26.ボスツアー
昨日あれからガラハド達が飲み始めたので途中でウィスキーとワインを出したら喜ばれた。私も飲まされたが感想は辛い苦い喉が焼ける、だった。
呑んでりゃそのうち旨さが分かるようになるとはガラハドの言だ。
イーグル、カミラ、ルバとパトカの交換をした。修正入っててよかった、誰か希望メールだしたのだろうか。メールといえば、お茶漬達に、『月詠草』を取った場所が五日後までは消えずに残っているということと、お高いことをメールしておいた。これでその気があってスキルポイントに余裕があれば【採掘】か【採取】を取得して取りに行くだろう。
朝、待ち合わせの時間前に東門に行く。
一度ログアウトも済ませているし、なにより明日は休みだ、長丁場になっても大丈夫。
早めに来たせいで、まだ三人は来ていない。朝から白と朝食をとり、散歩がてら歩いて来たのだ。白は既に帰還している。宿屋はルバに教えてもらった住民が利用する小さな宿に泊まった。ガラハド達がとっている宿もまだまだ冒険者達で一杯だそうだ。
ついでに薬師ギルドでポーションを補充、他にどんな薬の扱いがあるか見て回る。
「なんだ。中に居たのか」
待ち合わせ時間が来たので門に行くと今度は三人とルバがいた。
ルバはわざわざ見送りか?
「すまん、待たせたか?」
「いや、時間通りですよ」
「これを持って行け」
ルバから剣を渡される。
「有難いが金がないぞ?」
「炉をずっと使ってなかったからな、炉の具合を見るのに残っていた鉱石で試し打ちした。一応魔法効果は落ちないように造ったが、売り物にならんから気にするな」
「ありがとう」
差し出され続けていた剣を受け取り微笑んだ。
「おう、頑張れよ」
そう言ってルバはさっさと路地の方へと歩いて行った、この為に来てくれたらしい。
「って、ちょっと待てっ!!」
渡された細身の剣を見て驚いた。今持ってる剣の五倍は強い。しかも何か『魔法伝導』と『力+5』とかついているのだが。
角を曲がったらしいルバの姿はもう見えない。
「こりゃまたこのランクの武器で最大限強いんじゃねーの?」
「さすが神の匠と呼ばれるだけあるわね〜」
「今ホムラの持てるランクで一番強い武器じゃないかな?」
三人とも高ランクの武器もってそうであんまり衝撃を受けてないようだが、私は別だからな?
ビックリし過ぎて剣を握ったまま嫌な汗でてきた。
というか神の匠?
「『月光石』手に入ったらホムラの剣打つ気満々だったじゃない。どんな凄いの来るのよ」
「いや、装備出来ない、出来ないだろ」
「『月詠草』がなんで貴重かって採れないのもあるが、薬にも使えるけど、武器防具生産に使うと装備制限解除効果がつくからだよ? 代わりに持ち主しか装備出来なくなるから売買不可になるが」
イーグルが私の否定を却下してくる。
私自身が全く強くなってないのに何そのチート。
「そうなんだよなー、フェル・ファーシ倒した実績のある剣貸してもらおうとしたらダメだったしな」
ガラハドののんびりした声。
「『魔法伝導』と『力+5』とかついているんだが……」
「そのランクの武器で二つも効果がついてるって凄いな」
「『魔法伝導』なんの魔石でつくんだろう」
何故そこで魔石が出てくるのか聞くと、魔石の中には武器防具の製造時に使うと出来上がった武器に特殊効果を付与する効果があるそうだ。失敗する場合もあり、その場合はただ効果がつかない場合、マイナスの効果がつく場合、武器の性能ごと下がる場合があるそうだ。
「そろそろ良いかな」
東門から出て暫く歩くとガラハドが立ち止まってそう言った。街道からはだいぶ外れている。
「いいんじゃないか?」
何が良いのか分からなくて三人を見ると、ガラハドが宝石のようなものを投げた。
それは地面に落ちる前に質量を増し、地に着く頃にはオレンジの体毛が鮮やかな虎になっていた。普通の虎より多分デカイ。
ビックリして目を丸くしているとイーグルとカミラもそれぞれ狼のような動物を呼び出した。
「紹介するぜ、オレの騎獣のタイルだ」
ガラハドが虎のような生き物の首を叩きながら言ってくる。体高が大男のガラハドの顔近くある。
「ハガルだ」
イーグルの騎獣は白い狼のような生き物だ。
「ウルクよ」
カミラの方は黒い狼、三匹ともしなやかな肢体を持つ力強く美しい生き物だ。
酔い止めスキル持ってて良かった。ガラハドの後ろ、タイルに乗せてもらって街道から少し離れた場所を疾走している。
速いよ!
