最終章
第3章
〜告白の時〜
美香のクラスの友達は
好きだ嫌いだ
告った振った
彼氏ができた
別れた…
毎日のようにそんな事ばかり話していた…
はじめのうちは
みんな彼氏ができたと嬉しそうにはしゃいでいるが
時間が経つと
ほとんどの友達は別れてしまっている…
そしてまた
新しい彼氏を探すのだ
理沙と二人で
廊下を歩いていた美香は
こう言った
「みんな付き合っても別れていくよね
恋って…一体なんなんだろうね…」
理沙
「そんなに深く考える事ないと思うよ!
和也君のコトが本当にスキなんだったら
普通に付き合えばいいと思う!」
美香
「うん…私も本当に和也のコトがスキだよ、
もし付き合ったら
毎日がすごく幸せなんだろうなぁ〜って思う
でも…どうしても
別れた後の事を考えてしまうんだよね…
毎日幸せなぶんだけ
毎日不安になってしまう
そんな気がして…」
美香は人をスキになったことはあったが
ここまで
自分からアプローチして
半分ストーカーみたいな行動をとってしまうほど
人をスキになったことはなかったのだ…
美香は
この恋が本当の意味で
自分にとっての初恋なんだなという想いだった…
人を本当にスキになると
こんなにも嬉しくて…
こんなにも楽しくて…
こんなにも愛しくて…
そして、その想いが
強ければ強いほどに
こんなにも苦しいものなんだ…
そう実感していた…
その頃
和也は同じクラスの友達
勇二が
「彼女に振られた…」
と言って
落ち込んでいたので
崇と二人で励ましていた
崇は普通に勇二と話をしていたのだが
和也は
話を進めていくにつれて、
どこか他人事じゃないような気がしてきた
そう
約束の日曜日はもう明日だったのだ
その日は
学校が昼までだったので
いつもの4人で
待ち合わせをして、昼ご飯を食べに行った
そして
いつものように話をした
崇
「いよいよ明日だな!」
美香
「楽しみだね!」
和也
「崇はおとなしくしとけよ!絶対に恥ずかしい事はするなよ!」
崇
「あはは!どうしよっかなぁ〜、暴れちゃおっかなぁ〜!」
美香
「コラッ!」
理沙
「崇〜!絶対に…」
崇
「ウソでした!」
理沙
「よしよし!」
美香
「あはは!」
理沙
「明日は何から乗ろっかなぁ〜」
崇
「それはもちろん俺からだろ〜!」
崇以外の3人が口をそろえて言った
「それはない!」
そんな感じで
楽しい会話が終わると
「じゃあまた明日な!」
と言って
4人は帰った…
その夜
和也はずっと美香のコトを考えていた
どんな場所で告白するか
どんな言葉で伝えるか
色々考えた後
「よし!明日は絶対に美香を恋人にするぞ!」
と言って
眠りについた…
そして
約束の日曜日が来た
美香と理沙は
みんなで行く初めての遊園地だからと
いつもより気合いをいれてオシャレして
待ち合わせの駅に向かって歩いていた
理沙
「今日もしかしたら告白されるかもね!」
美香
「え、そうかなぁ〜!そんな事ないと思うケド…まあ楽しもう!」
理沙
「そうだね〜」
一方
和也と崇も一緒に駅に向かって歩いていた
和也は美香への告白の事で頭がいっぱいだった
そんな和也に崇が話しかけてくる
崇
「お前はなにを緊張してるんだ?そんなのサラっと言っちゃえばいいんだよ
サラっと!」
和也
「そんなに簡単な事じゃないんだよ!」
崇
「俺はサラっと言っちゃたケドなぁ〜」
和也
「おい、お前と一緒にするな!俺も色々考えてるんだから」
崇
「あ!そんな事より俺は気合い入れて、眉毛にラインを入れてきた!めちゃめちゃイケてるだろ?」
和也は崇の眉毛にラインが入ってるコトぐらい
今朝、会った時から気付いていたのだ
ただそこにコメントする余裕がなかっただけだ
しかもよく見るとラインの幅が太すぎてダサい
和也は
「おう!カッコイイじゃんイケてるぞ!」
と適当に言っておいた
そして…
「おはよう!」
待ち合わせの駅に4人が揃った
「じゃあ行くか!」
4人は電車に乗る
今日の美香はいつもよりもさらに可愛かった
和也
「その服すごく似合ってるよ!」
美香
「本当に?ありがとう!和也も似合ってるよ」
その横で崇が
崇
「今日の俺はどこか違うだろ!なんか気付いた?」
