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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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239.ルート

「せっかく自由になれたのにクルルカンが引き篭もりになりそうなんだが」

「誰のせいじゃ誰の」

白が肉球でペチペチして来るが可愛いだけである。


 称号【知を求める永遠】は職の関連外のスキルを覚えやすくなる。基本最初の職の物が一番覚えやすいというか、幾つか覚えると派生したりするのだが、職にカスってもいないものはスキル取得可能リストになかなか上がってこないのだ。

 スキル【学習】は同じスキルを続けて使うと効果が上がる、というものだ。敵のスキルと同じものでもいいらしい。自分と同じタイプの敵と戦う時に便利――後で闘技場でバベルとホルスに試してみたいが、絡まれると面倒で悩ましい。


 そして、半器物『クルルカンの杖』。種類は倒した時点で持っている戦闘スキルの多い武器が選ばれるようだ。私の場合はダントツで魔法なので長杖になったのだろう。杖の強さはクルルカンのステータスによる。戦闘ごとに成長してゆくようだ。戦闘外で武器形状を取っていない時は色々手伝ってくれるらしい。扱いはアイテム、ただしペットや精霊と同じく逃げ出すこともあるらしい。今現在袖の中でぷるぷるしているんだが喚んでレベル上げは出来るんだろうか?


 器物『クルルカンの杖』を選んだ場合は最初から強力だが能力は固定、逃げ出さない。そして敵の使用するスキルを一つチャージしておける。チャージの条件は杖を装備した状態で攻撃を受け、その敵を倒すこと。ソロだと微妙かもしれんがパーティーで倒してはいけないとは書いていないので便利なアイテムなんではあるまいか。私は選ばなかったので使えないがプレイヤーがそのうちボススキルを使い出すかもしれんことを覚えておこう。


「そなた、封印の獣をはや五体従えたか」

「そうなる、のか? 基本放し飼いなんだが」

タシャの言葉に少々困惑する、あまり従えているという気はしない。


「ハスファーンはともかく、竜が人に懐くは想定外よ。正直、ヴェルスが人に縛ったところで抜け出すか、回復するまで器物(よろい)のままになるかどちらかと思うておった」

ハスファーンはともかくのところで、肩にいた白がぷいっと顔を背ける。ミスティフは毛皮目当てに人に狩られて激減した。裏を返せば人の生活に近しいところにいたのだろう。


「そなた気をつけよ、封印が弱まったことによって細かいのが蠢動しておるわ。獣の気配につられて寄ってくるやもしれん」

「細かいの?」

まさか五体攻略したからイベントが進んだとかそういうオチは……ありそうだな! 


「邪神と呼ばれるものの眷属よ。あれらの目的は全ての境界を無とすること、境界に(ほころ)びを作った実績ある獣は魅力的であろうよ」

「まさか誘拐……」

神々の前だと相変わらず黙り込むことが多い白が、ベシベシと背中に蹴りを入れてくる。


「そなたの選んだ(みち)もまた危うい表裏――まあよいわ。ところで以前他の神々と話した食材の話じゃが」

「え、いいのか?」

いきなり食材に話が飛んだ! 神々にとって邪神より食材の方が重要!?


「元々緩んでおったのだ、むしろ獣を引き抜いた封印は安定しておる。封印の効果が切れる前に境界の修復が済めば僥倖(ぎょうこう)。ここの修復も永の年月蛇から漏れ出した気配と流した血の記憶で賄えよう。余った気が(こご)って新たな蛇が生まれるかもしれんの。封印の地は魔素(まそ)の多い地でもある、直ぐ力をつけて暴れ出すやもしれんが些細(ささい)なことよ」

タシャの中で獣が暴れるのも邪神の眷属さんが暴れるのも些細なことになってる気配。


 最初は獣を封印しているのかと勘違いしていたが、境界のほころびを封じるのがメインのようだ。破れた境界を修復するために、破った獣を一緒に封じて贄としているという理解の方が正しいのだろう。

 それにしても境界とか邪神とか、解かねばならない謎が近くにある気も、ヒントがたくさん出されているような気もするが判然としない。


「新たに迷宮に道を起こしてある、ここまで来たからには進むがよい。近いうちに寄らせてもらうでな」



 タシャの姿が薄まり、トウモロコシが透けて見える。



「たどり着き選ぶは、太古よりそなたらと決まっておる」



 最後に声が響いたのは部屋にだろうか? 私の脳裏にだろうか? やっぱり謎はあるらしく、そしてどうやら自力でたどり着けということらしい。いや、その前に新ルート?


 タシャが消えるとトウモロコシが一斉に実をつけ、天を向く先端の雄しべが花粉を飛ばす。

「ぎゃあ! 白い!」

「む、これはひどいのじゃ」

ちょっと待て、トウモロコシの花粉ってこんなにたくさん飛ぶのか!? いや、少しの時差もなく周り中飛ばしているからか、もしくはファンタジー的大増量かもしれん。あっという間に受粉が済んだのか、トウモロコシが膨れ出す。絹糸(けんし)とも呼ばれる雌しべ(ヒゲ)が黄緑から茶色に染まる。


「おう、収穫時期!」

狙うはたっぷりヒゲ、ヒゲは雌しべだからしてその数だけ実がつまっているのだ! 慌てて手を伸ばしてもぎ取るが、三つ目に手をかけたところで白く立ち枯れて消えていった。


「おぬし、よくあの状況で収穫したな?」

白が呆れた声を出す。

「『天空のトウモロコシ』か。ランクも高いし、間に合ってよかった」

トウモロコシの穂先から上が空なんだったか? 


