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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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58.それぞれの選択

「ちょっと二人ともここの宿代もないってどうなの」

休憩開けの食事の席、金欠二人組にお茶漬のお言葉。

 レオのために一番近かった宿屋、一の郭の老舗に飛び込んだ。お茶漬がまとめて支払いをしている間にレオは部屋に先に案内されベッドに飛び込んでログアウトしたらしい。私も支払いに立ち会っていたので部屋での詳細は知らんがすごい急ぎっぷりだったようだ。


「高ぇよ! 一万シル」

「まあ、多分この国で一番高い宿だから」

「古いのに手入れ行き届いているしな。飯もなんか珍しい素材つかっとるし」

「二の郭に行く間もなかったんだから諦めるでし」

「これでも安い部屋だぞ」

「いやいやその前に、だってクランの登録料まるまるホムラに借りてるでしょ? 転移の金は僕が全部貸したよね?」

……あれ?


「所持金一万シル以下、だと?!」

シンはともかくレオには私、魚代払ってるよな? どこへやった!

「ぶっ! どっちかの代金でなくなったのかと思ったら」

「ひどいでし!」

驚きの事実、最初から所持金が一万シル切っている二人。レオに至ってはクラン解放後にあったはずの魚代を使い切っている。お茶漬が苦言を呈するのも無理はない。


 冒険者特化の宿から始まったのは伊達ではないらしく、この宿はおかしな時間にも食事に対応してくれる。部屋は元々の高ランク用、低ランク用の大部屋だったのを改装した部屋があり、新しく改装された部屋は比較の問題ではあるが安い。

 現実世界でも一泊三百万の部屋をアラブの王族が料金踏み倒し疑惑でニュースになったことがあったな〜などと余計なことを思い出した。アイルのあの宿だとそれ位のレベルだろうか。


「ところでホムラ、レンガードが掲示板(いた)でシステム認定されとる」

「システム認定?」

「なんか、委託販売の品がプレイヤーが現時点で作れそうにないの混じりな上に、なぜかそんなに高く売れない料理が種類豊富な挙句、全部評価高いんで不審がられてたのが最初かな。そこに冒険者ギルドの受付嬢とのデートイベントと連動してたから、委託にシステムの販売が混じってるんじゃないかって。何したの?」

「薬と錬金はともかく、ホムラのことだから気が向いたの適当に売っただけな気がするでし」

その通り。


「ああ、『住人(NPC)説』もでてたね」

「愉快なことやってんな!」

「売買の時のコメントにコメント返しでもすれば間違えられないんじゃないでしか?」

「いっそちょっとずれた機械的コメントを返してシステム販売説を助長する方向で」

面倒なんでやらないけど。

「よし! なんか協力してやろう!」

レオがなんかいい笑みを浮かべて宣言してきた。

「冗談だぞ?」

一応釘を刺す。


 パーティー会話は外部に完全に聞こえないが、クラン会話は周りからは子音が抜けたように聞こえ、声の強弱などはそのまま伝わるため、内容は聞き取れないがざわざわとした雰囲気はある。なので索敵中などはあまり使えない。修正要望も出ているようだが、無言で大勢が顔を突き合わせて見えるわけではないのはいいことだと思う。



「おー! 久しぶり」

わいわい騒いでいるとロイ達が来た。

「これからですか?」

「ああ、これから初迷宮。そっちは戻ったところ?」

お互い挨拶をし終えた後のクラウの問いに答え、逆に問い返す。

「おう! 負けた、負けた」

それにロイが明るく答える。


「きついんでしか?」

「オレ、【痛覚解放】選んだからさ」

「気を失ってぱたんきゅ〜です〜」

「盾がいなくなって崩壊ですー」

ゆらゆらと長い尻尾を揺らしながら双子が補足する。カエデモミジの毛色は鮮やかなオレンジに近い紅である、瞳は金色。


「盾は辛そうだな、おい」

「絶対解放しないでし」

「格闘系も拳が痛ぇぞ?」

「【痛覚解放】ってどんな感じ?」


「まず当たり前だが痛ぇ。攻撃受けた場所だけじゃなく、踏ん張ってる足も痛ぇ。盾握りしめて爪食い込んで手のひらも痛ぇ」

「格闘も岩場だったり足元(した)が悪いと踏み込んだ足も痛いわ、殴りつけた角度が悪りぃと拳は痛ぇわ。やっぱ補正はあるし、ステータス(ちから)任せになんとかなるけどよ、まあ、現実に近いな」

