5.水辺と夜
休憩後、戦闘を再開する。
気配察知持ちが私も含めて三人になったので敵の発見が早い。
主にレオが発見! と叫びながら走ってゆくのについていってるので、戦闘効率的な速さは実は変わらない気もするが。というかレオ、他が付いてきているかとか、別な敵がいないかなどはまったく確認していない様子。
休憩中にシンからMPポーション5本を買った価格で売ってもらいました。拳士なのに何故買ったんだ。
戦闘を終えると、みんなスキルにHP自然回復がでたそうでシンが悶える。
「SP使っちゃったよ! かーっ!」
「わははは、オレもだ! ついさっき!」
「あたちもでし」
「あれ? 私はもう出てたけど、何でだ?」
「戦闘後にスキルリスト更新されるのか」
ペテロがウィンドウでスキルリストを確認しながら言う。
「みたいだね。きっと休憩したからだよね、これがでたの。ホムラもスキル出る前に休憩してない? 他に前と違った行動してないし。戦闘回数ででるなら僕たちとホムラ一緒にでるでしょ」
「あー、したな。休憩した」
「謎が解けて何より」
正しくは寝っ転がってダラダラした、チュートリアルの草原は素晴らしかった!
森に近づくにつれ、暴れニワトリだけだった敵の中に、暴れドゥドゥという腰丈くらいまであるでかい七面鳥のような鳥が混じり始める。蹴りがとにかく凶悪で、スキルを使ってくる。暴れニワトリと違いアクティブな敵だが、一、二匹しかまとめて出ないのでこちらも危なげなく狩れた。
菊姫の防御力とお茶漬の回復のバランスがとれているうちは敵が変わっても安定して倒せるだろう。レオが事故起こさなければ、だが。
敵を発見してアクティブなことに気がつかず走りよって、私たちが追いついたときにはドゥドゥ二匹に蹴られまくって瀕死だった。HP回復薬を飲んでいる間も蹴られているのを見た。今のところソロはニワトリまでくらいか、とその様子を見ながら、ちらっと思う。
「シーフなのに【気配希釈】とってないのか」
「とったけどかけてない!」
「レベルあがらないからかけなさい」
笑顔でペテロがレオに指導。
【気配希釈】はアクティブな敵に気づかれ難くなるスキルだ。気づかれても攻撃を受ける前に菊姫のところに逃げ込めばセーフなのだが、大体レオが先行しすぎて距離がある。
まあ、通常営業です。
戦闘にも大分慣れたので森に行ってみることに。
猪さんご案内〜。
先行していたレオが吹っ飛ばされた。【気配察知】の範囲外から猛スピードで突っ込んできて声を掛ける間がなかった。まだレベルが低いので私の【気配察知】は効果範囲が狭いのだ。いや待て、レオ、気配察知持ちがくらうな!
「ぬああああ!?」
「玉屋〜?」
「鍵屋〜」
すっとぶ姿に思わずお約束な掛け声をかけたらシンがのってきた。
菊姫がスキルを発動させてタゲを取る。
レオが攻撃したわけではないのであっさりチョトツが菊姫にターゲットを切り替えた。攻撃力があるようで一撃で菊姫のHPがドゥドゥ二羽の時より削れている。ふっとばされたレオに到ってはフルだったHPが三分の一以下になっていた。
だが、菊姫がタゲを取ってからは手順は変わらず、お茶漬が菊姫を回復して、私たちが攻撃する。倒すまでレオのHPは放置。
「『鉄球』!」
金魔術がレベル2になって覚えた魔法を放つ。うん、テニスボールよりちょっと大きいくらいの鉄の玉でした。火魔術はファイアボールだな、きっと。
「【バックアタック】!」
「【バックアタック】! わはははは」
シーフ二人は敵の背後から攻撃すると攻撃力が上がるスキルで切りつけている。得物が短剣なので斬るより切るのほうが合った表現だろう。
魔法も斬撃も味方にあたる事がニワトリで判明したため、チョトツの正面が菊姫、後ろがシーフ二人、右がシン、私がちょっと離れた左のポジションで戦っている。お茶漬は菊姫から少し離れた右後ろだ、菊姫とシンとレオがよく見える位置といえばわかるだろうか。
ちなみに魔法は菊姫に当てました。ニワトリにつつかれるより私の魔法のほうがダメージ大きかったです。反省。
「【虎】『突』! 【龍】『突』! 【天】『蹴』!」
そうこうしているうちに、シンのコンボでチョトツは砕け散った。
拳士は技を特定の順番でつなげると攻撃力があがってゆくらしい。ただまだあまり技の種類を覚えていないので三連だけとのこと。【スキル鑑定】は取得済みだそうだ。
あとEPが~~~~~っっと叫んでいる。コンボを繋げるのが早すぎても『必要EP』で減った分が中々戻らず、連続攻撃が途中で切れてしまうらしい。
単体技では菊姫や私の攻撃の威力のほうが高いが、ボスなどのHPが多い敵ではきっとコンボの数が増える後半になるにつれ威力が上がる頼りになる職なのかもしれない。
チョトツの肉と皮を手に入れました。これだけ肉がでるということは料理スキルあるな!
