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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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302/388

300.グリーンヒドラ

「はい、ホムラ」

「何だ?」


 起き(ログインし)たらお茶漬が先に起きていて何か渡してきた。コーヒー豆でした。


「朝食はトーストとコーヒーでお願いします」

「あー、はいはい」

顔の横で手を合わせて笑顔で頼んでくるお茶漬に適当に返事をする。今女性だし、見る人が見たら可愛いと思うのかもしれない。


 とりあえずフリルのネグリジェやめろ。


 私は飲まないけど、コーヒーの匂いは好きなので問題ない。ミルを取り出してガリガリやってケトルにお湯を用意する。雑貨屋にはサイフォンがあるけど、外だとなんとなくペーパードリップ。


 銀色の注ぎ口がするりと長いケトル、ペーパーをセットするドリッパーとサーバー。私は豆の違いはともかく、淹れ方で味が違うのがわからんので完全に見た目重視な装備です。とりあえずネルドリップ方式で淹れるとなんだか油が浮いて重い感じがすることだけは分かったので、ペーパーとサイフォンになった。


 コーヒー好きになったらネルドリップ式とかのほうがいいんだろうか? 味の好みの問題な気もする。奥が深そうだが、紅茶党なので突き詰めたりしない方向。


 今回の食卓はお茶漬が出してくれたローテーブルとソファ。用意してる間にシンをはじめにみんな起き出してきた。まあトーストだけというのもなんだから、サラダと目玉焼きでもつけとこう。


「ヒドラやったらどのルートに進むでし?」

「妖精か鳥、アンデッドですね?」

普通はそうだっけ? お茶漬の言葉にホワイトヒドラが出たら蛇に行けるんだが、と心の中で思う。隠しルートなので多分言わない方がいいのだろう。


「あ、鳥頼むわ。クエスト起きててアナト倒したい」

シンにはどうやら何かクエストが起きているらしい。


「鳥、了解。シン、バターつけすぎじゃない?」

請け合うペテロのセリフに、シンの手元を見たら、持ってる食パンに溶けきらずに塊のままのバターがごろごろと。


「バターブロックで食いたい」

「うわあ。見てるだけで僕は胸焼け」

「わはははは」

「確かにこのバターおいしいけどね」

至福の表情でバター山盛りのトーストを食べるシンに反応は様々。



「おお? 丸い!」

なぜか無警戒にマルチキに近づくレオ。


「ぎゃっ!」

当然攻撃を受ける。


「またでしか!」

「何をしてるの、何を」

マルチキに攻撃を入れて敵意を自分に向ける菊姫、それを確認してからレオに【回復】を飛ばすお茶漬。


「通常営業だけど、装備がいつも通りじゃないから最悪死ぬよ?」

にこやかに注意をしつつバックアタックをかけるペテロ、なんで内股なんですか。キャラ作りに手を抜かないのに感心半分、呆れ半分。


「うをおお! 丸いのに!」

「丸いからなんだと言うんだ」

嘆くレオの論理が良くわからん。


「始めた頃に戦闘で僕に【回避】が出た時から一ミリたりとも成長してない」

「好奇心、レオを殺す。【気弾】!」

ため息をつきそうなお茶漬に、シンが答えながら攻撃を加える。


「んー。やっぱ下にいる鳥でも遠距離攻撃のほうがダメージ行くなあ」

シンが色々試してる。このルートはまず飛んでいる敵が主なので近接攻撃が不利で、遠距離攻撃がないと辛い。打撃と斬撃は通り辛く、刺突が敵に与えるダメージが多い。魔法は可もなく不可もなく。


「ここは弓が一番強そうだね」

「そう言うペテロが遥か昔目指してた職業」

もう完全に忍者ですね!


