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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~ 作者:じゃがバター
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229.レーノの疑問

 ログインして、ベッドの上に身を起こして公式をチェック。ペテロとお茶漬はまだ上がってきていないようだ。【符】と【結界】の合わせ技のお陰で、安全なお泊まりができるようになりました。

 トップには第二陣のウェルカムイベントと、追加されたサーバ、NPCキャラクター『表裏の賢者』の紹介。性格は容姿と同じくサーバごとに違うが、どうやら気まぐれか、一般人には理解できない行動基準がある設定で、異邦人(プレイヤー)の敵にも味方にもなるキャラらしい。
 私がいるサーバの賢者のシルエットはお茶漬たちが言っていた通り、竜と長髪のローブ姿のキャラクターだ。ローブで長髪というとアルスのギルマスくらいしか思い浮かばない。……あれ、扶桑は(まげ)だから置くとして、ファンタジーな割に男の長髪珍しいのかもしかして。十センチくらい伸ばして結んでるのは良く見かけるが腰まではない。

「おはよう」
などと思っていたらペテロが起きた。
「おはよう。今、公式みていたんだが、こっちの住人って男の長髪少ないのか?」
プレイヤーには私も含め、わさわさいるのだが、奇抜な髪型も多いのでただの長髪はむしろ普通だ。

「貴族には多いよ」
「貴族……。なるほど」
関わらないようにしていたので、視界に入ってなかった。

「種族にもよるかな。エルフにも多いね、おはよう」
上掛けにくるまったまま、起きたお茶漬が会話に加わる。
「おはよう。エルフか」
「種族エルフ選んだら、用意されているクイック選択、金髪と銀髪の種類多い多い。あと髪型はストレート系とアフロね」
「どういう選択肢なんだそれは」
アフロ……、お茶漬がエルフを選んだ理由がわかる気がする。いや、今現在ストレートのおかっぱ? ボブ? まあ、肩までのストレートなのでステータスで種族を決めたのだろう。お茶漬はネタと効率重視がせめぎ合う男だ。

「行ける範囲には少数しかいないみたいだけど、住人のエルフはぱっと見、女性と見間違えることもあるね。獣人も寒いほうには長髪が多くなるみたい?」
「へえ?」
寒いほうに行けばもふもふ増量なのか。

「相変わらずペテロは謎の情報量。もう完全にアレだと思ってたけどよくよく見たらちょっと細かった、これエルフ?」
お茶漬も公式を見ているらしく、ベッドの上で謎の動き。多分(はた)から見たら私も同じようなかんじなのだろう。

「あれってなんだあれって」
「新種族もあるし、シルエットだけじゃなんともね。頭部(うえ)のほうぼかされてるし。黒竜従えてるNPCの噂があがってきたら、嘘は言っていない系の運営の涙ぐましい努力で決定かな? スルーするにはほかのサーバで不満がいっぱいだったみたいだし」
私の質問はスルーでお茶漬に答えるペテロ。画像を覚えているのか、画面を見ている気配はない。

「ほかのサーバ、住人とプレイヤーでギスギスオンラインになってるところもあるよね。僕、このイベントの一ヶ月後に予告されてる第一回大規模戦も気になる」
「イベント期間だけの特別ななんちゃらで、イベント終わったら全てなかったことに。残るのはアイテムと友情だけ、のちょっと恥ずかしいキャッチフレーズのあれね」

「恥ずかしいあれ」
「要約しすぎ」
「はいはい、公式みてね」

 再び適当にいなされました、さびしい。

 お茶漬たちが言う大規模戦は、現実時間で一ヶ月後の三日間、この世界を切り取った特別な時間軸で一人一つ持つ魔石を取り合うらしい。魔石は倒すことで入手でき、また人に預けることもできるため、誰かに預けて自分は倒され放題というか、安心して戦える様な仕様だ。イベントへの参加は、個人・クランで登録した者とのこと。

「要するにクランつくるか入るかしなさいってとこかな。大規模戦だし」
「NPCとも協力・敵対できて、特に国に魔石を捧げろって募集あるみたい。戦略戦術スキーな人いるだろうね」
「NPCは守りきると好感度上がるし、戦闘職相手では時々倒すことでも好感度があがるなどと。もう意中のあの子に粘着するしかないね! いないけど!」
お茶漬とペテロが言い合う、二人ともけっこう楽しみにしているようだ。

