表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/385

3.ギルドカードとパートナーカード

「いらっしゃいませ、ご登録ですか?」

「はい」

「冒険者登録の説明は必要ですか?」


 ショートボブというのか襟足で切りそろえた茶色い髪の、制服らしい黒に近い紺色の上着を着た受付のお姉さんが聞いてくる。


「頼む」


「はい、ではこちらが冒険者ギルドのご案内となっております」

そう言うと、リーフレットのようなものをこちらに向けて開き見せてくる。


 聞かれて普通に返事をしたが、ログウィンドウに選択肢も出ている。だがどうやら普通に会話をして返事をしても認識されるようだ。これで認識されてなかったら恥ずかしいところだった! そして、はい・いいえ以外でも認識されて良かった!

 まあ、ガラハドとの会話でも違和感なく普通に会話しとったからな、いまさらか。


 私の内心の動揺を尻目に受付の説明は続く。


「冒険者には犯罪歴がなければどなたでも無料で登録できます。登録後にお渡しする冒険者カードは、身分証を兼ねていますので、ギルド外でも提示を求められることがあります」

リーフレットに書いてある場所を指し示しながら受付嬢は説明を始める。


「ランクはF〜A、その上のSまであり、ソロは同ランクの依頼、パーティは一番低いランクの方の一つ上のランクまで受けられます。登録時はFランクからとなりますね」


「ランクアップについては、依頼達成件数が一定になるなどで可能になります。その際に試験を受けていただく場合があります」


「冒険者ギルドが行うのは、冒険者の方への依頼の斡旋が主な仕事となっております。依頼は基本掲示板に貼り出してありますので受けたい依頼を選び、ギルドカードを添えてこちらのカウンターに申し出てください、依頼票をお渡しいたします。依頼は三件まで同時に受けることが可能です。依頼を終えたときは依頼票とギルドカードをカウンターにお持ちください。常時依頼は受ける必要はなく報告や納品だけで大丈夫です」


「常時依頼には期限がなく料金はかかりませんが、期間が提示されている依頼は『受諾金』と呼ばれる保証金がかかります。期間内に依頼を完了させれば受諾金はお戻しいたしますが、期間内に終わらなかった場合は戻りませんのでご注意ください。またEランクまでは受諾金は免除されています」


「登録後に犯罪を犯すとギルドカードが赤くなります。罰金を支払うことなどで元の色に戻すことが出来ますが重犯罪の場合は色を戻してもカード下欄に×(バツ)が記入されます。

赤いカード持ちの場合、ギルドの利用ができなくなる等のペナルティが発生します。大丈夫だとは思いますが気をつけてくださいね」


 さらっと説明されましたが、犯罪者になる可能性があるんです?

 PK(プレイヤーを殺すこと)位しか浮かばないが。あるのかPK、一気に殺伐としたな。


「以上で説明は終わりです。このご案内は差し上げますので暇な時間に他の事項もお読みください」

リーフレットを受けとると、手から消えて代わりにメニューが開いてヘルプに『ギルドについて』の項目が増えていることを知らせてくる。

下に『パートナーカードについて』もあった。

どうやら、経験すると使い方や概要がヘルプに増えるらしい、ちょっと便利。


「ではこちらのカードに、手を乗せてください」

薄い石版のようなトレイに乗った現実世界のキャッシュカードより一回り大きく透明なカードを差し出されたので言われた通り手を乗せる。

すると石版の縁に沿うように英語の筆記体のような模様が時計回りで現れ、一周すると今度はカードが淡く光って透明だった色が濃い煙水晶のような感じに変わった。


「どうぞお受け取りください。カードには見えている情報のほかに、依頼討伐の記録などもされてゆきます」


ホムラ

Rank F

職業 魔術士

称号 なし


 受け取ったカードは三行だけのシンプルなものだった。

腰帯につけたポーチに触れると、アイテムウィンドウが開きカードが手から移動していた。

カードは荷物の所持数にはカウントされないらしく、別にひと枠増えていた。初期装備のポーチには他に30個いれることができる。そして枠の並ぶ左上には1,000シルの金額が示されてる。

カード以外からでも自分のステータスはステータスウィンドウで確認ができるのだが、そちらの情報もRank Fという冒険者ランクの表記が追加されていた、連動しているようだ。


 ウィンドウを閉じている間も説明は続く、どうやらギルドカードから持ち主は討伐数など自分に関する様々なデータを見ることができ、カードに出る職業は左端のスロットにセットしたものが表示されること、称号は取得した称号から任意で表示できること。