「うぇぇ」

暁の話にシンが嫌そうにしている。


「盾職は【痛覚解放】しないほうがいいかもしれませんね〜。私のような回復職はあまり攻撃は来ませんが全体攻撃で痛みに怯むと回復が遅れますね。それで今回崩壊させてしまいました〜」

「アタッカーは部位破壊ありますからね、痛いのは嫌ですが私は後衛ですので幸い大半をロイが受けてくれます」

「クラウも【痛覚解放】したのか」

「しました。耐えられないようなら戻させてもらいますけど」

初めて会った時は回復職に間違えたくらい物静かなのにけっこう思い切りがいいなクラウ。


「【痛覚解放】で有効になるものに【部位破壊】【鍛錬】の他に【覚悟】があります〜」

「【覚悟】は意志の力でスキルに影響を与えますー」

「やる気に満ちていれば回復も含めてスキルの威力が上がるなどの効果があるそうですよ〜」

双子の後を継いでほわほわとシラユリが言う。


「5%上がっても僕は痛いの嫌です」

「あたちも嫌でし」

「わははははは」

「ま、それぞれの好みだな」



 ロイたちのクランからビジターの招待をもらった。これでクラン会話をロイたちの【クロノス】に切り替えれば会話ができる。お試し加入以外にも使えるんだな、ビジター。


 宿を出てすぐ向かいにある冒険者ギルドに入る。

 ここは依頼や買取はしておらず、迷宮の出入りの管理に特化している。通常業務は機能を全てもう一つの新しいギルドに置いてある。宿屋は通りを挟んで新しいギルドと迷宮出入りの旧ギルドの二つに面している。

 冒険者ギルドだけが一の郭、それも迷宮の入り口にある兵舎の向かいに新しい本部を持っている。まあ、迷宮の管理というか冒険者の管理に必須な組織なのだから当然といえば当然だ。古くは薬屋、魔法薬屋、錬金、修理屋が建っていたのを取り壊して建てたらしい。

 取り壊された四つの店は一の郭の中に別な土地をもらい、そこで営業している。二の郭に支店も持っており、そこは大通りに面し二の郭の中では立地条件のいい一等地だ。


 私たちが向かったのは迷宮の入り口となるほうの冒険者ギルドだ。

 建物に入ると事務を行う職員が見えるカウンターの他に、二人入るのがやっとに見える小さなカウンターが三つ並び、その脇を通って迷宮に行くことになる。一番右の通路は迷宮一階から始める冒険者、三番目の通路は5階より下の階へ転移陣で行く冒険者。二番目の真ん中の通路は混み具合によりどちらかの受付に変わる。

 一番左、小さなカウンターと通常のカウンターに挟まれた通路は帰還してきた冒険者用の通路だ。壁に転移階層毎の料金表が出ている。


「転移代高いな」

「うを! 五層で五万!」

「十層で十万、一層一万ですな」

「使えない!」

「早く金貯めてね」

「わたちも、さすがにもうお金ないでし」

わいわい言いながらカウンターに向かう。


 私達は勿論右の通路、通り抜けながらカウンターにある黒い石版にギルドカードをかざす。


「五階まで行けば転移陣で戻れますが、ボスがいますので無理せず最初は元来た道を戻るのも考えてくださいね」

「ありがとう、そうする」


 ギルド職員の忠告を後に冒険者ギルドの外へでると、高い崖がそびえ立ち、その下に迷宮の入り口が口を開けている。右後ろを顧みれば鉄格子の巨大な門とその先に同じサイズの頑丈な分厚い門が見える。

 ギルドから外に出る時も格子戸を二つ通ってきたが、次が開く前に通り抜けた格子戸を職員が閉めていた。迷宮から魔物があふれた話は聞かないが、一応街に魔物が逃げ出さない配慮なのだろうか。


