279.報酬選択
後半直しました〜
イベントの褒賞システム的なの考えるの苦手でござる。
《大規模戦は現時点をもって終了となります》
《結果発表後、報酬選択を挟んで自動的にログアウトします》
終了のアナウンスが来た。フィールドの破壊されたものが時間が巻き戻るようにゆっくり元に戻ってゆき、NPCも姿を消してゆく。知っている住人が無言で姿を消してゆくのはちょっと怖い、怖いと思うほどには馴染んでいる。
レ オ:終わったあああああああああ
ペテロ:はい、はい。ホムラも転移してね。
お茶漬:神殿以外ね
シ ン:疲れたぜ!
ちょっと固まっていたらいつもの調子のクラン会話が届いた。いや、『転移』の登録神殿以外できてな……いこともないな。フソウの神社に転移して神社経由でクランハウスに移動する私。転移場所の登録用アイテムを真面目に探すべきか。
着替えてクランハウスでお茶を飲みながら結果発表を待つ私。小腹が空いたのでポテトチップスをぱりぱりしていたらみんなもクランハウスに戻ってきた。
「ハァーー、うめぇ!」
ぷはっと一杯な感じのシンは美味しそうにビールを飲む。
「お疲れ、お疲れ!」
笑顔でネギマにかじりつくレオ。
「終わった、終わった」
忍者装備でビールジョッキを持つペテロの姿も見慣れてきた。
しっとりササミに梅しそ、鳥軟骨、カルビ串、クシ切りにした玉ねぎ、軟骨入りつくね、アスパラガスを剛角豚のバラ肉で巻いた串焼き。みんな腹が減ったというので串焼き各種とビールを用意して結果発表を待つ態勢。
お茶漬はそれよりも甘いモノが食べたいと言ったので、スフレパンケーキ。チョコチップ入りバニラとチョコレートの小さめのパンケーキを二種類重ねた。
「あー、甘物がしみる。ベリーアイスとチョコソースおいしい、チョコスフレ本体はビター? ちょっとほろ苦いね」
クリームとチョコソースをたっぷりつけて、美味しそうにパンケーキを口に運ぶお茶漬、幸せそうで何より。
《集計結果を発表いたします》
「おお! きた!」
「あ、ウィンドウ切ってた」
メニューからウィンドウを開く。
ホムラ(ファスト)103,557
***(ファディル諸島)29,001
***(ナヴァイ・グランデ)9,894
ロイ(ファスト)6,974
暁(ファスト)6,892
炎王(バロン)6,261
ギルヴァイツア(バロン)6,173
あるたる(ダルス)4,444
刹那(ハダル)3,458
ユニ(サディラス)3,394
・
・
・
以下略
私の名前は伏せられているはずだが、本人なので見える。お茶漬たちもそれぞれ食べるのをやめて暫し画面に見入る。
「おおおお! ロイすげぇなぁ! 暁とギルも! 魔法使いくると思ってたぜ」
「クラウは支援型だからトドメ刺さずに他が倒してたんじゃないか?」
私の様にどっかんどっかんやるタイプではないので、貢献度は高そうだがポイント的には伸びなかったのではあるまいか。
「知ってる名前多いなあ!」
レオが嬉しそうにしている。
「ロイと炎王さ、これは預かったコアの差かな」
ペテロのいう通り、ロイのクランは大所帯なので預かったコアは多かったはずだ。あとは生産職より戦闘職を倒した方がポイントが高かったり稼いだシルが換算されたりもある。
「帝国側入ってないのは最後一掃されてコア刈られたからかな」
ちらりと私を見るペテロ。
「大技を普通に使ってればポイントになったろうに、持ってる人ほど無謀な相手に突っ込んでったみたいだし」
横目で私を見るお茶漬。
「伏せられてる意味がないというか桁がおかしい人いるね。誰とは言わないけど」
「いやこれほとんどバハムートだし」
笑顔のペテロに言い訳をする私。
「二位と三位の人誰だ?」
食い終えた串を皿に戻しながらシンが聞いてくる。空の皿とともに消える串、相変わらず片付けいらずで便利。
「ナヴァイは海賊とやってたはずだけど。知り合いだいたいファストかバロンだし、きっと名前が分かってもわからないと思う」
お茶漬がシンに教えながらポップコーンの袋を受け取っている。ポテトチップやポップコーンは、湿気ないことをいいことに紙袋に入れてストックしている。
