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41.ランクアップと新しい国

ブックマークが気づけば200に・・・っ!

ありがとうございます。

 ファストの街のギルドより華やかな印象のファイナの冒険者ギルド。


 華やかに思えるのはカウンターや床の色がファストよりやや薄い茶色な上に、魔法の明かりがそこかしこにあるせいだろう。金髪ベリーショートのつり目気味の受付女性に声を掛ける。制服とあいまって軍人さんみたいだ。


「ファストのギルドの依頼できた。この書類に署名を頼む」

「承りました。あちらにかけて少々お待ちください」


 そう言ってカウンターの奥に見える扉に消えていった。

 指し示された壁際の椅子に座って待つ事五分少々、私の他にも住人の冒険者が呼ばれては書類を受け取ってゆく。中には冒険者に見えない人もいる。

 王都の冒険者ギルドは証明書の発行など、ファストと違って事務的な仕事が多いのかもしれないな、と考えていると、書類を渡した場所とは別の、私が座っている席の目の前の受付から声がかかる。


「お待たせしました、こちらになります」

たぶん持ってきた書類なのだろうが、封蝋が金色がかった色に変わっていた。署名した後もう一度封をしたのだろう。


「資料室は使えるのか?」

「料金がかかりますが、ギルドカードをお持ちであればご自由にお使いいただけます」

ここは有料なのか。

 あれば地図を写そうかと思ったのだが、他のプレイヤーが来るまでに資料室から出られるか考えて、後にすることにした。後で馬車できましたよ〜という顔をして利用しよう。


 礼を言ってギルドを出る。

 船頭に教えてもらったのは向かいの船着場だ。だが黒百合はどうやら水路を移動しているようだし、陸路を行く事にする。徒歩で行けばよっぽどのことがない限り鉢合わせはないだろう。


 そう判断して石畳を歩く。

 他の町は大体ギルドも神殿も大通り沿いにあり、あちこち曲がらずに到着できたのだが、なにせこの街は大通り自体が碁盤の目状ではない。道は運河で阻まれるため、橋を渡るために遠回りする事もある。

 神殿を目指して太い運河に並行してある道を歩く。ギルドから東にでてしばらく行くと見える、大きな橋を右手に北東に続く道をたどる。城を中心に渦を巻いた運河に沿った通りもまた渦を巻くような格好だ。

 居住区が不足するたび運河を延ばして用地を確保、歴史とともに渦の巻き数? も増えているそうだ。

 城壁を新しくして街を拡張するより手軽なのか、それとも王都で街の拡張のための予算が潤沢にあるのかは知らないが、他の街中より土地の使い方が贅沢だ。緑が多いのももちろん、火除け地を兼ねているのか公園も多くみかける。


 城の堀からまっすぐ伸びる運河に遮られると、北へと渡る橋には門が設けてありその先は船頭の親父に聞いたロブスター家とはまた別な侯爵家の敷地らしい。


 ……ロブスター食べたいな。Rank2の普通の魚でよければスキルがなくとも釣れるのだが、あいにく私は釣りが得意でない。入れ食いなら楽しいのだが、無心でアタリを待つというのが難しい。つい本を片手に、うっかり本に夢中というそんなパターン。

 この世界で無心になるなら剣を振るっていた方がいいしな。


 右に折れて橋を渡りもう一度橋を渡ってようやく神殿のある区画に着く。正面は反対側なので裏側から回り込むわけだが、大きな木に覆われた敷地の中は道からは覗けない。しかし、時折見える屋根を見るだけでも重厚な建物が数棟建っているのがわかる。

 正面に回るとなかなか壮麗で立派な建物で、白亜の神殿という表現が似合う。白い柱が幾本も立ち並び、雨だというのに多くの人が出入りしている。


 さすがに裏手で見かけた建物は実用的だったが、参道を兼ねた広場から見る正面は柱の下部と上部に装飾が施され、白に所々金の差し色があり見た目重視な姿をしていた。後で聞くと、ここで王族の結婚式なども行われ、印象通り完全に式典用の見てくれ重視な入り口だったようだ。


 一応拝殿で一通り参拝を済まし、とっとと登録を済ませファストに帰ってきた。

 港町なので水の神ファルが人気なのかと思っていたが、商人と職人の神、金の神ルシャが人気らしく他の神々とくらべ捧げられた花の数が多かった。こうなると街で扱っている商品がきになる。観光と買い物は後でゆっくりすることにする! 晴れた日に!




