171.専属ソファ
2/10わかりづらかったところに少々フォロー入れました。
お茶漬:見に行ったら、シンはなんか馬に囲まれててワロタ。捕獲というか、選んだやつ以外を引き離すのを、ロイんとこの双子に手伝ってもらってたw
菊 姫:謎の好かれ具合でし。レオのアルファ・ロメオはなんかいろいろタルタルしてたでし
クラン会話が静かだったのは、それぞれ確認しに移動したり個別に話していたりしたかららしい。そしてクラン会話の再開に当初の目的を思い出すワタクシ。
「いかん。真面目にもふもふを探さねば」
「騎獣ね、騎獣」
ペテロに否定されるが、もふもふしていないのは間に合っているのだ。人前で乗れないだけで。
「ケット・シーみたいな黒い大型の猫っぽいのもいるって、さっき会ったギルが言ってた」
「けっこうみんな色々遭遇してるのだな」
「烈火とクロノスは暫く通ってるっぽいしね。狼型は遭遇したけど、色違いいるみたいだから普通のはスルーで」
「色違いか、また属性とかあるのか」
「お茶漬に聞いてみよう」
ペテロ:ゴメン、騎獣って属性あるの?
お茶漬:あるみたい? 僕もさっきちょっと双子に聞いたくらいで忙しそうだったから詳しくは聞けなかった。
ペテロ:シンの馬の手伝いですね、わかります
菊 姫:迷惑かけてるでし
レ オ:わははははは! アルファ・ロメオは火属性だったぜ!
お茶漬:まさかのレオから有力情報
レ オ:毛皮は確かに少し赤っぽい?
ホムラ:赤いタヌキ……
菊 姫:いっそ二匹目は緑のキツネにするでしよ
レ オ:ただ全速力で走るときのエフェクトオーラの色くらいしか関係ねぇっぽい?
お茶漬:そのうち強化イベントとかきて一緒に戦えるようになるのかもに
ホムラ:召喚士の立場が……
ペテロ:それを言うならテイマーw
菊 姫:乗るだけなら見た目と、足が速ければいいでし
レ オ:あ、アルファ・ロメオにお座りさせたら、【調教】でたぜ
お茶漬:属性のえり好みだけじゃなくて、見た目からどんなタイプか予想して選んだ方がよさそうね
ホムラ:攻撃タイプか、防御タイプか、支援タイプか
ペテロ:タヌキの予想がつかないwwww
今後イベント等を経て、騎獣もペットとして一緒に戦えるようになるんじゃないかな~ということで。希望もだいぶ入った予想ではあるが、走るだけなら属性の別はいらない気がするし、種類にもよるが――さすがに角ウサギサイズには乗れない――現在もペットから騎獣の設定もできるので。
ところで私に【調教】が出ていないのは、バハムートが放し飼いだからだろうか。確かに傷口開くからやめろとか、戻って安静にしろとかしか言っとらんが。あれ、私ダメ飼い主?
会話を続けながらも騎獣の捜索を、なんとなくペテロと一緒に続ける。狼の騎獣は多いらしく、何度か見かける。尻尾がもっふもっふなので狼でもいいのだが、たくさん見かけると他も少し見たくなるのは人情というものだろう。胸毛やたてがみがもっともっふもふだったら即決していたかもしれんが。
言ったのはパルティンだったか、レーノだったか。ここの騎獣は人と縁を結びたがっている、昔誰かと縁を結んだ獣の生まれ変わりなのだと。どこかに狼と共に暮らす部族があるのかもしれない。
「向こうに反応あるね」
「おう」
方向を変えて、ペテロの先導に従う。【気配察知】のレベルが上がれば範囲も徐々に広くはなるし、魔物と人の区別もつくようになる。聞けば【気配探知】に変化しているそうな。どうやって変えたかは劣化するので聞かなかったが、ちょっと真面目にいろいろ工夫してみよう。ペテロはペテロで【糸】を取りたくなったようだが。
木陰からそっと覗くと、黒い虎。濃い灰色の体毛に漆黒の模様。
「目の上の模様と、耳の後ろの丸模様だけ白だな」
「可愛い」
可愛いと私も思うが、客観的には黒の体毛に金目の精悍な顔をした獣である。
「ペテロ捕まえる? 私はもう少し毛が欲しい」
ガラハドのタイルがオレンジの体毛でたぶん、無属性虎の騎獣だと思うのだが、この黒い虎はタイルより若干細めでしなやかに見えるかわり、胸毛が少々さびしい。
「じゃあお言葉に甘えて」
「助けが欲しくなったら呼んでくれ」
「はいはい、ありがとう。一応周囲に影響あるようなスキルは切っといて」
というわけで、ペテロが騎獣を捕まえるのを見学。見た目通り武闘派だったらしく、ぶっとい前足の一振りから戦闘が始まった。しばらくは攻撃を加えず様子を見るつもりなのか、ペテロは避けているだけだ。時々あるからな、戦闘開始後一定時間攻撃を加えないと仲間になる系のイベントが。あと逆に回復してやったり。ペテロが私にスキルを切るように頼んできたのも、その一環だろう。
