・・・そうだな私の親かな)
(御主人のお母さんはお若くて綺麗なんですね!)
ディアは彼女に捕まっていたようだ。
俺がまだ見ぬ彼女の姿を拝見するとは羨ましい。
「お姿を拝見しても?なんなら自身の目を潰しますが」
「そこまでしなくても構わないわよ。目を開けたままで、ね」
俺の隣から湯の波紋が広がった。
すぐ近くに居る。それだけで安堵した。
「もう少し早く侵入者を殺してくれればこうして会えることが出来たのに・・・」
その声は何処か拗ねているような声だった。
「私には貴方の願いが分かりません。下手に動くのは下策だと考えました」
「私も会うのが遅れたから何も言えないのよ。それも含めての進化だったのだけれど、少し早かったかしら?」
俺には彼女の言葉の意味が分からない。
何かミスをしてしまったのか。
ただ俯いて彼女の白肌を視界に入れる。