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32.休日

 レオより先に寝ることになるとは思わなかった昨日。

 ほぼいつも通りに寝たせいか、休みだというのに朝の出勤時間に合わせて普通に起きた。



 ログインすると馬車の中だった。一瞬ファストへ戻る周回に入ってしまったかと思ったが、セカンの広場に止まっていた。どうやら街と街を結ぶ馬車はイベントフィールドのようになっているらしい、私が降りない限り次には行かないようだ。

 石畳に寝る羽目になっていなくて良かったと思いながら馬車を降り、動き出した馬車を見送る。


 セカンの観光もしたいが、どうせすぐに夕方だ。

 プレイヤーの姿が平日の午前だというのに目に付く。今はセカンのボスかサーのボスを攻略している人が多いのだろう。広場に面したセカンの商業ギルドに寄ってシルをおろし、神殿に転移登録をしてそのままファストに飛んだ。


 もう一度2,200,000シル以上手持ちにあることを確かめて、すでに夕闇に染まり始めた相変わらず目立たない店の扉を開ける。


「早かったな」

支払いをしに来たことを告げると、店主が読んでいた本をたたみこちらに向き直った。

 店主の顔を見て、購入した魔法大全に目を通していなかったことを唐突に思い出したが、支払いを終えたらゆっくり読もう。


「支払いをしていない商品を持っているのが落ち着かなくてな」

店主のいるカウンターの上に代金を出す。

「確かに」

渡した2,200,000シルを確かめると店主は箱に収めた。支払いを終えてほっとしていると前回渡された雷の本と同じような黒い薄い本を差し出される。


「あの本は分冊になってるんだ。支払いが終わったからな、残りを渡そう」

ん?

「一冊だけでも新しい属性を覚えて満足なんだが、さらに何かあるのか?」

二冊目を読まないと覚えた魔法を失うとかか?


「雷は複合魔法と言ったろう、あの本だけだとまだ半端なのさ」

「魔法も学ぶことがいろいろありそうだな、邪魔と言われても通わせてもらうぞ」

「ああ、私はカディスだ。せいぜい通って金を落としていけ」

店主の名前とパトカゲット!

「礼を言う、ありがとう」


 相変わらず無愛想ではあるが、その棚の知識もないなら魔術士を名乗るななどと言われ、その棚の本がオススメなのだなと、数冊を抜き出して丸椅子に座って読み始める。

 店主のほうも後は自分が目を落とす本の頁をめくっていてこちらには関心を示さない。


 魔法は他にも氷、灼熱、時空などの存在があること、複合魔法が他にもあり光と闇と対応する魔法を持った上で知識を手にいれることで習得するようだ。私が手に入れた雷は店主に渡された本がキーアイテムで知識を得たが、オーブや石板などキーアイテムはどんなカタチをしているかは決まっていない。


 魔術・魔法は知力のほか神々の祝福や、精霊との親密度、複合魔法に至っては元となる属性の魔術レベルまで影響を及ぼしてくることなど。


 魔法に関する知識が書いてある本を新しく二冊購入。

 魔術の事を広義で魔法という事もあるが正確には魔術の上位に魔法があること。

 上位属性であっても不完全なものは魔術と分類されること。


などなど。


 魔法大全と新しく買った魔法書の知識。

 自分のものにすると知識として流れ込んでくるのは本当に便利だ。なので実は辞典や知識を得るための本はパラパラとめくるだけなことも多く、ここでゆっくり読む本は物語が多い。



《古本屋の謎を解いたことにより上位魔法『雷』を取得しました》

《これにより【雷魔術】は【雷魔法】に統合されます》


 古本屋を出たところでアナウンスが。

 古本屋ってやはり謎だったのだな。クエストと謎の見分けがイマイチつかん。人に教えない方がいいものが謎扱いなのか?


