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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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341.日常の光景

「『庭の水』が、まさかこんなに重宝されるとは……」

困惑しながらとりあえず『庭の水』をマーリンに差し出す。


 一応「庭」の名前は後から変えられるのだが、神殿とかで『庭の水』で認識されているし、このままでいいだろう。なにより変更は面倒だしな。「庭」なんだから『庭』でいいじゃないか。


 ちなみにお茶漬の「庭」は『永○園』、ペテロは『毒鼓(どっく)の園』。お茶漬はお茶漬繋がりだし、ペテロは「毒を塗った鼓で、これを打つとその音を聞く者すべてが死ぬという鼓」の名前だ。――『毒鼓の()』という「涅槃経を説く声を聞けば、煩悩を滅する」という仏法の理法の方かな?


 とても性格が表れている「庭」の名前だ。他の3人は「庭」まで手が回っていないようで、名前は付けたのだと思うが、話題に上がらないので聞いていない。


「『庭の水』……。神、器……。神器!?」

『庭の水』を受け取ったマーリンがコップを眺めて目を見開いている。


 水なのに「器」というのは変な感じだが、装備もアイテムも神々の作は神器とつく。マーリンは【鑑定】もできるようだ。倉庫の機能の一環か?


「入れ物により劣化……。劣化……普通のガラスコップではないか! 神聖なる水をただのコップに注いだのか!?」

私の【鑑定】よりもマーリンの【鑑定】のほうが詳細そうだな?


 コップの中の水面がふるふると揺れて、持っているマーリンもぶるぶるしている。それを尻目に、食器を台所に下げてくれるラピスとノエル、それにガラハド。『清潔』をかけるので、食器洗いは楽だ。


「【ガラス工】はあるのだがな。なかなかレベルを上げる暇がない」

『雑貨屋』で時々配る『金平糖』用の瓶が作りたい気もするのだが、ちょっと考えている。


 通常食事はEPの回復のほか、肉料理は力が、卵料理ならば器用さが、という具合に対応した能力が上がる。そして評価10で、【寒耐性】や【斬撃耐性】、【毒耐性】など特典がつく。


 私の『金平糖』のレシピは買ったものではなく特殊クエストで手に入れた。料理に関係する住人との好感度が上がらないとギルドに依頼が出ない特殊クエスト、クリアには【耐火】系の能力か装備、『器用さ、素早さ』が要った。


 難易度が高いクエストの報酬のため、高ランクで効果も高く持続時間も長い。強力な故に保存に条件がありすぐ劣化する。その条件がガラス瓶なのだが……。


 幸運の上昇率も高く、さらに評価10でつく効果も幸運の上昇の重ね。――なんというか、シンやレオがカジノで遊んでいるのを見ると、ちょっとこう、何か制限があった方が良さそうな気配がですね……。


 ただでさえレンガードでカジノを荒らしてお姉さんに圧をかけられたというのに、これ以上やらかすと出禁にされそうな気配が。基礎能力の幸運はほかと比べて普通はあまり上がらんらしいし。


 プレイヤーが順調にレベルを上げて基礎能力が全体的に上がったり、高ランクレシピが出回るようになったら、倒すべき敵もそれなりに強くなっているのだろうし、カジノにも新たなゲームが置かれるんだろうけれど、今はまだ早いのだろう。普通のゲームならあまり気にせんかったかもしれんが、このゲーム(いせかい)では突出すると住民との軋轢を生みやすい。


「この水に『庭の水』と名付けるとはどういう了見じゃ!」

「マーリン殿、主の庭だからこそ、その水があるのですよ」

カルが穏やかにマーリンを(いさ)めるが、すまん、『庭の水』は私もどうかと思う。


「そのうち専用のグラスか何か買いに行こうか」

そっと視線を逸らして、話題も逸らす。


 『庭』で泉から直飲みが一番いいのだろうが、『庭』には男嫌いのクズノハが住んでいる。絵面的にもどうかと思うし、ランクの高いグラスを入手するのが妥当だろう。


 食材のランクに対して、器のランクが低いと劣化する。神器は無理だが、評価4のその辺のコップよりマシなものを手に入れたいところ。


 『雑貨屋』の食器のほとんどは、陶磁器の街フォスで買ったランクが高めのもの。『雑貨屋(ここ)』にも食器にも愛着を持ってもらいたくって、消えない食器を揃えている。


「――エルフの作るガラスは美しい」

そう言って、納得のいかない顔のまま水を飲み干すマーリン。


 さらっと入手困難なものを強請られた気がする。いや、帝国からエルフの住む大陸への船が出るようになる、それを見越してか。


 マーリンの手の中で水の無くなったコップが細かな淡い光に変わり散ってゆく。住民が作った評価4のランクが低い食器は、料理をゲームシステム的に作った時に自動でついてくる食器と同じもの。片付けも要らず、ゴミもでずで便利ではあるのだが、家の中では少し寂しい光景に感じる。


