28.ドロップ品確認と調薬
凄いことになった。
夜でも開いている商業ギルドに駆け込んで金の預かりをやっているか確認する。
「はい、貸出ストレージのサービスをしております。一週間300シル、一ヶ月1,200シルの料金がかかります。期限を過ぎますと引き出ししか出来なくなり、期限の三年後にはストレージの中身は商業ギルドへの寄付とさせて頂きます。期限と寄付して頂く前日にはご連絡させて頂きますが、ダンジョンなどに長期間行かれる前にはチャージされることをお勧めします」
「また、二日後からサービス開始となります委託販売のシルのやりとり、商品のやりとりはこのストレージを通して行われる予定です」
受付で説明を受ける。
十ヶ月分を支払い、手元に古本屋に支払う額と装備新調と生産のためのシルを残して早速預ける。当面使わないアイテムも預けてしまおう、ストレージの容量は300、シルは別途預けることが可能だ。 容量追加も料金はかかるが可能だ、引き出し預け入れは商業ギルドの本店支店で可能、支店には生産施設なども含まれる。
生産を始めたら容量の追加は必須だと過去の経験から確信するが、今はまだいいだろう。ギルドカードへの登録で個人のストレージを識別するとのことだ。
まずは食材以外の生産素材を全て預ける。
次に装備品の確認。
チョトツの王からドロップした、光の加減で赤みがかった色にも見える燻銀っぽい色の『力の指輪』、デイドリザードから黒味がかった色の『体力の指輪』が二つ、サークルモスから銀色がかった色の『素早さの指輪』、ヤグヤックルから金色がかった色の『器用の指輪』、ファイア・ポリプから緑がかった色の『知力の指輪』を手に入れている。
とりあえず右手に三つ、左手に二つつける。全種つけて遊ぶ私、『精神の指輪』だけないのか。これ全部効果でるのか、打ち消しがあるのかどうなんだろう?優先される指とかあるのだろうか。
ソロ報酬は『身代わりのペンダント』、素早さが格段に上がる『疾風のブーツ』、器用さが上がる『技巧の手袋』、火属性強化、火耐性のつく『炎の雫』。
たぶんソロ討伐は大分先の想定だったのだろう、今出回っている装備品と比べて突出した性能だ。これらはしばらくソロ用だろうか……、装備して動いたら一発でおかしいのがばれるレベルで能力が高い。
とりあえず『身代わりのペンダント』だけつけて初期のアイテムポーチの中にしまいこむ。装備チェンジ用にセット登録とかできないものだろうか。
『ヤグヤックルのマント』と『サークルモスの胸当て』は装備保留。指輪は幾つかバザーで見かけたのでいいだろう、いやダメか。二つ外しておこう。『ファイア・ポリプのグローブ』はほとぼりが冷めたころにシンにいらないか聞いてみよう。
大金を預けて身軽になったところで今度こそ調薬だ。
プレイヤー同士で謎の答えを教えあうのはNGでも住人に聞くのはアリだ。薬師ギルドへいって"得意な調合"があるのか聞いてみることにする。
《お知らせします。ファイナのフィールドボス『アオトビイカ』がロイ・クラウ・カエデ・モミジ・暁・シラユリによって討伐されました》
おお、ロイ達ががんばっている。
馬車での移動中に流れたアナウンスの知った名前を聞いて喜ぶ。私と違って真っ当に強い奴らだ。
薬師ギルドはこの時間でも煌々と明かりがともっている。大半のプレイヤーはセカンにたどり着いているだろうけれど、ファストの街の便利さに神殿のゲートを使ってもどってきているプレイヤーがほとんどだ。ボスを倒さねば神殿のゲートが使えないことが広まってからは、サーよりボスが弱いセカンに人が移動している。
「すまん、調薬についてききたいのだが」
「はい、何でしょうか?」
「調薬の得意不得意などはあるのか?」
ギルドの職員を捕まえて聞いてみる。
「はい、不得意というのはあまり聞きませんが、得意な系統というのは聞きますね。初めて使用した薬が大きく影響するとされています。あとは誰かに師事して初めて作った系統ですね。使用した薬より、きちんと学んだ調薬の方が身になるようです」
「なるほど、ありがとう。だがわざわざ探してお願いして弟子入りするのは面倒だ」
「ギルドから紹介もできますし、体験コースも選べますよ」
おお!! 自分で得意な系統選べるのか!
