表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/386

4.合流と戦闘

 チュートリアル終了後に、噴水広場に戻されたのでもう一度ギルドに向かう。別に受付嬢の名前に未練があるわけではなく、友人たちとの待ち合わせがギルド入り口なのだ。



 結論、人が多すぎます。

 ぎゅうぎゅうです。


 チュートリアル中の冒険者ギルド付近と雰囲気が違いすぎる。外に行くなら依頼は受けたいし、初日の今日、プレイヤーが集中するのは仕方ないんだろうが、すごすぎる。

 呆然としていると会話が聞こえてくる。


「登録後にしてもう戦闘行っちゃおうぜ〜」

「だな〜」




 あれか、チュートリアル飛ばしたヤツも混じってるのか!


 えーと。


「冒険者登録はチュートリアルでもできるぞ~」

がやがやと人の声でかき消されそうなので少々声を張り上げる。余計なお世話だったら恥ずかしい。


「え、まじか」

「街出なけりゃチュートリアル受けられるよな」

「おー、ありがと~」


 礼を言ってチュートリアルを選択したのか、目の前から消えてゆくプレイヤー達。大勢の人々が、間引かれるように消えてゆく光景は、ホラーに見えた。目のまえから人が消えるこの光景も、そのうち慣れるのだろうか。


 結構な人数が消えて見通しが良くなった。チュートリアルを飛ばしていた人は、思ったより多かったらしい。


 確かに依頼を受けるだけなら、こんなに待たずに戦闘なりなんなりさっさと行くよな。

 チュートリアルを飛ばして、ギルドの登録がまだな人が、主にこの混雑を作っているのかと思い当たる。あの登録作業をこの人数分、順番でやってたらいつまでたっても終わるわけがない。ギルド前にあふれていた人が減ったので満員電車のようなギルドの入り口から中にいるやつらにも声を掛ける。


 ここでも三分の二が消えていった。

 他に教えてくれる人はいなかったのだろうか。それでも多い人の間から見えたカウンターから、受付の人がこちらをのぞきながら目礼してきたのでびっくりした。チュートリアル中のように私だけという状況でなくとも反応があるのか! しかも今回私は受付嬢に対しては話しかけていない、本当に中の人がいるみたいですよ!!


 NPCに使われているAIはゲーム発売の二年前にスマホでNPCキャラを育てよう!みたいな配布をしていて、毎日話しかけたり町の中で簡単なお使いをさせたりして一定以上育ったキャラが、収集・修正されて使われているらしい。スマホでのキャラクターは二頭身で自分好みに育てられ、単独のアプリとしても人気で、このゲームの始まった今でも配布されている。




 人が大分減ったとはいえ、ここで果たして友人を見つけられるのかとギルド前に戻り、立ち尽くしていると声を掛けられた。


「ホムラ?」

名前を呼ばれたほうを見ると、友人に事前に聞いていた容姿の二人が並んでいた。


 薄い青の髪をポニテにしたスレンダーな青年と、その胸のあたりまでしかない背丈の、赤い髪をツンツンさせた犬耳の少年。


「よく見つかったな」

「大声だして目立ってたよ。他はパトカもう交換したからわかりやすいとこに移動しよう」

そういいながらポニテの青年、ペテロはパトカを投げてくる。


「ああ、レオもパトカくれ」

そう言って私もペテロと赤犬レオにパートナーカード(パトカ)を投げる。交換しないままはぐれたら、今日はもう会う自信がない。




「あ! 予約できたから宿とっといたぜ!」

「おお、ありがとう。ギルドの混みよう見てると危険だよな」


 結局、南門外の右側集合になったが、せっかくなので移動前にギルドのスミに入り込んで、三人で適当に依頼を受けておく。門前に着くとここも待ち合わせらしき人でいっぱいだ。


