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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
十三章 永垂不朽
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原初の2人と兄弟殺し

 アバビム。原初の2人にして初めての人間。

 月へと帰ろうとしたスワイヴとは違い、『果てしない渓谷』にダンジョンを構えた人物である。彼の人生もまた数奇なものであった。


 まだ彼等が月に住んでいた頃、その地表を水が覆う前の事である。彼等に寿命は無く、『生命の樹』の果実を食べずとも、老いず、死にはしなかった。そして、その日常は唐突に終わりを告げる。

 蛇に唆されたスワイヴに「善悪を知る実」、つまるところ、『禁断の果実』を食べさせられたのだ。これにより彼等は寿命に縛られるようになり、地獄へと幽閉された。地獄とは場所ではなく概念であり、逃れる事は不可能に近い。神の概念を破れる存在があるとすれば、その者もまた神であるか、それに近しい能力を有している必要があるためだ。


 だが結果として、地獄の概念から彼等は抜け出した見せた。『知恵の樹』の果実を食べた蛇の手引きにより、概念を破るのではなく、概念を抜け出すという方法を持っての脱出。エバノをこの星に呼び寄せた『召喚魔法』こそがその鍵だ。といっても、知識があるだけの一介の蛇が神の力に及ぶ力を得られる道理はなく、時間を掛けて1人ずつの召喚が蛇の限界だった。


 先に呼ばれたのはスワイヴだった。蛇からしてみれば一度は騙した相手であり、己にとっては良い手駒になることは予想に容易い。原初の2人を追放した神からの罰として地を這うことを宿命づけられた蛇には、手駒が必要だったためである。何をするにも不便で、何処に行こうにも時間が掛かるのは好ましくなかった。


 スワイヴは子を2人生み、蛇と共に神の手の届かない場所に身を隠す。彼女の子等の名前は、カイザとアーベラ。人間が「罪と罰」を背負おう原因を作った要因であり、この星初めてのダンジョンマスターは、兄であるカイザが成ったものである。


 カイザ、アーベラ。この兄弟の確執自体はそこまで珍しものでは無い。どちらかが優れていて、どちらが劣っている。今日に至るまで幾度も繰り返されたであろう争いの火種、それが彼等を狂わせた。

 兄弟は、どちらが神に愛されているのかを競い合っていた。親の影響を受けずに過ごした彼等は素直に、穢れを知らず、純粋に生きて来た。そんな彼等を神もまた認めていたのだ。

 ある日、どちらが神への供物を捧げるかで喧嘩をしたことがあった。他愛もない口論は直に喧嘩に、醜い殴り合いに、終いには殺人にまで発展してしまう。故にカイザは神に追放され、ダンジョンマスターとなり、彼等が暮らしていた楽園より東の地へと飛ばされた。


 これが彼等兄弟の物語り。正に「罪と罰」にふさわしい話しではないだろうか。

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