「二十位以下は、生産組の名前も上がってくるね」
「コアの方は戦闘不能になったら預かってたの含めて移っちゃうし維持するの大変だしなあ」
シルもポイントになるので、特に国やギルドに協力して褒賞をもらっていたりするとすごいそうだ。お茶漬とペテロは知っている生産プレイヤーの名前をいくつか見つけたらしい。
《ログアウトする前に賞品をお選びください》
《なお交換せず余ったポイントはカジノのGに加算されます》
「おおお!! ゴールド!!!」
「イェーイ!!!」
「公式が博打を煽るスタイル」
お茶漬があーあという顔をしている。
「賞品見てからにしたほうが……」
「ははは」
獣二匹がカジノに入り浸る近未来が見える私と意味なく笑うペテロ。
スキル
20,000ポイント
【使用EP半減】【使用MP半減】【HP増加】……(略)
【空中移動】【空中行動】【水中移動】……(略)
……(略)
15,000ポイント
【雷魔術】【重魔術】【灼熱魔術】……(略)
【かみなり剣】【じゅうりょく剣】……(略)
……(略)
10,000ポイント
【霞斬り】【炎月剣】……(略)
……(略)
(以下略)
アイテム
20,000ポイント
『ドラゴンスレイヤー』『光の剣』……(略)
『鍛治の腕輪』『調薬の腕輪』……(略)
……(略)
15,000ポイント
『採取の腕輪』『採掘の腕輪』『釣りの腕輪』 ……(略)
……(略)
10,000ポイント
『転職の石板・忍者』『転職の石板・ベルセルク』 ……(略)
……(略)
(以下略)
20,000〜15,000ポイントに並んでいるのは、神々に遭遇したり基本となる属性を持っていないと発現しないスキルのようだ。ちなみに、ひらがなスキルは魔術が魔法に変わるように強化されると漢字になるそうです。
なんか自分が持っているポイントが多いので麻痺しているが、ロイでさえ20,000に届かないのか。
スキルの中で目がいったのは、名前そのままスキル使用時のEP消費が半分になる【使用EP半減】、500ポイントに並んでいる職業適性で装備できないものを装備できるようになる【○○装備】シリーズ。忍び刀でしか発動しないスキル、【雲夜残月】があるので【忍刀装備】は欲しいのでチェック。
『ルシャの飽食の剣』も使ってみたいが、今使っている刀剣や刀のほうが好きだ。それに【長剣装備】はカジノか闘技場で見たのでとりあえず後回し。
採取量が+1される『採取の腕輪』と、対応した生産の効率があがる『調薬の腕輪』『練成の腕輪』『料理の腕輪』も欲しいところ。【隠蔽】もあるのでいっそ取ってしまおうか? いや、独立した暗殺者になれば消えないんだったか。【隠蔽】をうっかり消さないうちに、さっさと独立したいところ。
「あああ、欲しいものがいっぱいあるうぅ!!」
「ポイント、ポイントが足りねぇ……っ!」
「魔法発動早くなる杖欲しいけど、装備系は攻略進んだらもっといいのでそうだし、さすがに迷う」
「【使用EP半減】欲しいけど、転職の石板を取らざるを得ない」
「ペテロさんや、【使用EP半減】は20,000ポイントだよな?」
「うん」
「二位って貴様か!」
しれっと上位に混じってる男。
「ええ〜〜っ!?」
「マジか!」
レオとシンが驚く。
「今気づいたの? ここどこだと思ってるの?」
お茶漬はとっくに気付いていた様子、ファディル諸島ですね、クランハウスが建っているとこ……。ナルン飛ばしてたし順当といえば順当か。
「『釣りの腕輪』欲しいなあ」
「これポイント貯めといて次回合算してくれねぇかなぁ」
「いくらあっても足りません」
シンたちがぼやいているのを聞きながら選択の続きをする。量が多いが、だいたいカテゴリ別に並んでいるので思ったより把握するのは楽だ。
【使用EP半減】【使用MP半減】【HP増加】で60,000、『採取の腕輪』で15,000、【忍刀装備】で500、『調薬の腕輪』『練成の腕輪』『料理の腕輪』で60,000、135,500でさすがにオーバー、さて何を減らそう?
