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60.VSオーク

 オークはその巨体に比べれば小ぶりであるが、人の身と比べれば巨大な斧を振るう。

 また一本石柱が倒された。


「これ、石柱全部倒される前に倒せってことだよね?」

「ですな」


 最初は風圧を感じる大音量の【咆哮】。

 威圧スキルなのか、これに当たると硬直する。そして斧を横薙ぎに。どういう原理か知らないが、前方方向に横に薙いだ攻撃は石の影に隠れ損なった全員に、どの方向に居ようと当たり、瀕死にする。


 そして次にオークは石柱を一本倒すのだ。

 【咆哮】が来る前にHPをフルにしておくこと、【咆哮】と【横薙ぎ】は石柱に隠れて避け、もし逃げ損ねて当たった場合はオークが石柱を倒している間に回復する。


 最初に無防備に【咆哮】を食らい瀕死になった私達は活性薬とお茶漬の【回復】、そしてそれぞれ回復薬を飲むことで危うく全滅を回避した。

 活性薬で回復しなかったら気絶を初体験したかもしれない。 そしてお茶漬の【回復】で半分まで回復しなければ動くこともままならなかったろう。危なかった。


「よく動けるなおい」

「こえええええ」

「動けないと死ぬ、動かないと死ぬ」

「岩に辿り着けなくて死ぬか、岩がなくなって死ぬか」

ペテロが私の言葉を補足してくれる。

「動けるけど、思考能力は死んでるタイプです」

自己申告する私。


 部屋が暗いので目視で判別つかんが、アタッカー四人は私も含めてひどい顔色だろう。暗視はセピアに申し訳程度に色が乗る程度にしか見えず、薄い色の判別は難しい。

 あの痛さを体験するとオークの一挙手一投足を見るだけで体が固まり気味になる。今までどんな精神状態でも発動していた魔法が発動しない。

 【痛覚解放】でスキルの威力が感情に左右されることの一環だろうか。幸い私は無詠唱で発動できるのでほんの一瞬集中して"痛さ"を忘れられればなんとかなる。

 乗り越えられるなら痛みを覚えることは悪いことだけではないのだろうが。問題はちょっとこの戦闘も含めて乗り越えられるかあやしいところ。



「ちょっとレオさん、リアル武術習ってただろう頑張って」

「無理!! 寸止め!」

「怪我の多さで言うならシンさん! 痛いのに慣れてる」

「やめて私病弱なの!」

「髭面で気色悪い裏声使わないで!」

キツイ時でも冗談が言えるのは素晴らしいと思います。



「えー、動けないところ悪いんですが、僕も動けないんでなんとかして」

「こっちも何とかして欲しいでしー」

気がつくとお茶漬と菊姫がナズルに集られてヒドいことになっていた。あれだ、中南米でトウモロコシを束に干してあるみたいな外見になってる。ナズルは視界の端に映っていたのでボス部屋でも出てるんだな、とは思っていたけれど、自分が避けることに真剣になっていて、二人が限界まで集られてるの気が付きませんでした。


 石柱一本に一人しか隠れられず、オークに近い位置からその数が減ってゆくため、後半になると【咆哮】の際に何人かはオークからだいぶ離れた石柱まで走る必要が出てくる。

 私たちのパーティーの場合は暗黙の了解、阿吽の呼吸で遠くの石柱を目指すのはペテロとレオだ。逃げるタイミングは、自分でもオークの【咆哮】前の予備動作は見ているがペテロかお茶漬が声をかけてくれる。レオ、シンが逃げ遅れて柱近くで攻撃を食らうとお茶漬の回復が届かないので私かペテロの近い方が回復薬を二人に向かって投げている。

 最初は逃げた先、全員にお茶漬の回復が届く範囲だったが、石柱が減って逃げる先が遠くなったため届かない場所も出てきているのだ。


 ペテロは一番遠くの石柱に逃げるのを引き受けているのに全員食らった最初の一回しか【咆哮】を受けていない。そつがない男である。

 痛いの平気なの? 何故普通に動けるの? Mなの?



