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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
十四章 堅甲利兵
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忍び寄る毒

 暗い足元。生ぬるい空気。動く影。蒼い月。


 太ももを前に、前にと動かせば、私の脳は新たな情報を更新していく。脚を動かす度に感じる、スライムの肉質がその感覚を鋭敏にしているのかもしれない。レッグアーマーの全ての隙間に埋もれるように入り込んだスライムが居なければ、こうして走ることも、マスターの役に立つことも出来ないだろう。


 私は今、この瞬間がとっても好きだ。マスターの役に立っているという幸福感が身体の隅々まで ――― それこそ、髪の1本1本から爪の先まで私を満たしていると感じる。


 一緒に行動している他の守護者はどうなのだろう。


 スキアーは?彼女は案外、冷徹に感情を殺しているのかもしれない。私の忍者像とはそんな感じだ。

 ブルーダはそもそもそんな感情を持ち合わせていないように思う。これは見た目からの感想であるから、実際のところは私には分からない。

 見た目というのは大切だとこの時ほど思ったことはない。短い人生ではあるけれど、知識量は普通の人間より持って生まれる守護者というのは、日々が発見だ。


 これ以上は話しがズレてしまうからこの思考は止めるけど、要は、私が一番幸せだということ。そう感じるのは、そう思うのは、マスターの役に立てていると感じるからでしょう。

 走って生まれただけではない、火照った身体と熱い息は夜風に巻かれて消えていく。そろそろトハン帝国の野営地も見えてくる筈ですから、名残惜しいけど丁度いいのかもしれない。


 (夜明けまで時間があるでござるが、今日から?)

 (いえ、まずは情報を集めます)


 自薦に頂いた情報はありますが、この目で見た情報ほど信頼できるものが無いのは私自身がよく分かっている。まず私達がやるべきことは、拠点の作成。

 衣住食のうち、揃っていないのは住だけ。マスターが創った装備に不備はなく、守護者は食事を必要とはしません。であれば、やることというのはおのずと分かってくるもの。


 (・・・念話が入りました。もう少しで足が追い付くそうですから、それを待ちましょうか)


 怠慢な所が薄れた気がしないでもないですけど、いささか心配しすぎな気もしますね。なんにせよ、マスターが私達の事を考えてくれているのは素直に嬉しいです。

 後は、期待に応えられるかどうか。そのためにも、今日1日は準備に当てる。やれることを1つずつ、丁寧に、確実に。そこまで深くない森の中で、出来る限り長く場所を悟られずに活動するには、何もしていないこの時こそが好機でしょうから。


 幽霊の様な馬が、少ししてやって来た。名前は、トランスホースでしたか。空中を移動できるのは今後の大きな強みになるでしょう。

 地を蹴って一息にその背に跨れば、手に帰ってくるのは不思議な感覚。まるで、死んだ生物を触っているかのような・・・。役に立つのであれば私からは何も言う事はありませんが。それもいずれ慣れるでしょう。


 (まずは領域外の地形の把握、空も含めて逃走ルートを考えましょうか。敵性生物を見つけた場合はすぐに撤退するように)

 (了解でござるよ)

 (では、3人1組で行動しましょう。1時間後にこの場に。その後に移動してこれを繰り返します)


 1夜目としてはこんなものですか。

 1人でも多くの戦果をマスターに捧げましょう。私は最善を尽くすのみ。


 □


 翌日、時間的には早朝と言われる頃。偵察が一先ずの終わりとなり、今やっているのは、ただひたすらに穴を掘っている。

 昨夜見つけた、恐らくは獣が作ったものであろう木の洞。ソコを石を使って拡張、8人がどうにか入るまでにする必要がある。他の拠点候補はここよりも酷いですから、ここを第一拠点として使っていく事になるでしょう。今頃、スキアーの方でも拠点作成が進んでいる筈です。現状、2手分かれて作業しているのですが、あちらは木の上なので出来ることも少ないのは明白。私達が作業を終える頃には第三拠点も出来上がっているといいのですが。まぁ、あちらは本当に申し訳程度の拠点ですから手を凝る必要もありません。


 お昼になれば第一拠点に集まって4人1組で交代しながら、睡眠をとる。昨日から働きづめだったので、休息は必要だ。

 今日の夜に援軍として移動中の敵の居場所の把握。翌日に襲撃、と。予定としてはこのようなものです。

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