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27.ツアー後半

 ガラハド達に討伐が速すぎて、どうやっているか聞きに人が集まってくる可能性を話した。たぶん混ぜてくれと頼まれるだろう。三人もそれは面倒そうだと待つことになった。


 どうやらファストの宿屋でパトカ交換を執拗に迫られたことがあるらしく、ぷりぷり怒っている。NPC(住人)のクセにと謎の罵倒を繰り返されたそうだ。

 うん、謎だよね。プレイヤーが便利に呼び出せる住人として冒険者だとすぐわかる姿の三人を選び絡んでる姿が見えた気がした。騎獣の件といい迷惑かけてすみませんです。


 ちなみに「NPC」は「住人」、「プレイヤー」は「異邦人」、「運営」は「我らの神」と聞こえてるらしい。運営、運営言っているとだいぶ恥ずかしいかもしれん。というか隔離案件じゃあるまいか、いや、この世界には普通に神がいるから、そう危ない人でもないのか。その前に「NPC(住人)のくせに」は住人を下に見る発言なので関係が悪くなるのでやめてほしい。


 待ってる間は木陰に隠蔽陣を敷いて座り、昼食としてボロネーゼを食べ、ソーセージの盛り合わせでビールを飲みながら待ってもらった。そこそこ距離があるし草丈も高いので見られることはないだろう。気配察知で引っかかってるだろうけど、プレイヤーをわざわざ見にはこんだろうし。



 周囲から人が消えたのでボス戦に突入。

 ボス戦を終えたら私とカミラでシャドウをかけることになっている。

 出るときに人が居ないといいな。



 セカンのボスは捻れた四本の角を持つデカい山羊だった。瞳孔が赧く横に割れなかなか兇悪な顔をしている。


 無差別な突進を時々受けたが問題無い範囲だ。それにしてもイーグルやカミラは兎も角、ガラハドまで回復魔法を使うのに驚いた。


 回復量に差があり、カミラ、イーグル、ガラハドの順で多い。

 私が菊姫達とやっていたキッチリ役割を分担するようなことはしていない。カミラや私に流れた攻撃を割って入ってガラハドやイーグルが受け流し、逸らす。どちらかにタゲを固定している訳でなく、阿吽の呼吸で攻守を行なっている。


 楽しそうだ!


 がっちりセオリー通りに戦うのは安全かもしれないけれど、それはほとんど作業だ。ガラハド達の戦い方は自由で、それでいてこちらに攻撃がくる心配は微塵も無い。




《お知らせします。セカンの『ヤグヤックル』がソロ討伐されました》



《ソロ初討伐称号【ビーストスレイヤー】を手に入れました》

《ソロ初討伐報酬『技巧の手袋』を手に入れました》



《ヤグヤックルの毛皮×4を手に入れました》

《ヤグヤックルのマントを手に入れました》

《山羊の毛糸×10を手に入れました》

《器用さの指輪を手に入れました》

《転移石『セカン』を手に入れました》



 ボスフィールドから出たとたん、自分とイーグルにシャドウをかける。カミラも予定通り自分とガラハドにかけたようだ。パーティーメンバーには姿が黒い靄で包まれている状態でお互い見ることができるが、これで他からは見えないはずだ。

 幸いプレイヤーはいないようだ、と、言ってるそばから二組のパーティーが草原の向こうからこちらに向かって来るのが見える。


「街ならともかく本当にここ人が多いわねぇ」

「新しいダンジョンが発見されたときみたいだなあ」

「セカンも一杯なんじゃないか?」

「面倒くせぇし、フォスに移動すっか。ホムラ登録は後でやってくれ。」

「ああ、勿論それでいい」


 タイルで移動するのかと思っていたら、次の瞬間にフォスの神殿にいて少々驚いた。神殿に登録するのとは別の「帰還石」というアイテムの効果だそうだ。

 あっという間にボスが倒されてしまうので、スキルは使う暇がなく上がらんかと思っていたのだが、「周りの心配をしなくていい」というのは余裕がでるらしく、いろいろ試せた。けっこうあがったのだが、さっきの戦闘で使っていない魔術まで上がっている。同系統を使うと経験値が少量配布されるというのであがったのかな?