 そういえば【謎を解き明かす者】の称号効果は「謎に引き寄せられる。なんとなく謎のある場所がわかります」というぼんやりしたものだったので流していたが、スキルを貰えることを考えるとかなり有用な称号なのだろうか。


【雷魔法】を見るとレベル1で『招雷(しょうらい)』、レベル3で『赤雷(せきらい)』レベル5で『雷付与』を覚えていた。新しい魔法の取得は光や闇と同じレベルでになるのだろうか。統合された【雷魔術】のほうの呪文も健在で、一安心だ。

 【雷魔法】の表示に星がついている。ヘルプで探してみると、「そのスキルを初めて取得したプレイヤー」に表示され、効果が5%アップするなど様々な特典があるそうだ。


 というわけで、雷魔法を入手したのは私が初めてらしい。まあ、あんな金額では普通なら払えないよな。思い返せば【雷魔術】にも星は付いていた気がしないでもない、そして【運び】に星がついている。メニューやステータスと睨めっこするより敵に突っ込んでく方がすっきりしていいんだから仕方がない。お茶漬によく叱られるが。


 だいぶ後から知ったが一般的なルートは、

 住人と知り合う→露店→古本屋を探す→神殿の謎のヒントのある本を見つける→神殿の謎を解く→魔術スキルレベルの合計数が30を超えた状態で古本屋でライトを使う……、の順番だそうで、拳士は神殿の謎解き後は別の場所での謎解きと分岐になるそうだ。



 金額で思い出した、商業ギルドに行って販売委託をしてこねば。



 そういうわけでやってまいりました商業ギルド、以前はプレイヤーはほとんどいなかったのに人が多い。平日の昼間でこれなら夜はどうなってしまうのか。というか、ロビーで生産するのやめたまえ。


 酒の委託はそういえばギルドに別途だったな、と受付でクエロを呼んでもらうと、二階にある接客室に案内された。中にいたクエロの、背の高いスラリとした体に黒のスーツと中に着たストライプのブラウスを押し上げる胸の落差よ。胸の谷間よりアンダーとの段差に目がいく罠。スーツもブラウスもオーダーですね? 服の弛みがありませんよ!


「こんばんは、遅い時間にすまない」

「いいえ、勤務中ですしお気になさらず」

にっこり笑ってコーヒーを勧めてくる。この世界でもコーヒーが主流なのか、おのれ。


「酒の委託と、普通の委託販売の登録に来たのだが、手続きはどうすれば?」


「ありがとうございます。まずは委託登録ですが、一人につき一度しか登録ができません、これは万一詐欺などあった場合にギルド側ですぐに特定できるようにです。代わりにホムラ様も含めて名前を伏せたいという方が複数人いらっしゃいましたので、商売用の別の名前での登録可能です」

冒険者登録をした時のようにパンフレットをこちらに向けながら説明をしてくれる。


「登録のお名前はどうされますか?」

名前……、ホムラだから炎でエンとか、いやそれじゃ円になってしまう。料理、調薬、錬金、れん……


「レンガードでお願いします」


「はい、ストレージのレンタルはお済みですね、……では、それで登録させていただきます」

レンタルストレージと同じくギルドカードでの登録になるとのことで、また例の石板が登場し情報の更新が行われる。


「登録が終了しますと、商業ギルドで貸し出しているストレージに委託販売用のシステムと番号が割り振られます。アイテムを預け入れ規定の範囲内で料金設定をしていただくと、販売物として他の委託販売の端末から買い取りが可能になります。ストレージは容量の追加サービスもやっておりますのでご利用ください」


「委託販売の設定可能個数は30枠となっておりますが、同じ種類の例えばポーションなどですと99個までまとめて販売することができます。売り上げについては手数料を差し引いた金額が、委託販売を設定したストレージに振り込まれます。レンタルストレージの使用期限が切れて、3年経過した場合、ストレージ内のものは販売物も含め、ギルドのものとなりますのでご注意ください」


 ストレージをレンタルするときも3年が期限と説明があったな。現実世界で課金停止後から1年でキャラがデリートされるとあったのでその関係だろうか。


「他に露店など店舗を持つ場合、個人の家を持つ場合など、ストレージ自体の追加とストレージ同士のリンクも承っています。間違えて売ってしまいたくない場合など、ストレージは分けると便利ですよ」