理沙
「眉毛でしょ!」
崇
「さすが俺の彼女!」
理沙
「失敗したの?」
崇
「え、あっ、うん!」
意味のわからない会話をしていた
4人が遊園地に着くと
みんなのテンションが一気に上がった
園内に入った瞬間に
崇は走る
そしてコケる
それを見ていた理沙は
他人のふりをする
4人は楽しむ…
2時間ほどみんなで遊ぶと
2組に別れた…
和也と美香は
少し小高い場所にあるベンチに座った
美香
「楽しいね!」
和也
「そうだね!」
なぜか4人でいた時よりも口数が減った
2人はお互いにどこか緊張しているように思えた
そこで和也が言った
和也
「あのさぁ〜!俺達ってまだ付き合ってないじゃん…」
美香
「うん!」
美香
「あ!観覧車に乗りに行かない?」
和也
「うん、そうだね!」
また美香が話題を変えた
二人は観覧車に乗って
向かい合わせに座った…
和也
「さっきの話なんだけどさぁ〜!」
美香
「うん!あ、景色がキレイだね!」
美香はまた話をそらそうとしていた
和也は美香の横に座って
美香の手を握った
和也
「美香、逃げないで聞いてほしいんだ!」
美香
「うん…」
美香は少しうつむいた
和也
「俺は…美香のコトがスキだ!」
美香
「うん、ありがとう」
和也
「美香は俺のコトをどう思ってる?」
美香
「スキだよ…」
美香の瞳から涙が零れる
そして和也の口調が少し強くなった
和也
「大スキなんだよ!美香のコトを想うと夜も眠れないんだ…」
和也の瞳にも涙が滲む
美香
「うん…」
和也
「それぐらい美香は俺の中で大きくて、大切な存在なんだ…
でも…
その想いを伝えようとするといつも
美香は話をそらす…
だからいつも不安で不安で仕方なかった…」
美香は大粒の涙を流しながら言った
美香
「ごめん…本当は私も和也のコトが
大スキなの
スキでスキでたまらない
でも…
今までこんなにも
人をスキになった事がなかったから…
どうしたらいいかわからなくて…
不安で仕方なかった…
和也は二人がお互い臆病になっていたから
すれ違いがおこっていたんだと思った…
和也
「美香も俺のコトを想ってくれているなら
その証がほしい…
だから付き合ってほしいんだ…俺と…」
美香
「でも付き合ってしまうといつか
別れが来るような気がして…恐いの…
友達にも戻れなくなっちゃったらイヤだから…
だから…私たち…
友達でいようよ…」
和也は
お互いがお互いを想い合ってるのに
付き合わないなんて
理解できなかった…
和也
「本当に友達のままでいいの?」
美香
「友達のままだったらずっと友達で
いられると思うから…
和也を失いたくないの!
大切な人だから…
だから恋人みたいな友達でいたい…」
その時和也は
美香がそういう想いで
友達でいたいなら…
それでもいいと思った…
美香をそっと
優しく抱き締めた…
壊れてしまわないように
そっと…
大切な人だから…
和也
「俺は絶対…どこにも行かないから…
いつも
美香のそばにいるから
だから…
恋人みたいな友達になろう…
俺もそれでいいから
美香
「うん!ありがとう…スキって言ってくれて!」
和也は
美香が自分のそばに
いてくれるだけで
強くなれるような気がした
美香も
和也がそばにいてくれるだけで幸せだった
それからも二人は
その関係を続けていた…
もちろん周りは
二人が付き合ってると思っている
誰かに
「二人は付き合ってるんだよね?」と聞かれても
「うん!」と答えた…
そう答えておかないと
誰かに君を奪われるような気がしていたから…
だからみんな恋人だと
思ってた…
二人の中では
友達という名の恋人だったケド…
みんなには
説明してもわからないから
付き合ってると答えてた
それから年月が過ぎた今
君はもう
僕の横にはいない…
今思うと
友達という名の恋人なんて初めからなかったのかもしれない…
お互いを失いたくないから
傷つけたくないからただ
二人が
作り出しただけの言葉だったのかもしれない
僕達は付き合っていた
みんなの中でも
そして
二人の中でも…
色んな恋の形がありますよね!いかがでしたか?最後まで読んでいただいてありがとうございます。