 冒険者ギルドには何人かの冒険者(プレイヤー)が食堂やら依頼の掲示板、受付カウンター付近にいた。ゲーム開始直後の入り口から溢れるような混雑が嘘のようだ。いるのがやたら男ばかりだが。


「こんにちは」

「こんにちは、差し入れありがとうございました!」

「依頼の報告を頼む」

ちょうどプラムの受付が空いていたのでお願いすると、お菓子の礼を返された。


「オレ、今日サーのボス倒したんだぜ! 素材売って金入ったしごはんでもどうよ」

「それはおめでとうございます、食事は遠慮します」

「えー、オレ将来優秀よ? 出会いは大切にしようぜ〜」


 隣でカウンターに胸が乗りそうな巨乳の受付嬢を食事に誘っているプレイヤーの話が耳に入ってくる。聞くつもりはないのだが耳に入ってくるので意識がそっちの会話に持っていかれそうになっている。私だけでなくそばにいるプレイヤーも聞き耳を立てているようだ。

 時々「エメルさんがお前なんか相手にするかよ……」「あの巨乳はオレのものだ」とか「ナナさんにいかねーならいいや」などと周りから囁きが聞こえてくる。

 まさかここにたむろしている男どもは受付嬢狙いなのか……?


「では書類をお預かりします。別室で中を確認いたしますので、二階の資料室、廊下奥の部屋にお願いいたします」

「ああ……」

視線はプラムに向けているが耳が半分隣に向いている。

 気のせいかエメルがこっちをちらっと見た気がする。


「……そうですね、『レンガード製のお菓子』を明日から一週間欠かさず届けてくれたら考えます」


 気のせいじゃなかった。

 あれ、私が作ったってばれて……るわけはないな。差し入れが気に入ったのか。続きが気になったので思わず空いている受付にもう一度、今度は素材納品の報告を出してしまった。


「レンガードのお菓子?」

「はい。いただいて美味しかったんですが、手に入らなくって。ギルドの女性職員で売っているのを探してみたんですが見つからなくって、届けてくれたら一度ランチくらいなら付き合いますよ」

にっこり笑って目の前にいる男に告げる。


 わかった、今日からしばらく菓子類は販売に出さなければいいんですね? 私をみて思いついたらしい条件にお菓子の販売制限を決意する。デート阻止!


「その条件なら何人かは昼間の食事くらいなら受けるかもしれませんね」

私に依頼の報酬を渡しながら目の前の受付嬢も笑いながら口を挟む。


「うを〜っ!」

「名前がついててさがせなかったってこたぁ、委託か!」

「エメルさんとのお食事権はオレのものだああああああああああああ」

「プラムさぁんんんんんんんん!!!!」

「あ、てめえら!! 抜け駆けすんな!! 受けたのはオレだ!!!」


 あっと言う間にカウンター付近のプレイヤーがいなくなった。

 受付嬢との会話は聞こえてなかったらしい食堂にいた冒険者たちが突然の大声と共に外に飛び出して行く男どもをあっけにとられて見ている中、素材納品を終えた私は処理してくれた受付嬢に礼を言って二階へと上がるのだった。


 あれだ、今まで受付嬢たちは住人の菓子店舗の評価4のものしか食べたことがなかったのか。今なら委託販売で高評価の菓子が買えると思うのだが。初めて食べた高評価の菓子ということで味が美化されている気がする。配ったのは一通り試しに作ったものの寄せ集めだったから評価は6〜8のものだったと思うのだが。


 そんなことを思いながら二階に上がると廊下の突き当たりにプラムが待っていた。


「すまん、待たせた」

「いえ、どうぞ」

カウンター横から行く階段だけでなく、職員用の階段があるのかとおもいつつ資料室を通りすぎ、案内された部屋に入る。

 中には壮年から老人へとさしかかる年の男がいた。


「ワシはギルドの副マスターのマルコスだ。君がホムラ君か、Cランク昇格おめでとう」

白髪混じりというより白髪に灰色の毛混じり、口ひげをはやして年齢の割にがっしりしている。元冒険者というところか。


 冒険者ギルドには元冒険者が多く勤めている。もっとも座り続けたり書類仕事が苦手な者が多いため、裏方の納品物の仕分や解体、配達などの仕事が主で、現役の冒険者との接点はここファストでは依頼外の買取窓口にいる厳つい男くらいのものである。

