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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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218.三十五層ヴイーヴル

 さて、どのルートを進めようか。

 噛みつかれながら黒を懐から引っ張り出して、迷宮都市へ。まだ早めの時間ではあるが、待ち合わせのためか数人、迷宮の入り口となる冒険者ギルドにたむろしている。


 迷宮の攻略者が増えて来た時点で、修正が入り、攻略したい層に転移して待てるようになった。転移した先はマルチエリアではないので、混雑はだいぶ解消されている。ただ一番人が多い時間は掲示板前が黒山の人だかりになる。


 今までは、他のギルドの掲示板と同じく、パーティリーダーが、行く場所に目的、盾1回復1剣士1募集など、条件を書いてギルドに依頼票を提出、固定を組まず、フリーでその日限りのパーティを探す人は、掲示板に張り出された依頼票(それ)を見て、依頼主に連絡を入れていた。


 今の迷宮のパーティー募集は、依頼票をはがした時点で自動でパーティーに加入、ただし細かい条件が合わず抜けた時のために、迷宮の『安息地』とか『転移部屋』と呼ばれるボス後の部屋から出なければ、掲示板に依頼票はそのままになる。

 今まで通り全員揃うまで外で生産をして待つことも出来るが、〝攻略,無言OK,装備に自信のある方〟などと書いてある依頼は、大体が揃うとすぐにスタートするため、該当する階層の転移部屋で待機していることが多い。


 最近は、収集目的募集などもあるらしく、採取・採掘目当てにソロで来て、パーティーを組んで近い場所で収集、敵がわいた時だけ一緒に戦闘をするそうだ。評価は低いものの『帰還石』が出回り始めたため、ボスはやらずに帰ることが前提なことが多く、備考に雑談推奨とか無言OKとかこちらも募集主の好みが反映されている。


 なので一人でうろついていても「中で合流するんだな」と思われるハズだ。悪目立ちはしないだろう。

 一番進んでいるのはフェル・ファーシの四十層、次が三十層のホワイトヒドラ。三十層の分岐は、三つでそのうちの二つは攻略済みということになる。残りの一つはみんなと初見するのにとっておこう。ホワイトヒドラの続きを人が来ない層まで進めるか。うん、ブラックヒドラ後の分岐と合流するかどうか確認がてら、ホワイトヒドラの続きをやろう。


 ホワイトヒドラ終了後の三十層に転移し、階段を降りる。ボス戦直後はボス部屋にも戻れるのだが、転移してきた場合は、ボス部屋への扉は閉ざされており、下に降りることしかできない。

 三十一層は、足元に枯葉の積もる湿った迷宮。瘤とウロを持つ、大きな木のねじれた幹と巻き込まれた石積み。枯死したような灰色のカサカサとした木肌、その割に湿った地面だ。浮いているので関係ないが、枯葉溜まりは勢い良く踏むと、滑る。


 出てくるモンスターは、鳥型が多い。そういえば近接に不利で、弓など遠距離物理に有利なコースだったか。妖精たちが出てくるルートと違い、属性石の出る量は少ないが、代わりに薬の材料がよく出る。鳥型がエサにでもしている設定なのか、数種の薬草や、実など、【採取】がなくともある程度はこのルートでそろいそうだ。ついでに蛇の肝と鏃型(やじりがた)の蛇の鱗、そのまま鏃になるんだろうなあと思いつつ。

 

 パラボラアンテナのような顔をしたサラフクロウを【風魔法】で叩き落としつつ、矢蛇を斬り落とす。矢蛇は木のウロや、石積みの隙間からその名の通り矢のように飛び出してくる。飛び出す前に、穴に向かって矢を射るのが正解なんだろうかと思いつつ、火魔法を放ったら火矢になって飛んで来たので、今は斬り捨てている。出てくる敵は【斬撃耐性】があるようだが、とりあえず問題なく。

 

