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7.風呂と夜の銭湯もとい戦闘

 宿屋に戻ってきた。


 レオ達は三人部屋を二つ取ってくれていた。

荷物はアイテムポーチが一つだし、片方の部屋に集まって明日の予定を話しながら、入りたい人から風呂を使い、寝たい人から隣の部屋に行って寝始めるという個人行動万歳な部屋割りだ。

まだ割っていないとも言う。


 今日は戦ってばかりいたので明日は明るくなったら、街の散策と武器防具の新調をする事になった。地図に出ている大まかな街の配置を確認しながら、東門の北側にある職人街まで行ってみることになった。その前に噴水広場に面した武器屋防具屋に寄って価格調査してから行こう、という話になったところで思い出した。


「そういえばさっき露店で武器屋と防具屋の裏手にも小売店と道具や武器防具を扱う露店があると聞いたぞ」

「ああ、言ってたね」


 計画は武器屋防具屋に寄って、小売店回って露店を見て職人街になった。あとは北西の区画になにがあるか謎なので時間があればそこにも行くことにした。

遅ればせながらこの街の探索だ。


 だがその前に夜明け前の戦闘をするんだがな。



 明日の予定が決定し宿代の清算をしたところで、レオと菊姫が風呂に行く。

宿代は一人300シル、初期の所持金から考えたら高い!! 私の分を立て替えてくれていた、お茶漬と菊姫には感謝だ。



「うをぉっ! 異次元空間!!」

風呂場からレオの叫びが聞こえた、ちなみに菊姫は隣の部屋の風呂だ。

「何だ?」

「何だろう?」

「風呂で奇行がッ」

「ふ」


 その後は普通に水音だけで静かになり、四人でしゃべっているとレオが出てきた。カラスの行水だな。


「タオルで出てくんなっ!」

お茶漬の声にレオを見れば実にいい笑顔でタオル装備のままだ。


「なあ、なあ。異次元空間だぜ、これ!」

レオが自分のタオルをめくろうとするが、鉄壁のガードで柔らかそうなくせにめくれない。

「見せんでいい! 小学生か貴様!」


 宿屋なんだから静かにしようぜ、お茶漬先生?


 その後、私も風呂へ。

脱衣室で脱いで、下着から脱衣所に用意されていたタオルに装備を変える。素っ裸にはなれない仕様のようだ。

水道なのかと思っていたら魔道具設定? らしく、空の湯船に入ると見る間にお湯が浴槽の底からせりあがってきた。なかなか快適。



 あと、私も異次元空間でした。



 成人以上指定ゲームでアレな注意書きもあったので、多分設定をいじれば全部脱げるのだろうが、今の所は脱ぐ予定はない。



 全員風呂から上がってベッドへ。こちらの時間で一日で三時間ほど寝るか、ログアウトの時間を現実時間で二十分とらないとステータスが大幅に低下する。

 因みに宿屋などできちんと寝ると起きてから三時間ドロップ率が少し上がる。まだ低レベル帯だし、レアがドロップしたところで大した事はないだろうが、早起きは三文の徳というやつか?早起き関係ないけど。


 現実時間は23時。三時間で一日が過ぎる。ログアウトは普通に選ぶこともできるし、こうしてベッドに入る時に睡眠状態になったらログアウトする設定も選べる。

あとは現実世界での体が生理的欲求を伝えてきた場合五分後には強制ログアウトがかかる。

強制がかからないうちに今一度ログアウトするつもりだ。戦闘中落ちて慌ててトイレ行って戻ってきてもあっちの五分が此方では四十分だ。その辺はなんとかならないんだろうか? ならないんだろうなぁ。



 そんな事を思っていると現実世界で意識が覚醒した。あちらの世界は寝つきがいいらしい。

バイザーを外して、トイレに行き紅茶を淹れてひと息。軽いストレッチをしてまたバイザーをかぶる。




 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆




 隣のペテロとシンの起き出した気配に私もしぶしぶ起き出す。外は真っ暗で、ここまで感覚が再現されていると、まだベッドでゴロゴロしたい気分になるのは仕方がないだろう。眠気が全くないのが不思議だが。

起きるとHPMPが回復しており、EPが減っている。

 あと、ガラハドからパトカありがとうメールが来ていてびっくりした。酔っ払って出したらしく、判別がところどころあれだが、たぶんそういう内容のはずだ。


 よし! 朝めしだ!