「どっせいっ!」

シンがコンボを決める。低い蹴りからのコンボで拳を何度か叩き込んだ後、最後は炎を纏った掛け蹴りのような素早い蹴り。


 格闘系のコンボはカッコイイ。


「あら、部位破壊成功?」

「お? 初だ!」

オークはシンのコンボで左足を壊したらしく、その場から動けなくなっている、やたらめったら斧を振り回しているが【咆哮】も来ずこちらに斧も届かない。

「オークって回復力が強いのが定番だから再生しないうちにとっととやっちゃおう」

「はいでし!」



《お知らせします。迷宮地下5階フロアボス『憤怒のオーク』がレオ他5名によって討伐されました》


《ボス初撃破報酬『生命の蕾』を手に入れました》

《称号【超克の迷宮討伐者】を手に入れました》


《憤怒のオークの皮×4を手に入れました》

《憤怒のオークの豚肉×5を手に入れました》

《憤怒のオークの手斧を手に入れました》

《憤怒のオークの魔石を手に入れました》

《黒鉄×10を手に入れました》

《体力の指輪+3を手に入れました》



「豚……肉?」

「豚肉」

「オーク豚の肉」

「オーク肉」

「わたち、皮と毛でち」

「同じく。フラグ回収おめ!」

「待て、私にオーク肉を詰め込もうとするな」

「いやいや。たまたまオークが持ってた豚肉ですよ、豚肉」

「美味しいんじゃない? 豚肉」

「飯作ってもらってる代わりに食材は渡さないとな!」


「初討伐取れたのに豚肉に話題が持って行かれる僕たち」

お茶漬の言葉で豚肉の話題から初討伐の喜びに話題がシフトする。

豚肉は押し付けられました、こいつらに調理して出す予定です。


「おーっ! いぇい!」

「迷宮に来た人誰だっけ、他にもパーティーいるかと思った」

「炎王かな? ここ回復薬全員持っていないとやばいし失敗したんじゃない?」

「レオが有名人でし」

「わははははは! 痛くてほとんど何もしてねぇけど!!」


「『生命の蕾』はアクセサリー作るか武器防具に組み込むでしか?」

『生命の蕾』は乳白色にほんのり薄い薔薇色の宝石だ、指先程の大きさでそんなに大きくない。能力からいっても更新してゆく武器防具よりアクセサリーにするのがいいだろう。

「おお、効果が継続HP回復か〜」

「ホムラの活性薬と併用で捗る!」

「失敗できない生産」

「あ〜、【解体】っていうスキルあるみたいよ? 生産完成品分解してアイテムに戻すスキルなんだけど、分解できても戻る素材は半分だけで何が残るかランダムだって」

「豚の解体思い浮かべた」

「豚に戻った」


「【超克の迷宮討伐者】は『高揚』がパーティーにつくのと、迷宮内のレアドロップ率が上がるのか」

「オレはやるぜ! オレはやるぜ! とお宝ザクザクか!」

「高揚は普段のレオじゃねぇか」

「痛みに負けないってことかな? お宝はきっと0.01%上るとかだと思うから期待しないほうが」

「元のドロップ率が0.0001%です! みたいな前のゲーム思い出す。僕は称号、唯の【迷宮討伐者】だったわ」

「わたちも無印でし」

「【痛覚解放】してるかしてないかか〜」


「さて、どうする? 進む? 一旦戻る?」

「戻って宿屋で休憩したい」

「黄色いのに吸われたから気分的にお風呂入りたいでし〜」

「じゃあ休憩してからまた来ようか」

「迷宮への転移、戻る時金かかるけど平気か?」


 私の言葉にお茶漬以外が固まった。


「このまま進んでみるか、一旦出て最初からやるかのどっちかだね」

「あ、じゃあ最初からお願い。僕、【痛覚解放】するわ、ナズルうざい」

「同じく、最初から希望。【痛み耐性】取ったけどちょっとここまでの階層で慣れときたい」

「いつになったら【痛み耐性】は効果を実感できるんだ」

「まあでも私、現実であの怪我負ったら動けない自信があるから、一応効いてるんじゃないかな」

「かなあ」

「レベル付いてないのって大抵、"努力したら報われるようにしときました"だからね」

「スキルポイント要らんかったのが救い!」

「【痛覚解放】でしか出ないスキルにポイントいったら泣く!」

スキルポイントが3になった。貯金しとこう。


「じゃあ、転移登録して外出ようか」

「お風呂でし〜」

オークと戦った場所に入ってきた方向とは反対側にまた短い洞窟があり行き止まりに下へと続く階段、すぐ近くに転移陣のある小部屋があった。

 ボス部屋を出た通路からはほんのり明るく、以前行ったダンジョンのようにうっすら壁と床が光っているようだった。



「お、ここはクラン会話入るんだ、迷宮に入ったと同時に通じなかったのに」

「ん? クロノスの?」

お茶漬はクロノスのクラン会話を切り替えずにそのままにしていたらしい。

「そう。向こうも迷宮の外にいるのか〜、二回目チャレンジしてるのかと思ったら僕たちの討伐で盛り上がってる。黙って聞いとくのもアレだし挨拶しとこうかな」

「おー、クラン会話入ってみよう」


お茶漬:ただいま〜

ホムラ:ただいま

ロイ:お?