 あとガラハドが言っていた通りギルドカードからパートナーカードを複製して交換できること。


「以上で登録時の説明は終わりです」



《ギルドの依頼を受けてみよう》

笑顔で受付嬢が締めくくると、替わってアナウンスが流れた。


《ギルドの依頼は掲示板から探し受付で申請することで受けられます》

《また、ギルド内にいる時に限りメニューの依頼一覧から受注することができます》

《今回はメニューから受けてみましょう》


 どうやら掲示板前に陣取らなくとも、酒場でくつろぎながら依頼を探せるようです。ガイダンスに従い最初の依頼を受ける。依頼は以下のようなものだった。



Rank F

依頼名  トビウサギの角 3本納品 期間3日

依頼者  ピコル

報告   ギルド

報酬   50シル

受諾金 ―

※ファストブリムにいるトビウサギの角を3本取ってきてくれ!※



 はい、さっき食べたウサギですね。掲示板に貼り出してあった依頼書より若干情報が多い。


《ファストブリムは南門から出た先にあります。今回はこのまま転移し、戦闘のチュートリアルを行います》


 また視界が白くなると、次には草原にいた。

眩しくないのに目がくらむのは何か変な感じがする。実は最初の広場に出た時は立ちくらみかと思って少し焦ったのだ。


《トビウサギを探してみましょう》

見渡す限りの草原。草原のイメージは膝丈くらいの草が生えてるイメージがあったけれどここはヘアグラスのような柔らかい踝くらいまでの草で覆われている、どちらかというと牧草地に見える。


 何かの気配に視線を向ければ探すまでもなく、ウサギにしては目付きの悪い角の生えた薄茶色の生き物がいた。

 ウサギのあの前歯が尖っているんですが? 凶悪です。



【動物魔物鑑定】を使ってみる。



【トビウサギ】

分類:魔物



 知っている情報です。



 鑑定を使ったことで発見扱いされたのかアナウンスが流れた。


《モンスターにはこちらから攻撃を行わない限り襲ってこないノンアクティブタイプと一定の範囲内に近づくと襲ってくるアクティブタイプのモンスターがいます》


《プレイヤーがHP0になると戦闘不能、60秒後に死亡となり最後に訪れた神殿で蘇生します》

《死亡すると所持金が半減し、一定時間のステータス二分の一低下のペナルティがあります》

《HPの最大値はVITの影響などで増減します》

メニューが開いてHPゲージが光っている。


 これは常に表示しておいたほうがいい。

私はメニューウィンドウからゲージ三種類を引っ張り出し視界の端に常に表示されるようにする。

ゲージはHP、MP、EPの三種類だ。ついでに時計も表示させる。

身体から一定の距離の中空にういた半透明のウィンドウはなんとも不思議な気分になる。

【動物魔物鑑定】はEPが少し減ったようだ。


《魔法を使ってみましょう》

《杖や魔道書は装備していますか? 素手での魔法発動は可能ですが、武器の補正が掛かりませんのでご注意ください》


《魔法の使用ではMPを消費します。MPは魔力量を表します》

《MPが0になると【目眩】【貧血】などバッドステータスに陥りますのでご注意ください》

《ステータスはMPを回復することによって回復します》

《MP0のまま放置を続けると、HPの減少が始まります、早めに回復しましょう》

《MPの最大値はINTの影響などで増減します》


 アナウンスの間、MPゲージが光っていた。

次にEPと書かれたゲージが光る。


《物理攻撃や特定のスキルでは、EPを消費します。EPは空腹度、瞬発体力を表します》

《物理スキル等には『必要EP』と『消費EP』とがあり、スキルを使用すると暫定的に『必要EP』分が減り、徐々に元のEP値から『消費EP』を減じた状態まで回復します》

《EPゲージは何もしなくても自然に減少します》

《EPが0になると移動速度が通常の十分の一になりますのでご注意ください》

《移動速度は食事などでEPを回復することによって回復します》

《EPが0のまま放置を続けると、MPの減少が始まります、早めに回復しましょう》



 ご飯は大変大事だと思います。



《なおチュートリアル中に減ったHP/MP/EPは終了後に回復します》



《では使える魔法・魔術を確認してみましょう》

メニューで光る順番をタップしてゆく。結局【金魔術】ってなんなのか。


火魔術 ファイアニードル MP3

水魔術 ウォーターニードル MP3

金魔術 針 MP3


 タブ別に表示されているが、まだ一種類ずつしか使えないようだ。針と言うのは針を出現させるとかだろうか……



《対象を認識して使用したい魔法の呪文を唱えてください》



 メニューから選べないのですか。技名やら呪文やら叫びながら戦うの恥ずかしいんですが。いや、ウィンドウを開きっぱなしならメニューから選択できるようだが、メニューを見ながら瞬時に必要な魔法をタップするのは面倒そうだ。