「捕獲できた〜?」

「わっはっはっ! ホムラGETだぜ!」

金髪優男エルフの声にレオが答える。


「会えて良かったぜ」

黒髪犬耳、顔に不精ヒゲと傷のある身長最大のガッチリした男が声を掛けてくる。


「あの混み方では会うのキツかったでしよね」

こちらは白髪ロリエルフだ。


 全員、現実世界の性別は知ってるが、まあゲーム内性別の彼・彼女でこれから行こうと思う。



 金髪は『お茶漬』、黒犬は『シン』、白髪は『菊姫』という名前だ。それに『レオ』『ペテロ』、私の『ホムラ』。菊姫以外は男キャラ。

 ちなみに菊姫は酒の名前だそうだ。


 パーティーの最大人数はちょうど六人。パトカの交換後、さっそくパーティーを組んでみる。


「私は結局魔術士始まりで魔法剣士目指す方向なんだが、みんなは職業どうしたんだ?」


「僕は治癒士ですね、事故防止職というか事故後介護職」

私の問いにお茶漬が答える。いままでのゲームでシンとレオがやらかしまくってるので、いつもサポートに回っている彼は、今回もフォローに回る様だ。


「あてちは、剣士でし。おっきい剣でどっかんどっかんでし」

ツルペタ菊姫は最小サイズでごつい武器を振り回すのを好んでいる。初期ステータスを考えるとエルフで物理特化って大変そうだが。


「オレは拳士、狼目指すぜ!!」

黒犬のシンは、肉弾戦好きなのは毎度のことだが、今回犬族の進化で発表されている狼の獣人になりたいようだ。


 進化先として発表されているのは、獣人の犬から狼、猫から虎だけだが、獣人に限らず進化先は多種多様とのことなのでどんな種族がでるのか楽しみである。


「オレは狐があるって信じてる!!!!」

「それは職業じゃない。あ、私はシーフで弓使い目指してるから」

叫んだレオに笑いを含んで突っ込むペテロ。


「あ゛、わりい。オレは今シーフね。きっと忍者があるって信じてる!!!!!」

「希望的観測が多すぎるでし!」



 職業も初期職からの進化先としていくつか公開されている。ログイン時のアナウンスにあったとおり、こちらも鍛えた職やスキル次第で多種多様とのこと。


「こう、見事に盾っぽいのが幼女だけだ」

お茶漬がぼやくのに答える。


「菊姫も盾をやる気はなさそうだ。あきらめろ、忙しいのはきっとお茶漬だ! 私は回避する」

「ソロもいるんだし、システム的に全員そこまで柔らかくはないと思うよ」

ペテロがフォローを入れる柔らかいというのは、くらうダメージが大きいという事だ。同じ攻撃を受けてダメージが少ないのは固いと言われる。


「とりあえず戦ってみようぜ~」

無精ひげをなでながらシンのおっさんが言った一言で、ファストブリムへ移動する。ブリムは草原のことを指すらしい。


 門の近くは結構な人がいてトビウサギの奪い合いになっている。とてもじゃないが競り勝てそうにないし、効率が悪そうなので、せっかくフルパーティーを組んでいるんだし、門から離れて少し強い敵を探すことにした。


「そういえばNPCからパトカをもらった」

「ぶっ! あのワールドアナウンスお前かよ!」

シンからツッコミが入る。


「あれ、公開設定にしてると名前も流れるんだよね?」

「どんなNPCからもらったんでし?」

「『ガラハド』っていうチュートリアル中、カウンターにいた戦士」

「チュートリアルにそんなのいたっけ? 覚えてねぇぜ」

「ギルドにいる客、人によって違う? 私は女児しかいなかった気が」

「さすがロリコンでし」

「違う!」

「えー? オレもチュートリアル中、強そうなのに話しかけたけど名前教えてくれなかったし、もらえなかったぞ?」

「話しかけたのか、勇気あるな」


 移動中、もらったパトカについて話しているとレオが大声をだした。


「発見!! ニワトリ!!!!」

指差すほうを見れば確かに白いニワトリっぽいものが動いている。

ここもすでに狩っているパーティーがいるが、ウサギの場所ほど混んではいない。


「あれ、逃げ出した飼い鶏とかじゃないよね?」

「暴れニワトリのオスとメスだそうだぞ。分類は魔物(モンスター)になってるよ」


 オス1メス2の三羽だ。


「ペテロも動物魔物鑑定取ったのか?」

見分けがつかずぼやくお茶漬にペテロが答えたので聞いてみる。


「とりました、でも分類と名前しか分からない」

笑顔で分からないといいきる男。


「スキルにレベル表示があるからそのうち色々見られるようになると思うけど」

「おー、私もとった。HPとかステータス見られるようになるといいな」




「とりあえず魔法(えんきょり)当てるの先? 菊姫がタゲとるのが先?」

シンが聞いてくる。

「スキル使わないとタゲとりかえせないでし。盾買ったし、先に行くでし。たぶん途中でタゲうつるのをスキルで取返すでし。チュートリアルで殺ったでし」

なんか『やった』が達成して学習した、じゃなくて護衛失敗して殺した、に聞こえて不穏なんですが。そして買い物済みなのか、私は回復薬も持ってないよ!



「回復はヘイト高いから、乱発しないから注意して。じゃあお願い〜」

お茶漬の言葉に安全第一で行こうと思う私です。


 盾に成れる職が菊姫しかいないので、菊姫が三羽ともタゲとりして、お茶漬は菊姫を回復。アタッカーな私達はオス、次は菊姫が殴ったメスの順でやることになった。



 ニワトリを巡る死闘が始まった。レオの。


「ギャー!! 痛い痛い! 追いかけてくるぅ」

「なんでみんなが殴ってるの殴らないんでしか!」


「向こう先にやる?」

「いや、こっちもうヘタってるから終わるよ。シーフ回避高いし任せよう、死んだらレオのことは諦める」

平生と変わらない明るい声でペテロが告げる。相変わらずペテロは爽やかにひどいな、と思いながらも従う。


「『針』!」

「よっ! 【虎】『蹴』!」

ペテロの予想通り、私の魔法とシンの蹴りで殴っていたオスは倒せた。


 オスを問題なく倒した後、レオが菊姫が殴ったのと違うメスを殴るお約束が発生。メスのヘイトが菊姫よりレオの方が高くなってタゲが移り、追い回されているのだ。菊姫が最初に一回ずつ敵を殴っているので菊姫より攻撃力低いレオがたまたま当てただけじゃタゲは移らないはずなのだが、二、三回殴ったんだろう。