 好感度と拾えたアイテム、もしくは失ったアイテムはそのままに、三日間の時間軸はなかったことになる。NPCの死や環境破壊は気にしなくていいのだ。

「街中で思い切り魔法をぶっぱなしていいと」
「暗殺が捗る」
NPC(じゅうにん)の好感度が下がりそうな人と、プレイヤーも含めて好感度が下がりそうな人が」
「そういう貴方がクランリーダー」
「頑張れ」
「うわあ」

 などとやっているうちに全員揃ったので食堂へ。ちょっとお高い部屋だったため、以前とは違う場所で出てくるもののランクもちょっとだけ高い。ちょっとではなくお高い部屋は個室に案内され、すごくお高い部屋は部屋に食事する部屋があるそうだ。

「屋台もおいしかったけど、宿の食事もうまいね」
ご機嫌でパンにバターを塗っているアルム。

「最初はうまかったな!」
レオがにししと笑う。

「他のゲームは甘くておいしかった、辛くておいしかったとかの印象が残るだけだったのに、このゲームは味覚の再現度高いよね」
くるくるとスパゲティをフォークで巻きながらペテロが言う。回しているだけで一向に食べる様子がない。

「最初は感動するもんよ!」
笑いながらベーコンを二、三枚まとめて口に放り込むシン。

「これが普通になるんですね」
感慨深げに料理を眺めるシズル。

「ういういしい二人も最終的にはクランハウスの共有倉庫に行き着くんですね、わかります」
脂身の多い肉を自分の皿からシンの皿へ移し替えるお茶漬。
「なぜ倉庫……」
不審げなアルム。二人がクランハウスにたどり着くまで飲食物を出すことを封印されている私です。

 食堂に来る前、途中で会ったシンに内緒でビールをくれと言われたのだが、いい笑顔のペテロに見つかり、最終的にシンはやっぱり笑顔の菊姫に引きずられて行った。アルムたち二人に合わせて、真面目に我慢している酒スキー二人の逆鱗というか、飲めない八つ当たりというかを一身に集めたようだ。私も自主的に自作料理を食べるのは控えている。

「クランハウスにたどり着いてのおたのしみでしね! その辺は順に体験してったほうがいいでしよ」

 早くたどり着いてください。


☆  ☆  ☆  ☆  ☆


「アルスナのレストランに行くぞ」
自作料理は控えているが、おいしいものを食べるのを控えるとは言っていない。ラピスとノエルはガラハドたちの教育指導のおかげで、国を渡る門は開いている。今はバロンの迷宮に潜る前に日帰りできる二、三階層のダンジョンを回っているそうだ。

「突然どうしたんですか?」
不審げな顔をするレーノ。あまり顔の表情は変わっているように見えないが、声の調子からいって不審げな顔のはずだ。

「いや、たまには外食もいいかと思ってな」
ラピスとノエルが太ももに片方づつしがみついたままだが気にせずレーノに答える。
 アルムとシズルを生産施設に放り込んだ後、いつものメンツで何処かへゆくにも微妙な時間だったため、連続でボス戦をこなしたことだし、それぞれイベントで忙しくなる前にやりたいことを済ますことになった。早く寝るレオと宵っ張りのお茶漬の寝る時間の差は下手すると三時間近い。私は翌日の勤務形態によるが、睡眠時間は短めなほうだろう。

 カジノへ消えていったシンとレオはともかく、お茶漬と菊姫は初期レベル向けの装備がどんどん売れるらしく、稼ぎどきらしい。初期レベル向けの装備ならば、生産職(ほんしょく)とそれほど差が出ない。ペテロは……、ペテロは何をしに行ったのか謎だ。受けっぱなしの依頼をね、とか言っていたが、謎だったら謎なのだ。私も暗殺者ギルドで受けっぱなしの依頼があるが、解除してくるなりなんなり後でしておくか。

 そして現在、雑貨屋が誤解から観光地化していることを知って、従業員サービスしに来た出たきり店主です。レーノは珍しいだろうし、カルは格好良いし、ラピス・ノエル、たまに手伝うリデルは可愛い。一目見ようとする気持ちもわからないでもないが、従業員にストレスがかかってはいけない。

