78.覚えきれない効果と指輪が３つ。
神々が消えると私も乳白色の不思議空間から元の部屋に戻った。
《お知らせします、『マスターリング保持者』及び『主なる神八柱』が揃いました。これにより情報を開示いたします》
《これより『ドラゴンリングシステム』と『闘技場』を開始します》
《『闘技場』では合法的にPvPをお楽しみいただけます。プレイヤー同士以外にも腕自慢の住人の参加もございますのでお楽しみください》
《この世界には住人を含め "剣" "拳" "魔" "聖" "技" の『マスターリング』保持者が各四名ずつ存在し、【剣王】【闘王】【賢王】【聖王】【技王】の称号を持ちます。なお、それぞれリング保持の条件は異なります》
《『マスターリング』はより条件を満たした方に移行し、失った方の称号は【王】から【元王】にかわります》
《さらに、それぞれ【剣帝】【闘帝】【賢帝】【聖帝】【技帝】の称号が存在し、【皇帝】の称号を得た方のマスターリングは意匠が竜に変わり、『ドラゴンリング』となります》
《同系統のリング保持者同士、『闘技大会』で戦い『勝利』することにより【皇帝】の称号は移行し、【皇帝】の称号を失った者は【王】、もしくは【元王】にかわります》
《最初の『ドラゴンリング』保持者は闘技場で【皇帝】となっている住人であり、この住人はリングを賭けた戦いに負けた場合、【王】とはならずに勝者の能力をコピーした【皇帝の騎士】となります》
《【皇帝】が『闘技大会』に出場しない場合、【皇帝の騎士】に勝利したリング保持者は、大会以外での【皇帝】への挑戦権を得ます》
《【皇帝】が一定期間、挑戦者の挑戦を受けなかった場合、【皇帝】の称号は挑戦者に移行します》
《なお、『闘技場』以外でのPvP、及びPvPを求めてのつきまとい行為は各国により刑罰が定められておりますのでご注意ください》
ワールドアナウンス終了。
アナウンス終了と同時に見えないようにしていた、右手と左手の人差し指の『マスターリング』が現れ、輝いてまた消えた。
もう本日はいっぱいいっぱいです。
隠蔽陣――菊姫改造布団とも言う――と枕を出して寝た。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昨日は、神々との遭遇時は時が止まっているとはいえ、ここにたどり着いた時にはすでに結構な時間だったので慌てた。本日は、「明日は休みだ」を心の中で何度か繰り返して仕事を済ませる羽目に、反省反省。
神々との邂逅時は時が止まっているというか、イベントが終了して外に出ても時間が経っていない。技術的には止まっているのとは逆でイベント中は現実世界の一秒が三日になっているとかそんな超高速処理がなされているのだろう。大丈夫なんだろうか私の脳みそ、脳内伝達は光信号なはずなので光の速さと考えれば問題ないのか？
よくわからんので考えない事にしよう。イベント中に時間オーバーの警告音がなっても困ることだけは確かだ。
【生活魔法】で水を出して洗顔を済ませ、朝食をとる。こっちでは宴会続きだったので気分的に牡蠣の粥にしてみた。
別に具合が悪いわけではないので米の形が完全に残った粥だ。薄く塩味をつけ青菜を混ぜ込んだ粥が出来上がる寸前、牡蠣を投入、蓋をして蒸らす。生に近いぷるんとした牡蠣入り粥の出来上がりだ。
朝から至福になれる。
人心地ついたところで称号とスキルの確認をば。
何か闘技大会のアナウンスもあったが、PvPは慣れてしまえば何てことがないのだが、あの雰囲気に入るまでにちょっと抵抗があって苦手だ。住人とも戦えるようだし、後でちょっとのぞいてどんな雰囲気か見てみよう。
称号【神々の印】魔法系・聖法系の効果上昇と範囲拡大、物理攻撃の効果とクリティカル率上昇。物理防御5％上昇とパーティーメンバーの全耐性5％上昇。
【ヴァルの祝福】以上を持つ場合、結界魔法で『青の結界』を使うことができるようになる。
【ドゥルの祝福】以上を持つ場合、神聖魔法で病気を癒すことができるようになる。
【ルシャの祝福】以上を持つ場合、スキル【スキル返し】の発現。
【タシャの祝福】以上を持つ場合、結界魔法で『緑の結界』を使うことができるようになる。
【ファルの聖者】は聖法系の効果上昇と範囲増大。また土の神【ドゥルの祝福】以上を持つ場合、病気を癒すことができるようになるだった。
【アシャの勇者】【ヴェルスの勇者】【ヴェルナの聖者】は取得したとほぼ同時におさらばしたので称号効果を読んでいないが【神々の印】の効果のいずれかが対応していたのだろう。
そして【結界魔法】は持っていません！
称号【ヴァルの羽根】風との親和性極大。
スキル【空中移動】【空中行動】の発現。
称号【ドゥルの果実】土との親和性極大。
スキル【緑の大地】及びヴァルの寵愛を持つ場合【風水】の発現。
称号【ルシャの宝石】金との親和性極大。
スキル【意匠具現化】及びヴァルの寵愛を持つ場合【ストレージ】の発現。
称号【ファルの睡蓮】水との親和性極大。
スキル【水上移動】【水中行動】の発現。
称号【タシャの宿り木】木との親和性極大。
スキル【神樹】及びヴァルの寵愛を持つ場合【解結界】の発現。
【スキル返し】は戦闘中に受けたスキルを同じ戦闘中に一度使用できる。
はっはっはっ！ 貴様の技など簡単に真似ができるわッ！ などという遊びが期待できる。ちょっと楽しみだ。
【攻撃奪取・生命】攻撃時にHP回復。回復量は与ダメージとレベルによる。以前【攻撃回復・魔力】はタシャから貰ったのでこれはアシャからかな？
