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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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355.迷宮へ

 帝国から『雑貨屋』に戻り、カルの淹れてくれたお茶を飲んで一息。


 居間にはガラハド、私、カルの三人。他はまだ雑貨屋の営業中なので働いている。最近はノエルが回復薬系をたくさん作ってくれるので、閉店時間前に全て売り切れるということが少なくなっている。


 カミラとイーグルはまた帝国に戻ってしまったが、今度は引越し準備のための帰還なため心配はない。


「あの二人、ベッドは前に使ってたものをそのまま使うってんで、とりあえず部屋に入れて来た」

「小さくないか?」


 酒屋の3階(ここ)にガラハドたち三人の部屋があった時は、部屋自体が狭かったのでベッドサイズもそれなりだった。今は改装して2階に移したりで個室を広くしたため、もっと大きなものも置ける。


 ガラハドの部屋も広くしたのだが、やはりベッドはそのまま使っている模様。雑貨屋のベッドサイズは全員同じ、まあガラハドが寝て足が出ないのだから平気なのだろう。ラピスとノエルには大きな気がするが、時々どちらかのベッドに二人で寝ているようなので。


「二人とも寝相はいいし、大丈夫だろ。それにベッドのサイズ変えると、シーツとかも買い直しになる。そのまんま使いたいんだろ」

そう言って、生クリームを乗せたケーキを口に運ぶ。


 本日のお茶請けはチョコレートファッジ・ケーキ。私とガラハドは苦いまではいかないが甘さ控えめカカオ、カルの分は甘め。添えた生クリームは砂糖なし。


 ガラハドは甘いものが得意ではないが、口に運ぶペースからして合格はしたようだ。カルは――


「絶妙な焼き加減です」

満面の笑みで上機嫌に口に運んでいた。


 甘いものならなんでもいいのだろうかと少し不安になるが、まあ合格だろう。このケーキ、表面は焼かれてほろりとしているが、フォークを入れるとチョコレートが染み出す。外と中、好みの焼き加減にするのが難しい。


 上手くできたと思うのだが、菓子系の合否はカミラに確認したいところだ。もしくはクランで出して、お茶漬か菊姫あたりに。


 その後、みんなと夕食、休憩ログアウト――の前に、洗面所へ。


 【清潔】など【生活魔法】で簡単に済ますこともできるのだが、趣味でレーノが洗ってくれるため、シーツやタオルなどは全員分洗面所の棚に入れてある。そこから各々使う仕組みなのだが、シーツに関してはレーノ、ラピスとノエルが全員分を替えてくれる。


 棚からカミラとイーグルの使っていたシーツやタオルなどを一旦取り出して、上に持ってくる。


 アイテムポーチや倉庫――棚や物入れなども含む――のメニューの一覧は、五十音順、種類順、任意、よく使う物の順など、表示方法は色々選べソートができるが、こんな風に実際アイテムを手にして入れ替えることもできる。現実世界の作業に近いが、ゲーム的にはディスプレイ中扱いだ。


 メニューを表示して、中のものの一覧から選んで取り出すこともできる。現実世界と違い、しばらく使わず奥に入ってしまった物を探して、荷物をひっくり返す必要はない。だが、二人が帰った時に扉を開いて現物がすぐ見えるところにあった方がいいだろう。なんとなくだが。


 綺麗に入れられた白いバスタオル、一番目立つところにデフォルメした白を縫い取った赤い刺繍と、水色の刺繍が並ぶ。赤はカミラ、水色はイーグルのものだ。水色は正しくはアイスブルーで、イーグルの瞳の色だが。


 刺繍は、ガラハドたち三人が雑貨屋に居候を始めたころ、生活用品をまとめ買いしたせいで同じ規格のものが揃い――わざわざ揃えたのかもしれんが――誰がどれを使っているか分からなくなりがちだったため、それぞれわかりやすいよう隣の『ダリア』で入れた。


 選んだ色が何人か似通っていて、間違うのではと心配したが、メニューで選べば色名が出ているので間違うこともない。


 しかし赤や水色なのに白とはこれいかに。白のマークは、白の古い友人が使っていたものだ。今は私が引き継いで、雑貨屋のアイアンでできた看板の形がこれだ。焼き物の裏に薄い釉薬で描かれた優しげな白と、アイアンで象られた白では大分印象が違うが。


 商業ギルドで認められている店舗には、『看板』の設定がある。設定内容は店の名前と備考欄――通常は簡単な販売物の説明や、セールの紹介――、そして看板現物の登録。『看板』の設定さえしてあれば、実際に看板を掲げていなくとも店を注視して見るだけで店名と備考を読むことができる。


 私はとりあえず店舗名を『雑貨屋』と入れただけで、売り物説明も何も設定していない。雑多なものを気分で売っているので、書き換えも面倒だ。


 マークについては版権大丈夫ですか? とも思ったが、この世界では100年単位で昔のこと。モデルとなった白が嬉しそうなのでよしとする。


 後日シーツの刺繍を眺めながら、このマークをマントや鎧に入れるべきかと真剣に検討していた男を止めたのもいい思い出だ。本人も『雑貨屋』というより、『封印の獣』の騎士のようで微妙だったらしく素直にやめてくれた。『雑貨屋』の騎士というのはもっと微妙だと思うのだが。


