表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

371/388

369.準備OK?

掲示板、もうすこし先にした方が時系列あったかなと思いつつ。

 火のダメージフィールドだったボス部屋は、石の柱の底、赤々と燃えていた溶岩は黒く固まっている。


 水簾(すいれん)洞の主人は討伐のアナウンスが流れ終わると、「お師匠さん!」と叫び、飛び起きて走り去っていった。


 どこかに三蔵法師似がいるのだろうか? さすがにそれは世界観がこう……。まさかどこかに中華風な大陸や島があるのだろうか? 扶桑はあったので、否定しきれない何かだ。


 ボスの消えたボス部屋で遊んで、ロイと炎王と別れた。お茶漬とシン、私はクランハウスに帰る。


「おかえりでし」

「ただいま」

「おっす、おっす!」

「は〜、ただいま。なかなかひどかった」


 ログインしていた菊姫に迎えられ、挨拶を返す。


「レオとペテロもそろそろかな? ログインしてくる前に、ちょっと休憩してくる」

お茶漬が言って、自室に向かう。


「また後で」

「すぐ戻ってくるぜ!」

私とシンも同じく。


「あい。いってらっしゃいでし」

菊姫が生産する手元を見ながら、片手だけひらひらさせる。


 一定時間ごとに必ず休憩を入れねばならんので、これから揃って遊ぶための時間合わせを兼ね、こっちの世界では睡眠扱いのログアウトをする。


 クランハウスの自室には、白虎がいる。顔同士をごつんと突き合わせるように挨拶し、手触りのいい体を撫でる。白虎の腹を枕に、おやすみなさい。


 で、現実世界で起きだす。


 バイザーを外して体を伸ばし、お湯を沸かす間に顔を洗う。休憩時間は15分ほど、本格的に何かをするには短いが、お茶くらいは飲める。


 小さなアーモンドとキャラメルのタルトを食べながら、アラームをセットして本に手を出す。紙の本派だが、パラパラとこぼしやすいものを食べている時は、電子が便利だ。


 すぐにアラームが鳴り、没頭することは叶わない。ショートショート集か、物語というよりは図鑑や事典的な物を買ってくるか。


 さて。


 静かなひとりの本の世界から刺激的な世界、友達と共有できる世界へ。


ホムラ:ただいま

ペテロ:おか

シ ン:おかえりぃ!

レ オ:ただいま! おかえり!


 レオと私はほぼ同時ログインだったようだ。


ホムラ:あれ? 菊姫もログアウトしたのか

シ ン:みてぇだな

ペテロ:時間調整でしょ


 私たちに時間を合わせるために、結局休憩をとったようだ。


シ ン:お茶漬はお茶漬けを掻っ込んでくるってよ

ホムラ:はい、はい


 どうやらお茶漬は少し遅れるようだ。待つ間、白虎の毛並みを堪能しよう。むにっと白虎の顔のマッサージをば。しっとり絹糸のような体毛、ぶっとい手、長いしっぽ。うちの白虎は可愛いのである。


 猫科でもライオンやトラ、ヒョウ、ユキヒョウなどは吼えることが可能な代わりに、喉を鳴らすことは難しいらしい。が、白虎は喉を鳴らす。低く唸るような声ではなく、ゴロゴロと。


 騎獣は背中にも乗れるし、現実世界の虎とイコールではないしな。


お茶漬:ただいま〜。おまたせ

シ ン:おかえりまき

レ オ:おかえりす

ホムラ:おかえりんごパイ

ペテロ:薄焼のを希望します。おかえり


 要望が来た。リンゴもパイシートもあるな、よし。部屋から出て、リビングに行くと、シンとレオがカジノの話題で盛り上がっている。もう少ししたら新大陸に行くというのに、大丈夫なのだろうか。


 ――というか、シンの肩に猿がいるのだが。あそこが定位置に決定したのだろうか。


 私はそのままキッチンへ、リンゴの薄焼パイを作り始める。


菊 姫:ただいまでし

ホムラ:おかえり

シ ン:おかえりこーだ!

レ オ:おかえりす!

ペテロ:のりませんよ、おかえり。


 ペテロがダジャレっぽい流れを堰き止めている。


お茶漬:おかえり。ちょっと、聞いてください

シ ン:なんだ?

レ オ:どうした?

ホムラ:うん?

ペテロ:何?

お茶漬:さっきお茶漬けの素かけてたら、袋に英語で説明があったんですよ

シ ン:おう?

お茶漬:綴りがOCHAZUKE! 僕、OCHADUKEにしちゃったんだけど!

レ オ:Zの方がかっこいいもんな! 俺はREO! Left(レフト)よりRed(レッド)

菊 姫:意味がわからないでし

ホムラ:そこはRight(ライト)じゃないのか……?

ペテロ:www

シ ン:理解しようとするな! 感じるんだ!

菊 姫:とりあえずレオも綴りを間違えたことはわかったでし

レ オ:わはははは!

お茶漬:僕のは英語でなくローマ字ってことでひとつ


 相変わらずカオスな話題だなと思いつつ、料理を作る。たわいもない話題が続いて、付き合いも続いているのだから、お互いそばにいて心地がいいんだな。騒がしいが。


レ オ:いい匂い!