「【投擲】もいいって聞くでしよ?」

「【投擲】は銭投げだから」

「お高い短剣投げるほどダメージいきますね。道中の敵に使ってたら破産」


「ニンニンしないのか、ニンニン?」

「ニンニン……?」

「通訳!」

レオ語が分からず困惑してたら、お茶漬がシンに向かって叫ぶ。


「手裏剣使わねぇの?」

「そう、それ!」

苦無(くない)派です。よくわかるね?」

「さすが二垢」

あっさりレオの言葉の謎を解いたシンに感心する、あれでよくわかるな。


 双頭の鷲、ミルハーピーと出てきたが危なげなく倒せている。敵のタゲを他に向けない菊姫の活躍の賜物だ。


「ホムラ、五回にいっぺん【回復】お願い」

「はいはい、了解〜」

タゲ取りはバッチリなんだけど、菊姫は盾を捨てて大剣での防御スキルのレベル上げ中なので、以前よりダメージを食らっている。


 【回復】系の魔法は敵視を集めやすく、あんまり使うと菊姫から敵のタゲを奪ってしまう。お茶漬は止むに止まれずレオに【回復】かけてよく攻撃食らってるんだが、このカオスなパーティーじゃなければどんな戦闘もそつなくこなす回復様だ。一緒にいる間もお茶漬が昼間一緒だったパーティーとかからお誘いが届いている。


 なお、粗相が怖いのでHP回復薬を投げる私です。減少分が百なのに五百回復するようなことをすると、やっぱりタゲを奪ってしまうのだった。回復職難しい!


 とりあえず普通のパーティーは盾と回復が安定していればなんとかなる。ちゃんと避けて、高ダメージを叩き出して、早く終えるに越したことはないけど。


「人間慣れるもんだね」

ボス前でお茶漬がひとりごちる。


「戦闘はなんだかんだ言って、危なげなくなったな」

「いや、そっちじゃなくって」

肯定したら否定された。


 ――どうやらシンの腹巻に対してだったようです。そういえば気にならなくなっていた、慣れって怖い。


「グリーンヒドラさんですね、残念」

ペテロが言うように、対面したボスは白くない。ステージもぬかるみと葦の浮島みたいな湿地帯だ。――ああ、そういえばここのレアボス、ホワイトヒドラさんからスカートをもらっていたような。どこへやったろう? 


 三十層のヒドラまでは到達した人が増えて来たようだし、ロイたちや炎王たちはもうちょっと先まで攻略してるし、そろそろヒドラまでのドロップは放出してもいいかな? とりあえずスカートは後で菊姫にいるかどうか聞いてみよう。


「菊姫、あそこのおっきな浮島まで引っ張れる?」

「了解でし」

足場が悪いと戦い辛いし、スピードが必要なスキルなどにマイナス補正がついたりする。


「【黒耀】『闇の翼』」

黒い翼は羽先にゆくほど紫。黒耀が頭上を飛びパーティーが一瞬羽根に包まれ、その羽根が消える前にお茶漬が能力上昇の付与をかけ終える。


「防御と強化ありがとでし!」

菊姫が駆け出し、ペテロたちが後に続く。


「いくでしよ〜! 【飛刃】」

菊姫が使った【飛刃】というスキルは持っている剣系の武器から、攻撃を飛ばすスキルのようだ。振り切った菊姫の大剣の刃から白い衝撃波のようなものがグリーンヒドラに飛び、そのまま菊姫はお茶漬に示された浮島へ移動する。


 攻撃を当てられて怒ったヒドラが菊姫目指して浮島に移動を開始する。


「そんなに速くないね」

「足場少ねぇし、速いと困るんで助かった」

ペテロとシンが言い合う。


 ヒドラの後方の小さな浮島に移動する途中、レオがズボッと湿地に落ちる。


「わはははは! 今でかいの忘れてて踏み外した!!」

「小さいのは沈むのもあるみたいだから気をつけて」

泥だらけの上、頭に何か乗せた美女がペテロの隣の浮島に上がる。


「【空】『浮遊』」

自分が浮けるのでかけるのを忘れてました。


 ごがああああ!


