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208.待ちの間に

 はい、こんばんは。ホムラです。

 本日の夕食は焼きそば。袋から出した四角いままの麺をフライパンに放り込む。焼き色がついたところで麺は一旦取り出し、油を足してニンニクと豚コマを炒めて、ピーマンやら舞茸やらキャベツを投入。そこへ麺を戻して日本酒を少々。あとは炒めてる間に野菜の水分で麺がほぐれる。焼きそばの麺は結構油っぽく、べたっとするのが好かんのでこの方式を採用している。キャベツが甘い季節に大量に入れて食うのが好きだ。


 食事の他にも色々済ませてログイン。クランメンツが揃うまでまだ間があったので、白を呼び出し、迷宮に属性石を集めに来たのだが……。――ただ今現在、【烈火】メンバーによるストリップが繰り広げられております。人の姿を見てさっさと姿を消す白。最近周りから見て、白が消えているか消えていないか何となくわかるようになってきた。


『白、ここを通らんと先に進めないのだが』

『我に言ってもしょうがないじゃろが』


 34層で【烈火】がサキュバスと戦っているというのが正しいのだが、こう、ね? 


 炎王は胸当が溶かされ、アンダーも所々……というか動くとヤバイ感じのところに穴が開いている。弓使いのクルルと聖法使いはまだ多少マシな格好だが、それは炎王がかばっているからだろう。盾役の大地は、防具が所々溶けているがそれだけだ。なぜならサキュバスに魅了されて炎王に斬りかかっているから。ギルヴァイツアも魅了されていたようだが、聖法使いが解除した。


「クッソ! コレト、サンキュー!」

頭を振りながらサキュバスに向き直るギルヴァイツア。おネェ言葉ではないということは、余裕がないんだろうな。こちらもなかなかにひどい格好。大地のアンダーが無事なのは、鎧の前に盾があったからか。


「あ〜ん、私のせいで争う味方同士っていいわ。もっと見せて」

大地の耳元で囁くサキュバス。青みを帯びた肌に赤い唇、私の知っているサキュバスとは違うが、扇情的なその姿は一緒だ。甘い声でねだるその内容は嗜虐的、同士討ちを望んで遊んでいる気配がある。31から39層階を移動するボスなので35層クリア前レベルで戦闘するのはなかなか厳しいのではないだろうか。というか、扶桑ライフを楽しんでいるうちに追いつかれた!


 ところで一緒にいる美人は誰だ? 艶のある黒髪に白過ぎない肌、存在を主張するが大きすぎない胸。なんというか、現実世界基準での美人さん。【烈火】のメンバーで足りないのは、ローブで顔を隠していた魔法使いか。コレト……じゃないハルナか。コレトは聖法使いの方だ。


「コレト、解除は?」

「ごめん、失敗! ギルより大地のほうが精神低いせいかな?」

もしかして、ムッツリスケベなんじゃないでしょうか?


「にゃー! こんなのいるって聞いてないにゃ!」

半泣き笑顔で矢をサキュバスに放つクルル。


『見ていてもしょうがないし戻るか。入口の方は敵が復活してるかな?』

ちょっと通りますよ、と脇を抜けるに抜けられない広さだ。通ってもいいのだが、サキュバスの敵視がこっちに移ったら面倒だ。パーティーメンバー以外が倒すとお互い素材しかドロップしない。救援(ヘルプ)を出しているパーティーへの助勢は、救助側のドロップ率はそのままで、救援された側は素材のみになる。頼まれない限り乱入は控えるべきだろう。

 

「うふふ。あんまり動くと見えちゃうわよ〜? ああ、でも女の子の裸の方がいいのかしら?」

サキュバスがハルナめがけて振る大鎌を炎王が止めるが、大地が割って入ってきたため、止めきれずに攻撃を食らう。ますます布の面積が狭くなる何か。ハルナもローブが溶けてショールのようになっているし、その下の服も所々丸い大穴が開いて太ももがですね。


 などと思っていたら炎王と目が合いました。そして出される救難信号(ヘルプコール)