と、喜んだのだが、コースがHPポーション、MPポーション、毒消し、だった。
得意料理の法則で行ったら、パーティーで使ったHPポーションMPポーションから複数取れる気がするのでむしろコースは受けないほうがいい。しいて言うなら人の少なそうな状態異常治癒の毒消しコースを選ぶかだが、私は今までのゲームでは毒になってもほっておいてある程度減ったらHP回復で一気に回復させるタイプだった。
元々自分の分を適当につくれればいいと選んだ職だ、MPかHPポーションならどちらが出てもいい。
「ギルドとしては毒消しをとっていただけると有難いです」
私が体験に興味を無くしたと見て取って、職員が話しかけてきた。曰く、戦闘ですぐ効果の出るHPMP系統を選ぶ薬士が多く、状態回復系統を選ぶものが少ないとのこと、ついでに状態回復系統は一般の病気にも有効な薬ができやすいので冒険者向けではないが、必要なものであることを力説された。
……まあ、バザーを見てもHPMP系統が得意な生産特化の人も多いようだし、いざとなれば買えばいい。別にHPMPポーションができないわけでもないしな。生産の出来にそんなにこだわりはないのだった。
「分かった、毒消しコースでお願いする」
「ありがとうございます」
「おー、おぬしが生徒かぇ」
「遅くにすまん。ホムラという、よろしく頼む」
毒消しコースの部屋に行くと腰の曲がった老人がでてきた、大丈夫かこれと少々不安になる。
「わしゃ、ピエグだ。じゃあ、レシピ通りに作ってもらおうかの。ほれ、材料と道具はそこにある」
いきなりの放置宣言なんだが? まあいいか。レシピと道具があればつくれるしな。
フォスに行く前に買ったレシピと被ってしまった罠よ。
せっかくなのでメニューから作るのではなく、ゴリゴリして抽出してと、時間がかかるが手作業で進める。乳鉢より薬研が欲しい私です。
「ふむ、おぬしはすでに【抽出】が使えるのかね? 【時間促進】は?」
私の作業を椅子に座って見ていたピエグ薬師が聞いてくる。
「料理の【抽出】と【時間促進】なら」
やたらスムーズに作業がいけるとおもっていたら、手作業でも【抽出】が効いていたのか。
「ではこれに【時間促進】をかけて短縮といこうかの。調薬と料理、錬金なんかも共通の作業があるぞい」
言われたとおり【時間促進】をかけて作業を終わらせる。
「きっちり手順も見せてもろうたことだし、では講師らしいことをするかの」
そう言って、老薬師が椅子から立ち上がって作業台に移動する。
「その出来上がった毒消しをこっちによこしてもらおうかの」
出来上がった毒消しを渡すと、液体の色を眺め、匂いをかぎ満足げに頷く。
技巧の手袋を装備して作った毒消しは評価10が出来たのを確認している。初めての評価10が薬でした。10の効果は飲む以外、浴びることでもロスなく使えること。 通常薬品類は評価によって回復量が変わる。
毒消しであれば評価1はむしろ毒、評価2で1%の確率で毒を消し、3で20%、4で50%、5で60%、6で70%、7で80%、8で90%、9で100%と毒を消す確率が高い薬ができる。
ただしこれは経口摂取、つまり飲んだ場合の率で戦闘中パーティーメンバーに浴びせる形で使うと効果は三分の二に落ちる。浴びせる場合は、評価10でだけ100%回復となる。
HPMPポーション類は基本の回復量が決まっていてそこから評価で回復量が変わる。
店売りのHPポーションの回復効果が100で、これが評価4の回復量でもある。
評価2で60回復、評価3で80回復。評価5で110回復、評価9で150回復、失敗扱いの評価1は毒状態になる。
更にリキャスト時間が評価4は5分、5は4分30秒、6は4分、7は3分30秒、8は3分、9は2分、10は1分、3以下は一律8分。
リキャストが終わる前に使用すると回復しない上、毒状態になる。
作り方で基本の回復量がかわる都市伝説が掲示板にあるなんてこともお茶漬が言っていたきがする。
「上出来じゃの」
少しの間毒消しを眺めていた老薬師はこちらに向き直る。
「上出来すぎて『毒消し』では教えることがないのぅ。じゃから一つサービスで別なものを教えよう」
そう言うと追加で材料を並べだす。さっきまで立っているのもおっくうといった風だったのにその手つきは鮮やかだ。
「さて、これで毒になる前に防げるの」
そう言って渡してきたものは『抗毒薬』、飲めば一定回数毒が効かなくなるとのこと。
毒消しの評価10を超えられないからって毒消しそのものを超える薬作ってきやがりましたよこの老人は!
