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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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238.神々のイメージ

「どう考えても過剰戦力じゃろうが!」

「ちょっとピンチだったのでテンパった」

神々を喚んだときから私の周囲には球形の結界のごときものが現れ、迫っていたクルルカンの攻撃を弾いている。その安全地帯の中で固まり気味の白の回復をしたら、ちょっとそこに正座しろ的な勢いで説教が始まった。


「どこがどうピンチなのじゃ! おぬしEPがちょっと減ってるだけじゃろが!」

「MPも減ってる、減ってる」

「それは喚んだからじゃろが!」

ぺしぺしと肉球パンチをしてくる白、もふっていいですか? 


 神を一柱(ひとり)喚ぶためにMPを千使う。素のMPは三柱喚ぶのに少し足らんくらいだが今は装備のおかげで余裕だ。MPだけだと大分安い対価に感じるが、魔法職以外も喚べるようになるなら妥当なところだろう。それに降臨させると持ち物の中からランダムで一柱につき三つが供物として消失するのだ。なかなかスリリング、ワイバーンのコートが無事でよかった。


 今回消えたのはグリーンカレー、緑茶、日本酒、ビール、梅干し、プリン、とっておいた一角牛のステーキ、ケーキセットなどなど。ランダムとはいったい……? いや、ワイバーンのハーネスも消えているので単に私が料理を持ち歩きすぎで当たる確率が高かったのかもしれない。実際【ストレージ】があるのをいい事に戦闘では使わない物を大量に持ち歩いている。そういうことにしておこう。


 短い言い合いをしている間にもボス部屋の中心に(ひず)みのようなものが現れ、やがて長い髭を蓄えた老人の姿をとったかと思えばぐんぐんと大きくなりクルルカンの大きさを超えた。貌には表情が見えず、姿は確かにタシャなのだが別の何かのようだ。色もついていれば着ているローブも動く度滑らかにひだがよるのだが印象はタシャの神像が動いている、というのが近い。


 タシャが杖を足元に打ち付けると地面や石柱、浮遊しているプレートなど場所を問わず、輝く木々が芽吹き枝を伸ばす。暗く湿気っていた周囲は新緑の森のごとき様相に変わった。そして生まれた木々はクルルカンに葉という葉から一斉に光を放って消えた。

 クルルカンが深緑色にうっすらと点滅しているのでダメージの他に何か状態異常を付加した様子。


 二番手はアシャ。いきなり炎を纏った巨大な剣がクルルカンを斬りつけたかと思うと、鎧に身を包んだ――肉体美を見せるためかなぜか胸と腹の装備はない――偉丈夫が現れ、今度は剣を横に払うと渦を巻くようにたなびいた炎のように赤いマントに包まれ、そのまま渦が小さくなり消えた。

 仕事の早さに驚く私。もしかして世の中のアシャのイメージは単刀直入不言実行というか、余計なものはそぎ落としているイメージなのだろうか。悩みがチラリズムだったのに……。


 三番手はドゥル。地味なストールを頭から(まと)った小柄な老婆が大地から現れ、浮いていたはずの私と白がいつの間にか老婆――ドゥルの前に移動している。ストールを目深にかぶったその表情は見えず、鷲鼻とシワの多い口元しか確認できない。ドゥルは節の目立つ手でほんのり赤く透明な(すもも)のよう実をこちらに差し出す。

 私が手を伸ばすと実を受け取る間もなくいきなりドゥルが膨らみ、ストールが地面に落ちる。あっという間に前の2柱と同じ巨大な大きさとなったドゥルだが、姿も豊穣の女神らしく肉感的で美しい女性に変わっている。気づけば私の体に穿たれていた鱗は消え、防御力上昇の付与がかかっている。

 ドゥルが胸の前まで白い手をあげ何もない空を優しく握ると、クルルカンの体が何かに握り締められたかのようにいびつに歪みメキメキと悲鳴をあげる。それを見届けると有るか無しかの微笑みを浮かべて消えるグラマラスな美女。女神怖い、普段(?)の農家のムキムキ親父の方が落ち着くと思ってしまった私は悪くない。


「いっくよ〜〜っ!」

ボーイソプラノの透き通った声が響き、金髪のゆるい巻き毛の少年が大きな(つち)を振り上げながら上から落ちて来る。クルルカンをそのままの勢いで槌の餌食とし地面に打ち付ける。ルシャの行動はエフェクトで星が飛び散りコミカルで可愛らしく見える。

 ルシャが笑顔で私の方に槌を向けると武器防具に能力上昇の効果が付く。それを見届け消えるルシャ。どなた様ですか? 笑顔が黒くないルシャなんてルシャじゃない。



「可愛らしく見えたが、クルルカンがプレスされた海老の姿焼きせんべいみたいになっとるのだが大丈夫だろうか……?」

「大丈夫だったら困るじゃろ」

白が冷静だ。



 五番目に現れたのはファル。一雫の水滴が天から降ってきたかと思うと、地面に当たって割れ水の王冠を作ると雫の質量を無視して部屋いっぱいに水が広がる。それが治まると雫の落ちた水の中央には可憐で今にも水に泡と消えてしまいそうな儚さを見せる少女の姿。

 水が鮎のような魚の姿に盛り上がり、跳ねてまたとぷんと水に戻ると清浄な笑みを見せて消えるファル。気づけばHPMPの継続回復が上書きされている。


 六番目はヴァル。一陣の風が吹いたかと思えば、銀髪の美女が姿を現わす。後ろにたなびくマーメイドラインの薄物、前は膝のあたりから割れ白い素足を見せ蠱惑的(こわくてき)な笑みを浮かべながらクルルカンに投げキスのようにふっと息を吹きかける。多分、それで何かあるんだろうけれど少し前からクルルカンさんがピクリともしないのでどうなったのかが分からない。なお、蠍と禿鷲はタシャの時点で姿を消している。