『おや、乱入していいのかこれ』

『相手がいいと言ってるのじゃからいいのじゃろ』


「炎王ここで救援出したって、人が……」


『なら遠慮なく』

【光魔法】レベル35『光の十字架』、【灼熱魔法】レベル35『マグナ・マグマ』、ついでに神聖魔法の『異常回復』&『回復』。


『光の十字架』は拘束魔法の一種だが、効果中は魔法攻撃の威力、特に金・火・灼熱のダメージを増強する。同じレベルの【闇魔法】『闇の十字架』は逆さ十字が現れて同じく敵を拘束、物理攻撃の威力、特に貫通属性のダメージを大幅にあげる。『マグナ・マグマ』は大地が裂けてマグマが噴き出し、ダメージと共に【燃焼】の状態異常を付加する。


「ゆくぞ!」

気合いを入れるように一言発して、魔法のエフェクトが終わらぬうちに突っ込んで行く炎王と、それに続くギルヴァイツア。


「え、ちょっと!しょうがないにゃー」

戸惑いつつもサキュバスめがけて矢のスキルを放つクルル。弓のスキルは周囲に使ってるやつがおらんのでようわからんが、雷をまとった矢のエフェクトだ。


「【水】『穿つ雨』!」

ハルナの魔法。


『水魔法レベル30か。魔法のレベルも追いつかれてしまう』

『阿呆。おぬしのように全部あげとるのがいてたまるか!』

白にペシペシと叩かれる。もふもふもいいが肉球もいいものだと思う今日この頃。



《サキュバスの爪×4を手に入れました》

《サキュバスの黒布×5を手に入れました》

《サキュバスの髪×5を手に入れました》

《サキュバスの魔石を手に入れました》

《ブルームーンストーン×10を手に入れました》

《魔力の指輪+5を手に入れました》

《『サキュバスのスキャンティ』を手に入れました》



 また来たパンツ。いらぬ。


 視界の端に映るドロップアイテムの一覧に目をやりつつ、とりあえず【烈火】のメンバーを回復する。


「すまん、助かった」

「いや」

炎王が声をかけてくるのに答える。なかなか目のやり場に困る惨状。チラリズムスキーとしては前衛よりも後衛の……いえなんでもないです。


「レンガード……っ!?」

コレトたちが驚いて固まり気味なのに対し、私がホムラであることを知っているギルヴァイツアとクルルの表情がうわぁーみたいな顔なのだが、何故だ。


 とりあえず装備の破損はあるが見えていない大地を除いた全員にローブを投げる。【チラリ指南役】対策にどんな体型でも被せられるローブの用意は万端だ。さすがに五人は想定外だったが、足りた。


「……ありがとうございます」

「ありがとうございます。驚きました。この階層へも一人で来られるんですね」

ハルナとコレトが言うと、他のメンツも礼を言ってくる。


 ソロでうろついてるのがばれた罠よ。まあいいか、どうせこの姿では色々やらかしてるし。



レ オ:わはははは! 来たぞ!

菊 姫:おかえり〜

お茶漬:もうちょっと待って。素材用意したの作っちゃうから。

シ ン:おー! 集合ハウス?

ペテロ:そそ


 レオのログインでクラン会話が突然賑やかになる。シンは釣り、それ以外の四人はハウスで生産していたはずだ。ちなみにペテロは、私が現実世界で風呂に入っている間に、ログインし、死に戻ったそうで扶桑にもどれなくなった模様。元々クランメンツが揃うのに合わせて、欲しいものをドロップしそうだが、勝てれば儲け物、無理そうな敵に突っ込んで行っての結果だそうだが。


ホムラ:おー、じゃあ戻る


「ああ、これを渡しておこう」

炎王にサキュバスのドロップを渡す。パンツを。


「は?」

「ではな」

返される前に帰りますよ! 