「おー、なんか廃坑の入り口みてぇだな」

「雰囲気満点でし」

「冒険だ〜!」

「門でかいな」

「みんながダンジョンみてるときにどこ見てるんだ」

「毎度変なところに興味持つよね」

素直な感想を述べたら突っ込みがきた。相変わらずわいわいやりながらダンジョンに踏み込む。


《迷宮都市の『迷宮』へ到達しました》

《【痛覚解放】をするか選択してください》


「キタ」

「私はとりあえずしとく」

「私も」

「オレも〜っ!」

「わたちはしないでし」

「僕も同じくしない」

「い、いちおうカイホウシトコウカナ、みたいな」

「カタコトになっとるカタコトに」



 【痛覚解放者】の称号取得のアナウンスの後、【痛覚解放】にドキドキしながら進むダンジョン。最初に遭遇した敵はハイゴブリン。ゴブリンよりは頭が良く連携して攻撃してくる。


「ぎゃ、本当に拳が痛ぇ!」

「素手で戦う職業大変そうだな」

え? 私?

 魔法で戦っていますが何か? 洞窟狭いからな。


「まああれですね、菊姫が【痛覚解放】してないし、雑魚戦は通常進行ですね」

そう言いながらルルーを呼び出すお茶漬。あっという間に敵の同士討ち劇場に早変わり。


 ついさっきまでハイゴブリンの連携なかなかだなとか思っていたのに。

 コツは菊姫がタゲを取っているやつに【魅了】された敵の攻撃を誘導すること、もしくは同士討ちで一番殴られている個体から沈めていくこと。いつぞやのキノコの毒みたいに物理攻撃でなければ【魅了】から冷めないんだが、さすがに殴れば正気に戻る。


「相変わらずルルーがひどい」

「ふふふーん、でもルルーが覚えた新しいスキルが魅了系じゃなかったから、ルルーよりレベル高い敵きたらかからないかも? 今でギリギリかな〜」

「精霊けっこう強力だったり便利だけど、普段の戦闘だとリキャスト(リキャ)待ちで一戦闘一回くらいしか呼び出せないからなかなか上がらないよね」

「使いまくってる方だと思うけど上がらないね」


 入り口近くの敵はただのハイゴブリンだったが奥へ行くとハイゴブリンメイジやらジェネラルやらがお約束のように出現。時々出る血吸い蝙蝠を叩き落としながら進む。


「【投擲】取ろうかなあ」

「取ってなかったの?」

「スキルポイント足りねぇもん。なんか【気弾】とか覚えられるらしいから取んなかったけど、今遠距離【火魔術】しかねぇ」

「【跳躍】取れば? 経験取得でスキルポイントいらないぞ」

「そうだなぁ、取れるような行動してみっかな」

「シンは火を使えるから平気かもだけど、打撃に強い敵とかいるから貫通属性の【投擲】お勧め」

「特化強いんだけど、あちこちいくなら保険で取っといたほうが安心かもに。というか【火魔術】レベル上げる気ないだろ」

お茶漬がシンの行動を予測している、自分の拳に【火魔術】を『エンチャント』して使っていたシンは、そこから取得した【炎拳】というスキルを手に入れて以来、魔術のほうは放置している模様。


 相変わらず緊張感が無い感じの進行だが、索敵持ちが三人いるしいざとなれば水の精霊で全員が全体回復できるという安心感。その分火力が足りないかと言えばそうでもないのだが、エルフの盾にアタッカーがシーフ系2人と魔法剣士と普通よりHPは心もとない。

 それこそ索敵で不意打ちを食らわないように、食らったらこまめに回復を心がければいい話なのだ。


「おお、階段発見!」

「あら、本当」

「どうする? マップ埋める?」

「一階は別にいいんじゃないかな」

「じゃあ進むでし」

「了解了解」


 そういう訳で地下二階。

 進む前に階段で食事だ。階段では食卓を出すわけにもいかず、さすがに手軽に食べられるものを用意した。


 シンのために薄いステーキを焼いたのを二つに切り、炒めた玉ねぎとサニーレタスのような葉を挟んだサンドイッチ。ノーマルに玉子サンド、サニーレタスとベーコンと半熟目玉焼きを挟んだもの、アンチョビペーストとチーズのもの、トマトとロースハムとレタスのもの。

