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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
十四章 堅甲利兵
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参戦しないとは言ってない

 トハン帝国と、エルフの国であるルーマンドの丁度国境付近の森。どちらかと言えば、帝国よりだろうか。俺としてはルーマンドよりに行きたいのだが、歩いていると、どういうわけか元の場所に戻ってきてしまうのだ。普通の森と見た感じは変わらないのにどういう仕掛けなんだろうか。ゲームなんかではよく見かけるが仕掛けが分からラないんだよな。

 例によって、砦を開けすぎると駄目なので2ループぐらいで諦め、裏工作パート2を始めていく。


 ギフトに命を与えたその翌日。今日やっていくのは、異界の魔物対策である。

 どう対処するかであるが、目には目を、魔物には魔物を作戦をしようと思う。シュヴァルツヴァルトの魔物枠といえば、ドラゴンであるアサルトや、鳥であるフロウ、ファインなどが挙がるだろうか。彼等にも活躍の機会はあるものの、今回の主役は新顔のケルベロスだ。なにげに初陣なので、頑張ってほしい。


 簡単な作戦説明に移らせてもらう。作戦とは言っても至極簡単なもので、正直、誰でも出来る。

 戦争が始まったら死なない程度に突撃。これだけだ。簡単だろう?味方からしたら区別がつかないだろうから戦場を分けなければならないが、攪乱、時間稼ぎとしては十分すぎるほどだと思う。その間に俺達が下から叩き潰す。

 戦いが終わったらもちろん回収しなければならないので、今日は転移陣を置きに来た。ルーマンドも領域にしようと思ったが、それは不発に終わってしまったので潔く諦めるとしよう。


 それが終われば今度は砦の南側だ。砦から南に真っすぐに進めば海が見えて来る。

 見た感じとしては飛び降り自殺スポットだろうか。例えが悪くて本当に申し訳ないが、俺の語彙力ではこれが精いっぱいである。犯人を追い詰めた時なんかによく見かけるアレな。

 ここにやって来たのは、海軍を警戒しているからだ。領域にしている場所からそれらしき情報は入っていないものの、レヴィアタンを置くだけならタダだろうと考えてやって来た。こっちは転移陣を置かずに、今から離しておく。水中だから隠しておくには申し分ない。


 ここまで警戒しておいてなんだが、この大陸の国々は軍艦を持ち合わせていない。種族から鑑みれば、海に敵性生物は居ないと思うんだが。俺が知っている人魚はルーマンド方面の海域だけど、この辺の海にも居るのか?人魚と言えば悪い話しの方が多いイメージではある。漁は普通にやってるみたいなんだけどな。シュヴァルツヴァルトにも魚入って来てたし。それはレヴィアタンからの報告に期待するとしよう。彼女が負ける訳も無いし。


 □


 砦に戻って来た。石造りの、何の変哲もない砦なのだが、そこに張りい詰める緊張感は平時のソレとは別物である。まだ時間はあるというのにこの圧迫感。まるで空気に重さが備わった様な感じだ。感じる側の感想としては、なんともいいものでは無い。


 「お疲れ様でした。主、どうでしたか?」

 「まぁ、ボチボチってとこだな。種は撒き終わったから後は待つだけだ」


 与えられた部屋に戻って、俺に一番最初に声を掛けたのはブリッツ。彼はシュヴァルツヴァルトの将軍という認識になっている。ウチの中ではそんな事も無いのだが、いつの間にかそんな事になっていた。本来の指揮官であるマインは補佐官みたいな立ち位置に落ち着いているのだが、俺は納得していない。

 マインの方が先に創られたんだから、彼女の方が序列が上だというのは譲ることが出来ない。シュヴァルツヴァルト内での序列は絶対。俺はそんなことは言った覚えはないが、基本的には絶対である。そんななかで、周囲が序列を無視して勝手に順位を決められると困るわけだ。活躍の場がないために仕方のないことではあるんだがな・・・。


 「俺が居ない間に変わった事は?」

 「マイン様に男どもが近づいて来てひと悶着ありました」


 戸惑う事も無くさらりと言い放ったブリッツに、頭に手を当てて天井を仰ぐ。

 言わんこっちゃない。何をやってるんだ、全く。娼館の人間も砦内に来てるだろうに。


 「はぁ・・・、ソイツ等は殺したんだろうな」

 「ソレは流石にスタージュ殿に止められてしまいまして」

 「舐められっぱなしじゃないか。何か対策しないとマズイな」


 本当にやろうとしたブリッツに若干引きつつも、今後の振舞いを考えていく。


 今の俺の気持ちは、娘がチャラ男にナンパされた時の父親って感じか?娘なんて持ったこと無いから分からないが、こんなもんだろ。ん?親バカだって?何をいまさら。

 マインがやられたんなら、他の女性陣も何かしらのアプローチは受けているのではないだろうか。何はともあれ、全員集めて話しを聞いてみるとしよう。俺はその間に対策を考えねば・・・。




 外で動いているギフトとスキアー以外の守護者が集まった。彼女達は全員が右手を上げており、その顔は何処か申し訳なさそうな様に見えた。

 こうなっているのには理由があって、戦争に関する事以外で異性に声を掛けられた者は挙手をするように俺が言ったからである。まさか全員被害者だったとは思わなかったが。


 マインはブリッツから聞いたからいいとして、他の守護者はどんな感じに声を掛けられたんだろうか。

 最初はクローフィ。


 「男性の魔法使いの方にいちゃもんをつけられましたので、服と体毛を全て燃やしました」


 お、おう。よくやった?まぁ、いいや。

 取り敢えず、無表情でそれを言うのは怖いからやめるように。


 「リェースはどうだったんだ?」

 「子供扱い、されたから・・・、首から下、地面に埋めた」


 ウチの子ってこんなに物騒だっけ。教育の仕方を間違えたんだろうか。そもそも教育した覚えが無いが、突っ込んではいけない。


 次はアクル。コイツに用があるのはロリコンぐらいじゃないかと思ってるんだがどうなんだろう。


 「美味しいお菓子くれたよ!」


 ハイ、次。どこかから声が聞こえるんだが、この部屋呪われてるんじゃないだろうな。

 あ、ブリッツに連れ出された。


 「ガブリエナは?」

 「何やら竜人として崇められました」

 「あー、ドラゴンは居なくなったって思われてるからな。なるほど」


 彼女は大丈夫そうだ。あらぬ所で誤解が起きてるものの、悪い方向には向かっていない。

 そう言えば、ドラゴン達は元気だろうか。今度会いに行ってみるのも悪くない。


 と、まぁこんな感じで聞いて行ったんだけど、もしかして何かするまでも無いんじゃないか?

 ほぼ全員から過激な返答が帰って来たんだが。むしろ声を掛けた人間を気遣うレベルだ。土の下で隠れん坊をして、誰にも見つけられないという事案が発生してもおかしくない。そうならないためにもスタージュには一応話しは通しておくが、これだけの規模の人間が集まっているのだ。はたして全員を縛る事が出来るのだろうか。無理だ。そんなもの最初から出来ないのは明白なわけで、俺の方で出来ることと言えば彼女達に死なない程度にな、と釘を刺すぐらいだ。


 後に、シュヴァルツヴァルトの女に声を掛けるなら死ぬ覚悟をしてからにしろ、という言葉が俺の耳に入って来るようになるのだが、それはまた別の話し。

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