169.騎獣再び
フルパーティーや、迷宮やダンジョンをメインにしていて、あまり使わない【救援】機能。【乱入可】にチェックを入れておくと、フィールドでの戦闘で、パーティーに空きがあれば途中参戦者が入れるのだが、【乱入した側】は経験値のみで、アイテムは手に入らない。
【乱入】と違い、【救援】は、1パーティーが参戦でき、アイテムの権利は【救助者】へと移る。フィールドで自分達より遥かに強い敵と会ってしまった場合など、【救援】を出す場面は結構あるらしい。うん、私はいつも人の少ないところに行っているせいで、【救援】出しても救助者来ないな! かわりに【乱入可】にしとるだけでパーティー人数オーバーだろうと何だろうとピンチになると約一名来るようになったが。
何故今まで使わなかった機能の確認をしているかというと、【騎獣】は、対話やアイテムを渡すことで仲間になるモノ、戦闘で屈服させ仲間にするモノ、と様々なのだ。
一対一、処女のみ可とかユニコーンさんは好き嫌い激しすぎだと思うが、騎獣としてはベタな種なのでいるのではないかという予想の元、他にもソロを条件にレアな個体が寄ってくるかも……、という期待により行動はソロだ。クラン会話でお互い好きそうな騎獣がいたら教えて、戦闘パターンの場合は【乱入】もしくは【救援】を使って捕まえようという魂胆だ。【乱入】【救援】のために少なくとも二人はつかず離れずで行動している。
先にいた、烈火のメンツは六人なのだが、クロノスのクランメンバーが気がついたら更に増えていて、知らん人がいっぱいだ。そこまでぽこぽこ鉢合わせするほど狭くはないのだが、【騎獣】探しは早い者勝ちの様相を呈している。まあ、途中で会ったロイたちは「【乱入可】にしといてくれれば手伝うぜ〜」と言ってくれているのだが。
「なんかこう、視線が痛かったね」
「弱小クランが邪魔すんじゃねぇ! という電波を受信しました」
「クランマスターの知り合いだからってずうずうしい! ってのも追加で」
ペテロが言えば、お茶漬とシンも続く。
「あれでし、闘技大会上位クランだぞおらぁ! みたいなのを感じたでし」
「こっちはその大会優勝者が混じってるクランなんですが……、面倒なんで言わないけど」
「面倒なことになる未来しか見えないから、ぜひ内緒にお願いします」
「わははははは!」
「個人戦の上位者も入ったみたいだし、大きくなったね、クロノス」
そう言うペテロも、私を含む他のメンツも、知ってる人の人数を知らん人の人数が上回った時点で、クロノスのクラン会話に混じれるビジターは返上している。
「面倒見が良さそうだもんな、ロイ。物理的に助けた後の面倒は、他のメンツなイメージあるけど」
あくまでも私のイメージです、実はきめ細やかな気配りの男かもしれん。いや、メールの文面とか見る限りそれはないか。
そういう訳で、クロノスや烈火に騎獣の発見を負けないよう、張り切って探索中。真っ暗だが、まあ、夜行性の騎獣もいるだろう。その場合、昼に呼び出せるのかが若干不安だ。
『ホムラ、リデル育った?』
『ああ、生産系中心に育ってるけど、A.L.I.C.Eと一体化用に【闇】も覚えさせた』
ペテロは虎タイプを希望。今は、クランハウスで留守番中だが、A.L.I.C.E.を一緒に乗せることを想定しておるのだろう。小さいから長距離でなければ一人用でもいけそうではあるが。
『とりあえず私も【闇】と【投擲】【錬金】は覚えさせた。魔銃を期待』
予想通りの【闇】特化。
『順調にリデルとスキルが被ってるな。幼女が二丁銃のロマン? やっぱり魔銃は作れるとしたら錬金なのか』
『普通は反動で手首折ったりしそうだけどね。少なくとも弾丸は錬金と魔法っぽくない?』
『薬莢で火傷もひどそうだ。規制で実弾の銃作れないっぽいし、だったら錬金か』
ペテロと、そこはかとなく黒い個人対話をしながら、人を避けて山道を進む。
シ ン:おおおおお! 狼! 狼!
お茶漬:狼目指してるひとが、狼の騎獣。狼on狼
菊 姫:捕まえるでしか?
シ ン:ん、まだ初めだし、もうちょっと見るw
お茶漬:そういえばホムラのマントは……
シ ン:うをおおおお!!! 黒狼! 黒狼!!
お茶漬:うるせーww
菊 姫:速いでし!
ペテロ:群れてるの?ww
シ ン:てへッ
お茶漬:男がやっても可愛くないなw
ホムラ:かといって女がやっても可愛く思えん、許されるのはゴールデンレトリバーくらい。
お茶漬:ラブラドールも入れたげて
シ ン:俺、ラブじゃないけど犬の獣人だからw
菊 姫:ラブラドールに謝るでし!
レ オ:タヌキ、ゲットオォォオッ!!
ホムラ:!?
菊 姫:ちょ、早いでしよ!!
シ ン:はえぇッ!
ペテロ:静かだと思ったらw
お茶漬:いや、待って。タヌキ!?
