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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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212/388

210.罠ダンジョン

コレトを弟から兄に修正しました

 ファルノールの東、ナルンの麓にあるダンジョンの正式名称をパルミナダンジョンと言う。が、冒険者の間で実際に使われている呼称は罠ダンジョンだ。


「ここまで多いといっそ踏み潰していきたくなるぜ」

シンがぼやく。

「実際、召喚士と錬金術士がゴーレム呼び出して踏み潰させるらしいにゃ」

「マジかよ!」

「ホント、ホント。状態異常系の罠多いしね、ゴーレムに効かないから。踏み潰して除去した場所を鶴嘴(ツルハシ)担いでついてくのが流行りみたいよ」

お茶漬が補足する。

「……その場合、ゴーレムとの相性だだ下がりなのでは?」

ゴーレムに逃げられないのだろうか。


「特に魂ないみたいだからね。ただ、大事にしてるとカスタムできる特殊個体になるって。それはともかく四区画(ここ)からは魔物でるからね」

三区画(うえ)とは印象がまったく違うらしいな?」

炎王が聞く。


 ただいまのパーティーは、魔法使いプレイ中の私・魔拳士シン・聖法使いお茶漬・魔弓使いクルル・戦士炎王・拳闘士ギルヴァイツアとなっている。二区画で罠というか、ダンジョンの仕様でシャッフルされました。盾職居ない!? となったが、三区画まではブラックコボルドしか出ず、罠への対応がメインだった。回復職と【罠解除】持ちは振り分けられるようだが、他は適当くさいとのこと。


 【罠解除】はDEXと種類によってはINT、MID、そして何より解除経験がものをいう。一度解除したことのある罠は、解除の確率が跳ね上がる。【罠無効化】とかいうレベルのあるスキルも存在し、こちらはレベル相応の罠なら、どんな種類の罠であっても解除できる確率は変わらないのだそうだ。考えるとか、面倒がないせいか、後者のほうが人気だ。


「そうにゃー。……っと、罠発見にゃ!」

そう言ってクルルが前方の壁に向けて矢を放つと、突き刺さった壁からボワンと毒霧がでる。クルルは【罠察知】と【罠破壊】【罠無効化】を持っている。【罠破壊】は攻撃力依存のスキルだそうで、壊せないものも多いのだが、かなり便利とのこと。なのでお任せして、私の【罠解除】は持っていることも告げずに、そっとしてある。冒険者ギルドで数個解除してみただけ状態なので、役に立たないのは目に見えているしな。

 罠の破壊で楽しげに猫尻尾を揺らすクルルが頼もしい。


「三区画まではなぜか平和にゃ。罠めんどくさいけど、罠の処理できるレベル30が銀を掘りに来れるくらいにゃ。でもきっと五区画以降のどこかで三区画に戻されるんじゃないかにゃ」

レベル30に上がると、普通は途端にレベルアップが緩やかになるので現在レベル30のプレイヤーが増えている。


「ああ、あのフェンスの向こうね〜」

クルルの話にギルヴァイツアが思い出したように言う。三区画の真ん中には正方形の壁で区切られた部屋がある。部屋に入る扉は東西の二箇所、ただそこへ至る通路は、進もうとすると薄い壁のように魔法陣が現れ、行く手を阻む。だが通路から、扉の前に転移プレートのようなものが見えていた。


「迷宮でもボス前は共通エリアだしな」

羽のあるトカゲを斬り伏せて炎王が言う。的確に敵に対処する大剣使い、王道で格好いいのだが、気になることがある。


「【火】『ファイヤリング』。聞いていいか?」

そういえば、魔法使いをやるにあたって使える属性三つくらいに設定したっけなあ、と思いつつ【火魔法】以外忘れている私がいる。火でできたリングで拘束された敵にシンとギルヴァイツアがそれぞれコンボを叩き込む。シンは足技も多く使い動きが派手なのだが、ギルヴァイツアのほうは拳が主だ、一撃が重そうに見える。盾がおらんので安全に配慮した進行形態です。

 

「何?」

「どうしたにゃ?」

お茶漬が付与を掛け直し、クルルが罠をもう一つ壊した。


「炎王とギルってパンツはいておらんのか?」

「な!」

「ぶっ! いきなり何言い出すんだ」

「えっ! ノーパンにゃ!?」

「……穿いてない疑惑あるの?」

シンとお茶漬が炎王とギルヴァイツアを見る。


「いきなり何いいだすのよ、穿いてるわよ!」

「……」

叫ぶギルヴァイツアと、片手で顔を覆って疲れた感じの炎王。


「いや、サキュバスと戦ってる時、だいぶきわどい格好しとったから。サキュバスってパンツも溶かせたっけ?」

穿いとるように見えなかったんですが?