スキル【空中移動】【空中行動】読んで字のごとく。空が飛べる！ 魔法にもあるような事を言っていた気がするが先にスキルがきた！
スキル【緑の大地】は植物を枯らさず一番良い状態を保つことができる。
まだ畑を手に入れてない罠よ。【植物成長】と合わせて薬草やら野菜の育成に大活躍！ ……の予定。
スキル【風水】天候と地形をかえる。効果はレベルとそれぞれを司る神との親和性。例えば『噴火』はアシャとドゥルの【祝福】以上が無いと発現しない。劣化版？ の【風水術】とはもはや別物、とある。
スキル【意匠具現化】一度手に入れたものなら形を再現できる。【ルシャの指先】がある場合、既成品の意匠を変えることができる。見た目だけかえられるようだが人が、作った物を写すのは同意がない限り避けるべきだろう。
スキル【ストレージ】アイテムポーチがいらなくなった。手ぶら行動極意。
スキル【水上移動】【水中行動】読んで字の如し、水中戦あるのかと不安になるスキルだ。
スキル【神樹】神木をはやしその地とその地に住まうものを活性化させる。
スキル【解結界】肝心の【結界】を覚えていないのだが、人様の結界は解読して壊すなりスルーして入るなり出来るようになる、ようだ。
スキル【ヴェルスの守り】全属性耐性60%、さらに各属性を司る神との親和性によってアップ。私怖い事になってないか？ 気のせい？ 【神々の印】にも耐性あるよな？
スキル【ヴェルナの守り】状態異常耐性60%、こちらは毒やら麻痺やらの耐性。さらに各属性を司る神との、以下略。
スキル【降臨】会った神の化身を喚び出す。ただし、次に呼び出すにはまた出会わねばならない。現在召喚可能0柱。……あれか、宴会後は全員の化身を呼び出せるとかそういうオチか。
『生命の木の苗』生命の木の苗。たぶん回復薬系の素材。
『タシャ白葉の帽子』白いつばのあるとんがり帽子、ちょっと先が折れ曲がっている。性能的にはINT及びMP50%増しと魔法防御50%増し。
『ヴェルナ白夜の衣』こちらも白い織が違うのか光の角度によって裾などに模様が見えるコート。MID及びMP50%増しと魔法以外のスキル耐性50%増し。
『ファル白瀧の下着』純白の刺繍入りブリーフパンツ。魅了極大。
「いらんわ！！！！」
思わず床に叩きつけたら、ぼふんという音とともに白煙が上がりアナウンスが流れた。
《『ファル白流の下着』を取得しました》
「また下着かよ！！！！！」
そう思ったのだが、下着は下着でもアンダーウェア、鎧やコートの下に着るぴったりした服だった。ぴったりしすぎて腹筋がくっきりですが。効果は【全天候耐性】、装備同士などの【相克無効】、【魅了】。
……魅了はどうしても付けたいのかファル。
そしてブーメランパンツ単独より性能下じゃないかこれ？ いや、あのパンツを単独で穿く気がないなら、上に服を着た状態で【全天候耐性】そのままなんだから他に細かく付いているよりもいい、のか？
まあ、少なくともアイテム効果は別としてパンツよりははるかにいいが。パンツからアンダーウェアに変わったのを釈然としないながらも眺める。
これ装備した途端パンツに戻ったりしないよな。
若干不安だ。
装備同士の相克というのは相反する属性の装備をつけていると強力な装備ほど互いに能力を打ち消しあうらしいのだが、それを無くするらしい。属性防具持っていないから関係がないがな！！！
ブーメラン単独＞白流単独でも服の下でも能力変わらず＞服の下に着たブーメランという能力順。
残念女神の本気はパンツに傾いているようだ。
『ヴェルナの闇の指輪』は繊細な銀（？）細工に小さな紫紺の宝石が付いている。この指輪をはめたものは全能力が二分の一にされ石に血を吸わせた対象に力を送る、という呪いの指輪めいたもの。
なんでまたこんなものを、と思っていたら、はらはらと黒い揚羽蝶のようなものが飛んできたかと思うと目の前で紙に変わった。落ちることなくひらひらと漂うそれを手に取ってみると手紙だった。
「元は『闇の指輪』という呪いのアイテム」
「解呪してあるから安心して」
「目立つと煩い。うるさいのは嫌い」
「ハスファーンとバハムートに使うといい」
「二匹とも永の封印で弱ってる」
「あとバハムート黒くする」
「黒と銀なら私もできる」
あれです、ヴェルナからだった。目立ちたくない私のためにパーティープレイではこの指輪をはめたらどうかとそんな気遣い？ ヴェルスに爪の垢を煎じて飲ませてやってくれ。
ただの能力減退なら、つける気にならなかった気もするが、白とバハムートの回復がついてくるならつけてもいい。呪われたままだったら外すこともできずに対象に力を奪われ続けるとかそんな指輪だったのだろうか？ 危ない指輪である。
早速、装備に沁みたバハムートの血を見つけて擦りつけてみたり。
あと何か【意匠具現化】に追記が出て、『白黒、金銀』に限って「名前の色付き」さえ無視して色変えできるようになった。『白・金』がヴェルスを表す色、『黒・銀』がヴェルナを表す色だったはず。ヴェルスのおかげで思わぬおまけがついた。
だがそうかバハムートが白く変えられたままだったのか……。
ありがたい気遣いだな、と思いつつ手紙をしまうと荷物にではなく受信メールに追加された。試しにありがとう、と返信したら、また蝶が飛んできた。
「次回あった時にプリン」
と、一言。
もしかして引きこもりの女神ヴェルナとの連絡方法ゲットなのかこれ。