「無効みたいね」

お茶漬の言う通り、ヒドラが吠えたら『浮遊』が解除された。おのれ。



「【虎】『蹴』!」

もう一回菊姫が攻撃を入れたところでシンがコンボを開始する。


「【灼熱】『デフェール』」

ヒドラのいる場所の泥がみるみる乾いて、白茶けた地面がひび割れマグマが噴き上がる。


「きゃー負けるでし! 【挑発】!」

菊姫からタゲは奪わなかったものの、ヒドラがこちらに視線を向けてくる。もうちょっとダメージがいってたらうっかり奪ってしまうところだった。


「駆けよ! 【疾風迅雷】」

雷を放つ小太刀、ペテロのスキルがかっこいい。


「もう一回【挑発】でし!」

片手で持ち上げた大剣で、ヒドラを正面から指す菊姫。自分と同じくらいの大剣を持ち上げて仁王立ちの幼女。


「おお、忍者っぽい! 俺も俺も!【ラッキー☆スリースター】!」

星が三つヒドラに向かって飛んで、当たったところで7に変わった。


「【オンリーワン・アイズ】! それはどうみても博打スキルでし!」


「ああああ! コンボ、コンボやってて参加できねぇ!」


「なんでタゲの奪い合いになってるの?」

お茶漬が呆れて言う。


 そんな意図はなかったんですが、私のせいです。ごめんなさい。


「うっわっ、きっもっ!」

グリーンヒドラの首が一つ落ちた。ホワイトヒドラの時のように焼かないと再生するのかと思ったら、何か放射状に生えて来た。シンが嫌がるように気持ち悪い外見だ。


「触・手」

ペテロの声が笑っている。


「世の中の男子が捗りますね。中身男の幼女がわざわざかかりに来るかも」

お茶漬が真顔でどうしようもないことを言っている。


 私には触手というより、現実世界の水の中に発生するヒドラに見えるんだが。いや、まああれも触手か。食うのはプランクトンとかだけど。


「え! 俺の美貌が危険で危ない!?」

「ないわー」

お茶漬がシンのボケを言下に否定しながら菊姫に【回復】を飛ばす。


 触手は酸を持っているらしく、近接の三人にダメージを与えている。どうやら、盾が本体のタゲを持っていてもパーティーに等しく攻撃をかけてくるようだ。こっちにも飛んできた。


「遠距離もいけるのね。うわ、毒も来たこれ」

残った首が一斉に毒のブレスを吐いて、あっという間に全員毒状態。『猛毒』はともかく『だるい』『発熱』の状態異常付き。


 首を落とすとヒドラの吐くブレスの状態異常も増えた。六つとか八つついてるともはや何が何だかわからない感じだ。HPがぐんぐん減っていく。


「これ『異常回復』ないと辛そうだな」

「『異常回復』まとめて治せるのはいいけど、失敗する率も高いんですよ。統合された元々持ってたやつは効きがいいけど」

「失敗するのか……」

「僕のMID(せいしん)超えるのやめてください」

やめろと申されましても多分もう超えています。成功率はどうやらMID依存のようだ。



《グリーンヒドラの牙×5を手に入れました》

《グリーンヒドラの皮×5を手に入れました》

《グリーンヒドラの帽子を手に入れました》

《グリーンヒドラの魔石を手に入れました》

《クロレラジュース×10を手に入れました》

《毒耐性の指輪+5を手に入れました》

《『グリーンヒドラの触手』を手に入れました》



「クロレラジュース……でし?」

「わはははは! 緑色だったからか」

「何に使うの何に? ホムラ料理する?」

「私!?」

お茶漬が私にクロレラジュースを詰めてこようとする。


「ああ、『兵糧丸』に使えるんじゃない?」

ペテロもそう言って私の荷物に詰めてこようとする。


「食いもんはホムラだよな!」

「まあそうだな」

「でし、でし」


「ちょっ……っ!」



 ――結局、クロレラジュースは全部私のものになりました。






いつも感想、誤字脱字ご報告ありがとうございます。

お返事できていないですが、大変うれしい&助かっております!


コミカライズ2話更新されております。

本当にとても上手くまとめていただいた上、ギャグ増量ですのでぜひご覧ください!

http://seiga.nicovideo.jp/comic/39097

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちらほら知らない情報をググる。…とてもググる回数が増えました。 クロレラジュース………! [気になる点] 297.クランと迷宮にて、浮遊のサイハイブーツ履いてたはずのホムラさんが、浮遊に失…
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