……スキルに無詠唱があると信じよう。


「『針』!」

杖を掲げて呪文を唱える。初級の魔法は魔術の属性と名前だけ唱えるのだが高度な威力のある魔法ほど呪文が長くなり、詠唱中に攻撃を受けると呪文がキャンセルされる、とアナウンスさんが言ってた。


 そして出たのは予想通りの『針』だった。縫い物用ではなくって編み針のような大きさの金属の針だ。トビウサギに『針』が当たるとギャギャというような叫びをあげてこちらに角をつき出して向かってきた。


 慌てて唱えた『針』とジャンプしたトビウサギがぶつかって、トビウサギがバランスを崩して落ちる。そこへもう一度『針』。

 慌てふためき連呼してしまったけれど結果オーライだったようだ。トビウサギは光の粒になって消えた。

 魔法剣士を目指していたのだが考え直した方がいいだろうか。今のが近接戦闘だったら、くらいまくっていた気がする。いや、慣れれば冷静に対処出来るようになるだろう、なるにちがいない。


 そして『針』が魔法らしく見えないけど格好良くて気に入りました。




《トビウサギの角を手に入れました》

《トビウサギの肉を手に入れました》


《魔物などを倒すとアイテムがドロップします。ドロップ品は納品などの他、生産にも使えますので色々試してみましょう》


《残り二匹です。この調子で倒しましょう》



 MPはさきほどの戦闘から考えて余裕はありそうだけれど何があるかわからんので節約したい。

これ、座ってたりしたら回復せんかな? 私は辺りを見回して周囲に敵がいない事を確認すると、その場で寝転んだ。

 すまん、だってこんな一面柔らかい草で虫がいない草原なんて現実世界で見た事ない! チュートリアルを終えた後の草原は他のプレイヤーがいるはずだし!


 ちょっとだけ、と思い寝転がって空を眺める。遮るものがない視界いっぱいの空。雲の流れが速い。地上は緩やかな風が吹いているだけだが、上空は随分強い風が吹いているようだ。


 昼寝したくなるような気分に終わりが来た。小さい叩くような鈍い音が地面から伝わってくる。多分トビウサギが跳ぶ音だ。

 そっと起き上がって周囲を見ると、先ほどより遠くにトビウサギを見つける。




《トビウサギの角を手に入れました》

《トビウサギの皮を手に入れました》


 今回倒したウサギのドロップ、前回の肉が皮に変わった。クエストアイテムの角は出ているので問題ないが、ドロップは変わることを知った。毛皮じゃなくて皮なのか。


 MPは休んでいても回復しなかった、MP回復薬を買い込まねば。他のゲームと同様、薬があることは疑わない。攻撃を外したら痛い目にあいそうなので三匹目もそっと後ろから近づいて気付かれる前に先制攻撃。


 今度はウォーターニードルとファイアニードルを使ってみた。こっちは日本語じゃダメなのかと、唱えてみたら『水針』でも発動。適当でいいのだろうか。



《トビウサギの角を手に入れました》

《トビウサギの皮を手に入れました》

《依頼『トビウサギの角3本納品』の条件を達成しました》



《 スキルリストに【MP自然回復】【HP自然回復】【遠見】【気配希釈】【気配察知】【不意打ち】【体術】が追加されました》


《スキルは行動によってリストに追加され、リストからスキルポイントを使って覚えます》

《他にも取得の方法があるので色々試してみましょう》

《スキルポイントはレベルアップなどで得られます》



《では冒険者ギルドで依頼の報告をしてみましょう》



 また視界が白くなり、視界が戻ると冒険者ギルドのカウンター前だ。酒場を覗くとガラハドはもう居らず、思い切って酒を飲んでいる三人に話しかけてみたが、冒険についてのマメ知識のような話が聞けただけだった。

もうトビウサギは狩ってきました! 遅い情報です!

