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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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72.酒屋

 さて、本日も遅番ログインにつきいつものメンツはすでに迷宮にいる様子。


 ファストの宿屋で朝食どころか昼食とも言えない寝起きの食事をしながら本日の予定を考える。

 私の利用する宿屋は所謂冒険者向けの宿ではなく、どちらかというと商談に来た朝は規則正しい商人向けの宿だ。本来ならこんな半端な時間に食事は出ないのだが食材を差し入れる代わりに手が空いた時なら出してもらえるようになった。


 今回は夕食用に仕込み始めた素材を使ってバケットサンドと野菜スープ、フライドポテト、手のひらくらいの小さなステーキが出てきた。この宿屋の親父はまた料理の腕をあげたらしい。臭みのない肉はクセもなく柔らかい、肉汁と混ざったソースがまた美味しくポテトでぬぐって食べた。


「もらった肉小さくてすまんな、夕食を予約している泊まり客に付ける分を考えるとあの大きさなんだ。最近は宿で飯を食う客が増えた」

親父が食後のお茶を出してくれ皿を下げながら謝ってきた。

「いや、変な時間に食事を感謝する。うまかった」

などと礼を言ってみたが、内心嵐が吹き荒れている。美味しかったよ、うん。イメージ的にもっと硬くてもしくは臭くて下ごしらえが時間かかると勝手に思っていた。だから出るのは夕食に、だろうと。渡した時に喜ばれたのも単に珍奇な肉だからだと思っていた。


 私が渡したのはオーク豚の肉だ。


 ぐふっ!

 いつものメンツ(やつら)に食べさせて反応見てから食うか食わないか決めようと思っていたのに。まあいい、美味しかったんだからもうこれはオークの飼ってる豚の肉だと思おう。そうしよう。



 若干精神的ダメージを受けて宿を出る。

 まずは放置していた暗殺の報告から。


 報告は特に変わったこともなく、報酬の金を受け取り次の依頼を提示されて終了。中肉中背の男が名乗ったがジョンドウだったのでやはり状況は変わらない。


「ジョンスミスでもいいぞ」

などと言っている男に、この世界もスミスやらジョンやらジェーンが多いのだろうかとあさってなことを考える。ジョンドウは日本語で名無しの権兵衛、ジョンスミスやジェーンスミスは英語圏で一番多い姓名であからさまに偽名を匂わせている。


 権さんとでも呼んでやろうか。


 闇の気配に引っ張られないよう早々に暗殺者ギルドを後にする。

 あんまりこの雰囲気に浸かっていると、本気の厨二病を発症しそうだ。分かっていて楽しんでいる厨二病プレイならともかく、本気の厨二病は黒歴史が紡がれてしまう。


 日が暮れ始めた路地を歩き、馬車を拾って広場へ。

 委託販売をチェックして生産所に行きたいのだが、その前に面倒ごとを済ませよう。商業ギルドの受付にギルド長の呼び出しできたことを告げしばし待つ。

 三匹のオークを倒した後に商業ギルドに提出した書類を見たのだろうタイミングから謝罪メールが入っていたがずっとスルーしていた。私的には現実世界が挟まるので一日放置な気分だがこっちでは一週間近く経っている。何度か改装中の店舗にも来たらしく、建築士のトリンからもメールが届いていた。


 ログインして読んでいない分のギルド長からのメールに目を通せばだんだん弱って行く過程が見えた。

 私が提出した書類は、酒を卸すことの契約破棄手続き書類。出した時は最悪委託販売を含めてここの商業ギルドと縁が切れると思っていたのだが、まあ連絡が最初から謝罪だったのでその辺は平気なようだ。


 このイレギュラーなギルドへの酒の委託販売はもともと面倒ごとが御免な私が、面倒ごとに巻き込まれないのを条件に受けた契約だ。


「顔を出したくないならある程度稼いで余裕が出来たら人を雇って店舗を持つのもいい。この街で酒を流通させてくれるなら商業ギルドは便宜をはかるよ」

ともモスギルド長が言っている。

 契約は「生産者(レンガード)(ホムラ)だということを極力隠すこと」をバッチリ第一条件にしているにもかかわらず、このハンバーガーはエカテリーナにバラしているのでそれを理由に契約破棄を申し渡した次第。


