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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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55/388

53.ヤグヤックル再び

 ペテロとの待ち合わせ場所はレストラン。セカンの修理屋で装備をメンテしてもらい待ち合わせ場所に向かう。


「こんにちは」

「おはよう」

「青空の下、海の見えるオープンテラスで一人黒装束は笑うから止めろ」

「街着検討します」

「忍者になったのか?」

「まだだけど、売ってたからつい」

手甲脚絆に顔を隠すための布をマフラーのように首に巻いている隙の無い忍者スタイル。作ったの誰だ。


「目立ってる目立ってる」

海風に吹かれながらペテロと話しているとお茶漬が来た。

「そんなに?」

「うん」

「少なくとも全く忍べてないよな」

「ついでにホムラが白いしオセロかよ」

そう言いつつ座るお茶漬も白いので確かにオセロみたいだ。

「昼間用何か考えるか〜」


「で? どうする? ギルドか門でパーティー募集する?」

「あ、ホムラ、一時的に転職した方がいいかも。魔法剣士だと今パーティー微妙だよ」

「それを言うなら私の職もフィールドとかダンジョンでは人気だけど、火力求むなボスはさっぱりですよ」

「既に職業格差が!」

「この時間はライトユーザー少ないからね。九時以降ならそんなに気にしなくていいけど」

「ペテロ火力あるのに」

「職業で断られる」

平日の昼間から入っている人は極端に効率重視というか、それが良いと言われれば情報に素直に従うような人が多い。私の職業の魔法剣士はどうやら立ち位置も火力も中途半端なため、ニーズに合わないようだ。


 ボス戦のパーティー構成の傾向は盾は騎士、回復は聖法士が不動。後は魔法士・戦士・格闘家の火力特化職が人気だ。その中でも戦士はいざという時の盾役にもなれるので誘われやすい。物理ダメージの通りが悪いサークルモスでは魔法士が多め。


 ペテロの密偵も索敵や先制を取れるためフィールドやダンジョンの探索には向いているが力押しでいけるボスでの需要は低い。



「勝ち組!」

何時も回復職や盾役など、需要の多い職をメインでやりサブで高火力の職をするのがお茶漬である。

 ペテロはキャラのコンセプトを決め、弓や銃の少しマイナーな職をすることが多い。飛道具を使わない今回は珍しいチョイスだ。

 私はやってみてやりやすい火力職に落ちつくのが常なので要領良く動けるお茶漬も、自分の価値観でキャラを作り上げられるペテロもどちらもうらやましい。


 ギルドの掲示板に募集広告を指定の時間までお願いして、集まるまでそれぞれ自由に過ごす。パーティーを組んでいれば特殊なエリア以外は会話ができるので便利だ。お茶漬とペテロは生産施設にこもっているが私はセカンをそぞろ歩いて市場を見つけ、冷やかす。

