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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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36/388

34.二度目の遭遇はお二人様

 街に死に戻るつもり満々だったんですが。


 おかしい……。



「ほう、あれを白と呼んでおるのか」


 二度目の遭遇になります、自由と冒険者の神、風神ヴァル。女性の姿で現れることが多い神だとか。

 相変わらず美しいのだが、好んで女性の姿を取るだけで男の姿で現れることもあるそうな。性別も年齢も気分次第。

 ここの神々はおしなべてそうらしい。


「白、おいで」

白が私の腹の上に現れる。


「そなた、なんでこの状況で呼び出すのじゃっ! 我を封印した神の前に呼ばれるのも微妙じゃが、神の前で寝そべるお主に呼び出されるのもどんな顔してよいか分からんのじゃ!」

おこられた。

 仰向けに寝たままの私にぷりぷり抗議してくる。



「ほほ、息災のようじゃの」

何時までも寝たまま話すのはあれなんで腹に抱えた白を起点に起き上がる。今度は空中に座った状態でヴァルと対面した。


白は今日もいい手触りです。



「何か用事か?」

使命とか、使命とかいう名のクエストを言い渡されるんだろうか。


「いいや、『試練の崖』から人が飛び降りているのを見に来ただけのこと」

「『試練の崖』?」

「知らずに飛び降りておったのか。そこな崖は『試練の崖』と呼ばれ、昔この辺りにいた人が神の試練と言っては飛び降りた崖よ。もちろん人が言うだけで我らは無関係じゃが」


 私から崖に視線を向けるとそれに合わせて優雅に風に浮いた銀色の髪が動く。


「試練とはいうが、飛び降りて生きていたものは二人だけだと記憶しておる」

「え、この高さで助かったのか?」

「……そなたが言うか?」

ヴァルにジト目でみられた上に、今まで関係ないとばかりに丸まっていた白にまで「何やってるんだこいつ」みたいな視線を向けられた。


 すみません、私が助かったのは予定外なんです。もともと死ぬ予定だったんです。

 ごまかすように白を撫でる。


「ここから落ちて生きている上、二度目を跳ぶ物好きを見に来てみれば知った顔での」

話しかけたのよ、と単に好奇心で見に来たことを告げられ、それでどういった理由で二度も飛んでいる? と目で問いかけられる。


「いや、もともと街までもどるのが面倒で死に戻るつもりだったんだが。どうせ死ぬなら空を飛ぶ気分をちょっと味わってみたかっただけだ、深い意味は無いぞ」

 正直に言ったら、ますます何言ってるんだこいつ的な目で一柱と一匹が見てくるんだが。



 『試練の崖』と言われて古本屋で立ち読みした話を思い出した。

 昔、この辺りの民族で「川に放り込んで浮くと魔女、沈むと無罪」的な裁判があった。当時邪教を崇拝し魔物を呼び込む者を裁判にかけたという。

 無実を訴えるものには試練と称して、法の神タシャがいると言われるナルン山脈の高い崖から飛降りさせ、死んだら有罪、生きていれば無実という乱暴な法だった。

 魔女裁判と違って生きていれば正しさが認められるのだからまだマシなのだろうか。タシャがいると信じられているからこそ、助かったものが正しいとされるのだろう。


 実際には神殿にいる権力者達に邪魔なもの、或いはその対象が死ねば神殿に接収という名で金が入ってくる者に、邪教の疑いをかけ崖から試練と称して突き落としたとかそんなところだろう。ファンタジー世界だから本当に邪教はあったのかもしれんが。


 神は信じてもいいけどそれを運用する『人間』を信用する気になれない私です。


 この崖から飛び降りて助かった二人の片方は迷宮都市の王となったその人だ。

 かの人の冒険譚に邪教の疑いをかけられた女性と共に試練の崖から飛び降りて無事だった逸話がある。助けたのはタシャだ。

 ちなみにその女性は迷宮都市を抱くターカント公国初代王、騎士伯ガルレイの妻になったという。


「この崖は迷宮都市の王、ゆかりの地か。なら神が出てくるにしてもタシャが順当じゃないのか」

いや祝福もってるせいでヴァルに遭いやすいのか? まさか何か変なマーキングされてるのか? などと思いつつ。


「我もいるがな」


 なんか(いま)す。

 小柄な老人が。

 誰やねん。

 いやこの流れからするとあれですね。


「木神タシャか、久しぶりじゃの」


 謎を解き明かす者の効果なのか? 一回神に遭うと連鎖を起こすのか?

