重く暗い夜
5月14日。
今日はなぜか上手く寝れない。この身体になってからそんな事は一度も無かったのだが、どういうわけだろうか。意識自体は人間だけど、本体は人形だから本来ならシャットダウンされるみたいに一瞬で寝れるのだが。
調子が悪いのか?体感ではそんなことはないんだけどな。メンテナンスなんてしたことないし、一概には言えないのがむずがゆい。
隣で眠っているレイの薔薇色の髪を優しく撫でて、起こさないように城の外まで飛ぶ。
今日は曇りだ。見上げた空には重そうな雲が群れをなし、空を飲み込んでいた。明日の天気は雨かな。そんなことを考えながら、あても無く夜のシュヴァルツヴァルトを1人歩いていく。結局は、歩くのが面倒くさくなって麒麟を呼んだ。こんな夜遅くに申し訳ないな。
静寂が支配していたシュヴァルツヴァルトに、強く地面を蹴る音が響く。もちろんその正体は麒麟に乗った俺だ。風を裂いて、音を置き去りにし、景色を更新していく。
乗馬も久しぶりにやってみるとなかなか楽しいもんだ。だから寝れるかと言われるとそうでは無いが、楽しければいいと思う。まぁ、解決法は探さないといけないし、戦争の準備だってそろそろ始めないといけないから、この時間に1人というのは逆にありがたいのかもしれない。
まず身体のメンテナンス。俺ではどうしようもないのでかもめに任せる。
メンテナンス中はギフトをダンジョンマスターに据えれば問題も無いだろう。明日は誰も来る予定はないしな。
次に、戦争の準備。これは主に武具関係について考えないといけない。
シュヴァルツヴァルトで武器に最も使われているのは日緋色金だ。これはそれなりに貯蔵はある。長い間地道に溜めて来たからな。
防具はこの星特有のヴェルジェンド鉱石を使った鎧を数点だけ用意させてもらった。だけど、俺だって人形になってもダンジョンマスターだ。やろうと思えば切れない洋服とか普通に創れる。実際に城の衣装部屋にはそういう物もあったりするのだ。これは俺が死んだ後にこのままだとヤバイかな?と思って創った最終決戦装備だからあまり使いたくはない。戦地に持って行きはするが、使わないことを祈る。
さて、それで何が問題かと言うと、守護者専用の装備が無い事である。ブリッツだけは小さい調整を個別でやってたりするものの、他の守護者は俺が初期配布した服を何着かしか持って無いのだ。新しく買ってたりすると話しは変わってくるのだが、給料とか渡した覚えも無いし多分持っていない筈だ。
つまり、ブリッツを除く守護者それぞれに、技能に合った装備を創ってやらないといけないことになる。装備につける能力自体は簡単に思いつくだろうけど、問題はデザインである。細かい所はかもめがやってくれるとはいえ、大まかな形は自分で考えなければいけないのだ。それも人数分である。正直言って苦行でしかないぞ。少しずつ考えるしかないな。