「ああ、アンタたちにもらったブーメランだったから、そう見えたんでしょ」

「え」

「え?」

まじまじとギルヴァイツアを見る私とシン。


「ああ、何気に性能いいよね。僕も愛用してます」

「え?」

「えぇ?」

意外なことを言い出した、お茶漬を見て声を漏らす私とシン。


 普通のアンダーは重ね着すると、上に着たものの能力で上書きされてしまうのだが、レオの釣ったパンツというか、ファルのパンツはパンイチ状態より性能は落ちるものの、重ね着しても多少効果を発揮する。たぶん、今出回っているパンツの中で、何らかの上昇効果が得られるのはサキュバスのパンツと二つだけだ。


「やばい、思ってたよりも効率厨だった!」

「普段からレオのパンツに侵食されてる、だ、と……っ?」

シンはノリでマッパになったりパンツになったりするが、根は真面目というか見えないところは普通だ。主にパンツは普通だったらしいことに、安心する私。


「前線組なんだからしょうがないんじゃない?」

「ちょっと、アンタも穿いてるくせに、しょうがないとか言わないでよ」

「僕らが変態みたいにゃ!」

お茶漬の言葉にギルヴァイツアとクルルが抗議の声を上げる。クルル、お前もか……っ。


「……お前、ハルナの前では黙っとけよ?」

炎王が言う。

「ハルナって魔法使いさんだよな? ブーメラン穿いてるの内緒なのか?」

内緒にしなきゃいけないようなものを穿かないでいただきたい。

「そうじゃなくて……。仮面かぶってないときは別にいいんじゃないかしら?」

「ん??」


「あれ、ホムラが…………だって知ってんの?」

一応、レンガードの部分をごにょごにょとぼかしてくれるシン。

「烈火の中でもこの三人だけにバラしてる。一緒に迷宮いった仲だし」


「知ってるならレンガードのときにパンツを話題に出すなってことでしょ」

「何故?」

お茶漬が解説してくれてもわからん。

「しばらくハルナの憧れでいてほしいにゃ」

「何故今更? 話題にはだしておらんが、すでにパンツの受け渡しは目の前で炎王としたような?」

男物はダメで女物はいいのか? パンツ差別?


「あれはレアドロップ(・・・・・・)をパーティーリーダーに渡したことになってる。というか貴様、なぜ俺に女物の下着なんぞ押し付けた!?」

やぶへび!?

「手に持ってるもの確認のために開いた炎王、しばらく固まってたにゃ!」

思い出したのか笑いながらクルルが報告してくる。


「と・に・か・く! レンガードのときはなるべく喋るな! 闘技大会のときみたいに黙ってろ!」

「理不尽!?」

「まあ、まあ。ちょっとハルナには事情があってね、ゲーム自体やるの初めてなのよ。兄のコレトが強引に連れてきて本人は惰性でやってたんだけど、初めて興味持ったみたいなのよね〜レンガード・さ・ま・に」

「さま……?」

「なんというか、理想と妄想が混じってハルナの中のホムラが大変なことになってるにゃ!」

「私が言うのもなんだが、それは早いうちになんとかしてやったほうがいいんじゃないのか……?」

吊り橋効果というか、頑張ってキャラクタークリエイトしたんだが、仮面かぶってた方がモテるのか? ミステリアス効果付加? 