 並んだ刺繍の色に満足して、部屋に戻る。ベッドに潜り込んで、ログアウト前に取得スキルの確認。


 【宝箱】は、【迷宮創造(メイズメイカー)】関連のスキルだった。効果は、造った迷宮に宝箱を設置できること。迷宮公開後――攻略するために他人が入れるようにしてから、取得されるまでの日数で中身がランクアップして変わるそうだ。設置条件は階層ポイントを上限まで使用すること、ランクアップの上限は、設置された階層による。


 宝箱を設置して、中にポーションを入れておくと、時間経過でハイポーションになったりするかんじのようだ。


 性質上【魔物替え】と違って、レベルがない。そしてまだ迷宮そのものが造れないため、持っているだけのスキルになりそうだ。階層ポイントとかいうものも、おそらく迷宮創造が可能になったら説明があるのだろう。初入手特典はランク上限+1。


 本体をすっ飛ばしてオプションをもらってる感。どこで手に入れられるのか、迷宮創造。秘匿情報のようだし、すでに造っている人がいるのかもしれん。


 さておやすみなさい。


 『異世界』で眠りについて現実世界で目覚める。軽くストレッチして、顔を洗って紅茶。タイマーをかけて、読みさしの本をめくる。ゲームをしていると、読む本が短編や図説の多い解説本に落ち着きがちだ。


 タイマーの音に本を閉じ、ベッドでバイザーをかぶって横になる。


 そういうわけで、おはようございます。ゲームなので同期やチェックにとられる時間が寝起きのぼーっとする時間、ログアウトする時はうつらうつらする時間だ。それを過ぎればすっきり覚醒するのだが、シーツの感触がここちよく、しばらくゴロゴロする。


 さて、起きるか。


 居間にゆくと、微笑むカルと眠そうなガラハドが待っていた。ガラハドはいつもの格好、カルはマント付きの鎧姿。対比がひどい。


「おはよう」

「おはようさん!」

伸びをしてガラハド。


「主、おはようございます。朝のお茶をどうぞ」

鎧姿のまま、器用に紅茶を入れてくれるカル。


 いや、鎧いになるの早くないか? 楽しみにしてくれていたようで何よりです?


「迷宮だが、どのルートに行きたいとかあるか?」

「『天鱗』『妖鳥』『幻想』『魔獣』『死霊』各ルート、四十層まででしたら、ガラハドもお供できるよう準備しております」


 にこやかなカルの言葉に思わずガラハドを見る。なんともいえない微妙な顔のガラハドが頷く。


 修行、修行ですか? どんなスパルタだ。


「『天鱗』『幻想』『魔獣』は開いてたんで免除、ソロで他の各ルート三十層、それ以降はジジイかレーノと」

「全てソロで行かせたかったのですが、主の攻略ペースを考えると間に合わないと判断しました」

げんなりしているガラハドと明るい笑顔のカルの対比が印象的だ。


 それにガラハドも、という言葉のニュアンスにカルはソロでもっと下の層までいける気配を感じるのだが……。いや、その前に私が行っていないエリアまで解放されているのはありなのか?


 マーリンが保管していた荷物、聞いたこともないアイテムが突っ込んであったのはこのせいか。そういえば以前、渡した料理の代わりにカルに紹介してもらった、全く歯が立たなかったダンジョンがあったな。あそこもそのうちリベンジしよう。


 ゲームを始めた当初は、気がせいて色々高速で進めたが、今は少しペースを落としている。――つもりなのだが。


「『魔獣』『死霊』は私が進めていないな。行きたいルートはあるか?」

「『死霊』ルートは条件を揃えれば、ソロで四十層までは他のルートより楽に進めるそうですが……、あそこは風景がよくありませんのでお勧めいたしませんが。――『天鱗』ルートでお願いできますか?」


「ああ、では『天鱗』ルートで」


 そういうことになった。


 朝食は迷宮でとる予定で移動。迷宮の入り口、バロンの冒険者ギルドは異邦人が何人かいて、ざわざわされる。


「え? 雑貨屋さん!?」

「レンガード様が外にいる!?」


 外くらい出るぞ、引きこもりじゃないんだから。ただ、この格好で人前にでんだけで。


「帝国戦参加できなかったから、眼福!」

「参加したけど、遠かったしこっちのほうが近い、近い!」

「カッコいい! 麗しい〜!」


 ガラハドは男らしくて格好いいし、カルが青い裏打ちのマントをひるがえし進む姿は確かに麗しい。それは同意。


 いつもは滞納している闘技大会優勝の有名税を納めている感。直接話しかけて来ないのは、カルが笑顔で威嚇しているからだろうか。春のひだまりが威嚇というか牽制に見える不思議。


 私的には二人がでかいせいか、どうもこの並びは助さん格さんやっておしまいの構図に感じてですね……。私は杖を出すべきか。その場合、弥七はペテロだろうか。お銀はカミラ? いかん、うっかり八兵衛がイーグルかレーノになってしまう。


 しょうもないことを考えながら、迷宮に入る。さて、どこまでいけるかな?

1/20 本日6巻発売!

4/20 7巻発売予定です。そのほかドラマCD2のお知らせなど!

http://www.tobooks.jp/newgame/index.html

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― 新着の感想 ―
[一言] 確か笑顔は元々威嚇の表情だとか カルは正しく使えてますね
[一言] 24話の設定がここで活きるとは
[良い点] カルとガラハドの2人との迷宮はけっこう楽しみでワクワクしてます 主人公と周囲の関係性が好きです(*´ `) [一言] 周りでレンガードにキャーキャー言ってる人達はホムラが内心でうっかり八兵…
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