 私、メインストーリー(あるのか知らんが)ほとんど進めてないんだが?

 神ってこんなぽこぽこ遭遇するものなのか?

 いや、クラウも会ってるし結構遭遇率高いの?


「他の神々よりは風神ヴァル殿とはよく顔をあわせるが、まあ久しぶりだ」


 久闊を叙する二柱の会話を聞きながら白を撫で回し、この世界の神々はフレンドリーで気さくだなと思う。まあ、ゲーム世界でまで畏まったり、かしずいたりするのが面倒だと思う私には嬉しいことだが。


「ガルレイとの約束でここがまた試練の場として使われることがないよう、見ておったのだがな。突き落とすものどもに何ぞ罰を与えようかといざ来てみれば、自分の意思で飛んだ。一人で死ぬるなら放っておこうかと思ったが、死なぬ上に我が同胞の祝福持ちだ。どうするか考えておったところよ。この者も変わっておるな。街に戻るために死するを選ぶとは」

いえ、プレイヤーだと結構選ぶ人は多いと思います。選んだ挙句死なないのは珍しいかもだが。


「そうさの、空を飛ぶというのは空魔術を持つようだしそのうち叶えられるであろうがの。一度目も二度目も私の埒外の理由で行動をしよる」

おっと! それは頑張って空のレベル上げせねば!



「……お主、二柱の神々にまで変わり者認定受けておるぞ?」

抗議のもふもふ。されるがままの呆れ顔の白。

 行動が変なのはプレイヤーだからです! みんなもやります! ……たぶん。


 ガラハド達と最初に会ったせいか、ここがゲームの世界とか所詮ゲームだとは口に出して言う気はまったくなくなっているが。口に出したら自分がゲームの理に絡め取られて、せっかくの『異世界』がただのRPGになってしまいそうだ。物語に合わせて演技するだけの。


 私はこの世界を楽しみたい。



 何か二柱の神は私の話を皮切りに昔話を始めた。

 邪魔をせず聞いていると、ここから飛び降りることになったガルレイの嫁リースは物語で子爵の息子を振ったことを逆恨みされ、あらぬ疑いを掛けられ裁判にかけられていた。だが実は子爵こそ邪教に落ち中身が別の何かと入れ替わっていたそうだ。リースはその何かを感じられる能力と封印する力を持っていたが、 そのことに気づかず中身の入れ替わった子爵に追い詰められたというのが真相らしい。

 ガルレイの活躍でリースは救われ、無事その存在は封印出来たらしいがそろそろ封印にほころびが見え始めているそうだ。


 あれ、これフラグ?


 神々にとってはその存在が復活しようとしまいと世間話程度でしかないようだが。

 いつの間にか中身が入れ替わってるって怖くないか?

 昨日一緒に笑っていた仲間がその記憶を持った別人。

 嫌なんだが。


「すまん、その入れ替わりは防ぐ方法はあるのか?」

たまらず口を挟む私。


「あるが、その前に何を飲んでいる?」


 はい、昔話が始まって放置されてたのをいいことにお茶飲んでました。

 ローズヒップとアッサムのブレンドみたいな赤色が鮮やかな少し酸っぱい花びらの紅茶です。白も飲んでるから同罪だな!