 神殿経由でクランハウスに転移。ああ、パンツ、炎王に渡してしまったが、ここはギルヴァイツアに渡すべきだったろうか。穿けるかどうか知らんが。


『黒を迎えにゆかんでいいのか、おぬし』

『これからまた戦闘だぞ』

黒は雑貨屋で留守番中だ。ペットでも召喚獣でもないので呼び出すことはできない。


『……あれもそろそろ諦めればいいものを』

『うむ、早く諦めて素直にブラッシングをさせて欲しい』

『そっちか』

『どっちだ?』

白と念話で話しながら居間に行くと、白虎が寄ってきて体をすり寄せてくる。


「ただいま、白虎」

本日はクズノハの装身具を置いて、白虎をいつでも呼び出せるように準備している。行く先は迷宮か、アイルの新しく見つかったダンジョンだ。アイルのほうは二パーティーの協力ダンジョンなので、ちょうどいい相手が見つかったらなのだが。


「おう! 来たか」

「ただいま」

居間にはシンとレオ、レオのタヌキ型の騎獣『アルファ・ロメオ』とペテロの虎型の騎獣『黒天』がいた。


「武田くんは外か?」

「海岸散歩が日課だぜ」

武田くんはシンの馬型の騎獣だ。菊姫の白猫の『白雪』、お茶漬のドレイク『黒焼き』はそれぞれの主人にくっついて生産部屋にいるのだろう。


 菊姫の作ったらしいクッションが増え、ソファも以前とは変わっている。私の部屋も、椅子などをどけて、カーペットを敷き、床で白虎に寄りかかって座る生活スタイルに模様替えした。


「黒天がここにいるということはペテロは畑?」

「そそ、なかなかキレイな花畑になってたぜ!」

「見てくるといい。禍々しいの育ててるのかと思ってたら予想外だった」

二人がカードゲームをしながら勧めてくる。


「んー、じゃあ見てきてみるかな」

白虎を撫でる手を止めて、移動のために立ち上がる。ペテロの畑は、ツリーハウスの木から西に少しいった巨木の中につくられている。この島には他に、お茶漬が販売用に管理している畑と、菊姫が布の素材を得るためにつくっている畑がある。クランメンツは出入りフリーだ。


 で、ペテロの畑に来たわけだが。

 真っ白い薄い花弁の花が一面に咲いている。茎を抱く薄緑の葉。


『あからさまに芥子(けし)畑だな』

『ふむ、向こうの青いのは附子(ぶす)かの』

青紫の花が鈴なりに咲いて重たげに揺れている。附子――トリカブトも芥子もどう見ても毒目的です。まあ、確かにキレイな花畑ではある。現実世界では見られない光景に、しばし立ち止まって見入る。


「こんばんは。来てたの」

「ああ、こんばんは。見事な毒草園だな」

「けっこうキレイな花多いよね」

作業を終えたらしいペテロがこちらに向かって歩いてきた。


「奥には近くを通るだけでアウトなのもあるから、一応囲ってあるけど入らないでね。まあ、加工前なら普通の毒消しですぐ治るけど。マタタビもつくってるから、後でホムラと菊姫にあげるよ」

「ありがとう」

見たことに満足し、ペテロと連れ立ってハウスに戻ると、お茶漬と菊姫も作業を終えて戻ってきていた。


「おかー」

「おかおか。行き先アイルになりましたよ」

お茶漬が本日の予定の決定を告げる。


「おお?」

「ギルドでパーティー募集するのかと思ってた。どこと?」

「募集パーティーまだクリアできないお散歩前提じゃない? 烈火にOKもらった」

ペテロの問いにお茶漬が答える。


「烈火……」

「最初声かけた時は迷宮35層攻略予定とかでダメだったんだけど、途中で断念して出てきたみたい。行けるって」



 パンツを押し付けた、炎王に怒られるフラグが!!!!!



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― 新着の感想 ―
読み返した後だと、ここの白との会話にニヨニヨする。
[一言] 「ギルヴァイツアも魅了されていたようだが」オネェ言葉で性別不詳だったけど♂確定した。
[気になる点] あれ?そういえば、ダンジョン内はクラン会話とか繋がらないんじゃなかったでしたっけ?気のせい…? それとも、戦闘に忙しくて会話見てる暇ないってだけの話しだったんだろうか…。 ダンジョン内…
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