「ラピスは主のごはんが好き」
「僕もです」
二人が私を見上げる。

「ありがとう。でもたまに他のおいしい店にゆくのも味が変わっていいぞ。外ごはんのマナーも学べるし」
二人を撫でると、うれしそうに頬を足にくっつけてくる。髪の手触りはしっとりさらさら絹糸のごとく、耳はぽわぽわとはんぺんのごとく! 素晴らしきかな獣人。

「主、アルスナはやめたほがいいかもしれません」
黒を手にぶら下げたまま、カルの視線がラピスとノエルに向く。カルさんや、いったい何をどう掴んだら黒がおとなしくぶらんとするの? 噛みつかれなくて助かるのだが、なんだか居た堪れない。

「ああ……。『強者の夢城』にするか」
すっかり忘れていたが、この世界には獣人に対する差別が存在する。過去に国を失い、散り散りに暮らす獣人たち。国ごとに見ると少数種族になっているのに、もともとそこに住む人が受け入れるには数が多すぎる。ジアースでもよそ者としてあまりいい職にはつけていなかったし、魔法国家アイルではさらにあからさまな差別があるらしい。

 異邦人の中で多いのは幼女、は、おいておいて。種族で一番多いのは獣人だ、猫耳・犬耳と二種選べたのも多い原因かもしれないが、純粋に耳と尻尾がかわいらしいからだろう。一応、異邦人は外見がどうであっても異邦人という種族(くくり)で見られるが、その姿を見慣れてしまえば獣人に対する差別もゆるくなるはずだ。わざわざ二人を今アイルへ連れて行くことはない。
 実際、当初あった白い獣人への珍重はきれいさっぱりなくなっている。異邦人、白髪が多いどころかピンクやら紫やら水色やら色とりどりだしな。色だけでいうならノエルもすっかり埋没している。ラピスは可愛いし、ノエルは整った顔をしているので、件の変態人さらい貴族は無事始末されたそうだが油断はできない。

「闘技場のランクで供される料理が違うんでしたか」
「ああ、利用したことがないのでちょうどいい。試してみよう。ガラハドたちが留守なのは残念だが、人数の上限もあるしな」
一応、五人までは同じサービスを提供してもらえるのだ。自分自身も入れて六人、いちパーティー分なのだろう。

「ガラハドさんたちは、服を着て戦うことを目標に邁進しているようですよ」
レーノのセリフだけ聞くとガラハドたちがとんだ変態というか、服が買えないほど貧乏なのかとか色々よぎる。同僚の騎士たちに見せたくない姿なのだろう、火山にこもりっぱなしのようだ。

「食事だけならば、私もSSSのものを利用できますが、場所は他のSランクと遭遇する可能性がありますのでお勧めしかねます」
カルは斑鳩に勝利したものの闘技大会への出場はその後なく、また闘技場でのTポイントの増加もなかったため、今はランクを下げられSなのだそうだ。利用できる部屋はランク通りだが、まだ負けた実績がないので特別待遇で食事を含め消耗品はSSSランク相当が利用できるそうな。

「Aまで下がればそれも無効になりますが、主のおかげで下がる前に闘技場に顔をだせました」
笑顔でカルが告げる。
「なかなか面白い仕組みですよね」
そういえばカルとレーノで闘技場にしばらく通っていたような……。次の闘技大会に出るとか言われたら戦うことになるのだろうか? 勝てる気がしない罠。

「他のSランクと遭遇すると何かまずいのか?」
「いえ、中には恋人でない異性を多数連れている方もおられるので……」
ぶ! ラピスとノエルの教育に悪い! パーティー分じゃないのか人数!!

「闘技場で会う方は複数の恋人を持つ方が多いですね。必要以上にそれを披露しようとしますし。特定の獣種の方はそういうものだとわかるんですが、人間にも多いのは謎です。ホムラも機会があれば望みますか?」
レーノが真っ直ぐ私をみて聞いてくる。今要らない、その真っ直ぐさ。ついでにラピスとノエルのいたいけな瞳。

「今のところ一人の恋人の予定もないので埒外(らちがい)だ」
真面目になんてこと聞いてくるんだレーノ、子供の前で答えるにはハードル高いだろ!!!

「観察をしていると、人間の行動原理が一番理解しがたいんです」
困った風に首を傾げられても答えません!

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