宿屋暮らしの今は特にストレージ自体の追加はいらんかな。


「では、本日よりお使いいただけますのでどうぞご利用ください」

「ああ、ありがとう。酒の方はどうしたらいい?」


クエロにビール、ワイン、ブランデーを預け、受領書をもらう。

 代金はまとめて販売用ストレージに振り込んでくれるそうだ。預けるのもストレージから可能だが、月に一度程度ギルドに顔を出して欲しいとのこと。


「評価9ですか、すごいですね……」

ずっとクエロは笑顔という名の無表情だったのだが、酒の評価を見てひきつり気味になった。技巧の手袋のおかげで評価10も幾つかあるんですがね。クエロさんワインを持ったままガン見なんですが。


「……一本差し上げますか?」



 クエロにワインを一本進呈して、一階で自分のストレージに売りたいアイテムを預け料金を設定する。売るのは評価7の酒類と、評価8の料理と『抗毒薬』、『生命活性薬』と『魔力活性薬』は評価6を登録する。他の販売品を眺めて商品の評価は様子見のものを出した。抗毒は検索しても評価5以外ひっかからないという……ロイと暁の評価5しか見たことがないという会話を思い出す。

 とりあえず評価5から7くらいだと効果が微妙なままなので評価8を出す。というか自分でも使わないと思ったので評価7以下は売り払い済みなのだった。

 とりあえず私も最高額をつけて放り込んでおこう。『活性薬』と酒類は検索をかけても引っかかってこなかった。『活性薬』はともかく、【醸造】スキル持ち本当に少ないのか?



 サーにきた。


 家具をはじめとする木工の街だというサーは、良く手入れされた森と湖沼に囲まれた雨の少ない街だ。湖沼を作っているのは東に擁するナルン山脈からの湧水で、豊かな水は森を育て、雨が少ない気候は木材の乾燥に向いている。


 『生命活性薬』と『HPポーション』が、まだ十分残っていることを確認、装備をルバの剣と『疾風のブーツ』『技巧の手袋』『ヤグヤックルのマント』と『サークルモスの胸当て』、着ていたローブを剣士用のコートに変更し夜の森へ出る。

 昨夜もらった『力の小手』は問題ないのでつけっぱなしだ。同じ腕装備で能力の打ち消しがあるが、高いほうの能力が適用されるらしい。両方つけているが、『技巧の手袋』の能力が効いている状態だ。ちなみに初討伐報酬の装備は、パーティーよりソロのもののほうが能力が断然高いと判明。


 あれです、ソロ討伐どう考えてももっとレベル上がった先の話で設定されてたと思います。


 セカンの敵をすっ飛ばしてサーのしかも夜の敵。

 死に戻り覚悟でシルは全額、ついでにアイテムもストレージに放り込み、今回は神殿で腕力上昇の付与も貰ってきた。


 門から出てどちらに行くか迷い、ナルン山脈を目指すことにする。

 『シャドウ』をかけながら主要街道を暫く歩き、枝分かれした整備されていない道を選び行く。適当なところで森に分け入る。平日にもかかわらず主要街道沿いではパーティーをいくつか見かけたが、その気配ももうない様だ。



 気配察知にかかる一匹の敵を見つけて近づくとグリーンスライムがいた。『黒耀』を呼び出し、『闇の翼』をかけると一息に距離を縮め剣を振るう。


 狙うのはスライムの体内で不規則に動く核。


 あっさり倒せた。

 試しに次のスライムに魔法を使ってみれば、ダメージは普通に通るものの、核はゲル状の体液に守られ直接ダメージを与えることが出来ないようだ。核を『針』で狙っても体液で速度が遅くなりその間に核は動いて逸れてしまう。

 【雷魔法】だけは他の魔術より多くダメージがでていた。【ゲルスレイヤー】のおかげか魔法だけでもいけそうだが、【剣王】の称号が有効すぎる。

 他に『クロフクロウ』という空から素早い攻撃をしてくるフクロウ型のモンスター、『ウォルム』という動作は遅いが『蔦』を使用してこちらの身動きを止める植物のモンスターが出た。


 クロフクロウは当てさえすればこちらも一撃で仕留められる。そして『疾風のブーツ』のおかげで私はそのスピードに難なくついて行けるのだ。ウォルムが一番厄介ではあるが、攻撃力は幸いそんなに高くは無いため、からめとられた場所から火魔術連発で何とかなった。なったが効率が悪いうえに体の自由が利かないというのは不愉快でストレスがたまる。

 なのでウォルムは避けて戦闘をする。ウォルム一匹よりグリーンスライム、クロフクロウの複数を相手にする方が早く片付く。


 EPが減って休憩を取っていると、ログインしたお茶漬とペテロから挨拶メールが入る。二人とも黒百合に絡まれたことに触れている。つくづく昨夜早寝してよかったっ……!