 冒険者に特化した宿なので宿泊者は夜中だろうと、いつでも食堂で食べられるのだ。ただし、昼十二時から夜十時頃までは一般にも開放になるので昨夜のように混む。


 隣と合流して食堂へゆく。


 焼きたての丸いパン、ベーコン、3種類のソーセージ、卵、サラダ、オニオンスープかコーンスープ、ヨーグルト。

 シンとレオが和食はないのかと嘆いているし、準備のしやすさ優先の献立チョイスだとは思うが、パンを割るとパリパリと音がし湯気が出る、中はしっとり。バターをたっぷり塗って幸せだ!


「納豆は実装されないのか!」

「和テイストの集落とかくればあるんじゃないかな?」

納豆納豆言う割には二人も完食して旨かったと満足していた。


 宿の外に出ると、ギルド越しに噴水広場が見え、宿とギルドのある大通りは街灯のオレンジがかった光が道を照らしてる。噴水広場に面した店は明かりが煌々とついておりどれも営業中だったので、薬師ギルドが出しているという販売所でHPMPポーションの補充をしておいた。蛇がいることを踏まえて毒消しも少々購入。MPポーションは50本も購入。敵のレベルも自分のレベルも低いうちは杖で殴っても魔法を使ってもそこまで大きな違いはなかったのだが、現在さすがに目に見えて違ってきたのでMP切れはまずいのだ。

シルの節約のために、やっぱり【杖術】取ろうか。


 この時間でも広場には人がいるし、門の外にも人がいた。生産や休憩などで散ってはいるものの、初日の金曜とあっては減るはずがない。


「やっぱりいっぱいいるね」

「ニワトリんとこ行く?」

ペテロのつぶやきにお茶漬が提案する。昼間もソロに比べれば私たちのようなフルパーティは多くはなく、暴れニワトリの場所は比較的空いていたので夜もきっと空いているだろう。


「昼と夜で敵は何に変わってるんだろうな、門近く(ここ)の蛇は誰か戦っているの見たけど」

門の傍は敵より人が圧倒的に多いので、見渡してみたところで蛇さえも発見できない。


「昨日は気配察知でマップに出たの、近づかないように逃げてたからね」

夜の敵何がいるかチェックしとけばよかった、とペテロが言う。

「スライムよりキツかぁねぇだろ?」

「武器新調してから行きたいでしけど、夜じゃお店、開いてないでしもんね〜」

「気にするな! オレは気にしない!!!」


 夜の水辺には近づかないことを確認しあって、昼間暴れニワトリがいた場所に向かう。

【暗視】は全員取得したようだ。完全な初期装備は私だけな気がするのでちょっと後ろめたい。


 夜の敵はアクティブで、走っているとヘビに絡まれた。レオは今回【気配希釈】をちゃんとかけているようで絡まれたのはシンだ。


「ぎゃー! すまねぇ!」

「ばか~~ん!」

あわててヘビ2匹を殴ってタゲをとる菊姫。

「ヘビは平気でしょ、気にしない気にしない」

「レオの罠。絡まれたのはシンだけど、絡ませたのはレオな気がするぞ」


 シンも【暗視】は取ってるし、草原は平らなので前に(レオ)がいなければ【気配察知】がなくても目視で避けられたと思う。レオが【気配希釈】のお陰で絡まれなかった範囲に、レオが避けた時点でシンが入ってしまったんだろう。避けるの直前すぎだ、道案内役!


