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リタと赤いドラゴン  作者: スプリターン
序章
1/7

プロローグ

ほのかな光が、ぼんやりと頼りなく視界を照らす。

シュアは後方を頼りなく付いて歩くリタを気にしながら、緩やかに下る洞窟の中を進んだ。


一歩一歩下るごとに、むわっとした熱気が体力を奪っていく。

身体の小さなリタでは、頼りない明かりと滑る地面に耐えられる程の体力はないようだ。


短い息遣いと引き摺られる足の音が耳障りに洞窟の中で響いている。

その上、吸い込むたびに入ってくる熱気にむせるて呼吸する事すら億劫になるし、鬱陶しく引っ付く衣類は、もう脱いでしまおうかと思う程に重みを増してリタの体力を奪っている。


「王子、大丈夫ですか?」

「・・・うる、さいっ、はぁ、はぁっ」


拭う汗に、ザラリとした感触が混ざる。

塩になりかけた汗が、さらに身体をカラカラにしていく。

リタは思った程に出ていない自分の声に言葉を発する事すら面倒に感じていた。


水はとうの昔になくなって、からの水筒だけが2人の腰のベルトで揺れている。

シュアは自分の分の水をリタに差し出すタイミングをもう少しあとにすれば良かったと後悔していた。



「・・・ま、だ。なのか・・・」

「もう少し先の様です。王子、本当に先に進む覚悟がおありで?」

「行く、しかないのだろ…」


リタの意志の強いその眼差しは、数ヶ月前とは、違う気迫を持っていた。

進むごとに燃える様に熱くなる空気と、地面。その中を、13歳の少年が頼りなく左右に体を揺らしながら進む。


この道しかないのだ。


リタには、もう後がない。

この道を進み、すべてと向き合い闘う覚悟をするしか、もう生き抜く術がない。


シュアは、年端も行かぬ少年に事のすべてを伝えてしまった事が、本当に正解だったのか、険しい道の中で自問自答を繰り返していた。

嘘だと告げられれば良かった。知らずに死ぬ道の方が楽だった。


だが、それではいずれにしても2人ともが死んでしまう。

ならば、もうこれしか無かったと、シュア自身も腹を括って果てしない下り坂を降りた。





どれ程下ったのか。

ますます熱くなる熱気と同じく、洞窟の壁が煌々と紅く色付き始めた。

松明は、壁に色付く紅に溶けたように火が灯っているのかすら分からないほどに小さくなってしまった、



すでに、熱い。という言葉では現すことなど出来ないほどの温度が2人を包んでいた。

真っ赤に爛れた皮膚、朦朧とする意識、拭った汗が赤く染まる。

その赤が、壁の所為なのか、自分のモノなのか、その事すら分からない。


「…っ、お、じ…」

「…呼ば、たのは…僕だ…お、まは…上、に…先に…」



シュアは、声にならない静止をリタへ放っていた。

上げられた腕はリタを掴むことなく空を掴んだだけで終わった。




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