「なんか愉快なことになってっけど、お客さんだぜ」

シンの言葉に意識を切り替えて、敵を倒す。



 そしてボス戦。


「ゴーレムで踏み潰した話なんかしたから敵がゴーレムなのか?」

「そういえばここ、ロックゴーレムですね」


「ゴッ」


「え、ゴーレムだからって鳴き声ゴ!?」

ちょっと開発陣、もう少し何かなかったのか。


「鳴き声気にしてる場合じゃないにゃ! 始まるにゃ!」

「チッ、一応盾らしいことやってみるが、期待するなよ!」

「僕だけ守ってくれれば後はなんでも」

お茶漬がなかなかひどいことを言っているような気がするが、あとは回復するから、ということだろう。たぶん。


「【火】の『ファイヤリング』! えーと、私、なんの魔法特化して上げてる設定だっけ?」

「風と光は使ってるの見たにゃ」

「ああ、ありがとう」

そういえば、洞窟っぽい迷宮に清浄な風と光を〜とか思った気がしないでもない。

魂のないゴーレム相手に魔法は効きが悪い。魔法防御どうこうではなく、ダメージ対象のアストラルボディを持たないから、と言われている。


「自分の設定くらい覚えとけ!」

『ファイヤリング』少しゴーレムの動きを止めただけで四散してしまったが、そのわずかな隙に、炎王が怒りながらゴーレムにスキルを叩き込む。魔法がダメなら物理だ! と、いきたいところだが、物理は物理で防御力がバカ高いのがゴーレムだ。他が四区画から先に進めずにいる要因らしい。


「単語どっかに書いてない? ないかもだけど一応探すの、近接の人々よろしくね」

お茶漬がシンたちに文字を探すよう願う。伝説に忠実ならば、ヘブライ語で書かれた『真理』という文字の頭の一字を削れば崩れ去るはずだ。石でできている時点で期待はできんが。


「一、【月】『蹴り』! 二、【(カイチ)】『撲』! 三、【天】『突』!」

シンとギルヴァイツアがコンボを叩き込む。数を数えながらスキル名を言っているのはシンだ。魔法がそうだったので気にしなかったのだが、物理スキルは別に技名を口にせずともいい。シンは口に出したほうが、EPゲージの戻るタイミング、コンボを繋げるスキルを出すタイミングが測りやすいのだそうだ。


 【月】の属性は闇、魔力、コンボ効果はMP継続回復、【獬】は木、力、力上昇、【天】は風、浸透属性、コンボ効果は攻撃力上昇。

 ギルヴァイツアの初手に黒いエフェクト、一瞬身をかがめて放つ二撃目は金色の残像、次は青銀。青銀だけはシンと同じ【天】、浸透属性。


 魔法使いはあまり役に立てないなこれ。心の中でぼやきながら、『ファイヤリング』と『ウィンドリング』を使って、ゴーレムのスキルを止め、あるいは炎王からタゲが外れて他へ飛びそうになった攻撃を止める。お茶漬へのヘイトを和らげるために、間に炎王へ『回復薬』を放る。


「ありがと。これならコンボ続けられるわ!」

「サンキューサンキュー!」

まあ、拳士系二人がその分ダメージを叩き出しているのでいいだろう。『兵糧丸』を食べた二人はいつもより多く回っております。ロックゴーレムの振り回す手は、当たると大ダメージを食らうが、ほんの僅か動きを止めただけで、二人はその腕をすり抜け、コンボを続ける。


 なお、『兵糧丸』は雑貨屋で販売中です。EPに不安のある方、ぜひご購入してください。


「これは……。コンボ続くとこうなるのかよ」

「ちょっと二人がコンボ続けられるように補助に回ったほうがよさそうにゃー」

拳士が欲してやまないのはコンボに挟めるEP回復技。拳士の技はスキルを発動させるために必要とするEPとスキルを発動した時に消費するEPとがある。


仮にEPが100だとすると、スキルを使うために50必要で、EPを5消費する場合、50が一気に減って、徐々に戻って行き、消費分を除いてEPは95まで回復する。

 必要EPを瞬時に回復する手段は、【星】で出ているらしいが、消費した分のEPの回復スキル、もしくは、継続回復のEP版の薬が絶対あるだろうと言われているが、今のところ発見の噂はない。敵の攻撃を受けることがなく、スキル回しがどんなに上手くてもコンボが続かない。途中で飯を食ってEPを回復させると当然ながらコンボは止まるのだ。その限界をEPの消費が緩やかになる『兵糧丸』で突破させた状態だ。