【使用MP半減】『料理の腕輪』、……いや『調薬の腕輪』を減らそう。調薬、錬金とかぶるところがあるし。残り8,057か。【使用MP半減】を減らした代わりに8,000にある【MP吸収】とるかな。正直、攻撃系のスキルを取っても使い切れない気がする。
「で、スキル石は【暗殺の刃】っと」
ついでに敵から奪ったスキル石の選択もする。
「ホムラ、あるならそっちより【無音の制圧】のほうがいいよ。攻撃力は足りてるでしょ? それにINT高いほど効くから」
暗殺者らしいスキルを選んだら、ペテロから助言が来た。
【無音の制圧】も暗殺スキルで攻撃力は弱いが、状態異常の【恐怖】、確率は低いが【スキル封じ】か【武装解除】のどちらかがつくようだ。何を生け捕るか考えていないが、生け捕りにも便利かもしれない。以前欲しかった、タイミングを見極めなくてはならない【仕手】より簡単だし。
「おお、じゃあこっちにする」
これはさっさと覚えてしまおう。
【暗殺者】のギルドでもらったスキルは、【暗殺者】として独立するまで仮での取得――ギルドから借りているようなもの。ギルドの決まりを破ると取り上げられる。
だが、【暗殺者】独自のスキルを暗殺者ギルド関係なく取得できれば、他の暗殺関係のスキルも私のものとして固定されるそうだ。バグなのか、仕様なのか怪しいところ。
どれが暗殺関係のスキルなのか不安だが、【無音の制圧】は絶対暗殺関係だろう。なにせペテロのオススメだし。これで暗殺者ギルドに所属せずとも、いろいろ粗相してバラしても暗殺者のスキルを取り上げられない。
ギルドの依頼を受けずに、プレイヤーもしくは住人殺しをバレないように続けても、独立した【暗殺者】にはなれるようだが、自分のカードに赤バツがついて、衛兵に追いかけられたりする立派な犯罪者になる。ちなみにおおっぴらにやると普通に【殺人者】という職業も出るそうです。それは職業なのかと突っ込みたいが。
「どんなものがどれくらいのポイントでもらえるか分かったし、次回はみんな本気出しそうだ」
「クラン同士の提携とかも多くなりそうだね。次回はきっと解放された国が増えてコアも増えるだろうし……、というかそれを想定したポイント設定だと思う」
ごふっ、お茶漬の言葉に視線をそらす私。
「そういや一位ホムラだってバレねぇの? 平気かこれ?」
「掲示板みてるけど今のところ平気。一位は黒の暗殺者ってことに落ち着いたっぽい」
「ちょっ……っ! とばっちりが」
「わははははは!」
「案の定、プレイヤーだって疑って神殿に張ってたのと、出待ち目的で神殿に張ってたのがいたみたい。どこの神殿にも現れなかったもんだから結果的にNPC説に拍車かけたっぽい」
「それで神殿避けろって言ったのか」
というか、プレイヤーなことは隠しているつもりはなかったのだが。ペテロがなんかNPC説押しなのは知っていたが、お茶漬もなのか。
「まあ次回も適当に頑張ろうか」
「おう!」
「暁とギルにスキル回し聞いてこよう」
お茶漬の言葉にやる気を見せるレオとシン。
「次回も雑貨屋に襲撃かけられるのか……」
結界のレベル上げをしないと破られそうだなと思いながらぼやく。
「むしろ雑貨屋への襲撃は減りそうな気も……」
「ああ、あれはなー」
「無理だ! わはははは!」
「でも記念に突撃するのは増えそうじゃない?」
「どっち!?」
無理ってなんだ? 記念突撃ってなんだ?
マント鑑定結果【玉砕覚悟……、という気配がする】
手甲鑑定結果【……うむ】
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・増・
スキル
【使用EP半減】【HP増加】【MP吸収】
【忍刀装備】【無音の制圧】
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