「凄いな」
それしか言えない、滞ることなくさっさと作ったそれの評価も10。評価10の特典は他の耐性薬との併用可だった。
「ふっふっ、伊達に年くっとりゃせんぞい」
「ご教授感謝する」
毒耐性薬と抗毒薬のレシピを貰って終了した。
《得意調合に【状態回復薬】【予防薬】【丸薬】『草』を登録しました》
草。
いや、薬草とか毒消し草とか、草の扱いが上手くなるということなのだろうけど、ひとことで言われるとシュールだ。
そのまま薬師ギルドにある生産設備を借り、調合をする。戦闘職をメインに据えている場合、自身のレベルはメインの職の経験でしか上がらない。生産特化のプレイヤーは生産でレベル上げが可能だが、戦闘職をメインに持ってきている私は、転職で入れ替えない限り生産であがるのはスキルレベルだけだ。生産職をメインに据えているプレイヤーもまた、戦闘ではスキルレベルしか上がらない。
レシピは料理と違って1レシピに一つ。
料理のようにレシピ通りに一度つくらなければ作れないということもなく、本当に材料を知るためだけのレシピだ。レシピがなくても作れるが料理と違って材料の見当がつかないものが多い。
料理のときは料理スキルが無いと味がない料理が出来上がったが、調合無しでも評価が低くなって効率は悪いが薬は作れる、ただし調合資格が無い者の調薬は法律違反でしょっぴかれるそうだ。ついでに言うなら評価1以外にも毒が混じるというロシアンルーレット仕様。
早速、ストレージから薬草を取り出してHPポーションを作る。
薬草1水1に対して出来るポーションの数は1だ。
大量にあった薬草が全てポーションになる。レシピレベル1、素材のランクも低い、ほぼ評価は10で揃う。 技巧の手袋様々だ。
次にMPポーション、こちらは魔力の実が少ないのであっと言う間だ。
毒消しは材料がなかったので購入。幾つか作って抗毒薬を作る。老薬師から貰った抗毒薬の材料は毒消し3本に血清。
店売りの素材の中で血清はぐっと高くて200シル。ガラハドからもらった資金と技巧の手袋がなければとてもレベル上げのために使える値段ではない。使うけどな!
血清って固まらないんじゃなかったか? 老薬師が作った抗毒薬は丸薬だったが……血清となっているけれど、現実世界のものとは全く別のもののようだ、購入したのを出してみたら粉状の何かだった。
丸薬なので毒消しのように戦闘中パーティーメンバーに使えないようだが、毒になる前に飲むものだからだろうか。毒消しも残しておかないとダメっぽいな。
評価1は毒、評価2で判定2回で1%の確率で毒を消し、3で3回10%、4で4回20%、5で5回30%、6で40%、7で50%、8で70%、9で90%、10で100%と毒を消す確率が高い薬ができる。毒が消えない限り毒消しの判定が設定された回数分行われるようだ。
消火薬と消粘剤のレシピを購入してこちらも製作。やはり半分を予防薬にかえる。抗燃焼薬と抗粘薬になったが、抗粘薬がなぜか液体で、説明を読んだら飲むなと書かれていた。どうやら体に掛けて使うものらしい……同じような材料で何故だ。
HPポーション3本と血清で生命活性薬ができた。一定時間ごとにHPが少量ずつ回復してゆく薬のようだ。MPポーションからは同じく魔力活性薬。この2つが出来るようになったのはとてもうれしい。
作った予防薬の評価は材料の毒消しが評価10で揃っていたにもかかわらず評価8が最高だった。
10を出した老薬師、さすが本職!