黒虎が飛びかかるために地面を蹴ると爪が地面をえぐるのだが、着地の時は音も立てずに場を荒らすこともなくふわりと。さすが猫科。ペテロの素早さで避けるのは余裕のようなので私は完全に傍観態勢になった。白が帰還して留守なのが淋しい、腹に抱き込んだ黒ミスティフはタオルにくるまったままピクリとも言わんし。
さて淋しがっていてもしょうがないので、観戦するために隠蔽陣を敷き、ついでにEPを回復するために軽食を出す。封印スキルのおかげで、物理職以上に減るようになったのでマメな食事は必須だ。決してくつろぐのが目的ではないぞ。
バターたっぷりミニクロワッサン、生ハムとベビーリーフのサラダ、赤ワインたっぷりなビーフシチューは肉が大きめ。はやくご飯で豚の角煮と漬物などを食いたいのだが、これはこれで美味しい。
さっくりしっとりクロワッサンはポロポロとパンくずが落ちるのが難点だが、ここでは掃除は簡単なので気にしない。生ハムでドレッシングが絡んだ野菜を包んで食べる、生ハムの塩気があるのでドレッシングは塩を控えめで。ビーフシチューの肉はスプーンの先でつつくとすぐに崩れる柔らかさ。
食べている間もペテロは華麗に避ける。一人と一匹の黒い獣たち、付かず離れず位置をかえ、相手の腕をすり抜ける様は見ていて飽きない。だがやがてそれも決着がついた。
黒い虎が急に動きを止めて、一声吼えた後、前足を折って伏せる。その伏せた黒虎の鼻先にペテロが触れて騎獣の契約が成ったらしい。ホッとため息をついてこちらを振り返る。
「ちょっと待って、なんで虎に埋もれてるんだ」
「【騎獣】入手おめでとう。いや、私は座ってただけなんだが、気が付いたら寄ってきてた」
真剣に黒虎と語り合って(?)るところ悪いと思って声を上げずにいたのだが、どこからかデカイ白虎が寄ってきてですね……。結果でかい虎をソファにして、ペテロが黒虎と戯れている間、腹毛の感触を楽しんでいた。
「私の苦労は一体……」
結構な時間、黒虎の相手をしていたからな。途中で攻撃に転じるかと思っていたのだが、避け続けていた。ペテロは猫を飼っているので手を出しづらかったのかもしれん。
そして私のこの状況は何でだろうと考えて思い至ったのは【ルシャの憐憫】だった。ルシャ、虎を司ってますよね……、剣と拳の技の種類かと思ってたんだが、生き物もなのかもしやと。
ピンクの鼻、白に黒い縞、青い目、そして立派な胸毛と腹毛、申し分ない。何だ? 動くのか? とでも言うようにこちらを見て首をもたげた白虎。ペテロに倣って、鼻面に触れて命名。命名……、タマはつけてしまったし。トラ? シマ?
「私に従うなら、汝が名は『白虎』だ」
「グルル」
喉を鳴らして手に顔をすりつけてくる。
《【騎獣・虎】を取得しました》
《【騎獣・虎】は宝石や鉱物を差し出すことにより、一定時間騎乗することができます》
《【騎獣・虎】はペット扱いですが戦闘に喚び出すことはできません》
《【騎獣・虎】は餌を与えることによって好感度、速さ、体力などが変化することがあります》
《好感度が高い場合、稀に戦闘中ヘルプに現れます。逆に好感度が下がりすぎると逃げられる場合もありますので注意しましょう》
《【調教】が取得可能になりました》
《『騎獣の餌入れ』を取得しました》
白虎が淡く光って契約完了。【騎獣】ゲット!!!!
「って、乗るのに宝石が要ったんだった」
「なんか納得いかないけど、おめでとう」
とても微妙なトーンのおめでとうをもらった。
ペテロは黒虎の名前を『黒天』とつけた。『騎獣の餌入れ』は餌が二十日分セットできる。餌によって足が速かったり、敵に見つかりづらくなったり、長距離を走れたりと能力が変わる。種族によって最初から得意不得意も多少あるそうだが、黒天と白虎は色違いなだけなので、現在ほぼ同じ能力値。どう差が出てくるか楽しみだ。
その後、菊姫は白猫、お茶漬は青いドレイクを手に入れた。それぞれ名前は『白雪』、『黒焼き』だそうだ、お茶漬は相変わらず名付けが容赦ない。黒焼きを見せてもらったら、少し平たく潰れ気味なコモドオオトカゲが青くなったような姿で、お茶漬を乗せてシャカシャカ歩いてなかなか動きが可愛い。未来の進化狙いで末はドラゴンを狙ったそうだ。
あと一枠、トカゲ系でもいいかな? いや、進化狙わなくとも途中段階と最終段階が居たんだっけ。やはり残り一枠も、もふもふ……。
シンの【騎獣】は馬型で、名前は『武田』。武田くんは見ている間じゅう、シンの頭髪をモグモグしていた。馬の親愛行動だっけ?
……ハゲないよう祈る。
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・増・
PET
【騎獣・虎】『白虎』
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