タイルはほとんど上下に揺れないしなやかな走りをしているが、いかんせん道が平らでない。むしろ道じゃない。湿地帯の足場がある場所を選んで跳ぶように移動する。酔い止め、もとい【酔い耐性】を持っていなかったら酷いことになっていただろうが、今はむしろ爽快だ。
一時間ほどでボスがいるサーのフィールドに着いた。
セカンのほうは人が沢山居そうなのでこちらから先にということになった、この後フォスに飛んでフォスのボス、セカンのボスと倒してゆく計画なのだが……。私以外はサーもセカンも転移が利用できたのにつき合わせてしまった。
タイルを降りてボスの出現ポイントまで歩く、ここのボスは湖の傍に出現するそうだ。風景は湿地帯から森へと変わっている。ファストブリムの南にあった森や北の森よりも木が太く真っ直ぐ伸びている。サーが木工の街だというのもうなずける。
「騎獣というのはどこで仲良くなるんだ?」
「仲良くか~」
「ここから更に東にあるアイルの国で捕まえたんだ」
「一対一の死闘よ~?」
「戦って強さを見せて服従させなくちゃならねぇんだ」
「結構きつかったよ。今行けば楽かもしれないし、もっと速い騎獣が手に入るかもしれないけど、私の相棒はハガルだ」
「私もね、ウルクがいればいいわ」
「同じく。失敗して殺してしまうアホゥがいるからあんまりひろめたくねぇんだ」
「すでにファストで殺してでも欲しいとか、粘着して来た奴がいたしな」
殺してでも奪い取る、はネタで言ったんじゃないだろうか疑惑が一瞬頭をもたげたが、粘着の時点で却下だな。
「仲良くとか言ってるホムラなら大丈夫でしょ」
カミラがウインクしてくる。三人とも自分の騎獣がとても大事なようだ。
「この国の隣か。国の移動をするにはまずはCランクにならないとだめだったか」
「今いくつよ?」
「まだDだ」
「次だろ、Cまでは早いよ」
「Cから先が急にきつくなるのよね~なつかしいわぁ」
話していると湖についた。
あっという間にボス戦に突入する。ガラハド達にとってはここのボスはたいしたことの無い敵なのだろう、戦闘前の準備、猶予はなしだ。
ボスは巨大なダンゴムシだった。
クモでないだけマシなのか?
「【渾身撃】!! おりゃあっ!」
いきなりガラハドの一撃でボスがのたうってますけど?
「【アステュート】!」
「『クリムゾンノート』!」
イーグルの片手剣スキルは洗練されて見える、同じスキルを使うのでもちょっとした所作でイメージが違うのか、それとも【アステュート】というスキルが優雅なのか。
カミラの魔法は派手だ。ダンゴムシ改めサークルモスは炎に包まれのたうっている。燃焼ダメージつきなのだろう。
「『サンダー』!」
ルバの剣を抜いて水平に振る、折角だから使ってみるテスト。上位魔法と言っていた割にあまり強い印象は受けない。ルバの剣を使っているのに。
三人が規格外すぎるせいだな!