 まあ、単なる八つ当たりなんだが。

 エカテリーナにアジフライ、レンガードの名前がついた料理を迂闊に渡したのは私だ。多分、私の名前入りの酒は神殿にも納品されている。モスギルド長に商業ギルドに酒を卸しているレンガードが私ではないかとニコニコとカマをかけるエカテリーナが容易に想像できる。やたらカンはいいし押しが強い女性だ。

 アジフライが痛恨のミスで、エカテリーナとの掛け合いは私の負けだ、なので拾った二人との関わりも受け入れた。店舗と店員の話は評価10をいい加減売りたいが、顔を出したくないので露店は却下な私にとって渡りに船なところも見透かされているようで腹立たしいわけだが。とりあえずアシャの仮面装着必須かな? 反省反省。


 でも、契約条項破っちゃいかんよな?

 破ったことさえ気づいてなさそうだったが。大丈夫かこのギルド。というわけで、もしこの契約破棄にギルド長が怒って新しい店舗を含めて私との関わりを断つならと、そっと自分の中で賭けをした。実際この街に酒の販売者が居なくなっても元に戻るだけだしな、生活必需品という訳ではなし、さほどギルドは困らないだろう。


 片方は店員つき店舗の欲しい気持ち、片方は見透かされてお膳立てされてしまった苛立たしさ。どうやらメールの様子では苛立たしさのほうは捨てて忘れたほうがよさそうだ。見方を変えれば三方よしの条件なわけだし。


 などと思いながら呼ばれたギルド長室に行くとモスギルド長に土下座せんばかりに謝られた。憧れの方に惑わされてしてはいけないことをしてしまった、と。


 憧れ?


 黙った私にギルド長が益々身を小さくして謝る。

「エカテリーナに憧れ?」

 確かにニコニコしているせいか慈愛に満ち溢れて見え何処か茶目っ気があり憎めないがあの押しの強さが全てを相殺しているアレに憧れ? あの金の亡者に憧れ?


「新しい方はご存知ないか。あの方を崇拝する人は多いよ」

ダンディな壮年の男が頬を染めて恥じらう様子に戦慄した。凄くいたたまれないです、助けて。


「ああ、僧服のあの方に笑顔で踏まれてみたい……」

「……?!」

今一瞬ものすごく見たくない絵面が浮かんだ。抹消、抹消しなくては!


「ごほっ。エカテリーナ様の為なら協力は惜しまないが、これは個人の感情だ。ホムラ殿と交わした公の契約に背いてしまったのは全面的に私のミスです」

ドン引きしている私に気づいたのか悶えるのをやめ話題を戻してくる。

 あ、エカテリーナには口止めしてくれたそうだ。もっとも彼女のことだ、口止めするまでもなく人には話さないだろう。人の秘密はその人を動かしたい時に効果的に使うタイプだ。

 それに秘密をバラされたら私がサッサとトンズラすることも予想できているはずだ、彼女から秘密が漏れることはないと思っていい。

 というか、むしろトンズラできない貴様の秘密をなんとかしろ! ギルド長!


「今回の詫びとして私個人の資産から店舗に転移陣をつけさせていただく。契約破棄は致し方ないとして、住人に対しての酒の卸売りをしていただきたい。」

座ったままではあるが膝に手を置き頭を下げてくる。



・神殿から店舗へ登録者のみの一方向な転移プレート。

・店舗内からの委託販売へのアクセス。

・ストレージ機能。

・販売許可と言う名の露店にあるような売買システム。


 店舗につける機能としては上から順に高い。特に一番上が商業ギルドの推薦と領主・神殿の許可がいる上、馬鹿高い。使う場合に使用料もかかる。


 住居と店舗が一緒の住人が多く、またそんな面倒な手続きと大金を払ってまでつけている商家は余りない。ただ広場に面した宿屋にはその上位版の登録を上書きできる転移プレートがある、スイートに泊まるようなVIP用で格式高い宿にはつきものらしい。


 はい。

 その転移プレートを店舗につけてくれるそうです。

「領主と神殿には届け出済で、神殿の責任者はエカテリーナ様の言を受け入れるだろう、領主はファイナに独占されていた酒の販売に喜んでいる。問題なく開店に間に合う」

「個人で? 結構な金額な気がするが」

さっきのポロリの口止料が入っていますか? もしかして?