レ オ:珍しい犬かと思ったらタヌキだったw
ホムラ:レオがいいならいいが……
菊 姫:タヌキにも乗れるんでしね……
ペテロ:思ったよりも騎獣、いろいろいそうですなw
シ ン:タ・ヌ・キw 乗り心地は良さそうだな!
ホムラ:タヌキは日本固有種で、外人さんは喜ぶらしいな
レ オ:けっこう可愛いぜw
レ オ:よし、名前は『アルファ・ロメオ』!
シ ン:ぶフォッ!
ホムラ:速そうだなおい
ペテロ:フェラーリじゃないの?wwwww
お茶漬:ネーミングセンスが。
菊 姫:さすがでし
レオが一抜けした。後でエンブレムさげた首輪でも贈ってやろうか、エンブレム調べんとわからんが。話していたら、道無き道を登っている。ついキノコからキノコを目指して移動をですね……。落ち葉で滑る斜面を木の幹に捕まって登る。収穫時期が長くていいなこの世界。『浮遊』は目撃されると【空魔法】やらバレるし、人目があるときは封印中である。
お茶漬:で、ホムラのマント……
シ ン:うをう!!! 絡まれたあぁぁぁぁっ!
菊 姫:落ち着きないでし!
ペテロ:どこ?w
ホムラ:やばい、マップのどの点がシンだこれ
シ ン:ありがとう!
お茶漬:突然の感謝、どういたしまして?
シ ン:誤爆ぅうッ!!!
突然シンが静かになって、クラン会話に上がらなくなる。
菊 姫:ちんだでしか?
ホムラ:ちゃんとマップに、まだ人数分点があるから無事?
ペテロ:二人の動きが予測つかないww
お茶漬:これだから二垢は。
レ オ:わはははは! ロメオのステータス見てた! シン無事か?
ペテロ:さあ?
菊 姫:あ、猫。シャムっぽい、可愛い〜
ホムラ:手伝うか?
菊 姫:ん、一人で行ってみるでし。
そういえば、ここにいる騎獣は人との縁を結びたがっている、とパルティンとレーノが言っていたのを菊姫の言葉で思い出す。一対一での対峙が本来の姿なのかもしれない。いかん、私もキノコじゃなく騎獣を見つけねば。
ホムラ:そういえばマントは不明な存在からもらいました>>お茶漬
お茶漬:不明な……、それでまた【鑑定】できないの。謎に触っちゃいそうだしこれ以上はいいわw
ペテロ:相変わらず謎の攻略パターン
え、【鑑定】できないのか?
菊 姫:いい色のマントでしよね
【色の調整難しいんで服は三色までに制限をかけたい気分のようだ】
わがまま言うな!? いやまあ、元々色とりどりな服より、同色系か二、三色な服のほうが好みだが。【鑑定】でアイテムの情報を見ることはできないが、『天地のマント』の状態(?)を見ることはできる、ますます謎だが、他の人はそれも見えないらしい。レベルのせいなのか【眼】のせいなのか、所有者の別なのかも謎。
レ オ:ロメオ、二人乗りだった!w 好きな餌はみかんだってw
ホムラ:みかん
お茶漬:みかん……、オレンジしか見ない
ペテロ:レア個体なのかも?w おめ?
菊 姫:さすがでし
【気配察知】をかけつつ、気配を感じたほうに慎重に進む。エミューのような地上を走る鳥型の騎獣を見つけるがパス。ふくふくだが、もふもふではない。クラン会話でレオのロメオの話をしつつ、探索を続ける。静かに落ち葉を踏み分け、小枝を払い進むと正面に黒い何か。
すごく眼が合いました。
相手も私の出現に驚いたのか、一度動きを止めたが、直ぐに毛を逆立てて威嚇してくる。埃だらけ、傷だらけのその獣を、とてもとても見たことがある気がするのだが……
「死ね!」
うをう! 先手必勝ですかそうですか。慌てて避けながら装備変更。人目はないよな? 他に気配はなかったはず。というか、こいつも【気配察知】に引っ掛からなかったのだが。
傷だらけ、満身創痍っぽいのに、黒い獣の動きは速い。ガラハドのタイルより一回り大きい、いや毛の分か? バリバリとした硬そうな毛を逆立て爪を振るってくる。その後ろには、小さいが複数の獣の姿。
「ミスティフ?」
「渡さん!!!」
黒い獣がスピードを上げ、さらに踏み込む。踏み込むたび、所々から血が流れて痛そうなのだが。もふもふじゃなくとも手負いの獣をどうこうする気はないんだがな。というか、これはあれだ。
『白、説得頼む。どう考えても毛皮狩り一族に間違われてる』
『一族ってなんじゃ、一族って。縁起が悪い上に、変な部族を作るでない!』
叱られました。
「何!? ミスティフだと! 貴様、同族のくせに人に味方するか!」
ますますヒートアップした獣の攻撃をバックステップで躱す。怒り狂って見えて、私をミスティフたちから離すように誘導している。
「ん? 同族?」
まて、このバリバリしたのもミスティフか! 固そうなんですけど!
『白、何でバリバリ! もふもふのアイデンティティは!?』
『妙な混乱をするでない!』
あ、思い出した!
「パルティンの影響が強すぎて物質界から戻れなくなった個体ってお前か!」
パルティンの名前を出した途端、攻撃が止んだ。
 