「って雷!?」
「何故使える?!」
「そのレベルで習得できるものなの!?」
あれ?
驚かれた。
《ソロ初討伐称号【バグスレイヤー】を手に入れました》
《ソロ初討伐報酬『身代わりのペンダント』を手に入れました》
《称号【孤高の冒険者】を手に入れました》
《お知らせします、サーの『サークルモス』がソロ討伐されました》
《これにより情報を開示いたします》
《ボスをソロで討伐した場合、初討伐時に称号とアイテム・討伐時にアイテムが得られます》
《なお、『住人』『召喚獣』などプレイヤー以外のパートナーは人数にカウントされませんので積極的にお誘いください》
はい?
ボスはまったく危なげなく倒せた。
サークルモスの甲殻×4
サークルモスの胸当て
ルビー×10
素早さの指輪
転移石『サー』
以上が普通の戦利品だ。
うん、現実逃避してます。
住人にはワールドアナウンス聞こえないのか?
なんだよソロ討伐って四人パーティーだよ!
しかも規格外三人だよ、三人!
てかこれからまだボス討伐するんだよ!!!!
ゲームバランス大丈夫かこれ!!!!!ダメだろう?!!
ボスをそのへんのちょっと強い雑魚扱いする規格外な三人がいたのであまりボス戦という気がしなかったよ! 規格外な三人が!!
「なんつー規格外だよ」
「なんで【光】と【闇】両方持ってるのよ」
「神の祝福二つ持ちってどこの聖職者だ」
「【雷】なんて今ほとんど見ないじゃない。私だって使える人他に1人しか知らないわよ」
「暗殺者ってなんだよ暗殺者って。パトカに犯罪マークないからダンジョンのシーフみたいな扱いなのは分かるがよ」
「料理にまで醸造が・・・」
ボスのポップ位置から移動して三人に鑑定されている私です。
正座したくなる気分なんだが……。規格外から規格外って言われてるのだが、規格外といわれるほど強くないだろ!
「規格外といわれても、色々持っていることは持っているけど別に強くないしな」
「レベル20台だったら当たり前だろうがよ。レベルあがったらどうなるんだこれ」
「【孤高の冒険者】ってホムラ今までソロもしてたのか?」
今さっき貰った称号ですよ!!!!!!
効果はソロの時にHPMP自然回復だそうで、今現在のMPの回復の仕方を見ているとスキルと重複するようだ。
「特にヴェルナの祝福はうらやましいな。レアドロップ率アップか」
「パーティーに効果あるんでしょ? レア欲しいときは拉致りにくるわ」
ん?
「ヴェルナの祝福は幸運の補正と闇属性との相性アップだと思ったが……」
「それもあるけどよ」
「ホムラはまだ鑑定レベルが低いから見えていないんじゃないか?」
「あー、なるほど」
「神々からの祝福がステータスがちょっとアップするだけのわけないじゃない」
「それだってこのレベルから持ってたら末恐ろしいが」
【ヴァルの祝福】はスキル成長率アップ、【ヴェルナの祝福】はレアドロップ率アップがパーティーにかかるそうです。
暗殺者を隠蔽しなくて良かったのかと気を抜きかけたが、これは隠蔽が必要というか必須ですか?
「とりあえず早くCランクになろうぜ?」
凄く良い笑顔で肩に手をおいてくるガラハド。
「そんで出にくいアイテムを出してくれ」
「このレベルになるとスキルが上がり難くてな」
にっこり笑って反対側の肩に手を置くイーグル。
「私はとりあえず、風と闇の上位精霊に会いたいわぁ。相性がよければ上位に会える確率もあがるのよねぇ~」
私の顎に指を這わすカミラ。
どうしてこうなった!
いじられながらサーの神殿で転移石の登録をする私。
でも門から神殿の間にあった樽屋で樽はしっかりゲットした!