 何種類か用意してセカンで手に入れた牛乳、オレンジジュースを添えて出す。


「うわ、肉のウメェ」

「ああだがお肉さまは単体が至高……っ!」

「アンチョビ、このしょっぱさがやばい」

「玉子サンドふわふわでし」

「……もごっ」

「口に物入れてしゃべるな、無理に感想言わんでいいわ!」

とはいうものの美味しいとの賞賛は次回のご飯作りの気分を上げてくれるのでどんどん言って欲しい私だ。


 評価10の食事にはステータスアップが付いているわけだが、人様のパーティーでは、というか通常自分で職業ごとに戦闘が優位になる飯を選ぶらしいのだがスルーである。

 ダンジョンやボス前では回復役なら精神が上がるサラダなどの野菜料理を、盾なら耐久が上がるパンなどの穀物料理を食べるのが普通であるらしい。


 美味しければモチベーション上がるしいいのだ!




□    □    □    □    □    

・増・

称号

【痛覚解放者】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.33

Rank C

クラン Zodiac

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   1108

MP  1406

STR 47

VIT 25

INT 84

MID 32

DEX 27

AGI 52

LUK 37


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】

【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】

【痛覚解放者】

■神々の祝福

【アシャの祝福】【ヴァルの寵愛】

【ドゥルの祝福】【ファルの祝福】

【タシャの寵愛】【ヴェルナの祝福】

■神々からの称号

【アシャのチラリ指南役】

【ドゥルの大地】

【ファルの聖者】

【タシャの弟子】【タシャの魔導】

【神々の時】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣王】【賢王】


スキル(1SP)

■魔術・魔法

【木魔法Lv.26】 【火魔法Lv.26】【土魔法Lv.26】

【金魔術Lv.26】 【水魔法Lv.26】【☆風魔法Lv.25】

【光魔術Lv.20】【☆闇魔法Lv.28】

【☆雷魔法Lv.27】【灼熱魔法Lv.1】【☆氷魔法Lv.22】

【☆重魔法Lv.20】【☆空魔法Lv.22】

【☆時魔法Lv.20】【ドルイド魔法Lv.22】

■治癒術・聖法

【神聖魔法Lv.21】

【幻術Lv.1】

■魔法系その他

【マジックシールド】【重ねがけ】

【☆範囲魔法Lv.22】【☆攻撃回復・魔力Lv.13】

【☆魔法・効Lv.13】

【☆行動詠唱】【☆無詠唱】

【☆魔法チャージLv.9】

■剣術

【剣術Lv.28】【スラッシュ】

【刀Lv.27】【☆一閃Lv.24】

【☆幻影ノ刀Lv.19】

■暗器

【糸Lv.16】

■物理系その他

【☆見切りLv.27】

【物理・効Lv.6】

■防御系

【☆堅固なる地の盾】

■召喚

【白Lv.11】

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.10】

 闇の精霊【黒耀Lv.19】

■才能系

【体術】【回避】【剣の道】

【暗号解読】

■移動行動等

【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】

■生産

【調合Lv.19】【錬金調合Lv.18】

【料理Lv.18】【宝飾Lv.1】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【鑑定Lv.24】【看破】

【気配察知Lv.33】【気配希釈Lv.32】【隠蔽Lv.27】

■強化

【腕力強化Lv.5】【知力強化Lv.6】【精神強化Lv.6】

【器用強化Lv.6】【俊敏強化Lv.6】

【剣術強化Lv.5】【魔術強化Lv.6】

■耐性

【酔い耐性】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】【暗視】

【地図】【念話】【☆房中術】

【装備チェンジ】【☆武器保持Lv.21】

【生活魔法】【☆誘引】

【盗み防止Lv.21】【罠解除】

【開錠】【アンロック】


☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの

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― 新着の感想 ―
昔、急性胆嚢炎で死にかけた事があったんですが…最初は、痛いところ付近を押したり、撫でたりと気を紛らす程度。次第に痛みで吐き気を催したり、実際吐いたり…この辺りが1番キツかった。後は、熱が上がり意識が混…
[良い点] 死んだら死ぬほど痛いのかしら……いやそれだと法に触れるかな?
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