 そう言えば以前別ゲームでペテロがプレイヤーそっちのけでNPCだけで話が勝手に進むのを「芝居は見たくないw」と嫌っていたことを思い出す。



 タシャは黒ビール、ヴァルは飲んだ後口腔がスーッとするハーブティーが気に入った様子。一応敬意を払って評価10を振舞っている。

地面から二メートルの空中に車座になってお茶会? です。


「お主、本当に緊張感がないのう」

「茶で顎の下濡らしながら言うな」

白は元々フルーツティが好きなようだったがその中でもルビーベリーティーは格別だったらしい。顎の下を慌てて前足で拭っている。



「気づいたら周りが入れ替わってるというのは避けたいんだが、何か対抗策とか入れ替わりだか乗っ取りだかを戻す方法はあるのか?」

プレイヤーは兎も角、ガラハドやルバ達がイベント起きて入れ替わったり乗っ取られたりしたら嫌すぎる。


「そなた錬金を持っておるな」

菊姫とペテロにやる予定だったスモークしたスパイシーな干し肉を片手に聞いてくるタシャ。チーズの揚げたのとか、オリーブの実をベーグル生地で包んだものとか、つまみは少量複数用意してみたがどうやらタシャは乾き物が好きなようだ。

 干しイカと小ぶりな魚をカラッとさせたつまみを追加。爺の姿だが歯は丈夫な様子。


「ああ、まだ手付かずだが」

「【光】は持っておるようだが、【浄化】は持っておらんな。ふむ」

「【浄化】は治癒士だろうか? 対策をとるのに覚えねばならんのならこれから覚えるさ」

「いや、あったほうがいいがなくとも問題はない。代用物がないわけではないのでな」

そう言って、節の目立つ細い指の手を上に向けると、手のひらに小指の先ほどの宝石が現れた。


「こっちの宝石は『結魂(ゆこん)石』という。シーサーペントから稀に取れるな」

タシャの手のひらにある『結魂石』は水のしずくのように透明だ。

「他に星降る丘で得られる『ティガルの星屑』、【光】の『エンチャント』、【浄化】、浄化は使い手に『属性石』に込めて貰えばそなたが使えんでも問題無いだろう」

話しながら材料を並べてゆく。空中にだが。

 『属性石』に魔法を込められるのか、メモメモ。心のメモに書き込む。


「これを混合する」

並べた材料の下の魔法陣が輝き白い光で材料がかき消える。光が消えて現れたのは先ほどの『結魂石』の形をした淡く青く輝く宝石だった。


「こんなものか。これは憑依を防ぐ魔法石だ、身につけておれば先ほど話題に出た輩を寄せることはない。酒の礼だ、見本にやろう。錬金としてはそう難しいものではない、むしろシーサーペントから『結魂石』を得るのに苦労するかもしれん。それも月神の祝福を持つそなたなら普通より楽だろうさ。装身具につけるために形を加工するなら結魂石の時にするがいい」


手の中に落とされたのは冥結界石。


【冥結界石】

 評価:10(神器)

 憑依を防ぐ。

 評価10の効果により確率は100%

 且つ憑依しようとした相手に反射ダメージを与える。

 


神器。


「神器になっているんだが……」

「たわいもないものでも錬金の神タシャが手がけているからの」

面白そうにヴァルがのぞいてくる。


「有難く」

遠慮なんかせんぞ!


