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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
十三章 永垂不朽
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アバビム

 月が海に飲み込まれ、種族の中で選ばれた者らが箱舟によって地に降りた時、スワイヴ、蛇、カイザもまた地上に降りた。カイザは新しい種族として降りたが、前者2人は違った。神による星の浄化の中で生き残っている人間が居れば、瞬く間に感知されるだろうからだ。いくら目の届かない場所に居ると言っても、やはり違和感というものは存在する。そのために地上に降りるのを余儀なくされ、神を下す力を得るために、最善の時を待つために下地を作り出す。


 地上に降りたカイザは、人も寄り付かぬ深い森の中、渓谷と呼ばれる場所に腰を下ろした。そこでダンジョンを創り、名をアバビムと変えた。

 母から聞いたのか、誰かほかの人間に言伝に聞いたのかは定かではなかったが、彼は知っていた父の名を語り、新天地にて一歩を踏み出したのだ。この地に人が来るまでは何百年も掛かるだろう。私は楽園を創り、配下の者に幸せを与えたい、と。


 一方、カイザの父であるアバビムもまた、蛇によって地に降りた。対話を試みた蛇に飛んできたのは、アバビムの無常なかかとであった。彼のかかとは蛇の頭を砕き、彼の命を刈り取る。実に簡単に、あっけなく、物語で糸を引いていた怪物はこの世から消え去った。蛇の魂が二度と生き物に宿る事の無いようにアバビムは蛇の魂を消し、自らの息子、カイザの元を尋ねた。


 顔を合わせた2人のアバビム。両者の顔は流石親子と言った所だろうか。そっくりの彼等は長い時を語り合い、失われた父と子の隙間を埋めていく。その話しはいったいいつ終わったのだろうか。少なくとも、何年で終わらせるには少なすぎる。何十年、もしかしたら、何百年と経ってしまっているかもしれない。


 父アバビムは子アバビムの元を離れ、当時人々が暮らしていた北の地を求めて歩を進めた。その別れ際、彼は1つの言葉を残した。


 「母に気をつけろ」


 彼は北の地にて子を残し、自ら転生輪廻の輪から抜けた。いや、この言い方は語弊があるかもしれない。息子と同じくダンジョンマスターとなり、氷の中で永久の時間を過ごすのだ。



 これが、どこかの王が現れるまでの物語。

 ひと段落着いた私は部屋の隅で不敵な笑みを浮かべ、次の物語りが始まるのを待つ。

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