「ちょっと休憩しようか」

「ここでかの?」

「ここまで来たからには進むがよい、ってことはココから進むのかもしれん。探してみて損はない」

称号にも引っかからないのでない可能性も高いのだが、タシャの言い回しが気になる。迷宮の四十五層以降という意味かもしれんが調べておいてもいいだろう。それにしても迷宮は現在も成長を続けている、とバロンのギルドの資料にあったがこういう意味か、いや絶対違うよな。


 あたりを見回すと、すっかり崩れた石積みと黒い鱗の欠片、木々の部屋に戻っている。鱗の破片をどけないと猫足テーブルが出せないのでちょいちょいと剣の先でつついてみるが地面にがっつり刺さっていてビクともしないのがほとんどだ。指ほどの大きさの細かいものは幾つかどけられたので、出来た隙間に脚がくるようにテーブルを設置。物にも『浮遊』がかけられればいいのだが。


 ついでに動いたものを拾ってペテロへのお土産にしようとうっかり触れて毒になるプレイ。どけるのは道具を使ったんですがね! 不用意すぎるぞ自分!


 道中の箱の蛇は噛まれまくったので仕方がないが、称号で毒を含めて耐性は高いはずなのにこの鱗は一発で毒って。劇毒でもなくダメージ的にはさほどではないのだが、レジスト無効か何かが付いているのだろうか。(やじり)や投げナイフ(?)にいいかもしれんので後でもっと拾おう。リデルに【投擲】を覚えてもらっているし。


 今はだが白のお手入れ。花粉は【生活魔法】で自分が被ったもの共々取り去って、蒸しタオルで包んで揉むようにぐりぐりと。


「自分の手入れもしたらどうじゃ」

「【生活魔法】って便利だよな」

「おぬし……」

オレンジを浮かべた紅茶を出して白をごまかし、ほかほかの白をもふる。ついでに私もEPを回復するためにタマゴサンドをつまむ。出汁巻き卵にマヨネーズ、マスタードを効かせたタイプだ。一角牛のステーキを失ったおかげで肉が食いたくって仕方がなくなっているが、白の帰還の時間もある。


 袖口近くでタマゴサンドをチラチラさせると、クルルカンがちょろりと顔を出す。食べていいのか? というようにこちらを見たのだが、目があうと慌てて引っ込んでしまった。クルルカンさん、そこ私の袖の中なんですが、大丈夫ですか?


 なるべく袖口を見ないでいると、もぐもぐと食べている気配。ちらっと見たら最後の欠片を咥えて袖に引っ込んだ。



 マント鑑定結果【神器にタマゴサンドのシミがつく案件、という気配がする】

 手甲鑑定結果【……うむ】


 

 大丈夫、神々からもらった白装備は埃もつかない完璧防汚加工だ。『天地のマント』も『有無の手甲』も同じく汚れない。例外は着ている私の血だが、傷を治せば汚れも消える親切設計。


 白が紅茶を飲み終わる間もふ……いや、飲み終えるのを待って探索を始める。立ち上がったら袖口からぽろぽろとパンくずが落ちたが見なかったことにしよう。


 本命はクルルカンが埋まっていた壁なのだが、鱗の欠片をストレージに放り込みつつ進路上にある崩れた石積みを見てゆく。『抗毒薬』を飲むのが面倒で後でまとめて回復することにする。手袋装備を買うべきだろうか。


 予想通りこの部屋に食材ルートへの入り口があった。場所は本命の壁ではなく、部屋の端の崩れた石積みを飲み込んだ一際大きな木の根元にあった。迷宮内の隠し扉や階段の位置を教えてくれる【漆黒の探索者】に反応がなかったのは普通に入り口が口を開けていたからのようで。ただし部屋の端は床に加えて壁にも鱗の柱が突き立っており好んで寄り付く場所ではない。中に入って木の根を避けながら少し歩くと見慣れた転移プレートのある部屋にでた。


「ふむ、本当にあったのじゃな」

「見つかってなによりだ」

近々寄ると言われたのに戦果がないのでは情けないところだ。


 白の帰還に合わせ休憩ログアウト。現実世界で風呂に入って再びログイン!

そして再びのEP回復。炊きたてのご飯を小丼に盛ってネギと大葉を散らし、神々の宴会の時に余った薄切りの一角牛(ひとつのうし)を自作のすき焼きのタレでさっと煮て上にどん! ついでに半熟より緩い煮卵を半分に割ってイン! な、丼。最後の一角牛の肉だがこの先に牛がいることを大いに期待して!


 口に入れると柔らかい肉が舌に絡んで白いご飯が美味しい。タマとミーの卵の黄身が白身からとろりと漏れ出たオレンジ色に混ぜて食べてもいい。口直しは大根のピリ辛甘酢漬け。新ルートには肉だけでなく野菜もあるだろう、ドゥルも参加してたはずだし。扶桑で購入した野菜はランクが高いが、きっと迷宮産も深い層に行けばランクは高くなるはず。楽しみだ。




□   □   □   □

・増・

【降臨】『タシャ』

□   □   □   □ 



・お知らせ・

ありがたいことに書籍化いたします。

TOブックス様から題名そのままに4月10日発売予定です。

読んでいただいている皆様のお陰です、ありがとうございます!

なお、書籍化による削除などはございませんので引き続きなろうでお読みいただけます。


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― 新着の感想 ―
あれ?ここでタシャが「表裏」って……運営さん、レンガードを表裏の賢者に認定した?それとも神様たちの自由意志? コミック版みたいに運営の会話回欲しい……!
飯テロ継続。 柔らかい肉に最高の卵。食べたい。 白蛇なら、もっと可愛いのに。後○○しなければ。 本体に付いているが、袖口は巣穴認識?
[良い点] トウモロコシ収穫 クルルカンがかわいい [一言] おいしいものが食べたくなりました。
感想一覧
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