「さて、最後いくぜ!」

「今気がついたが、デイドリザード連戦でいいんじゃないか? 移動ないし」

連続ソロ討伐がいたたまれないし。


「いんや、王都開放しちまおうぜ」

「ボス四匹の討伐はCランク昇格の条件なんだ」

イーグルが説明してくれる。


「爺に剣作ってもらったら迷宮にこもりっぱなしになってこっちにこねぇからな」

「最初は『月光石』の情報と【採掘】をわざわざ取ってくれる礼だったけど、君に早く迷宮都市にきてもらいたいんだ」

「あら、私にはガラハドがホムラの料理とお酒目当てにファストに通う姿が見えるけど?」

カミラが茶化す。


「ホムラは絶対面白く成長すると思うからよ、早く見せに来い」

「わかった」


 こんなことを言われたら断れないし、強くなるしかないだろうが。




 ジアースの首都ファイナに向かうためフォスを北に翔ける。

 タイル可愛いなあ。


 あっという間に後方に流れる風景は林と野が入り乱れ、穏やかな丘陵であることに遠くを眺めて初めて気づかされる。タイルの足で一時間と少し、徒歩で移動すれば2日以上はかかるであろう距離を走ると潮の匂いがしてきた。丘陵を登りきると視界一杯に広がる海だった。



 風景はすばらしいね、風景は。

ボスが可愛くありません!!!


「最後にレアボス!」

「〆にはいいだろ!」


 ボスにレアなんているの初めて知ったわっ!!!

ボスの名前はファイア・ポリプ。火をまとって分裂しやがります。

通常はウォータ・ポリプで火によるダメージは無いそうだ。


 クラゲっぽい空中に浮いたぷにぷにした半透明の求肥みたいなボスだ。

可愛くないのは分裂したポリプの丸い玉が一定時間ランダムな対象を追い掛け回してくることだ。

分裂したそれに一定のダメージを与えるとまたひとつにもどるのだが、攻撃をしながら逃げているのは私だけ。

 格好悪い。




《お知らせします。ファイナの『ファイア・ポリプ』がソロ討伐されました》


 ファイア・ポリプの名前がでるということは、ウォータ・ポリプのソロ討伐は別途であるのだろうか。だったら他のボスもレアボスのソロ討伐が残っているのだろう。

 よかった、さすがに一人で一国ソロ制覇は実力ならともかくこの状態は後ろめたすぎる。


《ソロ初討伐称号【ゲルスレイヤー】を手に入れました》

《ソロ初討伐報酬『炎の雫』を手に入れました》



《ファイア・ポリプの粘液×4を手に入れました》

《ファイア・ポリプのグローブを手に入れました》

《ファイア・ポリプの魔石を手に入れました》

《ファイア・ポリプの卵×10を手に入れました》

《知力の指輪を手に入れました》

《転移石『ファイナ』を手に入れました》


 一気に二つ上がってレベルは25になった。

 なったがまったく強くなっていない。


 私の腕力ではガラハドのような大剣を扱い立ちはだかるものを粉砕するような戦い方は無理だ。目指すならイーグルのような洗練された剣術。そしてカミラのような魔法。


 彼等のレベルに追いついた時、私は果たして強くなったと言えるのだろうか。


 頑張ろう。



 フォスに帰還。

 時刻は十六時前、本当に一日でボスを討伐してしまった。自分の力ではないので多少罪悪感はあるもののここまできたら開き直って喜びますよ!後で戦利品チェックしなくては!