 牡蠣が売っていたのでまけてもらって購入。


 たとえ生産レベルが上がらずとも作って食べたいものというのはある。そうして私も生産施設にこもるのだった。



《お知らせします、『迷宮都市の迷宮』に炎王他五名が到達しました。これにより情報を開示いたします》

《これより、今まで1%以下に設定されていた痛覚と部位破壊、鍛錬を解放します》

《以降、『迷宮都市の迷宮』に到達した場合、痛覚を解放するか選択肢が出現します》

《【痛覚解放】を選ばれますと、傷を負った場合現実世界と同じだけの痛みを感じ、自己及び敵の【部位破壊】が可能になります》

《なお、プレイヤーに耐えられない痛みと判断された場合、【気絶】状態になり痛覚が遮断されます》

《【痛覚解放】を行ったプレイヤーは【鍛錬】により基礎ステータスが上がるようになります》


《詳しくはメニューをご確認ください》



 アナウンスが来た。ファイナのボス討伐したパーティーは迷宮都市に最初に行ったのか。

 いいな、うらやましい。でもスキル上げは必須だと思うしな。


「さっきのアナウンスもう先発は迷宮都市か〜。解放されたのが痛いのとかどうなの」

「【鍛錬】よさそうだけど、時間ない人は普通にゲームやってた方がいい気もするね。痛いし」

「メニューの説明見ると、普段の行動でも繰り返せば上がるっぽいからよく使う能力が強化される感じか?」

「そうなるかな〜、種族で上がりやすい上がりにくい出るってあるね」

「人間な私は平均的……」

「痛いのやだから僕はこのままいこう」

「一回だけ試して戻せるみたいだから体験してみようかな」


 ひとしきりアナウンスについて話していると募集の締め切り時間が来た。

「んー、時間が半端なのともうフォスかファイナに集まってるかな〜」

「もうボスの出る場所も広がっちゃったし、最初の二つはクリア早いね。でもフォスのボス、全員回復手段ないとキツイらしい。私達運が良かった」

「そうなのか、水の精霊レベル上げがんばるか〜」

「ボス三人で行ってみる? 負けたら負けたでデスペナ中は夕食風呂落ちする方向で」

お茶漬が提案してくる。


「まあじゃあ三人で行ってみるかー?」

続けてくらうと『活性薬』での回復ペースが間に合わない気がするのでソロは怖いが、回復してくれる人か、攻撃を受けてくれる人がいればヤグヤックルならいける気がする。


「特攻」

「本気にするとは。盾不在なんですが」

「私が(にわ)か盾をば」

「耐えられるの薄い人」

「避けるし、黒耀のレベル上げたから一人用のもう少し固くなれる技出てるから行けるんじゃないかな〜と。というかいいだしっぺ!」

「僕のは冗談だもの。相変わらず変なことにチャレンジし始めるね。前に巫女で盾になってたの思い出すわ」

いや、あれは好きで盾やったんじゃなくて敵のパーティーが補助潰すのに集中してきただけなんだが。


「私も誰かタゲ取ってくれれば火力は何とかなるかな」



「はーい、お薬配ります〜」

「こないだダンジョンでもらった『生命活性薬』まだあるよ」

「今回は保険でお茶漬さんには生命も魔力も回復するようにしときます」


「これお高いやつだ」

「評価10も作れたの」

生命活性をペテロに、お茶漬に生命と魔力両方を渡す。



結果。



「まて、どういうチートだ」

「火力過多すぎる」

「スゴイ」

「いや、ホムラだから」

「いや、あんたら二人共だから」

あれです、お茶漬が攻撃力アップの付与かけてくれた状態で『月影』で【一閃】したらヤグヤックルさん、ガラハドがやったように一撃でダウンしてのたうって、そこにペテロの【シャドウブレイド】。