『迷宮か』

『何処でもいいわ……。私が人型に戻れる素になるなら』

問題が無さそうなので白とクズノハを喚んでみた。白の輝くような毛並み、クズノハの明るいオレンジ、揺れる白いさきっぽの二本の尻尾。もふもふ増量をお願いします。


『……』

白がクズノハを見る。

『なにかしら?』

クズノハが白をみる。


『おぬしはまた何かたらしこんだのか! 同じ毛玉なら黒いのはどうしたのじゃ、黒いのは!』

『黒いのは死なせちゃったら困るので留守番です。あとたらしてるってなんだ、人聞きの悪い』

ちゃんと芙蓉宮攻略してきたぞ!

『まだ諦めておらんのかあれは!』

ぷりぷり怒っている白。クズノハには特にリアクションはない。ペットは見聞きしようと思えば装身具の中に周りの情報は入って来るようなので、白の存在は知っていたのだろう。あと、単純に周囲への関心が薄い。今も興味がなさそうにあくびをしている。


 そして戦闘はやる気の二匹。なんというかレーノに白を囮にしていると誤解させた時を思い出す。思い出している間にも、二匹して競うように敵に向かってゆく。白は敵に【混乱】やら【麻痺】やらを軽やかにばらまき、クズノハは【狐火】――ダメージに加えてINTやMIDなどステータスが下がる状態異常がつく――を乱発。


『何をしておるのじゃ、さっさと倒せ』

『なるほど。私たちの戦い方だと、ばら撒いて(・・・・・)倒してもらった方が効率がいいのね』

白の言葉に、クズノハが自分で一体を確実に倒してゆくより、多くに状態異常をつけて私に倒させた方が効率がよいと気づいたらしく、【狐火】ではなく、【魅了】と【誘引】を使いだした。【傾国】は人型でしか発動できないと言っていたが、【魅了】といい【誘引】といい獣型でも使うスキルはそっち系の様子。


 四方から飛んでくる矢蛇。【魅了】と【混乱】にかかって同士討ちをしつつ、酸を降らす範囲攻撃をばら撒いてくる赤雨大鷹。パラボラをピンクに染めて迫ってくるサラフクロウ。


『【誘引】持ってたのか。カオスなのだが少しひかえたりは……』

『せんのじゃ!』

『しないわ』

出ていられる時間が限られるのだからという、白につられてクズノハも早く早くとせっついてきた。


 『フロストフラワー』などの広範囲魔法は、二匹のレベル上げの邪魔になるので却下。普通の範囲魔法を使いつつ、漏れた魔物は剣で斬る。ここの敵は一撃で倒せるからいいが、倒せなかったらキツイんですが。


『右』

迷宮内の隠し扉・宝箱・階段の位置がわかる、ブラックヒドラ討伐の称号【漆黒の探索者】で、階段の方に誘導する。この称号は道がわかるわけではないので曲がったら行き止まりということも十分あり得るが、【糸】を飛ばしているのでそうひどいことにはなっていない。少なくとも宝箱を見つけられずに取りこぼすことはない。

 いや、隠蔽された宝箱とかありそうだ。ここの宝箱の中身は、回復薬の類の他は投擲用のナイフだったり、軽鎧だったりと遠距離物理職向けなので、そこまで気合いを入れて回収する気はないが、考慮するべきだろう。


 二匹の毛玉に連れられ、あっという間に三十四層。途中、敵に蛾が混じって、つい広範囲に焼き払ったりしてしまったが事故もなく。蛾に見えたが一緒に出た敵が毛虫ではなく芋虫系だったので、実は蝶だったのかもしれんが。まあ、蝶と蛾の区別をしていない国もあるくらいなのでどちらでもいいか。


 マルチエリアだが、今回はプレイヤーにも会わず、サキュバスにも遭遇せず進んでいる。下層へ続く階段を見つけては、意匠の確認。ブラックヒドラから来た時の三十四層の分岐は『妖精』『鳥』『獣』、今確認できた分岐は『蛇』『鳥』『髑髏』。どうやら分岐先は三つで二つは被るようだ。ブラックでもホワイトでもない残ったコースからの分岐は『蛇』『獣』『髑髏』かな?