「流石にヤバいかな、【回復】!」

はい、お茶漬が回復したら、タゲがお茶漬に移りました。このゲームでも通常営業です。


「ちょっ、ちょっ、」

「わはははは!」

慌てるお茶漬とメスのタゲから解放されて笑うレオ。通常営業です。


 菊姫がタゲ取るのを待つ私とペテロ。

 だがしかしシンはレオと同一人物と言われる男、先に殴りました。もちろん通常営業です。



《暴れニワトリの肉×3を手に入れました》

《暴れニワトリの羽根×2を手に入れました》



「僕、治癒士なのにスキルに【回避】がでたぞおい」

何とか倒した後のお茶漬の一言。



 その後は順調に狩れた。暴れニワトリは三羽〜六羽の群れで行動しているようで、レオが六羽に絡まれた時は全力で逃げたりしましたが順調です。


 レベルが仲良く上がったところで休憩をとることにした。レベルが上がってEP以外は回復したのだが、久しぶりのVRゲームでの戦闘で気疲れしたのと、スキルポイントを得たので休憩がてらスキルリストを確認中だ。MP切れそうというか、切れていたので助かった。


 因みに杖で殴ったせいか、スキルリストに【杖術】が追加されていた。


 レベルアップでもらったスキルポイントは5SP。

スキルリストに出ているのは以下だ。


【長杖】SP1

【短杖】SP2

【魔術強化】SP2

【精神強化】SP3

【土魔術】SP3

【木魔術】SP2

【採掘】SP2

【武器防具鑑定】SP1

【鉱物金属鑑定】SP2

【釣り】SP1

【スキル鑑定】SP2

【杖術】SP3

【MP自然回復】SP2

【HP自然回復】SP3

【遠見】SP2

【気配希釈】SP3

【気配察知】SP2

【不意打ち】SP3

【体術】SP3

【地図】SP1


 うーむ

【地図】【MP自然回復】と【気配察知】かな~、MP切れのときのために杖術欲しい気がするけど、魔法剣士になったときもてあましそうだし。スキルの説明が書いてないから、字面で予測するしかないのがスリリングというか。きっと【長杖】は長杖装備時魔力があがるとかで、【杖術】は棒術みたいな打撃系のスキルかと予測を立てた。いいかげん【スキル鑑定】を取るべきだろうか。


 レベルがあがるごとにどんどんスキルポイントが不足してきそうだ。

依頼は三つ受けたうち、一つクリアできた。あとの二つはトビウサギ関係だったので今回はクリアならずだ。


 まだシンとレオと菊姫がうんうん悩んで、お茶漬が現実的なアドバイスを三人にしているので、ペテロとスキルの話をしながら辺りを見回す。

 因みに、レオに同じ職のペテロがシーフの技能についてはアドバイス済みだが、その上でヤツは決まらないのだ。



「あ、薬草」

「【採取】と【植物食物鑑定】とったの?」

薬草をプチプチと抜いているとペテロが聞いてきた。


「うん、ペテロは何をとったんだ?」

「【採掘】と【鉱物金属鑑定】、生産【鍛冶】とったから」

「私は【薬士】とったけど、魔術士のせいかスキルに【錬金調合】がでたのでそっちもとった」

「職業薬士で【調合】じゃないの? 色々スキルでるね」

「もちろん【調合】もとったけど、せっかくなので【錬金】のほうも」

「【錬金】は、薬草と鉱物両方要りそうだよね」

「鉱物融通お願いします、ぜひ」


「ちょっと聞いてくれ!」

目に見える範囲の薬草を摘んだり、のんびりしているとお茶漬が訴えてくる。

「どうした?」

「なに?」

「レオがスキル一覧確認しただけで取得し忘れてやがった!!!」



 通常営業です。





□    □    □    □    □  

・増・

Lv+1 

スキル

【地図】【MP自然回復】【気配察知】

□    □    □    □    □    


ホムラ Lv.2

Rank F

職業 魔術士 薬士

 HP   94

 MP  134

 STR  10

 VIT  9

 INT  18(+2)

 MID 12

 DEX  9

 AGI  10

 LUK  10


NPCP 【ガラハド】【-】


称号 【交流者】



スキル(0SP)

■魔術・魔法

【火魔術Lv.1】【金魔術Lv.2】【水魔術Lv.1】

■生産

【調合Lv.1】【錬金調合Lv.1】

■収集

【採取】

■鑑定・隠蔽

【道具薬品鑑定Lv.1】【植物食物鑑定Lv.2】

【動物魔物鑑定Lv.2】【気配察知Lv.1】

■強化

【知力強化Lv.1】

■その他

【MP自然回復】【地図】




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