 ファストへ移動してレストランで食事をすませ、ルバの家に行く。

「今から移動すりゃ、ちょうど日没ぐらいに『月の女神の涙』に到着するな」

「うむ、『月の女神の涙』は俺もはじめて見るから楽しみだ」

「きれいらしいわよね?」

「確かに『月詠草』が生えてたサークルは月光に当たると淡く光って綺麗だったな」


 ルバはイーグルのハガルに乗り、私はまたタイルに乗せてもらって森の中を走っている。途中ビワが取りたかったのだが言い出せずそのまま疾走し、ポイントに到着。


「幻想的だな」

「ええ」

イーグルとカミラが言い合う。

 採取しか持っていなかった時は『月詠草』の淡く儚く光る銀の光しか見えなかったが、今は『月詠草』より硬質な冷たいような銀色の光が見える。これが『月光石』なのだろう。


「あら?」

「ん~?」

カミラが疑問の声を出し、タイルをなでていたガラハドがカミラを見る。私もカミラのほうを見て、カミラが何かを見ているらしい方向に視線を移すと、そこには先ほどまでいなかった黒いモノが五匹いた。



『闇の祝福を受けし者達よ、選べ』


「話しかけられた!?」

思わず小声で叫ぶ。

「これはホムラのイベントに巻き込まれた系か?」

「闇の祝福ってそれしかないだろうな。少なくとも俺には覚えが無い」

「オレもないな」

「同じくよ。半分冗談で言ったんだけど本当に闇の精霊に会えたみたいね」



『我らはそなたの闇の匂いに惹かれてやってきたもの』

『我らはそなたを助くもの』

『だが連れて行けるものは1体だけだ』

『選ぶがいい』


 選べといわれましても……


一体は獣型、狼のような黒い獣、尻尾と手足の先にかけて黒から紫へと色が変わっている。『闇の精霊・攻撃』

一体は人型、波打つ髪が黒く、肌が紫がかっている美女。『闇の精霊・攻撃支援』

一体は鳥型、大きな黒い翼は羽先にゆくほど紫に変わり、紫水晶のような目を持つ。『闇の精霊・防御支援』

一体は獣型、翼を持つ黒い猫、こちらも紫の瞳を持つ。『闇の精霊・生産支援』

一体は鳥型、手のりサイズの羽冠が体長ほどもある黒い梟。『闇の精霊・収集支援』


「これは一人一体選ぶんだろうか?」

イーグルが言う。

「多分そうよ」

「他はともかく闇の精霊とは初めて遭ったぞ」

「ぼんきゅっぼんっだな」

約一名感想が違う。ちょっとガラハドさん、いい漢、いい漢だが素直にそう言えなくなって来たんだが?


「ホムラから選んでどうぞ」

「まあ、どう考えてもホムラの持ってる祝福ででてきたんだろうからな」

「そういわれても、迷うし、とりあえず欲しいの言わないか?被ってたら考えるってことで」


 ガラハドは美女、ルバは猫、イーグルは狼、カミラは梟だった。

「じゃあ私はあの鳥で」

「いいのか?」

「まあ、攻撃は自前の魔法を使えばいいので、自分で出来ないことをやってくれる精霊ならうれしい。あの鳥格好いいしな」


「ありがとう。精霊は親しくなるほどその属性との相性が上がってゆくから、マメに呼び出して仲良くなるといいわ。相性があがれば魔術のほうの威力も上がるわよ」

カミラは他にも精霊を連れているらしい。魔術の威力もあがるのか! ……って闇は攻撃魔法をまだ覚えていない罠よ。


 それぞれ選んだ精霊の前に行くと名付けるよう頼まれた。

「黒耀、黒耀はどうだ?」

名前を告げるとうれしそうに私の額に自分の額をつけて消えた。


「この年で精霊持ちになるとはな」

ルバがひとりごちる。

「俺は火の精霊がいるけど、名付けがあるような高位の精霊持ったのは初めてだぜ」

「私は火と中位の水の精霊持ちだ。同じく高位の精霊は初めてだ。MPのやりくりを考えなくてはな」

「私は高位の火の精霊持ちだから今まで火魔法使ってきたけれど、これからは闇魔法も使わなきゃ。駆け出しの頃、神殿で光を選択しなくてよかったわ~」

三人は一緒に火の精霊と遭遇したそうだ。私がお茶漬達と水の精霊にあったときのような感じだろうか。


 その後、採取と採掘をそれぞれしてガラハドが帰還石を使い街までもどった。

 先に進めば騎獣といい、いろいろなものが手に入るようだ。

 『月詠草』もそうだったが一回の採掘で一個しかとれず、サークルで取れる回数は十回だった。私は『鉱物好物の腕輪』のおかげで二十個取れている。




 早速作業を始めるというので『月光石』と『月詠草』をルバに渡し、解散することになった。


 三本の剣の出来上がりは六日後以降だそうだ。さすがに三本分には『月光石』が足らず、イーグルの剣は本人が持ち込んだブルー・ミスリルという鉱石との混合になる。

 私の剣の分の『月光石』を使ってくれと申し出たのだが、断られてしまった。

 その上、『月光石』代として目が回るような金額を渡された。NPCの買い取り価格の十倍です。いやガラハドたちもNPCなわけだが、一緒に行動しているととてもそうは思えない。