友人達とログイン時間がズレるので、戦闘に呼べるならNPCのパートナーカードはもっと欲しいんだが。


 諦めて依頼の報告をする。


「報告を頼む」

ギルドカードとトビウサギの角を出す。

「ありがとうございます、ギルドカードはこちら、討伐部位はこちらに置いてください」


 指示されるままに、ギルドカードはもらった時と多分同じ石板の上、角は受付嬢正面から少しズレたカウンターの黒っぽいこげ茶のスペースに上に置いた。天板がツートンカラーだったのはこのせいか。


「依頼達成を確認致しました、精算いたします」


 カードを置いた石板の縁と、角を置いた色違いの天板が光ると、角は無くなり、代わりに50シルがカウンターの上に出ていた。


「お疲れ様でした、こちらが依頼料になります」


 そのまま50シルを受取り終了、便利なカウンターだな。

あ、受付嬢の名前聞いておこうか。



《依頼の報告もギルド内にいる場合に限り、依頼一覧から行うことができます》

《買取もメニューから可能ですので活用しましょう》


《これで、チュートリアルを終了します》

《お疲れ様でした》



 時間切れだった。

 気づくと噴水広場に戻されていた。

 忘れないうちにパトカ一覧からガラハドを選びパトカを渡すを選択する。選ぶといっても一人しかリストにないわけだが。




《称号【交流者】を手に入れました》



《お知らせします、『異世界』の『住人』と初めてパートナーカードを交換したプレイヤーが現れました。これにより情報を開示いたします》


《『住人』と親しくなるなど一定の条件をクリアした場合、『住人』からパートナーカードを渡されることがあります。お互いにカードを『交換』することで戦闘などに誘うことができるようになります》

《『住人』のカードは複数枚入手可能ですが、自分のパートナーカードを渡し『交換』できるのは一人だけとなります。交換した対象のカードを破棄した場合新しく『交換』できるようになりますが、破棄した『住人』からは再びパートナーカードを受け取ることはできなくなります。またクエストなどで交換可能な人数が増える場合があります》

《『住人』一人につき『交換』は一度だけです。二人のプレイヤーが同じ『住人』とカードを交換することはできません》

《三ヶ月以上ログインがない場合、『住人』側の受け取ったパートナーカードは破棄されますのでご注意ください。その場合対象の『住人』も含め新たにパートナーカードを渡すことができます》

《『異世界』にはたくさんの『住人』がいます。積極的に交流を深めましょう》



!?

私ですか!?


 私ですね、ちょっと「うわぁ」としか思えぬ。

 すでに思い切り交換してるが、これ戦闘で有利になる『住人』選べってことだよね? やってしまったろうか……、と思いながらメニューにあるコミュニケーション項目を確認する。パトカの一覧にガラハドだけぽつんと。友人と交換する前にNPCと交換ってなんかボッチ臭がひどいんだが。



ガラハド

Rank A

職業 戦士

称号 赤き武勇の戦士



 ……

カード確認したらガラハドさんAランクなんですが。

序盤でいいのかこれ。『住人』はお助けキャラか!



 称号の方を確認してみると


【交流者】初めて『住人』とパートナーカードを交わした者

効果:『住人』のパートナーカード+1枠


 あれです、選びなおしできない救済策?

 これから好きなキャラを選べることにとりあえずほっとした。ガラハドも格好良いし、戦士ということで前衛任せられるし、私が選ぶタイプではあるのだが。 





□    □    □    □    □   

・増・

称号 【交流者】 

□    □    □    □    □  


ホムラ Lv.1

Rank F

職業 魔術士 薬士

 HP  84

 MP  116

 STR 10

 VIT 9

 INT 15

 MID 12

 DEX 9

 AGI 10

 LUK 10


NPCP 【ガラハド】【-】


称号 【交流者】


スキル(0SP)

■魔術・魔法

【火魔術Lv.1】【金魔術Lv.1】【水魔術Lv.1】

■生産

【調合Lv.1】【錬金調合Lv.1】

■収集

【採取】

■鑑定・隠蔽

【道具薬品鑑定Lv.1】【植物食物鑑定Lv.1】【動物魔物鑑定Lv.1】

■強化

【知力強化Lv.1】




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 住人一人にプレイヤー一人までって大分糞な仕様やな 後からゲーム買った人とか何も面白くないやん
[気になる点] 読み返し組です!パトカが住人と交換は1人のみ?というのはメール(精霊の囁き)が使えるようになるのが交換?でも後の話でガラハド以外からもメール交換出来てるようだし、1人のみというのは通常…
[気になる点] 読み返し組です。 交流者称号の特典(パートナー枠+1)が最新更新話でもブランクな件。 カルさん以外が着任するとブリザードが吹き荒れそうですがこの枠が埋まる日は来るのでしょうかww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