「金はなんとでもなる、転移プレートの設置は許可を取るほうが大変なんだよ」

五千万シルとか聞いたんだが、さすが金持ちなのだな。ガラハドたちもポンと八百万シルを出してきたし住人が金持ちだ。


「個人への販売なら兎も角、卸売りするほど置ける場所が無いぞ」

「そこはそれ、君の店舗の裏にある倉庫を商業ギルドから提供しよう。通常二店舗目の許可はなかなか下りんし、賃料も高くなるのだが、住人に対して酒の卸売りをする限り金はギルドが持つ。卸売の場所さえ確保してもらえれば、他の部屋は生産所にでもレストランでも自由に使ってくれて構わない。酒の生産と卸売りにかかる改装費用はギルドが持つ。それに裏口をつなげて出口が二箇所になれば正体もばれにくくなるんじゃ無いのかね?」


 普通は二店舗目というと隣の敷地を借りて広くするか、大通りなどの条件のいい場所に引っ越すかで追加するらしいが、裏だという。どうやら改装中の店舗に行った時に裏口を見て思いついたらしい。



 出口(・・)が二箇所というのは転移プレートの利用で見られず店舗に入れるが出るところは、と言うのが念頭にあるのだろう。【空魔法】のおかげで神殿に戻る分には何処からでも戻れるのだがモスギルド長はそれを知らないし、教えるつもりもない。

 改装費用がギルド持ちということで蒸留やら生産設備の規模を大きくすれば大量に仕込んで放置で、生産にそんなに時間を取られることはない、はず。


「ふーん、だが特にやる理由がないな。生産を別なところでやって取りに来て貰えば店舗には寄りつかんでもいいわけだし。むしろ酒屋の方の店員増やさねばならんだろうし面倒だ」



《対価を要求せずに住人1000名に食料を振る舞ったことにより称号【餌付けする者】を取得しました》



 おい。

 なんでこのタイミングで?

 ああ、オーク豚肉なのか? まだ夕方だが早立ちをする人はそろそろ夕食をとる時間だ。確かにこちらから要求はしていないが、時間外に飯を出してもらっとるのだが?相手から申し出があった場合はノーカンなのか? 数はアジフライやら臓物やらのエカテリーナに押し付けた分だろうか。


「借地ではなく店舗の土地は君に譲渡しよう、それでどうだ?」

モスギルド長の話を聞き逃しているうちに条件が上がっていた!

「……わかった。だが私は冒険者だ、コンスタントに出荷できるとは限らないぞ」

「ああ、構わない。この街に酒屋があることが大事でな、他のルートで酒が入るのを知った王都の連中が今現在酒のレートを下げてきているし、回される酒の品質も多少上がってきている。君は興味なさそうなので言わなかったが、領主の方から酒の製造者には便宜を図れとお達しがきていてな、受けてくれて助かった。あと先ほどのことは内密に……」

言わねーよ!!! 忘れたいのを蒸し返すな!!!!!!!


