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新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


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165.宣誓


 討手対策断ってしまった結果。

 カルが正装するそうです。


 ……正装して剣を捧げられることになりました(吐血)。雑貨屋の部屋はそう広くなく、酒屋三階のリビングもソファやらの家具でやはり狭いため、【庭】でやることに決定。私は今まで通りでいいという。では、そんな畏まらなくていいじゃないかという私の主張や、そもそも主従関係ではなく友人関係希望というのは綺麗にスルーされた。


 ガラハドたち三人はなんだかんだ言いつつも、最強の騎士(ランスロット)に強い憧れの様なものがあるらしく、カルが正装することに盛り上がっている。レーノは元々仕える対象が居てこそ! な種族。ついでに一連の流れが興味深いのか、静かに観察している様子。なんでこんな知識を取り入れることに前向きなのに世捨て人のような生活していたんだろう? ドラゴニュートにとって属性の強さというのは他を捨てても得るべきものなのだろうか。


 私は先に【庭】でスタンバッてろと追い出されました。ひどい。


 確か騎士の十戒が『強さ』『勇気』『高潔』『忠誠』『寛大』『信念』『礼儀』『親切』『統率』『崇高』だったか。戒律も政策スローガンも大体守られていないから出来るものなのだが、ゲーム世界(ファンタジー)では建前ではなく大真面目なのだろうか。……私、なんとかの十戒で一番強く心に沁みたのは、犬の十戒なのだが。今は飼ってないけど。

 

 特に信念もなく、目標も目先のものしかない、こんな私が、何故剣を捧げられることになってるか謎だ。誰か説明をしてくれ。今までのように"潜伏先"としてならともかく、ただの雑貨屋に最強の騎士がおっていいのか?


 【庭】も夜だ。

 春さんやポチたちはもうすでに何処かで寝ているのだろう、姿がない。今の所【庭】には雨も降らず、気候も一定なので何処で寝ても問題ないが、後で自由に出入り出来る小屋でも作ろう。もう少し木を植えるのもいいだろう。

 【庭】を『生命の樹』の神々の宴会場に向かって歩く。何もない草原の真ん中でもいいのだが、ガラハドたちの盛り上がりを見ていると、未だ困惑中だというのに、それ相応の場所を考えてしまう。自由に使っていいと言われてはいるものの、さすがにルシャの建てたあの場所を使うのは気後れする。せめて一度、本来の目的である宴会をやった後ならともかく、先に違う目的で使ってしまうのは悪い気がするのだ。――背景に使わせてもらおう。


 『生命の樹』と神々の宴会場のそばで、『ライト』を幾つか出し、浮かべる。『生命の樹』についた露が光を跳ね返しキラキラと輝き、ルシャの造った精緻な建物はシルエットを浮かび上がらせる。なかなか幻想的でいいんじゃあるまいか? 欲を言えば、『ライト』が明るすぎるので照度を調節したい。ルーメン数の表示はありますか? 


 カルたちが来るのを待つ間、何かしておらんとこのまま逃走しようかとか、余計なことを考えてしまうので『ライト』がいじれないか実験。結果、大きさと照度は結構自由にいじれることが判明。ただ形は球形固定のようだ、もしかしたら何か方法があるとか相性があるのかもしれんが、今のところ私には形を変えられない。

 色は金色、赤、黄色、オレンジと白、銀、青銀、照度を落としまくって最終的に薄暗がり色まで。あれだ、この世界の月と同じ色だ。緑が出せないことは諦めて、色がうるさすぎるので白い月明かり色に統一する。目がくらむほど明るいのもこの夜の風景に無粋だろう。随分大きくなった『生命の樹』を照らすように高く、ルシャの造った精緻な建物を浮かび上がらせるように、ガラハドたちにカルの姿がよく見えるように幾つか。