「【気配察知】取ったほうがいいかな、先導が信頼できないクォリティ」

「【気配希釈】の方も、出てるなら戦闘のときの敵視も弱まるから取ったほうがいいよ」

「わはははは」

ペテロも敵を避けるコースの先導ができるけれど、レオが先陣切って走ってるのでつい、ついていってしまった。悲しいかな、私は【暗視】も【気配察知】もあるけど足が遅くて先導できない魔術士だ。

 バラバラに行ってソロ状態で絡まれると厄介なので、絡まれてもパーティー戦ができるように固まって行動しているのである。先導者は敵を避けるルートに誘導するので、暗黙の了解で【気配察知】持ちで足の速いレオかペテロがしてくれている。


【気配希釈】は取った。3SPは大きいけどパーティーで敵からタゲ取りしないように、細かく攻撃調整するよりはずっといい。



「きゃ~毒でし~~~~」

菊姫が悲鳴を上げる、菊姫のHPバーがぎりぎり確認できるくらいジリジリ減って行く。そんなに強い毒ではなさそうで、ほっとしながらヘビにウォーターニードルを打ち込む。危なそうだったら玉使うぞ!本当ですよ。

毒の状態異常は戦闘終了後に消えた。


《ブリムヘビの皮×2を手に入れました》

《ブリムヘビの牙×2を手に入れました》

《ブリムヘビの毒を手に入れました》

《スキルリストに【料理】が追加されました》


 昨日のあれか!!!!

「【毒耐性】きたでし~」

「【料理】が」

笑いをこらえたような声でペテロが言う。

「何故料理!?」

「どう考えてもホムラのせいです」


 ペテロが昨夜の話をして皆に食い意地張りすぎだと笑われました。そういえば待ち合わせ前に露店に行ったのはレオとペテロで、他は普通に広場に面した店で買い物したそうな。むしろ二人は広場の店が未体験、交代でギルド付近で私を待っていて別行動になったらしい、すみません。


「料理は今は無理だからおいといて【毒耐性】は欲しいかな」

「一回みんな噛まれようか」

そういうことになった。



 無事全員【毒耐性】もリストに出し、レベルが上がってもっと楽になったら【粘耐性】も取りに行こうと話しながら、暴れニワトリエリアへ到着。いたのはでっかいネズミ、ブリム大ネズミだ。群れてるだろう予想に反して一匹ずつ草原のあちこちにいる。


「とりあえずやろうか」

「釣ってくるぜ!」

レオが駆け出して大ネズミをつれて来る、アクティブな敵は攻撃範囲内に近づけば一定の距離追いかけてくるので、足の速いレオかペテロが皆が待つ場所へつれてきたところを、菊姫が殴ってタゲを自分に変えて戦闘を始める。誰かが自分をエサにして釣ってきたほうが、全員で散らばる敵まで移動するより戦闘できるまでが早いのだ。


 レオが【気配希釈】かけ忘れて釣らなくていいときに敵を釣るまでがセットである。



「ネズミ、気持ち悪いでし~~~~」

赤黒い目に鱗っぽいものに覆われた尻尾、硬そうな体毛、ハムスターが好きな私でもこれは嫌だ、特に尻尾が。

「「【バックアタック】」」

「【龍】『突』!」

「『鉄球』!」

「【投擲】!」

「【スラッシュ】でし!」

「【天】『伏』!」

初めての敵なので容赦なく全力だ。


《ブリム大ネズミの皮を手に入れました》

《ブリム大ネズミの尻尾を手に入れました》

《ブリム大ネズミの毒を手に入れました》


 見えないからいいもののあの尻尾か。



「呆気なく倒せたな~」

大ネズミのいた場所を見ながらシンが言う。

「お茶漬、【投擲】ってどうやって取ったでし?」

「その辺にあった石投げたら出てた」

シーフの二人は初期スキルに出ていたそうだ。私も後でリストに出すだけ出しておこう。



「ぎゃあああああああああああ」

「嫌でしいいいいいい」


 はい、スキルじゃないのであまりダメージの出ない石投げを私とシンがして、威力は高いけどEP消費も大きい不意打ちを使わなかったら大ネズミが2ターンで倒せませんでした。


 倒せないのはいいのだが、仲間を呼びやがった!

 増えた仲間は二匹、最初の一匹を倒しきって次を全力攻撃したのだが、一匹は残ってしまってまた仲間が増えた。さすがネズミ、ネズミ算!!!


 結局5ターンの間、仲間を呼び続けられ十一匹の大ネズミを倒した。効率がいいんだろうか悪いんだろうか。ソロはアウトだな!!