ペテロ:あ、ご飯?

お茶漬:待って、待って、行く、行く


 生産スキル併用なので、早い。リンゴの薄焼パイは、ちょっと罪悪感を感じるバターの量、オーブンからそれがとてもいい匂いを放っている。


「って、なんでシンの肩に猿がいるの?」

リビングに入ってきたペテロが動きを止める。


「おじさんにも色々あったんですよ」

「具体的にはバナナがありましたね」

苦労した的なシンの演技に、お茶漬が答えながら席につく。


「バナナ……」

ますます困惑するペテロ。


「クエストの途中だったのに、このモンキーに盗られて最初からだ」

「あのバナナ、クエストアイテムだったのか?」

なんで持ってるのかと思ったら。


「ぶあ、いい匂い! 猿のことは後回しで!」

シンが手を擦り合わせる。


「どうぞ。つやつやしたのがアプリコットで、こっちはシナモン、こっちはラムを垂らしてカラメルで少し表面をパリッとさせた。これはノーマルに粉砂糖」

薄焼パイを並べる。


 パイシートそのままの大きさで焼いたが、食べやすいように切れ目を入れてある。


「本当に出てきた。だいぶEP減っているので、パスタも食べたいです」

笑いながらペテロが言う。


「僕も」

「俺も食う!」

「もがも!」

口の中にパイが入ったまま意思表示をするレオ。


「……! おいしいでし、パスタも食べるでし!」

飲み込んでから答える菊姫。


 そういうわけで、パスタ。カブとホタテのクリームパスタでいいかな? 薄力粉を使わず、生クリームと牛乳のさらりとしたスープパスタで。でもこれにもバター投入。


「黒胡椒はお好みでどうぞ」


 クランハウスで賑やかな食事を始める。


 事情を知らない3人に孫悟空でのことを話す。場所は『世界の謎』に触れそうなので濁すが、悟空の存在は『封印の獣』と違いワールドアナウンスが流れたので、情報を渡しても聞いた方のクリア報酬が落ちることはない。


「へえ、炎王とロイか。豪華だね」

「僕の盾ですよ。2枚あっても危なかったけど!」


 お茶漬の呼びかけに応えたのが運の尽き。なかなか過酷な盾の役割だったようだ。


「お猿の名前はなんでし?」

菊姫がシンに聞く。


「決めてねぇ! お猿でいいんじゃね?」

そう答えたシンの鼻の穴を横にぐっと伸ばす猿。


「このクソ猿!」

肩からつまみ上げようとするシンの手を、素早く避ける猿。


 右の肩、左の肩、背中の真ん中と、素早く移動してその度にシンの手が空を切る。なんかこう、猫が猫じゃらしを空ぶってる時みたいになってるな、シン。


「で? 今日は何すんだ〜?」

レオが両手にパイを持って聞いてくる。


「確認だけど、新大陸に渡るのが近いわけだけど、用意できてる?」

「一応できてるでし」

お茶漬の問いかけに、少し不安そうながらも答える菊姫。


「一応できてる、かな?」

戦勝パーティーのダンスの壁を忘れていたが。


「万端――と、言いたいところだけど、毒のストックが。鵺で派手に使ったからね。でも新たな毒も手に入れたし、大丈夫かな」

ペテロ、準備が毒というのはどうなのだ?


「はーい、はい! サディラスも行ったし終わってる!」

「おう! 帝国でアイテムももらった!」

こちらは元気一杯のレオとシン。


「二人は、やっておかなきゃいけないクエストより、むしろ所持金が大丈夫か聞きたいんだけど……」

お茶漬が信用してない目で二人を見る。


「わはははは!」

「……」

答えず、笑って誤魔化そうとするレオと視線を逸らすシン。


「新大陸、新アイテム、新装備。買えなくて泣いても貸さないからね?」

「うっ……」

「……ぐっ」

お茶漬の言葉に呻く二人。


「あー。金になりそうなところって、どこだ?」

どうやらなるべくシルが貯まるところがいいようだが、生憎何が儲かるのか私も疎い。


「今の売れ筋は【採取】と【採掘】になっちゃうね。せっかくみんな揃ってるんだから――迷宮の行けるだけ深いところがいいかに」


 お茶漬がそう言って、行き先は迷宮に決定した。


 私的にはシンのバナナクエストが気になるのだが、『世界の謎』に引っかかりそうで詳しいことは聞けずにいる。謎すぎる。


8巻 1/20発売になります。

https://www.tobooks.jp/newgame/index.html


プライベートダンジョンも1/9発売!

興味がございましたらぜひよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] リンゴの薄焼パイ ← 一瞬、リンゴの蒲焼パイ と空目したw リンゴの蒲焼ってなんだよ!俺っ!!www 疲れてるんだ…多分_| ̄|○ ↓の お茶公爵(お茶DUKE)ワロタw イイネ!一つ♪…
[一言] 更新ありがとうございます。 バナナクエストが凄く気になります・・・
[一言] 早く続きが読みたーい!!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