 短刀はレオ作だそうで、何故か防御力0になるかわりに攻撃力倍というぶっとび性能だそう。


「密偵のHPと相まって一撃くらうと死ぬという」

「難儀な武器だな」

「ダウン中か麻痺中じゃないと火力でタゲ取りそうだし怖くて使えない」

「ホムラのソレは何なの?」

「装備ランク無視が付いてる高ランクな普通の剣です」

話している間も二人で攻撃を加えている。

「予想外に出番があんまりない」

私は基本避けるか受け流すかだし、お茶漬の回復の出番は全体攻撃がきた時くらいだ。

 突進が来たら【堅固なる地の盾】を使う気満々なのだがダウンでスキルが潰れているため、ガラハドたちとやった一度目同様、ヤグヤックルの突進は見ないまま終わりそうだ。

 そしてペテロは初めてなのに武器を入れ替えている。


「全体攻撃予想できるの?」

お茶漬がペテロに聞く。

「全体攻撃くるまえにヤグヤックルが軽く頭引くよ」

夜勤は暇なので情報収集で予習したそうな。

「ボス戦のクリア動画検索しようとして引っかからなくてさ」

「やるやる」

他のゲームと違って外に映像持ち出せないしな。お茶漬とペテロの会話を聞きつつ剣を振るう。

 事前情報をほぼ調べないようになった私には動画検索するという経験自体がないのだった。攻略情報よりむしろ現実世界の料理レシピを調べている気がする。



「ひどい戦いだった……」

「まったくです」

「貴様らが言うな」

お茶漬がツッこんでくる。

「倒せたんだからいいじゃない。ホムラはソロいけそうな勢いだね」

「今度チャレンジしてみようか。今回皮だったから肉欲しいし。でも一回でもくらうとダメな気がする」

「肉より皮の方が高くない? 料理必須じゃないし」

「レストランもあるしな〜でも評価10で能力上昇系とかつくからきっとそのうち……」

「皮売って肉を買え。毛糸はダウン取らないと出ないから高いよ。あと日常会話に流れないで。おかしいからね? 普通じゃない。あんたら自覚して?」

「好きなように過ごしていたらこうなった、反省はしていない」

「おかしいのは私じゃなくレオだから」

クセのある武器の使いどころを愉しむ、それがペテロである。



「ありがとう、無事解放できた」

「サークルモスは?」

「あ、それは夜勤明け寝る前、募集パーティーにもぐりこめたから大丈夫」

「おお、じゃあ無事ファイナのボスいけるな」

神殿で転移門に登録し終えたペテロを迎える。

「これからフォス行ってファイナ行き馬車に放置して夕食しようかと」

「僕も同じく。てか、転移門ついてけばよかったな。つい外で見送っちゃった」


「委託チェックして私も夕食落ちするかな。フォスまでは送ろう」

「わざわざくんのかよ」

「転移門までは一緒でしょ」

男は黙って『転移』です、ファイナは灰色で選べなかった。多分二人が登録していないからだろう。


「って?」

「『帰還』進化したの?」

「うむ、敵の来ないエリアからなら登録した転移門にいける」

ぽかんとしているお茶漬の隣でペテロが聞いてくるのに答える、遠話のできるパーティー会話をそのまま使っているので周囲に聞かれる心配もない。転移門周辺にいると後から転移してきた人の邪魔になるのでお茶漬を引っ張って隅に移動する。


「ああ、そういえばアイテム化もできたぞ。無属性石作り方分かった」

「ほうほう?」

「闇と光の属性石持ってきたら『転移石』作るぞ。数は1・1」


「今渡しとく」

ペテロから闇の属性石を15受け取った!

ペテロから光の属性石を15受け取った!

お茶漬から光の属性石を21受け取った!

お茶漬から闇の属性石を21受け取った!


「便乗」

復活したお茶漬が便乗してきた。

「便乗者のほうが数が多い」

「光と闇は石、少ないよね。早く闇属性光属性の敵が欲しい」

「他の属性石の最低十倍の値段するよね」

「その属性の敵がいないからどこで戦っても弱点属性にも優位属性にもならないから生産で人気だし」

「私の錬金が上がればたぶん火とか水の基本属性六種類錬成で代用効くと思うんだけどいかんせんまだ三種合成しかできん。あと器用は足りるんだけどレベル足りてない所為か必ず十個中一、二個は評価6、7あたりが混じるのでご了承ください」


「錬金てなに使うの? 属性石? 魔石とかいる?」

「どっちも使うけどもうあまりその生産でレベル上がらん」

答えた瞬間、ペテロとお茶漬から大量の魔石と属性石を渡された。

「足しに」

「魔石はアイテムかさばったら捨ててるし」

「ありがとう?」


「ホムラ、その『転移石』委託に出した?」

「『帰還石』なら幾つか出したぞ」

推奨レベルに足りてないのに装備頼りで作っているせいか評価10ができるのに一定の割合で6とか混じってくるのでそれを。

「売買掲示板で"石があああああああ"とか騒がれてたのこれか」

「ああ、でもなんか"そんなことよりお菓子!!!"で埋もれてなかった?」

「ぶっ!」

どっちも心当たりがありすぎる。


「なんというか売買板から生産板に波及してどうやって作るのか話題になってて、無属性石の作り方はもう何人かちらちら出してて、込められたのは魔法だろうってなって、今は魔法板がひどいことになってるらしい」

「やったね、バレたら質問攻めだね!」

「覚えるかもって神殿の転移繰り返してる人が何人かいるみたいだけど」

それ方向性間違ってるから! 転移覚えようとして行動とってると永遠に覚えられないから!

「石出しただけでそんなことに……怖えぇ」

「だけじゃないでしょ、活性薬とか評価高いのも出してるじゃん」

「レンガード、生産所に閉じこもって委託で素材買って生産し続ける生産特化プレイヤーだって説が有力です」

「どんなプレイだよ!」


「そういえば菓子はなんなの?」

「ああ、あれはファストの冒険者ギルドの一番胸のデカい受付嬢が"レンガードのお菓子、一週間持って通ったらギルドの女子でお昼デートくらいならしてあげるわ"って」

「何がどうしてそうなった」

「さあ?」

「まああれよ、菓子はともかく他は気が向いたらもっと委託に数出したげて。フルで出したってプレイヤーの数二千、三千ってわけじゃないんだから回らない」

「はーい、でも転移怖いからしばらく『帰還石』にとどめとく」


 そんなこんなで夕飯と風呂を済ませるために一旦別れた。

 委託は風呂上がりにしよう……




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― 新着の感想 ―
6属性合成で無属性は既定路線として廻る力と同じように5属性+風5つの10個を順番に並べて合成したらどうなるんだろう...気になる
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