表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

359/388

357.『小宇宙の星水晶』

「ガラハド、鎧を」

転移の登録と休息を終えると、カルがガラハドに鎧を装備するよう促す。


「次からは、【不動の守り】を維持するには条件が厳しい。主も少々暇なご様子、盾を外す」


 カルの装備していた盾は、エルフの大陸で手に入れた高ランクなもの。装備した者の前――要するに特攻してる者に対して、貫通属性の攻撃を半減する効果があるのだそうだ。確かにガルグイユまでの道中、貫通属性の攻撃をしてくる敵が多かったような気もする。


 さっき聞いたばかりだが、本人も装備もすごいってどう攻略するんだこれ? 攻略の必要はないのだが、考えてしまう。闘技場で対戦を頼んでみるか、負けそうだけど。


 そして本当に条件が厳しいのか、私がすこし手持ち無沙汰なこをと気にしているのか、或いは両方かどれだ。


「二人より遅いのは勘弁しろよ?」

ガラハドがそう言って鎧を纏う。


 カルは白基調の差し色は鮮やかな青。ガラハドは黒基調の差し色は濃い赤。


「ガラハドはマントはつけないのか?」

「邪魔。効果はついてるんだが、さばくのがな。あんま体に巻きついてくるの好きじゃねぇんだ」

肩をすくめてみせるガラハド。


 ラフな格好好きだもんな。ところで、マントさんは、変に空気をよんでゆるく巻きついてくるのやめてください。


 次のエリアに進むと、そこは真っ黒な洞窟。洞窟といってもだいぶ広く、天井も私の3倍は高いところにある。


 ただ【暗視】で見ても黒い。壁などは薄い灰色に見えることが多いのだが、黒い。黒い大小の正方形がくっつきあって壁を作っている。


「『光を』」

カルが何かを放って一言告げると、急に洞窟内に光が出現し、辺りを照らす。


 どうやら【光魔法】『ライト』を込めた魔法石を発動したようだ。光に照らされて、壁が色を変える。


 四角い石の一つ一つが半透明で、薄い青に縁取られた黒に近い紫の中に、青、発光する白、オレンジ、赤、さまざまな色があり、水の中にインクを落としたかのように混ざり合い、一つ一つが宇宙を内包しているかのようだ。


「すごいな」

「すげぇ」


 しばし周囲を見つめる。光があまり当たらない場所は黒に近い紫、ほとんど当たらない場所は黒に見えるので、これは光に透かした時にだけ見えるものらしい。


 壁、天井、床。それぞれの場所でそれぞれの宇宙が輝いている。


「『小宇宙の黒水晶』と呼ばれるものです。陽の光ではかえって黒くなるもので、『ライト』だけがこの色を引き出すそうです。これだけの規模のものは、ここでしか見ることができません」

カルが説明してくれる。


「記念に一つ二つ持って帰りたいな」

カルがいいと思った風景はこれだろうか。


「確か、採掘ポイントがいくつかありますので探しましょう」

「ああ、頼む」

そういうことになった。


 なお、カルが来た時とはマップが変わっている模様。私たち異邦人が来る前、迷宮変動が何度か起こっているのだそうだ。


 そういえばそんな話も聞いたな。確か、ボス部屋――正しくは、ボスを終えた後の転移登録をする部屋――以外に恒久的な休憩所を設けようとすると、マップが変わるとか。他にも条件があるかもしれないとも。


 そして正方形! 眺める分にはいいが、足元にある正方形、お前はだめだ。ものすごく歩き辛いぞこれ、なるほど盾の高さ維持には向いていないマップ。


 種族の常時浮遊はかかっているのだが、大きい正方形は私の背ほどもある。小さいものは指の先ほどもない。それが大小融合してでこぼこと続いている。


 ああ、なるほど。左右に広いと見せかけて、通りやすい道があるのだなこれ。レオなら行きづらい場所にも喜んで登っていくのだろうけど。……ちょっと私も隅々のこのこ見に行きたいが、それは一人の時にしよう。


 大きな石から魔物が飛び出してくる。と、認識した時にはカルが斬り捨てていた。そして何事もなかったかのように進む。


 これはもしや、魔法では間に合わない? 右手に持っていたクルルカンの杖を左に、右は剣に持ち替える。スキルの性質上、左でも同じように武器を扱えるよう修行中だが、どうしても剣は右の方が扱いやすい。


 クランメンツは私も含めて基本右利き。ペテロは両方使えるが、以前やっていたキャラの2丁銃のために訓練したのか、最初は左利きを右利きにしたのか不明。


 レオは時々左を使うが、本人もなんで左を使ったかわからないことも多々、そして「今日、うまくできない!」とか言っていたりもする。これは、初期のVRゲームで利き手の設定ができるものがあり、「左利きカッコいい!」という謎理論で左利きに設定して苦労した挙句、こんがらがった結果だ。


「ぶえっ!」

急に出てきた魔物に、ガラハドも慌てて剣を叩きこんで踏鞴(たたら)を踏む。


 大きな正方形の上はすべらかで美しいが、すべる。小さな正方形が集まる場所はゴツゴツとして足を取られる。なんとも足場が悪い。


「反射が鍛えられそうな場所だな」

そして私も後ろから出てきた魔物を斬り捨てる。


 手足がひょろりとして鼻が目立つ、姿はゴブリンに似た青い肌の魔物だ。【鑑定】結果は、『石の中から現れる者』。そのまんまだ。


 修行になるなら私も常時浮遊を切って一応チャレンジするか。白の【誘引】全開の迷宮道中とはまた違った感じだ。あっちは襲ってくる方向は分かったのだが、ただただ大量で忙しかった。こちらはいきなり気配が湧いて攻撃を仕掛けてくる。