 休憩後、夜明けまでひたすら狩る。

 動く小さな核をなるべく綺麗に二等分に斬るように努め、猛スピードで突っ込んでくるクロフクロウはなるべく近くまでひきつけて【回避】しながら斬るのを心がける。いったい何の意味があるのかと聞かれると困るが、趣味だ。単純作業は、なにか目標やこだわりがあったほうが楽しい。



《弱点の真央をついて適正レベルより上の敵を500匹倒したことにより、スキル【一閃】を取得しました》


《敵の攻撃行動中に超近距離で適正レベルより上の敵を500匹倒したことにより、スキル【見切り】を取得しました》



 ……うむ。こだわることはいいことだ!


【一閃】弱点を攻撃した場合、ダメージ増加。一定確率で即死を与える。

【見切り】敵の攻撃をダメージを受けることなく武器や盾で止めるか受け流すことが出来る。


 めでたく星付きです。

 この二つも【看破】も連続討伐ではないのでそのうち取得者がでるだろう。もっとも格上の敵を一撃で倒す方法がなければ弱らせて最後に条件に合う攻撃で倒すなどの面倒な調整が必要になるのだろうが。

 ああ、星がついていないところを見ると【看破】はもう出てるのか。……がんばって【隠蔽】のレベルを上げよう。


 これ敵を二体纏めて攻撃当てるの続けたら全体攻撃覚えられないかな?


 結果。

 【幻影ノ刀】を習得しました。

 こう……剣術のスキルなのか暗殺者のスキルなのか判断できない罠よ。

 刀身がぶれるように幻影を作り出し、その幻影にも攻撃判定があり広範囲に攻撃が可能。ただし、威力はそう高くないので【一閃】どころか普通に弱点攻撃を一体ずつ繰り返した方が早く倒し終わるという微妙さ。



□    □    □    □    □    

・増・

レベル+2

スキル

【雷魔術】→【雷魔法】

【一閃】

【見切り】

【幻影ノ刀】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.30

Rank D

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   958

MP  1206

STR 42

VIT 22

INT 58(+2)

MID 18

DEX 23(+2)

AGI 35

LUK 22


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】

■神々の祝福

【ヴァルの祝福】【ヴェルナの祝福】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣王】


スキル(13SP)

■魔術・魔法

【木魔術Lv.5】 【火魔術Lv.5】【土魔術Lv.5】

【金魔術Lv.5】 【水魔術Lv.5】【☆風魔法Lv.5】

【☆雷魔法Lv.5】【光魔術Lv.5】【☆闇魔法Lv.15】

■剣術

【剣術Lv.18】【スラッシュ】

【刀Lv.14】【☆一閃Lv.3】

【☆幻影ノ刀Lv.2】【☆見切りLv.3】

■召喚

【白Lv.1】

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.3】

 闇の精霊【黒耀Lv.2】

■才能系

【体術】【回避】

■生産

【調合Lv.11】【錬金調合Lv.2】【料理Lv.8】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【道具薬品鑑定Lv.4】【植物食物鑑定Lv.5】

【動物魔物鑑定Lv.5】【スキル鑑定Lv.4】

【武器防具鑑定Lv.5】【看破】

【気配察知Lv.8】【気配希釈Lv.7】【隠蔽Lv.5】

■強化

【腕力強化Lv.3】【知力強化Lv.4】【精神強化Lv.3】

【器用強化Lv.3】【俊敏強化Lv.3】

【剣術強化Lv.3】【魔術強化Lv.3】

■耐性

【酔い耐性】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】【暗視】【地図】【念話】

【装備チェンジ】【生活魔法】【☆運び】【マジックシールド】


☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの

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― 新着の感想 ―
ホムラのハムハムは、修行とかじゃなくて楽しんでるのが良いよな。
[一言] 神の加護やら何やら無しで本という現物で取得どころか魔法への昇華までなるの、改めて見るとすごい珍しい気がする
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