『身代わりのペンダント』は即死ダメージを無効にしてくれる効果がある、一度使うと次に効果が出るようになるまで一日かかるが、消耗品ではないのがうれしい。そのままフォスにとんで酒場で休憩し、お次はデイドリザードさんです。
《お知らせします。フォスの『デイドリザード』がソロ討伐されました》
流れるのね、ワールドアナウンス……。
《ソロ初討伐称号【リザードスレイヤー】を手に入れました》
《【リザードスレイヤー】はすでに取得済みですので『スレイヤー』系の上位称号がランダムで付与されます》
《称号【ドラゴンスレイヤー】を付与します》
《ソロ初討伐報酬『疾風のブーツ』を手に入れました》
うん、こちらもあっという間に終わった。
昨日戦ったときはあんなにギリギリだったのに!!売り払ったグローブが手元にもどってきて、体力の指輪がダブった。同じ指輪は2つつけられないことを知る。
あった事もないドラゴンさん殺しの称号はスルーする。スルーするんです。
「お、レベル上がったな?」
「ああ、これで【採掘】は取れる」
スキルポイントを2消費して【採掘】を取る。
「夜になっても安心ね」
またタイルに乗せてもらってセカンに移動。
こちらの時間で12時前、現実時間で22時過ぎ。まだまだログイン人数の多い時間、ボスのポップ場所には何組かパーティーが居た。ポップといってもボスフィールドに入ればそれぞれで戦いが始まるので別に待つ必要は無いが、ボス戦前に装備の確認や打ち合わせをしているか、倒して戦利品の確認をしているかのどちらかでここにたまっているのだろう。
「他のパーティーが居なくなるまでちょっと待ってくれんか?」
ワールドアナウンスが敵です。
タイル達を人目につかないよう帰還させるのに距離をとった場所にいるのが幸いした。
「ん?いいぞ、ちょうど昼飯時だし飯にしようか」
□ □ □ □ □
・増・
レベル+1
称号
【孤高の冒険者】
【バグスレイヤー】
【ドラゴンスレイヤー】
スキル
【採掘】
□ □ □ □ □
ホムラ Lv.23
Rank D
職業 魔法剣士 薬士(暗殺者)
HP 646
MP 826
STR 35
VIT 22
INT 45(+1)
MID 16
DEX 16(+1)
AGI 23
LUK 14
NPCP 【ガラハド】【-】
称号
■一般
【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】
【経済の立役者】【孤高の冒険者】
■神々の祝福
【ヴァルの祝福】【ヴェルナの祝福】
■スレイヤー系
【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】
【ドラゴンスレイヤー】
スキル(1SP)
■魔術・魔法
【木魔術Lv.4】 【火魔術Lv.5】【土魔術Lv.3】
【金魔術Lv.4】 【水魔術Lv.3】【☆風魔法Lv.3】
【☆雷魔術Lv.3】【光魔術Lv.2】【☆闇魔法Lv.8】
■剣術
【剣術Lv.10】【スラッシュ】
【刀Lv.2】
■召喚
【白Lv.1】
■精霊術
水の精霊【ルーファLv.2】
■才能系
【体術】
■生産
【調合Lv.1】【錬金調合Lv.1】【料理Lv.7】
■収集
【採取】【採掘】
■鑑定・隠蔽
【道具薬品鑑定Lv.4】【植物食物鑑定Lv.5】
【動物魔物鑑定Lv.4】【スキル鑑定Lv.4】
【武器防具鑑定Lv.2】
【気配察知Lv.4】【気配希釈Lv.4】【隠蔽Lv.4】
■強化
【腕力強化Lv.2】【知力強化Lv.4】【精神強化Lv.2】
【器用強化Lv.2】【俊敏強化Lv.2】
【剣術強化Lv.3】【魔術強化Lv.2】
■耐性
【酔い耐性】
■その他
【HP自然回復】【MP自然回復】【暗視】【地図】【念話】
【装備チェンジ】【生活魔法】