 私=レンガードの秘密は商業ギルド関係者からは絶対出させない、秘密保持に全面的に協力。

 私は少なくとも土地の代金並みの酒の出荷は続けること。酒屋の切り盛りは商業ギルドから信頼できる者を出向させること。


 その他こまごまとした条件を決めてギルドを後にする。

 モスギルド長は領主に聞かれてもとぼけて酒の製造者(レンガード)が私だと黙っていてくれたようだ。領主<エカテリーナなのか? と思わんでもないが面倒極まりない予感しかしないので防波堤になってくれていることには素直に礼を言っておいた。

 改装中の店舗を見たいところだがすでにトリンは帰ってしまったろう、残念。



 さて、生産して騎獣でも探しに行こう。

 【餌付けする者】の効果はそのまんま、料理を食べさせると好感度がうなぎのぼりだそうだ。



□    □    □    □    □    

・増・

称号

【餌付けする者】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.34

Rank C

クラン Zodiac

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   1162

MP  1485

STR 50

VIT 29

INT 101

MID 34

DEX 33

AGI 60

LUK 39

※神々の【寵愛】で繰り上がったものがあります。


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】

【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】

【痛覚解放者】【超克の迷宮討伐者】

【防御の備え】【餌付けする者】

■神々の祝福

【アシャの祝福】【ヴァルの寵愛】

【ドゥルの寵愛】【ルシャの寵愛】

【ファルの祝福】【タシャの寵愛】

【ヴェルナの祝福】

■神々からの称号

【アシャのチラリ指南役】

【ドゥルの大地】【ドゥルの指先】

【ルシャの目】【ルシャの下準備】

【ファルの聖者】

【タシャの弟子】【タシャの魔導】

【神々の時】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣王】【賢王】


スキル(1SP)

■魔術・魔法

【木魔法Lv.28】【火魔法Lv.30】【土魔法Lv.28】

【金魔法Lv.27】【水魔法Lv.27】【☆風魔法Lv.29】

【光魔術Lv.27】【☆闇魔法Lv.28】

【☆雷魔法Lv.28】【灼熱魔法Lv.9】【☆氷魔法Lv.22】

【☆重魔法Lv.21】【☆空魔法Lv.23】【☆時魔法Lv.21】

【ドルイド魔法Lv.22】【☆錬金魔法Lv.6】

■治癒術・聖法

【神聖魔法Lv.22】

【幻術Lv.1】

■魔法系その他

【マジックシールド】【重ねがけ】

【☆範囲魔法Lv.25】

【☆魔法・効Lv.19】

【☆行動詠唱】【☆無詠唱】

【☆魔法チャージLv.12】

■剣術

【剣術Lv.29】【スラッシュ】

【刀Lv.29】【☆一閃Lv.24】

【☆幻影ノ刀Lv.19】

■暗器

【糸Lv.29】

■物理系その他

【投擲Lv.6】

【☆見切りLv.27】

【物理・効Lv.10】

■防御系

【☆堅固なる地の盾】

■戦闘系その他

【☆魔法相殺】【☆武器保持Lv.25】

【☆攻撃回復・魔力Lv.21】

■召喚

【白Lv.14】

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.19】

 闇の精霊【黒耀Lv.23】

■才能系

【体術】【回避】【剣の道】

【暗号解読】

■移動行動等

【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】

■生産

【調合Lv.22】【錬金調合Lv.27】

【料理Lv.25】【宝飾Lv.11】

■生産系その他

【☆ルシャの指先】【☆植物成長】

■収集

【採取】【採掘】【伐採】

■鑑定・隠蔽

【鑑定Lv.33】【看破】

【気配察知Lv.36】【気配希釈Lv.36】【隠蔽Lv.33】

■強化

【腕力強化Lv.7】【知力強化Lv.9】【精神強化Lv.7】

【器用強化Lv.8】【俊敏強化Lv.7】

【剣術強化Lv.7】【魔術強化Lv.9】

■耐性

【酔い耐性】【痛み耐性】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】

【暗視】【地図】【念話】【☆房中術】

【装備チェンジ】

【生活魔法】【☆誘引】

【盗み防止Lv.24】【罠解除】

【開錠】【アンロック】



☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの

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― 新着の感想 ―
[一言]【餌付けする者】ってもしかして神にも効くのか……
[良い点] あー、すっかり忘れていた契約!
[一言] 〉憧れ 精々「かつてはファストを代表する美女で〜」くらいだと思ったのに。 踏まれたかったのか……。
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