「ネズミに噛まれるのがショックでし……」

毒にはなるし菊姫は散々だ。


「きついかもだけど、ドゥドゥのとこ行っちゃう?」

「MPポーション多めに用意したし、それでもいいぞ」

「同じく」

シンの提案に乗る私とお茶漬、現実世界でも菊姫はネズミが苦手だ。


「ごめん、あと一匹いいかな?尻尾の納品十本で今九本なんだ」

「う、う~、がんばるでし」

「あ、私の尻尾一本やるぞ」

嫌なのに尻尾は十二本もありやがります。むしろ皮が九枚だ。

と言うわけで、ペテロと尻尾と皮を交換して先に進むことにした。他のみんなとも交換して全員尻尾、皮とも十ずつに。


 ドゥドゥが居た場所には赤まだらなカエルが陣取っていて、ゲコゲコ鳴いていた。色からしても毒持ちだろうと予想ができる、夜の平原は毒持ちで揃っているようだ。


「なあ、もしかして毒耐性って毒受けないと上がらねぇの?」

「気づいてしまったか」

シンは【毒耐性】取ったのか。

「レベル上がってダメージ受けなくなったらソロで蛇に延々噛まれてればあがるんじゃないかな」

無駄に爽やかにペテロがひどいことを提案する。

「わははははは。がんばれ!」


 とりあえず毒ガエルは事件もなく狩れ、その後森へ行ってコウモリ相手に魔法と投擲大活躍。シンが「毒耐性じゃなくって投擲とればよかたあああああああ」と叫んだところで日も昇ったので街に。

 レベルは7になったし、【水魔術】と【金魔術】も上がったので、二つとあまりレベル差がつかないうちに新しい魔術を取ったほうがいいだろうかと検討中だ。



 ギルドで報告して広場のレストランで休憩。

 なんとなく出される飲み物や運ばれる料理を鑑定、同じ評価4でも値段が高いものほどEPの回復量も多い、露店の料理はおいしかったけれどEPの回復量が少なく安価だった。凝った料理ほどEPの回復量が多いようだ。高い料理はRankも高い。そして住人の作るものは基本評価4固定だ。


「いいナックル欲しいな~」

「アイテムポーチの容量上がっているものが切実に欲しい」

紅茶を飲みながら訴える私。

「売り払ってきれいさっぱりすればいいのに」

「薬士だから薬草とかとっておきたいのだ」

錬金で使いそうな毒とか牙も数種類とってあるしポーチを圧迫しまくりだ。

「わたちも皮がいっぱいでし!」

「この世界、倉庫はないのかね」

「まあ、これから行くところにあることを祈ろう」

採掘&釣組は余裕な表情だ。


「あ、異次元空間オプションで解除できるってよ」

コーヒーを飲みながら掲示板を見ていたらしいお茶漬が唐突に話題を振ってくる。

「風呂でタオル脱げるようになるのか」

「オレ、そんなところまで造形した覚えがないけど大きさはナニで決まるのか」

「個室では脱げるって」

「意味深な」

「悪い大人でし」



「ところでホムラ、誰がNPCカードもらったか掲示板で話題になってるぞ?」

ぐふッ!




□    □    □    □    □ 

   

・増・

Lv+1

スキル

【気配希釈】


□    □    □    □    □    


ホムラ Lv.7

Rank E

職業 魔術士 薬士

HP  160

MP  253

 STR 10

 VIT 11(+1)

 INT 31(+1)

 MID 13

 DEX  9

 AGI 10

 LUK 10


NPCP 【ガラハド】【-】

称号 【交流者】


スキル(5SP)


■魔術・魔法

【火魔術Lv.3】【金魔術Lv.3】【水魔術Lv.2】

■生産

【調合Lv.1】【錬金調合Lv.1】

■収集

【採取】

■鑑定・隠蔽

【道具薬品鑑定Lv.1】【植物食物鑑定Lv.2】

【動物魔物鑑定Lv.3】

【気配察知Lv.1】【気配希釈Lv.1】

■強化

【知力強化Lv.2】

■その他

【MP自然回復】【暗視】【地図】



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― 新着の感想 ―
[一言] この頃はこんな一般的なステータスだったんだなー
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