 石の中を通って来るにしては周囲に他に大きな石がないこともある。床の石の中を移動してくるのかとも思ったが、どうやら違う。


「せっかくだ、明るくしよう『ライト』。少し難易度が上がるかもしれんが、邪魔だったら消すから言ってくれ」

明かりがあると【暗視】は切れる。そして明かりが届かない場所は、かえってその暗さを増すのだ。


「よい修行になるでしょう」

にこやかにカルが言う。


 すまん、ガラハド。こう言われては反対はできないだろう、思わず目で詫びた私にガラハドが手をひらひらさせる。


 カルが使った『ライト』はもう後ろに遠い。右手に剣を持っているが、珍しく左手に杖がある。


 正しくは、クルルカンを左に浮かせている。一応回復用なのだが果たして出番があるか不明だ。『白の杖』の方が回復向きだし、取り回しもいいのだが、クルルカンのレベル上げもしたい私です。


 進むとともに『ライト』を使う。私たちの少し先に色の世界が現れ、後に続く。


「おっと。なるほど茶色と水色か」

ガラハドが横の石から姿を見せた魔物を倒す。


「むしろ難易度が下がりました」

こちらも魔物を一瞥もしないまま斬り捨てたカル。


「なんというか、移動経路がとてもわかりやすくなったな」

言いながら私も一匹。


 照らされた正方形の石に、中心が水色で周りがオレンジの光が灯り、近くの石に飛ぶのを繰り返し、私たちに近づいてくる。他の正方形の石たちは特に瞬いたりはしないので、移動する光はとても目立つ。


 相変わらず気配はないのだが、襲ってくる方向が目視でわかるので倒すのは簡単になった。


 そういうわけで道中は回復の出番もなくさくさくと。魔法とクロスボウも使って来たので、現れる場所の予測がつかなければ、きつかったのかもしれない。


 私は剣を使いながら魔法を使うということがあまりなかったので少し新鮮だった。


「カルも【採掘】を持っていたんだな」


 カルがツルハシを振るう姿がシュールと言いたいところだが、なんか使っている道具が死神の鎌(デス・サイズ)を分厚くして持ち手を短くしたようなもの。色は白に濃紺。


「【採掘】と【採取】ですね。敵を倒して手に入る素材だけでしたら楽なのですが、そうもいきません」

片手で軽く振って採掘ポイントに打ち付けている。


「いや、普通逆じゃね?」

ガラハドが突っ込む。こちらは多少装飾があるものの、普通にちゃんとツルハシに見える。


「ん? 『小宇宙の星水晶』?」

【採掘】したものは自動でアイテムポーチ――私の場合は【ストレージ】に入るのだが、入ったアイテムは設定によってテロップや音声が流れる。


 『小宇宙の黒水晶』に混じって『小宇宙の星水晶』のテロップが流れた。手を休めて、ストレージから取り出して眺める。


 『ライト』に透かすと、濃紺と紫が混じる四角い宝石の中にキラキラと細かい煌めきが見える。


「ああ、宇宙(そら)に星が瞬きましたね」

私の掲げる宝石を見て、カルが微笑む。


「おー、綺麗なもんだな」

ガラハドが私の肩に腕をかけて覗き込む。


「ああ。【鑑定】結果を見ると、薬の材料にも強力な魔法を込める魔法石の材料にもなるようだが、見えるところに飾っておきたいな」

「幾つか採れるといいですね」

「採れたらやるよ、俺はこういうのしまい込んで忘れそうだし。飾ってあるの時々見せてくれ」

指先の宝石を見ていると、二人が言う。


 なお、荷物を見たらすでに3つほどある模様。テロップが黒水晶でなく星水晶になっていることに気づかなかった罠。でも【調合】でも【錬金】でも使えるようなので数が欲しいと欲を出す。


 しかし3箇所回って採れたのは私の掘った最初の3つのみ。たまたまなのか、採掘ポイント自体に当たり外れがあるのか不明だが。


「記念に」

カルとガラハドの手に真っ黒な石をひとつずつ落とす。


「主……」

「俺、しまいこむぞ?」

それぞれ少し戸惑っている様子の二人。


「『迷子を導く』という説明もあるからな、しまい忘れても持っていればいい」

二人とも、帝国から真っ直ぐ帰って来てくれたが。


「どんな色の石だ? 星水晶はみんな同じなのだろうか。確認しないまま渡したので、見せてくれると嬉しい」


「必ず主人の元へ戻ります」

そう言ってカルが『ライト』に透かした石は、紺色に紫の中、青い星が光の角度によって白く瞬く。


「迷子って、子供じゃねぇんだから自力で戻れるつーの!」

そう言ってガラハドが掲げた石は、同じ紺色に紫の中、金の星が白く瞬く。


「やっぱり綺麗だな」

私のものは紺色に紫の中、白銀が姿を消したり現れたり。――これ、黒か。黒に変わると溶け込んで見えなくなるんだな。混ざり方は違うものの、全員基本の色は一緒だ。


 そんなこんなでボス前です。寄り道していたのに早くないか? 

7巻4/20発売です。

そしてドラマCD2も!

http://www.tobooks.jp/newgame/index.html

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 何回目かの通読です。 今気付きましたが、ホムラさん… >私は剣を使いながら魔法を使うということがあまりなかったので少し新鮮だった。 魔法剣士とは!?ww 読み直すと、見落としに気付いて…
[一言] ここで違うのか、それとも手にした者の影響を受けるのか…どっちだろ? …どうでも良いけど、腐女子の皆様方には垂涎もののスチルですよねwwww
[気になる点] カルさん攻略って、すでに好感度的な意味で攻略済みだから戦う時の心配はしなくていいと思うの。 やはり小宇宙と聞くとコスモって読んじゃいますよねw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