「レベル上げを手伝ってもらったし、代金はいい」


「闇の高位精霊を手に入れたんだ、むしろ払い足らないくらいに思うぞ?」

「そうそう、レベル上げは【採掘】取ってもらった代価だ。闇の精霊分がうくってもんよ」

「大丈夫よ~この男どもと私はこれでも迷宮都市で稼いでるから、貰っときなさい」


 そう言ってシルを渡してきた。

 それならとそのままルバに剣代として渡そうとしたら精霊を手に入れられたんだからと、こちらも受け取ってくれない。

「それにこっちの赤毛からふんだくるからな。その金は杖の予備でも買え、今度の剣は魔法の変換効率は良くはない」


 せめてもとビールとワインとブランデー、バーボン・ウイスキー、私の持っている酒を何本か置いてきた。


 ちなみに『月光石』は一つ1,000,000シルでした。

 剣には十二個必要とのことで、ルバの採掘した十個と私の採掘した二十個のうち八個分をガラハドとイーグルが支払った。

 うん、8,000,000シルになるとは思わなかったよ……。

 

 どこかに銀行はございませんか!



□    □    □    □    □    

・増・

レベル+2

称号

【ビーストスレイヤー】

【ゲルスレイヤー】

スキル

闇の精霊【黒耀】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.25

Rank D

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP  730

MP  927

STR 36

VIT 22

INT 49(+2)

MID 17

DEX 18(+2)

AGI 26

LUK 16


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】

■神々の祝福

【ヴァルの祝福】【ヴェルナの祝福】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【ドラゴンスレイヤー】


スキル(5SP)

■魔術・魔法

【木魔術Lv.4】 【火魔術Lv.5】【土魔術Lv.4】

【金魔術Lv.4】 【水魔術Lv.4】【☆風魔法Lv.4】

【☆雷魔術Lv.4】【光魔術Lv.2】【☆闇魔法Lv.8】

■剣術

【剣術Lv.11】【スラッシュ】

【刀Lv.7】

■召喚

【白Lv.1】

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.2】

 闇の精霊【黒耀Lv.1】

■才能系

【体術】

■生産

【調合Lv.1】【錬金調合Lv.1】【料理Lv.7】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【道具薬品鑑定Lv.4】【植物食物鑑定Lv.5】

【動物魔物鑑定Lv.4】【スキル鑑定Lv.4】

【武器防具鑑定Lv.2】

【気配察知Lv.4】【気配希釈Lv.5】【隠蔽Lv.4】

■強化

【腕力強化Lv.3】【知力強化Lv.4】【精神強化Lv.2】

【器用強化Lv.2】【俊敏強化Lv.2】

【剣術強化Lv.3】【魔術強化Lv.2】

■耐性

【酔い耐性】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】【暗視】【地図】【念話】

【装備チェンジ】【生活魔法】

かえって分かりづらかったようなので

11話12話も含め、文末のスキル称号増減、

精霊名前の前の【精霊術】の表記を抜きました。

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― 新着の感想 ―
>>この年で精霊持ちになるとはな 何回も読み返して思うけど精霊やら何やら特に無しで「神の匠」と呼ばれるまでになったルバはやっぱり凄いなって
[一言] 〉いや、この世界には普通に神がいるから〜 むしろ住人は神名を口にするだろうから、逆に名を隠してるほうが怪しいような。 「我らの神」教みたいな扱いをされる可能性が微レゾン? 〉どこかに銀行は…
[一言] クッソ高い雷の本の代金もこれで払えるな…
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