「星降る丘の場所は聞かんでいいのか?」

「聞いてばかりでは気がひける。無欲でもないので教えてもらえるなら嬉しいが」

「なるほど」

何か納得したような顔でうなずいているタシャ。

「聞いた感じ、まだ時があるから。もし目前に迫っていたら泣いてすがっていたかもしれん」



 黒ビールひと樽と干し肉ジャーキーをタシャに。

 ついでにといってはなんだがヴァルにハーブティーとルビーベリーのタルトを渡す。



「お茶の礼じゃ。木神タシャがやって我がやらんというのは聞こえが悪いでの」

そう言ってヴァルは拳より一回り小さい石を私の手に落とす。

 見ると『転移石』だった。


「感謝する」

「木神タシャと違って他は作ることはかなわんが、それは私の領分じゃ。『白』も息災での」

「ふん、こちらは勝手にやるのじゃ」

ヴァルの言葉におざなりに返事をする白。



「変わった人間よ、木神タシャからの祝福だ、受けよ」


「そなたは私のお気に入り、そなたはそなたの王であれ。風のように自由であれ。束縛や支配は無いと知れ」


簡潔な言葉を投げかけてタシャが消え、ヴァルも謡うように言葉を残し消えた。



《錬金レシピ『冥結界石』を手に入れました》


《錬金レシピ『転移石』を手に入れました》


《称号【タシャの弟子】を手に入れました》


《称号【タシャの祝福】を手に入れました》

《【木魔術】が【木魔法】に変化しました》


《称号【ヴァルの祝福】が【ヴァルの寵愛】に変化しました》

《【空魔術】が【空魔法】に変化しました》


《称号【神々の時】を手に入れました》


《スキル【時魔術】を取得しました》


《【木魔術】と【時魔術】を取得したことにより【ドルイド魔法】を取得しました》




 予想していたものが二つ。

クラウが持っていた称号と魔術が、タシャに遭えばもらえるのではないかと思っていた。称号は別だったが、思っていたとおり【時魔術】と【ドルイド魔法】は取得できた。

 他が予想外!寵愛ってなんだ!!! 弟子!? 弟子なの?! 『転移石』が神器なんだが! 消耗品に神器やめてください!!!!



 昼のためにログアウトしたいのに神器を使う勇気のでない私。白に別れを告げて結局、隠蔽陣の描かれた敷布に包まってログアウトした。







□    □    □    □    □    

・増・

称号

【タシャの祝福】【タシャの弟子】

【ヴァルの祝福】→【ヴァルの寵愛】

【神々の時】

スキル

【空魔術】→【空魔法】

【木魔術】→【木魔法】

【時魔術】

【ドルイド魔法】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.31

Rank D

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   1006

MP  1269

STR 43

VIT 23

INT 63

MID 19

DEX 25

AGI 39

LUK 23


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】

【賢者】

■神々の祝福

【タシャの祝福】【ヴァルの寵愛】

【ヴェルナの祝福】

■神々からの称号

【タシャの弟子】【神々の時】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣王】【賢王】


スキル(15SP)

■魔術・魔法

【木魔法Lv.5】 【火魔術Lv.5】【土魔術Lv.5】

【金魔術Lv.6】 【水魔術Lv.5】【☆風魔法Lv.6】

【☆雷魔法Lv.5】【光魔術Lv.5】【☆闇魔法Lv.15】

【☆空魔法Lv.1】【時魔術Lv.1】【ドルイド魔法Lv.1】

■魔法系その他

【マジックシールド】【☆行動詠唱】

【☆範囲魔法Lv.1】【☆詠唱短縮Lv.1】

■剣術

【剣術Lv.18】【スラッシュ】

【刀Lv.14】【☆一閃Lv.4】

【☆幻影ノ刀Lv.6】【☆見切りLv.4】

■召喚

【白Lv.1】

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.3】

 闇の精霊【黒耀Lv.4】

■才能系

【体術】【回避】

■移動行動等

【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】

■生産

【調合Lv.11】【錬金調合Lv.2】【料理Lv.8】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【道具薬品鑑定Lv.4】【植物食物鑑定Lv.6】

【動物魔物鑑定Lv.6】【スキル鑑定Lv.5】

【武器防具鑑定Lv.5】【看破】

【気配察知Lv.9】【気配希釈Lv.8】【隠蔽Lv.6】

■強化

【腕力強化Lv.3】【知力強化Lv.4】【精神強化Lv.4】

【器用強化Lv.3】【俊敏強化Lv.3】

【剣術強化Lv.3】【魔術強化Lv.4】

■耐性

【酔い耐性】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】【暗視】【地図】【念話】

【装備チェンジ】【生活魔法】【☆誘引】


☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの

迷宮都市の国名ターラントからターカントに修正しました〜

書籍がばっちりターカントになってるのでこっちを修正する方向……(吐血

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― 新着の感想 ―
[一言] 神器なので消耗しなかったり?
[一言] 消耗品が神器は使いずれ~w
[一言] なんか、その内拠点持ったらホムラは祭壇に親交のある神を祀って、供物にはそれぞれが実際に好んだ物を用意しそう(苦笑 ……そして何気に増える称号と神器www 消耗品の神器とかラストエリクサー症…
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