 他は五体満足で円満に引退した者が新人の指導官として雇われる場合もある。あとは、国や人々に貢献し、カリスマを持つようなランクの高い冒険者が所謂幹部として組織に組み込まれている。会ったことはないが、ファストのギルマスは有名らしい。


「ありがとう」

差し出された手を握り返し、礼を言う。


「さてギルドカードをくれるかな?」

プラムがマルコスの脇で登録時につかったものと同じ薄い石板のようなプレートを用意して待っている。ギルドカードを差し出すと、マルコスはプラムの差し出す黒いプレートの上にギルドカードと私がファイナからサインをもらってきた書類を広げ重ねておく。

 プレートが淡く光り文字のようなものが浮かんで消えるとマルコスがギルドカードを返してくる。ちらりと見た書類には何も書かれていなかった、重ねた時には何か書かれていたのでギルドカードに転写されたのだろう。


「書類が気になるかね? 君がファイナから持ってきたのは国を移動する許可証だよ。そのギルドカードがあれば神殿から国交を結んでいるバロン・アイル・ファガットに行ける。もちろん歩いて国境を越えることも可能だよ、ただし道中命の保証はないがね」

神殿から行けるのか、国境越えでボス戦があるのかと思ってた。迷宮都市バロンと魔法国家アイルは聞いたことがあるがファガットは初耳だ。後で調べよう。


「それでこれはワシからのお願いなんだがたまにはこのギルドに戻ってほしい。この国の魔物は弱いんでね、暮らすにはいいのだが冒険者はCランクになると拠点を変えてしまって寄り付かなくって困ってるんだ」

マルコスのお願いに了承すると、話が終わったタイミングでプラムがおめでとうございますと声をかけてくれる。プラムにも礼を言って部屋を出る、いや出る前にお菓子を渡す。


「皆さんでどうぞ。何か下で賭けっぽいことをしていたから、意中の人に内緒で渡すのもご自由に」

「あら! ごめんなさい。聞いてらしたのね、最近ずっと依頼も受けないのにカウンターに張り付いてらっしゃる方がいて、つい引き合いに出してしまったんだわ。おいしくってみんなで頂いたお菓子を探したことは本当なんですけど、変なことに引き合いに出してごめんなさい」

「いや、これは最近始まった委託販売で時々売っているから。対面販売してるわけではないから誰にも迷惑にならんだろう、たぶん。どうやって手に入れたかとかつきまとわれたら面倒だからな、私からの差し入れだとは言わないでもらうと嬉しい」

「ええ、それはもちろん!」

プラムと約束して今度こそ部屋を出た。

 街の菓子屋とか突撃されてないだろうか、異邦人(プレイヤー)が迷惑おかけしますと住人に謝りたい気分だ。




 そろそろ昼にしたいが、ここは新しい国でレストランを探すべきか。

 米の飯はどこだ!



 そういうわけで神殿の転移門です。

 今までは現在いる場所が灰色表示、他が白文字表示で、首都ファイナ・ファスト・セカン・サー・フォスの表示だったのが、


・ジアース国

  首都ファイナ ファスト セカン サー フォス

・ターカント公国

  首都バロン

・アイル国

  首都アルスナ

・ファガット国

  首都ナヴァイ・グランデ


 という表示に変わっていた。

 他の国は首都からのようだ。まあ、首都から遠くなる程モンスターが強くなった方が自然といえば自然なのでそういうことなのだろう。凶暴なモンスターがでる場所で定住して人口増やすのは大変だろうしな。


 さて、どこへ行こう。

 アイルは魔法・聖法などの法術が盛んな国でガラハド達が騎獣を拾ったところだし、ターカント公国には迷宮都市バロンという呼び名がそのまま国を表すくらい有名な迷宮がある。むしろターカントと呼ぶ人がいないくらいだ。ファガットについては情報を拾えてない。


 おとなしく自分の職業にあったアイルにした。

 何があるか楽しみだ。因みに転移門の利用料は国内は距離によって料金が変わっている。今回の移動は4万シル取られました。やたら高いのは距離なのか国を跨ぐ移動だからなのかはわからない。