 大小様々な球体を浮かべるのはシャボンを飛ばすようで面白く、ついつい夢中に。攻撃魔法でなければ、MPの続く限りいける。が、一定時間超えると消えてしまうので最高幾つまで浮かべていられるか、【チャージ】まで使って本気チャレンジ。気がついた時には思い切りガラハドたちから抜け出してカルがこちらに向けて歩いてくる場面だった。ぐふっ! せっかくだから多少格好をつけてスタンバッてようと思ったのに間抜けなことになった。


 手のひらに出していた、小さな光の玉を放し何でもない風を装って、ゆっくりカルの方に向き直る。ガラハドたちがいる方向は暗く、【暗視】があってもこっちにある光とのコントラストで影が濃く、イマイチ表情がわからんが、全員がこちらを見ている。若干視線が痛いです先生、私でなくカルを見てください。ちょっと暇だったんです。頭上がタイのランタン飛ばす祭りのようになっとるが気にするな!


 こちらに歩いてくるカルは白と青、金を基調とした装備。白い鎧には派手さを抑えた金の模様が入り、飾り布には青い縁取りと裾に近い方にやはり金の模様。腰に差した大剣も(こしら)えは同じ三色。歩いている間、風をはらんで後ろに緩く流れていたマントを捌いてカルが私の前に跪く。ガラハドほど若くはないが流石イケメン、似合っている。おのれ!

 

 【畏敬】使って対抗しちゃダメだろうか。絶対これ跪いてる方が地位高いというかなんというか。あれだな、私が何かの着ぐるみとか装備していて台無しな感じにならなかっただけでもいいと思って諦めてもらおう。いや、もういっそ【傾国】解放してうやむやにしてやろうかなどと物騒なことを考えつつ、微笑んでいる私。


「我が身 主の剣となり 憂いを払い、 我が身 主の盾となり 穢れを寄せず、 この身、終生主に捧ぐことをお許し願いたい」

カルが宣誓の文句っぽいものを(こうべ)を垂れたまま口にする。ここはあれか、受ける側(わたし)が「真理を守るべし」とかなんとか返すシーンか? いや、剣に平和の口づけをして領主だかが渡すあれは騎士になる時の佩剣の儀式か! やばい、聞いておけばよかった!


「許す」

思いつかなかったんだからしょうがない、諦めていただこう。

 返事をすると、カルが顔を上げ、笑顔を見せる。


「主、額に口づけをいただけますか?」

あ――……はいはい、儀式はそれで〆か。そういえば会ったことのある男の騎士って全員額丸出しな髪型だな、と思いながら身をかがめてカルの額に触れて終了。



《『騎士ランスロット』を取得しました》

《称号【ランスロットの主】を取得しました》



 何故アイテム風!?

 称号はランスロット何処でも強制呼び出し権&ピンチに乱入……じゃない、助けに来るそうです。あと戦闘で私のHPが少ないほどランスロットが強化される。


「主、ラピスも誓う!」

「僕も」

ラピスとノエルが居た方を見れば、カミラと手をつないでいるリデルと目が合った、にっこり笑って首を傾げるリデル。問題の二人は、すでに私の足元まで来ていた。早い。


「どちらかというと二人とも保護対象なんだが」

カルの真似をして跪こうとするのを抱き上げる。ちょ……っ、ダブルで耳の後ろの匂いをふんふん嗅ぐのはやめてください! まだ【傾国】の効果が残っているのかスキンシップが過剰気味。というか【傾国】の効果って消えるよな? 消えなかったらどうしよう。


「確か正式に剣を捧げられるのは騎士か、冒険者ランクS以上になってからでしたか?」  

「……剣ならな」

レーノの確認するような問いにガラハドが何故かげんなりしたように答えた。


「大人になって気が変わらなかったら捧げて貰おうか。いろいろ学んで、ゆっくり大人になりなさい。じゃないとレーノのように、大人になってから修行に出されるぞ」

「あ、ヒドイ。気にしてるんですよ!」

ちょっと不満そうなラピスとノエルに気づかないふりをしてレーノと会話。大人はずるいのだ!