「お疲れ、ありがとう」

片付けを終えて戻ってきた3人に声を掛ける。


「おう」

ガラハドは手をひらひらさせて元いた席へ。ワインを出して飲み始める。


 ラピスとノエルは嬉しそうに私の左右に。体重をかけずに、ほんの少し寄りかかってニコニコしている。二人の頭をぽんぽんと撫でて、膝にバハムートを喚び出す。


「ぴぎゃ」

分厚いローストビーフを出すと、ぱくっとしてもぐもぐと。


 バハムートは生肉よりステーキだが、最近分厚く切ったローストビーフ的なものも好きなことが分かった。食べ終えたところで『清潔』をかけて、お手入れ開始。


 ピアノを拭くような柔らかい布で、顎の下を包むように。全体的に拭くのだが、特に拭いて欲しいところがあると、バハムートが体を傾けてアピールしてくる。


「……」

マーリンが凄い顔でこちらを見ているが気にしないことにする。


「おぬしら、これが普通か!?」

「諦めろ。『封印の獣』は見慣れてるんだよ」

マーリンがパニック気味に叫ぶのに、ガラハドが言葉を投げる。


「『終わりの蛇クルルカン』! 『かつての竜王バハムート』! すでに二体! まさかハスファーン、クズノハ、アリスもこの調子で出てくるのではあるまいな!? というか、一番出てきてはいかんモノが今いる気がするのじゃが!!!」


「あまり憤ると老体に障ります」

「儂は今、攻撃スキルを使うおぬしより若いわ!」

「若いラピスとノエルは静かにしておりますよ」

ぷんすか怒っているマーリンと、微笑みを浮かべて(さと)すカル。


 攻撃スキルを使うと若返るのか。カルが謎すぎる。


「そういえばマーリンは『狂った人形ハーメル』の情報を持っているか?」

『シレーネ』は迷いの森の奥と、いる場所が分かっている。


 『ハーメル』は作り上げた錬金術師の足跡が断片的に出てくるのだが、その最後が分からず『ハーメル』もどこにいるのか情報がない。


「フン。『黒の錬金術士』と呼ばれるあの者の最期は知らぬ。だが儂の知る限りでは、最後の消息はドワーフの地下工房じゃな。機械人形(オートマタ)に必要な鉱石が、彼の地にあると記憶しておる」


「ありがとう」

鼻を鳴らしながらも情報をくれたマーリンに礼を言う。


「『ハーメル』の制作者である『黒の錬金術士』は、ホムンクルスと機械人形(オートマタ)、どちらが性能が上かを『白の錬金術士』と争っておった。時には作品同士を戦わせることも。おそらく鉱石を求めたのは修理のためであろう。――オートマタは壊れたことを狂ったと言うのであろうよ」

こちらを見ないまま話を続けるマーリン。


「なるほど、『狂った人形ハーメル』か。修理が叶わないままならば、『黒の錬金術士』の旅の終わりはドワーフの工房の周辺か」

ゲーム的な分散を考えると魔族の大陸かドワーフの大陸か、どちらかかとは思っていたのだが、どうやらドワーフの住む大陸のようだ。


 レーノやパルティンに乗せて貰えば、他の大陸に行くことはできる。だが-ー


「先に『シレーネ』だな。異邦人がこぞってエルフの大陸に行くだろうし」

できれば初ゲットといきたい。


「主、その前にアイルで戦勝会が」

「……あったな、それも」

クリスティーナとの約束も。


「ダンスはどうなさいますか?」

「踊れないから踊らんぞ?」

スマートにエスコートして踊れたら格好いいと思うが、面倒だし。そもそも何故、ゲストスペースみたいなところなのか。私も気楽に立食スペースに混ざりたい。


「クリスティーナ嬢のためには、一曲踊って差し上げるのが無難かと思いますが……」

「ああ、前回のパーティーがあれだったからな。ホムラのおかげで恥をかいたままにはならなかったが、失脚した第二王子はともかく、その派閥はパーティーには出るだろうし? ――戦の功労者、レンガードが踊った相手なら手出し口出し出来ねぇだろ」

カルの言葉にガラハドの追い討ち。


「ヌエとは戦ったが、人同士の戦いに活躍したのは他の人たちだろう? 私は森の塔に行っていたし」

「あれだけ派手に登場しておいて、何を言うんだ? 諦めろ」

派手になったのはカルのせいだと思います!


「いやあ、騎士時代に無理矢理一通り覚えさせられた、あの苦行を思い出すぜ」

ガラハドはニヤッと笑って、私が困っているのを楽しんでいる気配。


「おのれ……」

人が踊れないと思って……っ!


「よろしければ私がお教え致します。ここの四階でしたら広いですし……マーリン殿には片付けていただいて」

「なっ! 儂の荷物を動かせと!?」

マーリンがカルの言葉に反応する。


 役割が倉庫なのに、自分の荷物は散らかすマーリン。いや、四階は部屋の区切りもなくだだっ広い一部屋なんだが、どれだけ散らかしてるんだ? 当然三階(ここ)と同じ広さなのだが。しかもこの短期間に。


「というか、貴様が教えるのか? そなた、そんなキャラではなかったろうが! 紅茶といい何故侍従のような仕事までしておる!」

「ふふ」

「ふふではないわ!」


「あー。早くカミラが戻ってくるといいな?」

ガラハドが私を見て言う。


「戻ってきてくれないと、練習するにしても踊る相手がおらんな」

「ソウダナ」

私のため息にガラハドが短く答える。


 仲が良いのか悪いのか、いまいち分からないカルとマーリン。喧嘩友達とかそのような感じだろうか。


 気持ちよさそうに、くはぁと欠伸(あくび)をするバハムートを棲家に戻す。鏡面仕上げのようにぴかぴかです。


新しいゲームの専用ページを作っていただきました。

http://www.tobooks.jp/newgame/index.html

5巻、ドラマCDなど4/20発売になります。



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― 新着の感想 ―
その他の封印の獣の好感度調整はなんだろう…
ペット生活を謳歌しているバハムートさん、可愛いですね 数話前に2体のドラゴンを瞬殺したとはとても思えない()
正直今のプレイヤー達がエルフの大陸行ってもレベル的にほぼ何にも出来ないだろうから急がなくても大丈夫さー
感想一覧
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