 採掘・採集ポイントもあったのだが白とクズノハが進んでしまうので断念。まあ、迷宮の攻略はクランメンバーの揃う間だけのつもりなのでいいか。この勢いだと四十層まで行けそうだし。


『で? どこへ進むのじゃ?』

『下への道は三つ。経験値(もらえるもの)がかわらないなら私はどこへでもついてゆくわ』

『どうしようか』

今いるのは最後に見つけた『蛇』の意匠の前。行ったことがないし、『髑髏』はあからさまにアンデッドが出そうでゾンビは臭うから嫌だし、このままここでいいのだが、迷うふりをしてもふもふを堪能。クズノハのほうが白より体温が高いんだなーと思いながら二匹を撫でる。白の手触りは相変わらず最高、クズノハも長年引きこもっていただけあって柔らかい。


『おぬし、考えておらんな!?』

白にばれてパンチをもらいました。

『このままこの先で』



 マルチエリアでプレイヤーに会うこともなく、道中手間取る敵にもあたらず、さらっとボス前まで来てしまった。見積もった時間よりだいぶ早く到達したので休憩時間はたっぷり取れるのだが、楽しみにしていたアトラクションを前にしたように落ち着かない二匹に、仕方がないのでボス前の食事を簡単に済ますことにする。


 紙に包んだコロッケ登場。ザクザクとした衣に粗めに潰したジャガイモ、ブルーフと黒鞠猪豚(くろまりいのぶた)の合挽き肉。ジャガイモだけの時はこころもちバターを多めに。さっくりほくほくにソースをかけてぱくっとね。コロッケパンにしてもよかったか。コロッケパンには衣のパン粉が細かいコロッケの方が合うかな? メンチカツの用意もある。食べられない白には扶桑から持ってきたみかん。


『あら、おいしい……』

クズノハが小さな口でコロッケをほおばる。気に入ったようで何より。

『揚げたてはうまいな』

『む……。これも紅茶にするのじゃ!』

白が食べかけたみかんを前に、ぺしぺしと肉球で叩いてくる。

『分かった分かった、紅茶は紅茶で出すから、食ってしまえ』

果物の類は何でも私が紅茶かジュースにできると思っているきらいがある白。まあ、大抵できるが。白に渡したみかんより遥かに酸っぱいものを輪切りにして、はちみつにつける。少々時間促進したみかんの蜂蜜漬けの液と輪切りをカップに入れて、そこに紅茶を注げば出来上がり。


『熱いから気をつけろ』

みかんを食べ終えた白にみかん紅茶を渡す。ついでにクズノハと自分の分も。アイスティーでもおいしいのだが今回はホットで。


 

 ボス部屋は、どこかの廃城の大広間のような雰囲気、崩れた柱に石の床、かつては紅かったであろう埃まみれで擦り切れた絨毯。

 廃城の主人はヴイーヴル、蝙蝠の翼を持つ蛇。輝くガーネットの目がこちらを捉え、鎌首をもたげる。


 さあ、ボス戦の始まりだ。



スキル表記で質問があったので

ホムラは戦闘職なのでデフォで戦闘職系のスキルが詳細に、生産職のスキルは省略されて表示されています。(他にも剣士系だと剣士系スキルが魔法より上に表示されたり)

自由に表示することも可能で、ウィンドウから直接スキルを使うタイプも少数いてよく使うスキルを系統を無視して並べ替え可能です(ハルナがこのタイプ)

どっかに書こうと思って書いていなかった気配

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― 新着の感想 ―
可愛いわちゃわちゃ。 狐も可愛いと思うが、ホムラと違って人型になるのはちょっと…。 こう、脳内で犬二匹と、それに引き摺られて散歩を終わらせられない飼い主になった。
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