「私は一緒にいて楽しいけどな」

「僕も楽しいです。うっかり居心地もいいですしね」

「それはよかった、ありがとう?」

おっと、からかった延長で軽口が返ってくるかと思えば、真摯な答え。レーノは変なところで素直というかストレートなので時々ちょっとびっくりする。


「まあ、剣は捧げなくても【従う者】だっけ? ホムラにジジイと一緒にスキル選ばせて貰えばいいんじゃねぇの?」

「ホムラのスキルに何が増えたか楽しみだね」

「あら、スキルはそんなに増えていないって言ってなかった?」

途端にキラキラした目を私に向けてくるラピスとノエル。おのれガラハド、余計なことを言いおって!!!!


「まあ、そっちは誰か本当に仕えたかったり、一緒にいたい人ができたら乗り換えてもらっていいからな」 途中破棄は、私のステータスは下がるが、確か選んだ側にはペナルティはなかったはず。それにラピスとノエルが誰か見つけるにしても、きっと年単位で先の話だろう。いや、いきなり実は死んだはずの両親が生きてた! とかで離れるかもしれんが。その時は甘んじて低下を受け入れよう。


 ……うう、それにしてもステータス公開は気が重い。


「それにしてもいつの間にこんな建物(もの)建てたの?」

「繊細だね。浮き彫りも透かし彫りも見事だ。誰の作だろう? 明るいところでじっくり見たいね」

「実用なのか? 傷つけんのこぇえんだけど」

「あまり見かけない様式ですね」

「貴方の『ライト』の演出と、この建物のシルエットが『生命の樹』と相まって幻想的です」

「まさか、こんな環境を整えていただけるとは思っていませんでした」

「ほんと、綺麗よね」

風景を眺めてはため息をついたり、うっとりと見惚れる大人組。私はまだラピスとノエルに匂いを嗅がれてます。


「それ、ルシャが造ってった宴会場」

「ぶっ!」

柱に触ろうとしていたガラハドが飛び退く。


「ちょっと、なんで【箱庭】にそんなモノがあるのよ!」

「『神の建造物』ですか。どうりで素晴らしいと納得すればいいのか、何故ここにあるのか疑問に思えばいいのか……」

カミラが私に詰め寄り、レーノが感心したように改めて建物を眺める。


「何故、宴会場……、いや、答えなくていい」

イーグルがグリグリとこめかみを揉む。

「建ててたんだから仕方ないだろう。私だって驚いたが、引越し祝い貰ってしまったしな」

「……主、そういう問題でもないと思います」


「うちに戻ろうぜ、落ちつかねぇ!」

「ランスロット様の正装とこの風景に気分が高揚して、宣誓の口上に呆気に取られて」

「まあ、もうしょうがないかと落ち着いたところで、最後にこのオチ!」

ガラハドとイーグルが口々に言う。いや、待て、口上に何か問題があったのか? やはり「許す」一言じゃいかんかったのか? 私は騎士ではないのだから作法があるなら前もって教えておいてくれ!!!


「あ、僕はミスティフの様子を見てから帰りますので、その間にステータスの開示をどうぞ」

「ん? ガラハドたちも見る気満々だし、選ばなくてもレーノも見ていいぞ。もう諦めた」

「ありがとうございます、でも僕のけじめです」

相変わらず真面目なレーノ。



 ゲームで良く聞く「ステータスオープン」って普通はOpen(ステータス) status(ウィンドウ) window(を開ける)のことだよな。少なくともステータスを公開することじゃない。


「いやいやいや?」

「確かにスキルは生産系以外そう増えていないけど……」

「ホムラ?」


「お前の称号どうなってる!?」

「貴方の称号おかしいわよ!」

「増えすぎだ!」



 酒屋の三階で上がる叫び声。まだ寝ること(ログアウト)はできないようです。




□   □   □   □

・増・

称号

【ランスロットの主】

□   □   □   □

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 住人との掛け合いは面白いとは思うのですが、最近の主人公は自分のやりたい事よりも住人への奉仕に時間を取られてるように感じます。目的と手段が入れ替わっているというか、自分の時間を自由に使え…
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