菊姫:ただいまでしー

ペテロ:戻りましたw

レオ:わははははは

モミジ:おかえりなさいー

カエデ:おかえりなさい〜

シン:生還!

クラウ:お疲れ様でした、討伐おめでとうございます

シラユリ:おかえりなさい、おめでとうございます〜

暁:無事なのか

お茶漬:無事ですよ

モミジ:討伐テロップ出たんだもんー

カエデ:無事に決まってます〜

ペテロ:これから宿いって休んでもう一回最初から行くw

ホムラ:修行

ロイ:おーじゃあ、宿屋で話聞かせてくれ

レオ:おう!


「応、と答えたレオくん。二の郭の宿屋に移らなくていいのか」

何気なく聞く私。


「あっ」



まあ、あれだ。

金を返してもらえるのはまだだいぶ先になるようだ。





□    □    □    □    □    

レベル +1

・増・

称号

【超克の迷宮討伐者】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.34

Rank C

クラン Zodiac

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   1161

MP  1484

STR 50

VIT 26

INT 100(+1)

MID 34

DEX 30(+1)

AGI 60

LUK 39


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】

【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】

【痛覚解放者】【超克の迷宮討伐者】

■神々の祝福

【アシャの祝福】【ヴァルの寵愛】

【ドゥルの祝福】【ファルの祝福】

【タシャの寵愛】【ヴェルナの祝福】

■神々からの称号

【アシャのチラリ指南役】

【ドゥルの大地】

【ファルの聖者】

【タシャの弟子】【タシャの魔導】

【神々の時】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣王】【賢王】


スキル(3SP)

■魔術・魔法

【木魔法Lv.27】 【火魔法Lv.27】【土魔法Lv.28】

【金魔術Lv.27】 【水魔法Lv.27】【☆風魔法Lv.27】

【光魔術Lv.23】【☆闇魔法Lv.28】

【☆雷魔法Lv.27】【灼熱魔法Lv.2】【☆氷魔法Lv.22】

【☆重魔法Lv.21】【☆空魔法Lv.23】

【☆時魔法Lv.21】【ドルイド魔法Lv.22】

■治癒術・聖法

【神聖魔法Lv.21】

【幻術Lv.1】

■魔法系その他

【マジックシールド】【重ねがけ】

【☆範囲魔法Lv.24】【☆攻撃回復・魔力Lv.16】

【☆魔法・効Lv.15】

【☆行動詠唱】【☆無詠唱】

【☆魔法チャージLv.12】

■剣術

【剣術Lv.28】【スラッシュ】

【刀Lv.27】【☆一閃Lv.24】

【☆幻影ノ刀Lv.19】

■暗器

【糸Lv.19】

■物理系その他

【☆見切りLv.27】

【物理・効Lv.7】

■防御系

【☆堅固なる地の盾】

■召喚

【白Lv.11】

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.15】

 闇の精霊【黒耀Lv.21】

■才能系

【体術】【回避】【剣の道】

【暗号解読】

■移動行動等

【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】

■生産

【調合Lv.19】【錬金調合Lv.18】

【料理Lv.18】【宝飾Lv.1】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【鑑定Lv.26】【看破】

【気配察知Lv.34】【気配希釈Lv.34】【隠蔽Lv.30】

■強化

【腕力強化Lv.5】【知力強化Lv.6】【精神強化Lv.6】

【器用強化Lv.6】【俊敏強化Lv.6】

【剣術強化Lv.5】【魔術強化Lv.6】

■耐性

【酔い耐性】【痛み耐性】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】

【暗視】【地図】【念話】【☆房中術】

【装備チェンジ】【☆武器保持Lv.24】

【生活魔法】【☆誘引】

【盗み防止Lv.24】【罠解除】

【開錠】【アンロック】


☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの

お財布事情

レオ:「露店が楽しい!クジ屋があった!あと生産が爆発だ!」

シン:「花札に似た博打で勝つともらえる賞品が欲しい」

お茶漬:「商いは要領よくいかないとね☆」

菊姫:「無駄遣いはしないでし。まだ生産は拾い物でやってまし」

ペテロ:「暗殺は報酬がいい」


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― 新着の感想 ―
[良い点] そうかやるのか やるならやらねば
[良い点] Zodiacメンバーの戦闘は見てて楽しい♪
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