その後もチョトツこと猪に何度か遭遇したが最初の突進さえ避けるなり受けるなりすれば問題なく倒せた。レオが正面、私とペテロが左右を注視で進んだ結果なので、【気配察知】のレベルが上がるまでは、ソロじゃまだ無理っぽいが。
合間合間に菊姫とシンとレオとペテロがもぐもぐと何かを食べている。
魔法職の私とお茶漬は一日三食で行けそうなくらいだが、代わりにMPポーションを飲んでいる。私もご飯のほうがいいのだが。【気配察知】はマメにかけ確認せねばならないタイプのせいかEP消費は高くない。【気配希釈】もかかっている間、EPの減少速度が少し早いかな? 程度だそうなので三食にオヤツでOKだ。
チョトツ戦で丸焼きを想像して途中からファイアニードルばかり使い始めたのは内緒だ。水魔術が相性いいはずなのに金魔術と火魔術が先にレベル2に。
森の中にはベリーが所々生えていて【採取】持ちでなくても、収穫量に差があるものの採取できた。EP回復は微々たるものだが空腹の救済策なのだろう。
味は甘酸っぱくってジャムにしたい。つまりすっぱい。いくつか食べるうちに慣れて甘く感じるようになったが、そんなところまで感覚が再現されてるのが凄い。
因みに私は昼をとった時、ペテロから屋台で買ったという焼き串と菊姫からオレンジジュースを貰いました。買い忘れを散々からかわれてますが、買うヒマがなかっただろうが!
EP節約に草原では気配察知を使わなかった悲しい努力。
チュートリアルに時間がかかったのは私のせいです、ゴメンなさい。特に草原でゴロゴロ寝転がったのは気持ち良かったです。
金は受け取ってもらえなかったが、焼き串とは言え初期のお財布事情には大きいと思うので早いうちに何かで返そう。
森には他に『魔力の実』という、こちらは採取でしか採れない実もあった。MPポーションの材料かね? ベリーと魔力の実をアイテムポーチに詰めまくった。
アイテムポーチは着ている装備とは別に30×99が入る。ただし、アイテムポーチが一杯だと装備が脱げない。
ただいまの持ち物
トビウサギの皮×2
トビウサギの肉×1
暴れニワトリの卵×11
暴れニワトリの肉×35
暴れニワトリの羽根×44
暴れドゥドゥの卵×10
暴れドゥドゥの肉×20
暴れドゥドゥの羽根×16
チョトツの皮×6
チョトツの肉×6
チョトツの牙×3
角ウサギの皮×26
角ウサギの肉×25
角ウサギの角×8
薬草×23
魔力の実×22
ベリー×82
敵からのドロップはだいたい三つで、その中の一種類は出にくいようだ。ベリーだけ突出しているのは合間に摘んだんではなく、みんなも摘んだため、ベリー摘みの時間をとったからだ。ついでに言うなら【採取】持ちでないプレイヤーが取れるものをとった場合、【採取】持ちは一回に採れる量が多い。沢山なっていたのでベリー採取ポイントとして地図にマークしておいた、また採りに来よう。
アイテムポーチの拡張はあるのだろうか。どのゲームも倉庫と持ち物の数の調整で戦っていた記憶があるのでとても不安だ。
角ウサギはトビウサギの色違いで白かったのと角がねじれていて凶悪化していた。2~4匹の群れで襲ってくる。
チョトツと角ウサギ狩りでレベル3にあがり、スキルポイントを2ポイント手に入れた。5ポイントは初回サービスだったのか?ちょっと残念。2スキルポイントで何を取るか後でゆっくり考えることにする。ステータスは今回も知力に2ポイント。
物理攻撃組はさきほどの【HP自然回復】を取ったようだ。
森を進んだら狼がでた。
「いた~~いでし!!!!」
菊姫が一撃入れたら狼からのお返しの一撃で菊姫のHPが半分近く削れた。
「無理ゲー、【回復】!」
回復を入れたところですぐ狼はお茶漬にタゲをかえ向き直る。
「【足止め】!」
ペテロのスキルで狼が硬直。
「今のうちに逃げよう。無理」
一目散に逃げ出し、おとなしくチョトツ&角ウサギ狩りに戻った。
チョトツは向こうから一匹だけで向かってくるのを狩っているのでたいした量狩っていないのだが、角ウサギを乱獲しまくった。
レベルがあがって5になったところで、日が傾いてきたのでそろそろ街に戻ろうということになり、遭遇した敵を狩りながら川を目指している、街へ帰るはずがなぜか川を目指している。レオの一回釣りたい!につき合うことになったのだ。初めての戦闘がうまくいったため私だけでなく、みんな上機嫌で話しながら移動する、幸い川は街の近くだ。
途中トビウサギを狩ることができ、依頼は三つともクリアになった。
避けていた暴れニワトリ六匹の群れも帰りは楽々クリアだ。
「おなか減ったでし」
「釣ったの焼こうぜー!」
「無茶言うな、火種がないわ!」
「あれです、火魔術出すべきか?」
「おとなしく今日は釣るだけにしときなさい」
とりあえずレオが釣糸を垂れてる間、わいわい騒ぎながら薬草採取に川の岩から採掘。採取は私と菊姫、お茶漬とペテロは採掘をとっていた。シンは収集系は取っていないそうで【釣り】とるかな〜とレオを眺めて言っている。レオは確かにやたら楽しそうにみえるので、同じ【釣り】を取りたくなる気持ちはわかる。
プチプチと薬草を採取しながら生産は何を取ったのか、みんなに聞くと、お茶漬とシンとレオとペテロが【鍛冶士】、菊姫が【裁縫士】、私が【薬士】だった。鍛冶率がぶっち切りだが、生産にも派生はあるそうなので最終的には違う方向に行くかも知れない。
気づくとギルド掲示板で見た、Eランク依頼の水色っぽい小さな花をつけたルル草が生えていた。ゴブリンがいる範囲に生えてるのかと思っていたのでここで見つけるのは予想外だ。ルル草は夜に咲く、先ほどまでは薬草ばかりだったのに、まだ多少日は残っているけれど夜になったか?