 ……ちょっと反則くさいから販売数抑えようか。


「でもさすがにEP無い! 最後ゆくぞ! 【鳳凰火炎拳】!!」 

シンが炎に包まれ、振るう腕から鳳凰が現れゴーレムへと拳ごと吸い込まれる。一拍おいて炎が吹き上がり火の粉を飛ばす。


「あら派手ね〜、じゃあアタシも! 【黒の拳(くろのこぶし)】!」

ギルヴァイツアがスキルを放つ。こちらは派手なエフェクトこそないが、ゴーレムを殴った箇所が黒く変色し、石がポロポロと落ちる。地味だが怖そうな技だ。



《ロックゴーレムの石×4を手に入れました》

《ロックゴーレムの石×5を手に入れました》

《ロックゴーレムの石×4を手に入れました》

《ロックゴーレムの魔石を手に入れました》

《ブラックオパール×10を手に入れました》



「ふー! 終わった終わった!」

「EPが確保できれば将来ああなれるのねぇ。夢が広がるわ〜」

今回の主役二人がスッキリいい笑顔。火力職が思い切り火力を振るえるのは気持ちがいい。現在、ボス部屋の先の小部屋で休憩中だ。先に進むための道は見えているのだが、魔法陣フェンスに阻まれて抜けられずにいる。道中も離れた場所にいる片方のパーティーがバルブを閉めないと、水が流れていて進めないとか、そんな感じだった。今回も菊姫たちが終わらないと進めない仕様だろう。


「初討伐でなかったな」

「大地のほうにもボスは出てるだろうから、そっちが終わったらでるのかにゃ?」

「順調に終わったからいいけど、これたぶん三区画で合流してパーティー入れ替えて戻すよね」

お茶漬が今更なことを言い出す。

「……こっちは火力パーティーだったな」

「あっちはあっちで盾二枚、密偵二人だし、事故りようがなくていいんじゃない?」

カレーを食べながら炎王とギルヴァイツアが言う。


「事故……」

サムズアップするレオのいい笑顔が浮かんだが、気のせいということにしよう。


「ああ、それにしてもこのカツいいわぁ!」

「サクッとしてるし、パサパサしてなくってじゅわっとするのに油っぽくないにゃ」

「金払うからもう少しくれ。じゃがいも多めで」

「金はいいけど、盛り付け終わってるやつだから、じゃがいも多めは無理だぞ」

つくるところから盛り付けまで手作業でやり直さんとできん。あれか、カレーは鍋のまま保管して好きに盛り付けさせたほうがいいのか?


「白米いいな白米! 納豆はどこだ納豆!」

シンの納豆愛が再燃している。扶桑にあったが、まだ大豆を手に入れてない。土産を買おうとしたのだが、武器防具は装備レベルが軒並み足らんし、素材もまだきっと扱えそうにない感じだった。結局クランメンバーへは和食を提供することで土産に変えている。納豆買ってくればよかったろうか。


 本日のカレーはルシャに出したスパイシーなものとは違い、家庭的なとろみのついたあのカレーだ。フェヌグリークとクミンで香りを強めたが、後は買ったカレー粉だ。フェヌグリークさんは失敗するとえらいこと苦くなるがカレーは匂い勝負! じゃがいもは表面が溶ける程度、玉ねぎは溶けて姿を消している。カレーの中には扶桑の黒鞠猪豚(くろまりいのぶた)を少々、そして分厚いカツ。クランハウスから出る前に、炎王の好みに沿ってつくったカレーにカツを突っ込んだので、カツカレーにしてはじゃがいもが存在を主張しているかもしれない。


 牛と鳥肉も欲しい……、神々のつくった迷宮の食材ルート探さねば。


ホムラの活躍は次回

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― 新着の感想 ―
わちゃわちゃ楽しい。
[気になる点] そういえば前に魔法は魔法世界(?)の事象を物質世界に反映してるだけで物質世界への干渉を強く望まなければ物理的影響(火で木が燃える等)は出ないって言ってたけど 逆に言えば強く挑めば魔法を…
[良い点] タマネギ溶け込みじゃがいもほろ溶けカレーライスが食べたくなりました!!!
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