 ジアース国内の観光もまだなのに無駄遣いだろうかと思いつつ転移門をくぐった。



《お知らせします、国境を越えたプレイヤーが現れました。これにより所属、クラン及びハウスの機能を追加いたします》


《所属は自分、もしくはクランの所属するギルドなどの組織が選べるようになります。組織によって特典が異なりますのでご確認ください。また所属をしなくても組織の信頼を得れば同等の待遇を受けられることがあります、逆に所属していても信頼を失った場合放逐される可能性もございますのでご注意ください》


《クランは職業や志を同じくする者、もっと気軽に仲の良いもの同士で作ることができます。同じクランのメンバー複数で同時に【クラン会話】という念話ができる、ハウスを共有できるなどの特典があります》


《ハウスはプレイヤーがこの世界に家を持つ事ができる機能です。商業ギルドに登録のあるプレイヤーは店舗としての建物を借りることも可能です》


《詳しくはメニューをご確認ください》



《称号【世界を翔ける者】を手に入れました》



 門を出た途端、アナウンスが。

 称号ゲットだが、それよりもハウスが!!……でもお高いんでしょう? だが欲しい!

 どこで手に入れるんだろう、不動産屋だろうか。

 クランはきっとお茶漬がギルマスじゃないクランマスターで結成の音頭をとってくれるはずなので任せよう。こっちもきっと結成に金がいるとか条件があるんだろうな。


 家は好きなところに建てられるのだろうか。

 楽しみすぎる。早く飲食店に入ってゆっくりメニューを読もう。


 またやることが増えた!




□    □    □    □    □    

・増・

称号

【世界を翔ける者】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.32

Rank C

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   1057

MP  1335

STR 44

VIT 24

INT 71

MID 20

DEX 26

AGI 45

LUK 25


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】

【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】

■神々の祝福

【タシャの祝福】【ヴァルの寵愛】

【ヴェルナの祝福】

■神々からの称号

【タシャの弟子】【神々の時】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣王】【賢王】


スキル(3SP)

■魔術・魔法

【木魔法Lv.7】 【火魔術Lv.7】【土魔術Lv.7】

【金魔術Lv.7】 【水魔術Lv.7】【☆風魔法Lv.8】

【☆雷魔法Lv.12】【光魔術Lv.16】【☆闇魔法Lv.21】

【☆空魔法Lv.10】【時魔術Lv.2】【ドルイド魔法Lv.1】

■治癒術・聖法

【回復Lv.6】

【幻術Lv.1】

■魔法系その他

【マジックシールド】【重ねがけ】

【☆範囲魔法Lv.2】【☆行動詠唱】

【☆詠唱短縮Lv.4】

■剣術

【剣術Lv.22】【スラッシュ】

【刀Lv.21】【☆一閃Lv.9】

【☆幻影ノ刀Lv.9】【☆見切りLv.9】

■暗器

【糸Lv.1】

■召喚

【白Lv.1】

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.3】

 闇の精霊【黒耀Lv.4】

■才能系

【体術】【回避】【暗号解読】

■移動行動等

【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】

■生産

【調合Lv.15】【錬金調合Lv.16】【料理Lv.8】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【道具薬品鑑定Lv.8】【植物食物鑑定Lv.6】

【動物魔物鑑定Lv.8】【スキル鑑定Lv.6】

【武器防具鑑定Lv.7】【看破】

【気配察知Lv.21】【気配希釈Lv.19】【隠蔽Lv.10】

■強化

【腕力強化Lv.4】【知力強化Lv.4】【精神強化Lv.5】

【器用強化Lv.4】【俊敏強化Lv.5】

【剣術強化Lv.5】【魔術強化Lv.4】

■耐性

【酔い耐性】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】【暗視】

【地図】【念話】

【装備チェンジ】【☆武器保持Lv.3】

【生活魔法】【☆誘引】

【盗み防止Lv.21】【罠解除】

【開錠】【アンロック】


☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの

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― 新着の感想 ―
ランクアップは依頼達成件数も条件にあるし、攻略組はまだそっちが達成されてないとか。あと、国境越えられるなら、住民からの好感度的な隠し要素もありそう。
攻略組が国を越えて無い筈がないと私は思うのですよ。 だから今回の称号ゲットは違和感しかないのです。
感想一覧
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