「暗くなるぞ~もう街戻ろうぜ」
シンが言い出したタイミングでレオにアタリが。
「わははは、セーフ!!」
レオが一匹釣り上げると同時にスライムが現れた、ぽよんぽよんする様は水風船のようだ。
レオの釣果を見るのに集まっていたので、菊姫が攻撃入れて無事タゲ取り。
「【龍】『突』!」
「『鉄球』!」
「【バックアタック】!」
「【バックアタック】!」
ダメージがあまり通らない。
「『ファイアボール』!」
魔法は別です、ダメージ通りました。ついでにタゲも来ました。
金魔術は物理扱いなのか。
「【足止め】!」
「【挑発】! でし!」
ペテロが足止めしてくれて攻撃が来る前に菊姫がタゲを取り返してくれ、一安心。
私がタゲ取らないようにファイアボール三回に一回は挑発を入れてもらう。
EPの減りがやばくってドキドキするが戦闘は安定している。
物理攻撃が1から4しかダメージが通らないのは厄介だが、ウォータースライム自体の攻撃力はドゥドゥくらいか。
とか思ってたら菊姫がネバネバを付けられ、状態異常になり私にまたタゲが来た。初ダメージはドアに足をぶつけたくらいの痛さ。小指レベルじゃ無くて何よりです。
「きゃー、スキルが使えないでし~」
「『ファイアボール』!」
菊姫にタゲとり返してもらうのは諦めて攻撃を続ける。
ウォーターニードルはダメージどころか逆に回復させそうな嫌な予感しかしないので使わないぞ! ますます水魔術があがらぬ!
菊姫の受けたダメージはドゥドゥ並みだったけど私が受けると凄く痛い!!! これが防御力の差!!
私のHPゲージが半分切ったところでお茶漬が回復してくれる。チョトツよりキツイんだが?
「誰か私のMP回復して〜飲んでると殺しそうでヤバい~」
お茶漬からヘルプでペテロがMPポーションを投げる。お茶漬にぶつかると薄いガラスが割れるような音がしてキラキラした紅いエフェクトがでてMPが回復した。
「ホムラは平気か?」
「私は釣り待ちの間に全快してるから平気だ!『ファイアボール』!」
取って良かった【MP自然回復】、流石に戦闘中は回復しないが。
途中、私も粘液食らってかなり長い戦闘になった。
《ウォータースライムの肉を手に入れました》
《ウォータースライムの核を手に入れました》
《Lv.6になりました》
《火魔術がLv.3になりました》
《スキルリストに【粘耐性】【暗視】【打撃耐性】が追加されました》
かなりきつかった!
終わったころには真っ暗で回復もそこそこに街に逃げ帰った。
目が慣れれば二つある月に照らされて近距離にいればシルエットで仲間の見分けがつくくらいではあるが。
昼間、トビウサギがいたファストブリムは蛇に取って代わられており、私とお茶漬のMPも菊姫達のEPもやばかったので、【暗視】を取った【気配察知】持ちのペテロについて敵をよけながら移動をした。
【気配察知】を持っていても夜はぼやっとした敵の方向しかわからないことが判明し、移動の最中に私もスキルポイントを2使って【暗視】を取得した。
□ □ □ □ □ □
・増・
Lv+4
スキル
【暗視】
□ □ □ □ □ □
ホムラ Lv.6
Rank F
職業 魔術士 薬士
HP 144
MP 226
STR 10
VIT 10(+1)
INT 29(+7)
MID 13
DEX 9
AGI 10
LUK 10
NPCP 【ガラハド】【-】
称号 【交流者】
スキル(6SP)
■魔術・魔法
【火魔術Lv.3】【金魔術Lv.2】【水魔術Lv.1】
■生産
【調合Lv.1】【錬金調合Lv.1】
■収集
【採取】
■鑑定・隠蔽
【道具薬品鑑定Lv.1】【植物食物鑑定Lv.2】
【動物魔物鑑定Lv.2】
【気配察知Lv.1】
■強化
【知力強化Lv.1】
■その他
【MP自然回復】【暗視】【地図】