私の調合レベルが低すぎるのもある、せめて評価9が多めに出来るところまで頑張りたいところ。
NPCから買う薬草が4シル、水が2シル。HPポーションの買値が6シル売値が5シル。
すぐにHPポーション製作ではレベルがあがらなくなったため、HPポーションを店買いにして生命活性薬をつくろうかと思ったが店売りのHPポーションが評価4相当なのを思い出して、地道にHPポーションも作った。MPも同様。
少量の製作のほうが評価が甘くなるようなのだが、面倒だったのでポーションはまとめられる最大数の99本ずつ作り、まれに出る評価9は戦闘用に取っておき、評価10を素材に活性薬は10本ずつ作った。おかげで調合レベルが10を超えてからは活性薬系も評価9が多くなった。
シルがあるのをいい事にHPとMPポーションを作り生命活性薬と魔力活性薬を時間いっぱい作りまくって11まで上げた。途中調合が10になったタイミングで錬金調合のレベルが上がった。
【鍛冶】から派生した【細工】が鍛冶が一定レベルあがったら、一緒に上がったと聞いたので調合の経験値も錬金調合に流れているのだろう。
ちなみに【細工】を取ったのはペテロだ。何を作る気だろう……暗器か?
次は錬金調合を上げたいところだが、こちらはレシピが売っていないので自力で何とかしなくてはならない。初期生産職から派生した上位や複合生産職は基本的にレシピはない。
□ □ □ □ □
・増・
得意調合
【状態回復薬】【予防薬】【丸薬】『草』
□ □ □ □ □
ホムラ Lv.25
Rank D
職業 魔法剣士 薬士(暗殺者)
HP 730
MP 927
STR 36
VIT 22
INT 49
MID 17
DEX 18
AGI 26
LUK 16
NPCP 【ガラハド】【-】
称号
■一般
【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】
【経済の立役者】【孤高の冒険者】
■神々の祝福
【ヴァルの祝福】【ヴェルナの祝福】
■スレイヤー系
【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】
【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】
【ドラゴンスレイヤー】
スキル(5SP)
■魔術・魔法
【木魔術Lv.4】 【火魔術Lv.5】【土魔術Lv.4】
【金魔術Lv.4】 【水魔術Lv.4】【☆風魔法Lv.4】
【☆雷魔術Lv.4】【光魔術Lv.2】【☆闇魔法Lv.8】
■剣術
【剣術Lv.11】【スラッシュ】
【刀Lv.7】
■召喚
【白Lv.1】
■精霊術
水の精霊【ルーファLv.2】
闇の精霊【黒耀Lv.1】
■才能系
【体術】
■生産
【調合Lv.11】【錬金調合Lv.2】【料理Lv.8】
■収集
【採取】【採掘】
■鑑定・隠蔽
【道具薬品鑑定Lv.4】【植物食物鑑定Lv.5】
【動物魔物鑑定Lv.4】【スキル鑑定Lv.4】
【武器防具鑑定Lv.2】
【気配察知Lv.4】【気配希釈Lv.5】【隠蔽Lv.4】
■強化
【腕力強化Lv.3】【知力強化Lv.4】【精神強化Lv.2】
【器用強化Lv.2】【俊敏強化Lv.2】
【剣術強化Lv.3】【魔術強化Lv.2】
■耐性
【酔い耐性】
■その他
【HP自然回復】【MP自然回復】【暗視】【地図】【念話】
【装備チェンジ】【生活魔法】