 使ったらある程度説明が出ているはずなのでメニューを開く私。おっと、ファルもHPMPの回復だけでなく蘇生もしてくれるようだ。便利……あれ? 使いどころはどこだろう。まあ、継続回復だけでも破格な回復量と効果時間だ。

 ヴァルの効果は自覚のない混乱。攻撃をしようとして敵を回復したり、前に撃ち込もうとして横に打ち込んだり体とスキルの制御が利かなくなるらしい。壮絶な同士討ちをしたり、自分自身に決め技放ったりとなかなかひどいことになりそうな、愉快犯(ヴァル)らしい効果だ。



「クルルカンさんが息をしていない気がするのだが……」

「おぬしのステータスと神々との相性の度合いで使えばどうなるか少しは考えるのじゃ!」



 7番目はヴェルナ。神々の降臨の余韻でうっすら輝いていた空間が真っ暗に変わり、闇が白い三日月型に切り取られる。その前に(にじ)むように現れた華奢な女性。月の光に照らされた溶けそうに白い肌とぬばたまの黒髪の対比。小さく開いた口と潤む瞳、三日月が弓張月から満ち満ちて満月へ姿を変えると一層白く輝きヴェルナの姿をかき消す。

 効果は精神低下と行動の阻害。対象のHPが十分の一以下で使用した場合、HP1の瀕死の状態にして、ボスであっても問答無用で捕獲(テイム)しやすくするらしいのだが、私は【テイム】を持っていないし果たしてHP0にそれが効くのかは謎である。


 最後はヴェルス。上から落ちてくる強い光、側までくるとその光が爆発的に広がり(おさ)まるとローブ姿に輝く金の髪、眉目秀麗な青年神が姿を現わす。手に持つのは断罪の大剣。クルルカンの上にその巨体に見合った大きな天秤が現れ、そして傾く。

 天秤は正義の象徴、剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力、だったか。だがしかしクルルカンさんのライフは0な気がするんですが、そこに追い打ちをかけるのは正義なのか。降臨させたのが私なので、ここはあれだ、私が正義だ! と言い切るプレイをするところか。そんなことを思っている間にヴェルスが私やガラハドが放つものとは桁違いの【断罪の大剣】を振り下ろし、跳ね上げる。なお、拘束効果も付く模様、苛烈で容赦ないのがヴェルスですね……。


 跳ね上げられたクルルカンの体が落下しながら燃え上がり炎の中ボロボロと崩れ、地に着く前に半分は炎を纏った鳥になって飛び立ち、半分は灰になって落ちた衝撃で地に広がる。気づけば明るく、何故か一面のトウモロコシ畑。まっすぐ上を向いた雄花が揺れる。モデルだろうククルカンの神話がある土地はトウモロコシが主食か、そういえば豊穣の神でもあったな。豊穣の神の遺体から穀物(しゅしょく)が生まれるのはよくある神話のモチーフだ。

 


《ソロ初討伐称号【知を求める永遠】を手に入れました》

《称号【知を求める永遠】に付随するスキル【学習】を取得しました》


《なお、この情報は秘匿されます》



「なかなか酷かった」

「おぬしが言うか」



『蛇は死んだ』

『蛇は復活する』

『蛇は(れき)が巡るたび(かえ)る』

『その永遠を此処に止めよう』

『蛇は自由 蛇に代わりの(かせ)を』



 タシャの声が再び響き、トウモロコシ畑から姿を現わす。トウモロコシの葉っぱってけっこう切れるので気をつけないと傷だらけになるような……、大丈夫なのだろうか。


 タシャの前に全体的に黒くトップの宝石を守るかのような二対の翼を持つ杖が現れ光に包まれ浮いている。拳大の宝石はイギリスの王笏にくっついているダイヤから丸みをとったような形をしており、色は森を思い出させる緑色だ。



『蛇を倒せし者よ選べ』

『知を貯える完全なる器物とするか 自由有る半器物とするか』



「半器物で頼む」

よくわからんまま選択する私。完全なる器物は杖のままということだろうなとは思うのだが、半器物ってなんだろう? 


『蛇よ、今からこの者が汝の主』


 私の前に杖が移動してきたので受け取ると、宝石の色が変わった。ブルー地に滲んだような輝きを宿し、ピンクがかった()りを持つ綺麗な色。トウモロコシの影に入ると今度はほんのり黒を宿した赤に。どうやら何かの加減で色の変わる宝石のようだ。



《半器物『クルルカンの杖』を取得しました》



 まじまじと見ていると杖がクルルカンを小さくしたような翼ある蛇に変わりタシャの視界から逃れるように私の袖口に逃げ込む。――ような、ではなくクルルカンなんだろう。完全なる器物を選んだら杖のまま、ということだろうか。


「……今回のこの事態、起こしたのは我ではないのだがな」

イベントが終了したのかタシャの顔が微妙になる。

「むしろやらかした原因に逃げ込んでおるのじゃ」




□   □   □   □

・増・

称号

【知を求める永遠】

スキル

【学習】

□   □   □   □ 



杖と称号の効果などは次回

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― 新着の感想 ―
見事な「降臨」の説明回でしたw
知ってた。何て酷い光景だろうか。(棒) 心身の継続回復はともかく、防御力や武器能力?の向上は必要なのか?と思ったが、魔力足りなかったら一神だけのプレイヤーもいるかもだし、時限助っ人(降臨神)が去った…
[良い点] これがナイツオブラウンドさんですか……!
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